コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ビアース川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビアース川
水系 インダス川
延長 470 km
平均流量 499.2 m3/s
流域面積 20,303 km2
水源 インドの旗 インドヒマーチャル・プラデーシュ州ヒマラヤ山脈
河口・合流先 アラビア海(パキスタン)
流域 インドの旗 インド
テンプレートを表示
インダス川の流域図

ビアース川ヒンディー語: ब्यासパンジャーブ語: ਬਿਆਸ英語: Beas River、BiásまたはBiasとも[1][2][3])は、インド北部を流れる河川。インドのヒマーチャル・プラデーシュ州中部のヒマラヤ山脈に源を発して、パンジャーブ州サトレジ川と合流する[4]。全長は470kmで流域面積は20,303km2である[5]

語源

[編集]

ビアース川はヴェーダでは「Arjikuja」、古代ギリシアでは「ヒファシス」(「ヒュパシス」とも。ギリシア語: Ύφασις Hyphasis)と呼ばれる[6]

ビアースという名は、ヴィヤーサの転訛である[7]とも言われる。伝説によると、ヴィヤーサは泉源のヴィヤース・クンド湖からビアース川を創り出したという[8]

歴史

[編集]

紀元前326年ヒュダスペス河畔の戦いに勝利したアレクサンドロス3世の軍勢はビアース河畔で休めていた。このとき、すでに故郷を8年間離れている兵士たちはそれ以上の進撃を拒否した。アレクサンドロス大王は3日間テントに篭っていたが、兵士たちの考えが変わらないとわかると、やむなく引き返した[9][10]ラージャシェハラ英語版Kavyamimansa[11]によると、プラティーハーラ朝マヒーパーラ1世英語版(在位:913年 - 944年)の治世では、王国の版図は最大になり、その北西はビアース川の上流まで達するという[12]1285年には、チャガタイ・ハン国奴隷王朝の間で「ビアース川の戦い」が起きた。

20世紀になると、ビアース計画によりビアース川沿岸の開発がはじめ、灌漑水力発電のためのインフラが整備され、1974年にポングダム英語版が、1977年にパンドーダム英語版がそれぞれ完成した。ポングダムはタールワーラ英語版地方の灌漑が主な目的だったが、すぐに水力発電の整備が整え、360MWの発電ができるようになった。パンドーダムはトンネルなどで河水をサトレジ川の発電所まで誘導して990MW出力の発電ができる[13][14]

流域

[編集]
マナリ英語版の南にあるクール英語版から見るビアース川と山
ヒマーチャル・プラデーシュ州を流れるビアース川
クール英語版を流れるビアース川でラフティングを楽しむ旅行者たち
パタンコット英語版を流れるビアース川

ビアース川はロータング峠英語版の南にあるクール英語版を通るところで標高4361mに達する。その後、マンディー県英語版を通ってカーングラー県英語版になると標高は590mまで落ちる[6]。カーングラー県のReh近くで三手に分かれ、Mirthalを通ったところで再び合流する(標高は300mになる)。ホシアールプル英語版で急に北に転向し、カーングラー県との境界を形作る。そのままシヴァリク山英語版の山麓を回って南へ向かい、グルダースプルとホシアールプルの間を通る。そして、アムリトサルカプールタラーの間を通ると、サトレジ川に合流する。サトレジ川はそのままパンジャーブ州を流れて、バハーワルプル近くのウチュチェナーブ川と合流してパンジャナード川英語版になり、最後はミタンコット英語版インダス川と合流する。

ビアース川はインダスカワイルカのインドでの唯一の生息地であり、ゴールデンマハシール英語版ホッグジカビロードカワウソインドガビアルなども生息している。ポングダムのダム湖マハラーナ・プラタープ・サガル貯水池英語版およびポングダムから河口までの本流はラムサール条約登録地である[15][16]

1960年のインド・パキスタン間のインダス水協定英語版では、ビアース川はインドに割り当てられている[17]

2014年の事故

[編集]

2014年6月8日、工学部の学生24名とツアーガイド1名がビアース川で溺死した。当時ラールジダムの水門が開いているが付近には警告の立て札などがなく、学生とガイドはダムに立ち入って写真を撮っていた。すると水位がいきなり1.8メートルまで上がって、25名全員が流されて死亡した[18]

脚注

[編集]
  1. ^ The Land of the Five Rivers and Sindh. David Ross. London. 1883
  2. ^ The Panjab, North-West Frontier Province and Kashmir. Sir James McCrone Douie. 1916, pp. 16-17, 22, 25-26, 52, 68, etc.
  3. ^ 'The Panjab, North-West Frontier Province and Kashmir. Sir James McCrone Douie. 1916, p. 25
  4. ^ About District”. 2016年11月3日閲覧。
  5. ^ Jain, Sharad K.; Agarwal, Pushpendra K.; Singh, Vijay P. (5 March 2007). Hydrology and water resources of India. Springer. p. 481. ISBN 978-1-4020-5179-1. https://books.google.com/books?id=ZKs1gBhJSWIC&pg=PA481 15 May 2011閲覧。 
  6. ^ a b Beas The Imperial Gazetteer of India, v. 7, p. 138..
  7. ^ VyasaのVがBに取って代わり、また北インド諸語では語末の母音は発音しないものが多いので語末のaが脱落した。
  8. ^ Wasini Pandey, Bindhy. Geoenvironmental hazards in Himalaya. https://books.google.com/books?id=QqVcAEfQrjIC&pg=PA58&dq=Beas+Vyas 2009年5月29日閲覧。 
  9. ^ Travels into Bokhara, Lieut. Alex. Burnes FRS, London, John Murray, 1834, page 6
  10. ^ The Empire and Expeditions of Alexander the Great”. World Digital Library (1833年). 2013年7月26日閲覧。
  11. ^ Kavyamimansa of Rajasekhara, ch. XVII, P. 94
  12. ^ Rama Shankar Tripathi (1989). History of Kanauj: To the Moslem Conquest. Motilal Banarsidass Publ. pp. 262–264. ISBN 812080404X, ISBN 978-81-208-0404-3. https://books.google.com/books?id=2Tnh2QjGhMQC&pg=PA262&dq 
  13. ^ Developmental History of Beas Project”. Bhakra Beas Management Board. 27 November 2011閲覧。
  14. ^ India: National Register of Large Dams 2009”. Central Water Commission. 21 July 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。22 November 2011閲覧。
  15. ^ Pong Dam Lake | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2002年8月19日). 2023年4月7日閲覧。
  16. ^ Beas Conservation Reserve | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2020年2月1日). 2023年4月7日閲覧。
  17. ^ The Indus Waters Treaty 1960”. World Bank. 2016年9月26日閲覧。
  18. ^ http://www.hindustantimes.com/punjab/chandigarh/silent-river-beas-turned-into-watery-grave-within-seconds/article1-1227660.aspx