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ビタミンK欠乏症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビタミンK欠乏症
概要
症状 あざ点状出血血腫、手術部位や穿刺部位の滲出血、胃痛、軟骨の石灰化、および発育中の骨の重度の奇形または動脈壁への不溶性カルシウム塩の沈着
原因 ビタミン K1ビタミン K2のいずれか、もしくは両方の不足
分類および外部参照情報
Patient UK ビタミンK欠乏症

ビタミンK欠乏症は、食事によるビタミンK1またはビタミンK2、あるいはその両方の摂取が不足する事で発症する[1]

兆候と症状

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兆候にあざ点状出血[2][3]血腫が見られる。

ビタミンKは肝臓でビタミンKエポキシドレダクターゼによって活性型に変化する。活性化されたビタミンKは、凝固に関与する特定のタンパク質をγ-カルボキシル化(活性化)するために使われる: 第II因子、第VII因子第IX因子プロテインC、プロテインSなどである[4]。これらの因子を介して凝固カスケードを活性化することができないと、上記のような出血症状を引き起こす。

注目すべきは、ビタミンK欠乏症の検査値を調べると、プロトロンビン時間 (PT) は上昇するが、活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) は正常か軽度の延長にとどまることである。ビタミンK欠乏症では、APTTでモニターされる内因性経路(F-IX)とPTでモニターされる外因性経路(F-VII)の両方の因子の活性が低下することを考えると、これは直感に反するように思われるかもしれない。しかし、第VII因子はビタミンKによってカルボキシル化される因子の中で最も半減期が短い。したがって、欠乏症の場合、活性化された第VII因子が最初に "消失"するため、最初に上昇するのはPTである。欠乏症の後期になると、(半減期の長い)他の因子が "追いつく"ことができるようになり、APTTも上昇するようになる。[要出典]

原因

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ビタミンKを合成する腸内細菌叢が未発達な乳児では、ビタミンK欠乏性出血症を発症しやすい。成人では摂取不足によるビタミンK欠乏症の発症はまれだが、脂質吸収の阻害(胆道閉塞などで起こる)、ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬の治療的または偶発的な摂取によって発症する場合が有る[5]

疫学

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ビタミンK欠乏症の有病率は地域によって異なる。米国の乳児の場合、出血を伴わないビタミンK欠乏症は生後5日未満の乳児の50%にみられ、典型的な出血性疾患は0.25-1.7%にみられる。したがって、米国小児科学会の栄養委員会は、0.5~1.0mgのビタミンK1を出生直後にすべての新生児に投与することを推奨している[6]

国内においても日本小児科学会、日本産科婦人科学会等の学会が連名で提言を出しており[7]

2.哺乳確立時、生後1週または産科退院時のいずれか早い時期、その後は生後 3か月まで週 1 回、ビタミン K2を投与すること

として、乳児のビタミンK摂取を強く推奨している。

しかしながら、ビタミンK2シロップを助産師が意図的に与えず、いわゆるホメオパシーに基づく偽薬を代替として投与したことにより、ビタミンK欠乏による新生児メレナを発症し、死亡したと考えられる事故も起きている[8][9]

タイ閉経後女性や高齢女性はビタミンK2欠乏症のリスクが、若い女性の正常値と比較して高く[10]、現在推奨されているビタミンKの投与量は少ない可能性が有る[11]

動脈などの軟部組織カルシウムが沈着することは、特に動脈硬化症にはよく見られることであるが、この動脈の石灰化にビタミンKの不足が関与している可能性があり、ビタミンK欠乏症の1つとも考えられている[12]

腸内細菌叢は、人間が必要とするビタミンKの大部分を合成するため、これらの細菌に問題があるか、その量が不十分な場合には、ビタミンK欠乏症の危険性がある。

新生児は、生後5~7日では大腸に十分な細菌叢が形成されていないことが多いため、前述のようにこのカテゴリーに入る。また、長期的に抗生物質治療を受けている人も、正常な腸内細菌叢が減少する可能性があるため、リスクが高い[13]

関連項目

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脚注

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  1. ^ Vitamin K Deficiency: Background, Physiology, Complications and Prognosis. (24 January 2022). http://emedicine.medscape.com/article/126354-overview. 
  2. ^ Vitamin K Deficiency eMedicine. Author: Pankaj Patel, MD. Coauthor(s): Mageda Mikhail, MD, Assistant Professor. Updated: Feb 13, 2014
  3. ^ Causes”. Mayo Clinic. 2023年10月6日閲覧。
  4. ^ 白川仁, 大崎雄介, 駒井三千夫「ビタミンKの生体内変換とその意義」『化学と生物』第45巻第9号、日本農芸化学会、2007年、627-634頁、CRID 1390282679176983936doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.45.627ISSN 0453073X 
  5. ^ ビタミンK欠乏症”. msd. 2023年10月6日閲覧。
  6. ^ American Academy of Pediatrics - Committee on Fetus and Newborn (July 2003). “Controversies concerning vitamin K and the newborn”. Pediatrics 112 (1): 191-192. doi:10.1542/peds.112.1.191. PMID 12837888. http://pediatrics.aappublications.org/content/112/1/191. 
  7. ^ 新生児と乳児のビタミン K 欠乏性出血症発症予防に関する提言”. 2023年10月6日閲覧。
  8. ^ 厚生労働省医政局看護課長通知”. 厚生労働省. 2023年10月6日閲覧。
  9. ^ 36カ所でビタミンK投与せず ホメオパシーで助産所調査”. 日本経済新聞. 2023年10月6日閲覧。
  10. ^ Bunyaratavej N (2007). “[Experience of vitamin K2 in Thailand”] (Japanese). Clin Calcium 17 (11): 1752-1760. PMID 17982197. https://www.iyaku-j.com/iyakuj/system/M2-1/summary_viewer.php?trgid=1464. 
  11. ^ “Vitamin K in the treatment and prevention of osteoporosis and arterial calcification”. Am J Health Syst Pharm 62 (15): 1574-1581. (2005). doi:10.2146/ajhp040357. PMID 16030366. 
  12. ^ “The physiology of vitamin K nutriture and vitamin K-dependent protein function in atherosclerosis”. J. Thromb. Haemost. 2 (12): 2118-2132. (2004). doi:10.1111/j.1538-7836.2004.00968.x. PMID 15613016. 
  13. ^ “Dose Response and Minimal Daily Vitamin K Requirement in Man”. Journal of Applied Physiology 23 (3): 387-389. (September 1967). doi:10.1152/jappl.1967.23.3.387. PMID 6047959. 

外部リンク

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