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バナナフィッシュにうってつけの日

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バナナフィッシュにうってつけの日
A Perfect Day for Bananafish
作者 J・D・サリンジャー
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
ジャンル 短編小説
シリーズ グラース家
初出情報
初出ザ・ニューヨーカー
1948年1月31日
出版元 コンデナスト社
刊本情報
収録ナイン・ストーリーズ
出版元 リトル・ブラウン社
出版年月日 1953年
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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バナナフィッシュにうってつけの日」(原題: A Perfect Day for Bananafish)はJ・D・サリンジャーの短編小説。1948年1月31日に『ザ・ニューヨーカー』誌で発表された。短編集『ナイン・ストーリーズ』(1953年)の1番目に収められている。シーモア・グラースが初登場する、一連のグラース家物語の嚆矢でもある。本作は『ザ・ニューヨーカー』編集部に高く評価され、作家として注目されるきっかけにもなった[1]

あらすじ

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ビーチサイドのホテルでミュリエル・グラース夫人はニューヨークの母親からかかってきた電話をとる。母親は娘の夫であるシーモア・グラースと娘のことをしきりに心配している。

ビーチでは黄色い水着を着た幼女[2]シビル・カーペンターが母親にサンオイルを塗られながら、「もっと鏡を見てSee more glass[3]」と何度も繰り返している。シビルは砂浜の上で仰向けに寝転がっている青年シーモアと出会う。2人は数日前からお互いが同じホテルに泊まっている、という程度の顔見知りである。シーモアはシビルにバナナフィッシュをつかまえようと提案して海に入る。バナナフィッシュはバナナが入っている穴に泳いでいく魚だと説明し、今日はバナナフィッシュにうってつけの日だと言う。

「あのね、バナナがどっさり入ってる穴の中に泳いで入って行くんだ。入るときにはごく普通の形をした魚なんだよ。ところが、いったん穴の中に入ると、豚みたいに行儀が悪くなる。ぼくの知ってるバナナフィッシュにはね、バナナ穴の中に入って、バナナを七十八本も平らげた奴がいる

波がやってきて2人を襲うと、シビルは「バナナフィッシュが一匹見えた」と言う[4]。シーモアはシビルの土踏まずにキスをする。

ホテルに戻ったシーモアは、一緒にエレベーターに乗った女性へ軽いいいがかりをつける。部屋に戻ると、妻は眠っている。彼女を見つめながらシーモアは拳銃で自分のこめかみを撃ち抜く。

解説

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シーモアの唐突な自殺で幕を下ろす結末が印象的である。自殺の理由は直接的には明かされないが、兵役の経験による神経衰弱が暗示されている[5]

文学者の中には、戦争などなかったかのように軽薄に暮らしている人々を、精神的に安定しているからこそ無節操である、と評するものがいる[6]

のちに続くグラース家の連作でもシーモアの死は弟バティらによって繰り返し語られ、グラース家物語の中心を成している作品である。

主な日本語訳

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作品論

脚注

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  1. ^ サリンジャーは自作が雑誌に掲載されるにあたり、勝手にタイトルを変更されたり内容に手を加えられるのを嫌い、作者の同意なしに作品を改変することがない『ザ・ニューヨーカー』を好み、同誌に優先的に作品を掲載する契約を結んでいた(ポール・アレクサンダー『サリンジャーを追いかけて』田中啓史訳、DHC、127頁)。以後、多くの作品を『ニューヨーカー』に発表する事になる。
  2. ^ セパレートの水着の一方(胸)が必要になるのはまだ9年か10年先、と描写されている。
  3. ^ 登場人物のシーモア・グラース(Seymour Glass)との同音異義語
  4. ^ もちろんバナナフィッシュはシーモアの創作であり、シビルはいるはずのない魚を見たと言っている。
  5. ^ マーク・ピーターセン『続 日本人の英語』(1990年、岩波書店)p173
  6. ^ マーク・ピーターセン『続 日本人の英語』(1990年、岩波書店)p174

外部リンク

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