フィリピンにおけるLGBTの権利
フィリピンにおけるLGBTの権利 | |
---|---|
同性間の 性交渉 | 合法 |
同性間の 関係性の承認 | なし |
同性カップルによる 養子縁組の引受 | 可能[1][2] |
同性愛者を 公表しての 軍隊勤務 | 2009年よりゲイ・レズビアンは可能 |
差別保護 | なし。検討中 |
フィリピンのレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)の人々には、非LGBTの人々にはない法的課題が存在している。LGBTの人々への受容は、性的指向やジェンダーに関する教育の広まりで年々広まっており、政治活動やLGBTコミュニティの可視化も進みつつある[3]。同性結婚は法的に認められておらず、またLGBTコミュニティに対する法的な保護もない。その背景には宗教的な要因が強いと言えよう。フィリピンでは、キリスト教徒(カトリック)が人口の大多数を占めており、LGBTに対して不寛容な面がある[4]。
同性愛に対する法規制
[編集]同性の成人同士の合意に基づいた非商業的で、私的空間におけるものは犯罪とされない。以下は性的指向や性自認にはかかわらないことであるが、公共の場においての性的行為は不道徳行為として刑法200条にて禁止されている。また性的同意年齢は12歳で統一されており、18歳未満の場合は金銭やその他の利益を伴う場合や成人からの斡旋などに基づくものは同意として認められていない。
軍
[編集]性的指向や宗教を理由としたCAT(Citizen Army Training)の免除は認められていない。しかしながら一部のレポートでは同性愛者を公にしたカリキュラム受講においてハラスメントに遭うケースが報告されている[5]。2009年3月3日に、フィリピン軍においてゲイ・バイセクシャル・レズビアンを公にしたままの入隊や兵役に就くことを認める旨を発表した[6]。
セクター
[編集]フィリピンの選挙法では、高齢者や農家、労働者や若年層といったセクターが認められている。憲法にて代議院の20%の議席はセクターに配分が決められている。1995年と1997年にLGBTのセクターを追加する法改正案が提議されたが廃案となった[7]。
政党
[編集]フィリピンの政党は保守的な傾向が高く、同性愛者の権利擁護については概ね慎重な傾向がある。
小政党のアカバヤン党は、1990年代に政党綱領へLGBTの権利擁護を組み入れたフィリピン最初の政党であった。権利擁護反対派の著名な政治家には、ラカス党の Bienvenido Abante 議員(マニラ6区)がいる[8]。Rodolfo Biazon とその息子 Ruffy Biazon や Miriam Santiago なども著名な反対派として知られる。彼らは2006年に代議院と元老院に、他国での同性結婚をフィリピン国内では非承認として扱う法案を提出している。2009年時点で同法案は留保となっている[9]。
フィリピンは国連の『性的指向と性自認に関する宣言』(性的指向と性自認に基づく暴力や嫌がらせ、差別、排除、スティグマ、偏見を非難する決議)に署名していない。
Ang Ladlad
[編集]性的指向やジェンダーに基づく差別やハラスメントの一掃を基本理念とする新興政党に Ang Ladlad がある。
2009年11月11日、フィリピン選挙管理委員会は2010年5月の選挙への同党の出馬を「不道徳」を理由に却下した[10][11]。2007年の選挙においても Ang Ladlad は資格不備のため失格となっていた[12]。
2010年4月8日、フィリピン最高裁は選挙管理委員会に対して2010年5月の選挙に Ang Ladlad の出馬を認める命令を裁定した[13][14]。
同性間パートナーシップ
[編集]フィリピンでは同性結婚やシビル・ユニオン、ドメスティックパートナーシップなどの法的承認はない。
1998年に元老院議員の Marcelo B. Fernan と Miriam Defensor Santiago はトランスジェンダーの結婚や生物学的に同性同士のリレーションシップ(同性結婚やドメスティックパートナー)を規制する4法案を提出た。
2006年より3件の同性結婚規制法案が提議され留保となっている。2011年初頭には Rene Relampagos 議員が他国での同性結婚をフィリピン国内で規制するための法案「フィリピン家族法26条の修正法案」を提出している[15][16][17]。
LGBTコミュニティ
[編集]フィリピンでゲイの権利擁護団体として著名なものに、1992年に設立されLGBT学生の団体で最も古く規模の大きい「UP Babaylan」[注 1]や、アジアで最初のゲイマーチ(1994年)を開催した「Progay-Philippines」、1999年設立の「LAGABLAB」[注 2]、2002年に設立されたマニラを拠点とするトランスセクシャルの女性やトランスジェンダーのサポートグループ「STRAP」[注 3]、ゲイゲームズの2002年シドニー大会に参加したグループを起源に持ち、スポーツイベントや文化イベント、人権擁護イベントなどを行う「TEAM PILIPINAS」[注 4]などがある。
フィリピンはもとよりアジア初のLGBTプライドパレードは、1994年6月26日にケソンメモリアルサークルにて行われた。このマーチには数百人が参加していたが、付加価値税に対する反政府デモと混同されていた。このパレードは同年8月に日本で開かれた「東京レズビアン・ゲイ・パレード」より2ヶ月早かった。
1990年代に入るとLGBTの人々が政治的・社会的な面で組織化かつ可視化されるようになった。LGBTプライドフェスティバルが毎年開催されるようになり、学生や女性、トランスジェンダーの人々に焦点をあてたLGBT団体が発足している。マニラ市内にはバー、クラブ、サウナといった活気のあるゲイシーンだけでなく、様々なゲイの人権擁護団体も存在している。
脚注
[編集]- ^ “Adoption Law”. Docstoc.com. 5 September 2010閲覧。
- ^ LGBT rights by country or territory
- ^ “International Encyclopedia o”. .hu-berlin.de. 20 January 2011閲覧。
- ^ “東南アジアのLGBTの今 |”. GNV. 2019年11月29日閲覧。
- ^ “Military training formatted”. Refusingtokill.net (9 May 2005). 20 January 2011閲覧。
- ^ “Philippines ends ban on gays in military | News Story on”. 365gay.com. 20 January 2011閲覧。
- ^ http://www.ilga.info/Information/Legal_survey/Asia_Pacific/philippines.htm
- ^ “Pro-gay bill not a rights issue - House HR chair - Nation - GMANews.TV - Official Website of GMA News and Public Affairs - Latest Philippine News”. GMANews.TV. 20 January 2011閲覧。
- ^ <http://www.outragemag.com/web/GayRelationships-001.html>
- ^ “CHR backs Ang Ladlad in Comelec row”. ABS-CBN News. (15 November 2009) 10 December 2009閲覧。
- ^ “2010 National and Local Elections”. Comelec. 2011年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月20日閲覧。
- ^ Aning, Jerome (1 March 2007). “Gay party-list group Ladlad out of the race”. Philippine Daily Inquirer. オリジナルの2012年9月26日時点におけるアーカイブ。 18 January 2010閲覧。
- ^ by jpepito78 on Thu, 04/08/2010 - 13:34 (19 January 2010). “SC allows Ang Ladlad to join May poll”. ABS-CBN News. 20 January 2011閲覧。
- ^ “G.R. No. 190582”. Sc.judiciary.gov.ph. 20 January 2011閲覧。
- ^ https://progressph.blogspot.com/2011/06/discriminatory-amendment-proposed-by.html
- ^ http://www.discoverbohol.com/bsp/2011/0227-11/Same_sex_Marriage-0227-11.htm
- ^ http://www.congress.gov.ph/members/search.php?congress=15&id=relampagos#
- ^ UP Babaylan (正式名:University of the Philippines Babaylan)
- ^ LAGABLAB (正式名:Lesbian and Gay Legislative Advocacy Network)
- ^ STRAP (正式名:Society of Transsexual WOMEN of the Philippines)
- ^ TEAM PILIPINAS (正式名:Philippine Forum on Sports, Culture, Sexuality and Human Rights)
関連項目
[編集]- 国・地域別のLGBTの権利
- en:LGBT in the Philippines
- en:Human rights in the Philippines
- en:Sexuality in the Philippines
外部リンク
[編集]- University of the Philippines Babaylan
- LGBT Rights in the Philippines up to 1998
- Philippines Gay and Lesbian Resources
- Promoting Human Rights and Sexual and Gender Diversity and Equality in the Philippines
- Philippines LGBT Interest Group
- ProGay Philippines
- Outrage Magazine - a publication for the gay, lesbian, bisexual, transgender, queer, intersex and ally (GLBTQIA) communities in the Philippines; readily available online as a webzine.
- Weeqender LGBTQ Travel and Lifestyle Magazine - The Philippines' first LGBTQ (lesbian, gay, bisexual, transgender and queer) Travel & Lifestyle Magazine, updated monthly.
- Myfemme Magazine - a monthly magazine for women, femmes, butches, F2F, bi-femme & bi-curious
- [Invoice Magazine] - a business and lifestyle magazine for gays and lesbians
- Philippines Pride Images of Philippines gay pride taken at Manila's 2009 pride march
- Progress Philippines - a biologists view of gay rights in the Philippines, with causes of homosexuality and same-sex marriage rights discussed.