ニホンカワトンボ
ニホンカワトンボ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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ニホンカワトンボ(橙色翅型の成熟したオス)
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Mnais costalis Selys, 1869 | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ニホンカワトンボ |
ニホンカワトンボ(学名:Mnais costalis)は、カワトンボ科カワトンボ属の中型のトンボの一種[1]。
特徴
[編集]成虫の全長はオスが50-68 mm(腹長37-54 mm、後翅長31-43 mm)、メスが47-61 mm(腹長35-46 mm、後翼長31-43 mm)[2]。未成熟な個体はメタリックな青緑色で、成熟した個体は腹全体に白い粉を吹く[3]。オスの翅は橙色翅、淡橙色翅、無色翅の3タイプがあり、メスの翅は淡橙色翅と無色翅の2タイプがある[2]。生息する地域によって翅色のタイプが異なる[4]。橙色翅型の成熟したオスは翅上部に不半透明の斑があり縁紋は赤褐色、未成熟のものは淡橙色翅型に近い色合いで縁紋は白色。近縁種のアサヒナカワトンボ(Mnais pruinosa Yamamoto, Selys)よりも翅脈が密で、縁紋は細長い[5]。ヤゴの全長は約31 mm[2]。
- 東日本、伊豆地方、隠岐諸島 、四国 - オス(橙色翅、無色翅)、メス(無色)
- 中部日本 - オス(橙色翅)、メス(淡橙色翅、無色翅)
- 西日本 - オス(橙色翅、淡橙色翅、無色翅)、メス(淡橙色翅、無色翅)
- 九州南西部 - オス(橙色翅、橙色翅)、メス(淡橙色翅)
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オス(橙色翅型)
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メス
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近縁種のアサヒナカワトンボ(Mnais pruinosa)
生態
[編集]平地や丘陵地の抽水植物や沈水植物が生育する中流域の緩やかな流れの清流に生息する[6]。オスは水辺の植物や石に留まって縄張りを作り、近付いて来た他のオスを追い払う。メスが現れるとホバリングして求愛行動をする[2]。メスは朽木などに産卵する。5月中旬から8月初旬にかけて産卵し、2-3週間卵で過ごす。幼虫の期間は1-2年程度で、越冬する[2]。
分布
[編集]千島列島、日本本土に分布する。日本では北海道、本州、四国、九州に広く分布する[2][3]。
分類
[編集]日本ではカワトンボ科の5属7種が生息し、カワトンボ属には本種とアサヒナカワトンボの2種がある。従来東日本の個体群のヒガシワトンボ(Mnais pruinosa costalis Selys, 1869)と中部以西の個体群のオオカワトンボ(Mnais pruinosa nawai Yamamoto, 1956)[7]と呼ばれていた種が、2004年にDNAのITS1領域の塩基配列と外部形態による解析が行われ、2006年に「日本蜻蛉学会和名検討委員会」で本種に統合された[1][2][5]。従来ニシカワトンボやヒウラカワトンボと呼ばれていたアサヒナカワトンボと非常に似ていて、この種との雑種も知られている[2][5]。
種の保全状況評価
[編集]日本では以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[8]。
- 絶滅 - 東京都区部(東京都北多摩は絶滅危惧IA類、南多摩は絶滅危惧II類、東京都の本土部としては絶滅危惧IB類)
- 絶滅危惧IA類 - 宮崎県
- 絶滅危惧I類 - 愛媛県[1]
- 絶滅危惧IB類 - 静岡県
- 絶滅危惧II類 - 鹿児島県
- 準絶滅危惧 - 神奈川県、富山県、三重県[9]、島根県[10]、徳島県[11]、熊本県[12]
- その他
脚注
[編集]- ^ a b c 藤原陽一郎、小林真「愛媛県におけるニホンカワトンボの分布に関する考察」『愛媛県総合科学博物館研究報告』第15巻、愛媛県総合科学博物館、2010年、1-8頁。
- ^ a b c d e f g h 日本のトンボ (2012)、36-37頁
- ^ a b 昆虫観察図鑑 (2011)、152頁
- ^ 日本のトンボ (2012)、41頁
- ^ a b c 苅部治紀、守屋博文、林文男「神奈川県を中心としたカワトンボ属の分布」『神奈川県立博物館研究報告(自然科学)』第39巻、神奈川県立博物館、2010年1月27日、25-34頁。
- ^ トンボのすべて (1999)、22-23頁
- ^ トンボのすべて (1999)、130-131頁
- ^ “日本のレッドデータ検索システム「ニホンカワトンボ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年1月8日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
- ^ “三重県レッドデータブック2005・オオカワトンボ”. 三重県 (2005年). 2013年1月8日閲覧。
- ^ “しまねレッドデータブック・オオカワトンボ”. 島根県 (2002年3月). 2013年1月8日閲覧。
- ^ “徳島県版レッドデータブック” (PDF). 徳島県. pp. 168 (2011年8月). 2013年1月8日閲覧。
- ^ “改訂・熊本県の保護上重要な野生動植物-レッドデータブックくまもと2009-” (PDF). 熊本県. pp. 359 (2009年). 2013年1月8日閲覧。
- ^ “レッドデータブックとっとり (動物)” (PDF). 鳥取県. pp. 97 (2002年). 2013年1月8日閲覧。
- ^ “岡山県版レッドデータブック2009” (PDF). 岡山県. pp. 156 (2009年). 2013年1月8日閲覧。
参考文献
[編集]- 井上清、谷幸三『トンボのすべて』トンボ出版、1999年6月1日。ISBN 4887161123。
- 尾園 暁、川島逸郎・二橋 亮『日本のトンボ』文一総合出版〈ネイチャーガイド〉、2012年6月19日。ISBN 978-4-8299-0119-9。
- 築地琢郎『昆虫観察図鑑―フィールドで役立つ1103種の生態写真』誠文堂新光社、2011年5月。ISBN 978-4416211168。