ピアノ協奏曲第0番 (ベートーヴェン)
ピアノ協奏曲 変ホ長調 WoO 4は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1784年に作曲したピアノ協奏曲。ベートーヴェンの他のピアノ協奏曲よりも先に作曲されたため、「ピアノ協奏曲第0番」と呼ばれることもある。1890年に初めて出版された。
概要
[編集]作曲当時ベートーヴェンは13歳であり、この曲は彼の初期作品の一つに数えられる。現存する楽譜のタイトルには「ピアノフォルテもしくはチェンバロのための協奏曲」と記されており、「12歳で作曲した」と書かれているが、これは父ヨハンによる偽称である。
今日ではピアノパートの草稿のみが現存しており、管弦楽に関しては草稿にピアノパートが休みの時の前奏、間奏、後奏のピアノ用の書き込みが見られるのみである[1][2]。これらのオーケストラパートにはフルートとホルンのパート、そしてトゥッティが書き分けられている。
このオリジナル版については、現在ヘンレ社から校訂版が出版されており、オンライン上で全曲を見ることができる[3]。
現在この曲を演奏するためには、オーケストラパートを編曲及び補筆しなければならない。演奏の機会が少ないため、主要なレパートリーとして人気を勝ち得るには至っていない。
補筆版について
[編集]管弦楽部を補筆した版としてはスイスのベートーヴェン研究家ヴィリー・ヘスによるものが知られる。1934年に第3楽章がオスロ放送管弦楽団及びヴァルター・フライの独奏により初演され、全曲版は1943年6月にポツダムでエトヴィン・フィッシャーの独奏により初演され、出版された。ヘス版では第2・3楽章の終結部が加筆・変更されている。
この他にもオランダのピアニストロナルド・ブラウティガムによるもの(BISに彼自身による録音あり)、ボストン大学のジョン・ミッチェルによるもの[2]、ハワード・シェリーによるもの(シャンドスのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集に収録)などが存在する。ミッチェル版では、第2・3楽章の終結部が草稿本来のものに戻されている。
編成
[編集]草稿の記述から以下の通りだと判明している[2]。
楽曲構成
[編集]この協奏曲は3楽章制である。
この曲が演奏される場合、オーケストラパートが版ごとに異なるため正確に全体像を記述するのは困難である。しかし、一般的にはベートーヴェンが後に師事するフランツ・ヨーゼフ・ハイドンのような、18世紀後期の古典派の様式を踏襲しているといえる。ヨハン・クリスティアン・バッハの影響を指摘する声もある[3]。
第1楽章のピアノパートは急速なスケールを主に用いている。緩徐楽章でも様式はほぼ同様で、非常にありふれたアルペジオや装飾音形が見られる。終楽章は陽気な主要主題を持ち、非常に急速に、第1楽章同様にスケールを基本としたピアノ書法で書かれている。
全楽章のコーダの直前にはカデンツァが指定されている。
演奏時間は約27分。
脚注
[編集]- ^ Beethoven Works
- ^ a b c Beethoven's Piano Concerto in E-Flat WoO 4: A Piano Reduction of the Full Orchestral Score Based on Jon Ceander Mitchell's Reconstruction.
- ^ a b Ludwig van Beethoven Piano Concerto in E flat major WoO 4→楽譜を見る場合は"Look inside"のリンクを参照(リンク切れ)
外部リンク
[編集]- ピアノ協奏曲 変ホ長調 - ピティナ・ピアノ曲事典
- ヘス補筆版の第1楽章 - YouTube
- ヘス補筆版の第2楽章 - YouTube
- ヘス補筆版の第3楽章 - YouTube