ハグロソウ
ハグロソウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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福島県浜通り地方 2020年9月中旬
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Peristrophe japonica (Thumb.) Bremek.[1][2][3] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ハグロソウ(葉黒草)[2][6] |
ハグロソウ(葉黒草、学名: Peristrophe japonica)は、キツネノマゴ科ハグロソウ属の多年草[1][2][6][7]。
特徴
[編集]茎には鈍い稜があって直立し、高さは20-50cmになり、上部で枝をまばらに分け、節間は基部がややふくらみ、短毛が散生する。葉は対生し、葉身は狭卵形、卵状長楕円形または広披針形で、長さ2-10cm、幅1-2.5cm、先端は鈍頭、縁は全縁、基部は鋭形で長さ2-10mmの葉柄になる。葉の表面は暗緑色、両面の葉脈上に短毛が生えるか無毛。両面に小さな線状の鍾乳体がある[1][2][6][7]。
花期は9-10月。花は淡紅紫色。枝先および上部の葉腋に長さ5-15mmになる花枝をだし、花が2-3個入った葉状の総苞がつき、ふつうそのうち1個の花が発達する。2枚の苞のうち、大きい1枚は卵形で、長さ1.3-2cm、幅0.7-1.3cm、小さい1枚は卵状長楕円形で、長さ1-1.5cm、幅4-8mm、縁と裏面脈上に短毛が生える。総苞内にある小苞は2枚あり、ごく小さく、長さ1mmになり、披針形でとがる。萼は長さ4-5mmあり、ふぞろいに5中裂し、裂片は線状披針形で細くとがる。花冠には細い筒部があり、長さ2cmになり、180度ねじれて反転して上下が逆となり、うち筒部は長さ14mmになって、先は2裂する。上唇はやや細く、先は3浅裂し、反り返り、下唇は楕円形で上唇より幅が広く、前に垂れ、上唇、下唇ともに外側に軟毛が散生する。雄蕊は2個あり、花糸は糸状になる。花柱は1個で糸状、細長く花外にでて、先はわずかに2裂する。果実は蒴果で長さ9-12mm、やや密に短毛が生える。種子は長さ3mmで、やや円形で多数の点状の突起がある。染色体数は2n=48[1][2][6][7]。
分布と生育環境
[編集]日本では、本州の宮城県以南、四国、九州に分布し[1]、山地の林内、林縁などの日陰、木陰に生育する[1][2][6][7]。やや薄暗い林内でもふつうに生える[6]。世界では、朝鮮半島南部、台湾、中国大陸(中部)に分布する[1]。
名前の由来
[編集]和名ハグロソウは、「葉黒草」の意で、暗緑色の葉によるもの[2]で、牧野富太郎 (1940) は、「和名ハ蓋シ(けだし)其暗緑色葉ニ基キテノ葉黒草ノ意ナラン乎」と述べている[8]。また、お歯黒に見立てた説、出羽三山の羽黒山から葉黒草になった説などがある。
種小名(種形容語)japonica は、「日本の」の意味[9]。
分類
[編集]本種は、古くは、Dicliptera japonica (Thunb.) Makino (1903)[5]のように、Dicliptera Juss. ヤンバルハグロソウ属 に含められていたが、蒴果の裂開の仕方や種子の飛び出し方の違いなどがある[10]ことから、Bremekamp (1943) の指摘[11]と記載によって、Peristrophe Ness ハグロソウ属の所属に改められ、学名が、Peristrophe japonica (Thumb.) Bremek.[1][2][3]に組み替えられた。
また、村田源・寺尾博 (1981) は、D. japonica のときも、九州および中国大陸に分布する、苞葉の縁に長い毛があるものを D. japonica var. japonica フチゲハグロソウと、苞葉の縁に長い毛がないものを D. japonica (Thunb.) Makino var. subrotunda Matsuda[4] ハグロソウと区別していたことから、同様に苞葉の縁に長い毛がないものを Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek. var. subrotunda (Matsuda) Murata et Terao[7][12]とした[7][11]。変種名 subrotunda は、「やや円形の」の意味[13]。なお、邑田仁 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』および『新分類 牧野日本植物図鑑』(2017)では変種として区分しないで、広義 P. japonica として扱っている[1][2]。
ギャラリー
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花冠は2裂し、上唇は先が3浅裂し、反り返り、下唇は上唇より幅が広く、前に垂れる。
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雄蕊は2個あり、花糸は糸状になる。花柱は1個で糸状、先はわずかに2裂する。
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葉状の2枚の総苞は大きさが異なり、中に花(蕾)が入る。茎を持ち上げて撮影。
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葉は暗緑色。茎に鈍い稜がある。
下位分類
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i 邑田仁 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』p.170
- ^ a b c d e f g h i 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1050
- ^ a b ハグロソウ(広義)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b ハグロソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b ハグロソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.414
- ^ a b c d e f 『原色日本植物図鑑・草本編I(改訂59刷)』p.118
- ^ はぐろさう、「牧野日本植物図鑑」(初版・増補版)、インターネット版
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1498
- ^ 邑田仁 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「キツネノマゴ科」p.167
- ^ a b 村田源・寺尾博、「ハグロソウの学名」、『植物分類・地理』、Acta Phytotaxonomica et Geobotanica, Vol.32, p.82, 1981.
- ^ ハグロソウ(標準) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1515
- ^ シロバナハグロソウ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
参考文献
[編集]- 北村四郎・村田源・堀勝著『原色日本植物図鑑・草本編I(改訂59刷)』、1983年、保育社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 村田源・寺尾博、「ハグロソウの学名」、『植物分類・地理』、Acta Phytotaxonomica et Geobotanica, Vol.32, p.82, 1981.
- 牧野日本植物図鑑インターネット版、高知県立牧野植物園