ブックスタート
ブックスタート(Bookstart)とは、赤ちゃんとその保護者に絵本や子育てに関する情報などが入ったブックスタート・パックを手渡し、絵本を介して心ふれあうひとときをもつきっかけをつくる活動である[1]。2022年(令和4年)1月時点で、日本全国の自治体の約6割がブックスタート事業を実施している[2][3][4]。
概要
[編集]発案者は絵本コンサルタントのウェンディ・クーリング(Wendy Cooling)で[5]、絵本にまったく触れることなく小学生になっている子供がいる現状を踏まえ、絵本を読んでもらった幸せなひとときをすべての子ども達に経験してもらいたいとして思いついたもので、単に読む(read books)のではなく、絵本を通じて体験を分かち合うこと(share books)をコンセプトとしている[6]。1992年にイギリスのバーミンガムにおいて300家庭を対象として実験的に取り組みが始まった[1]。イギリスにおける推進組織は1921年に設立された公益法人であるブックトラスト(BookTrust)である[7][8]。
日本のブックスタート事業
[編集]日本では1999年(平成11年)に子ども読書年推進会議(現・子どもの読書推進会議)が研究を開始し、2000年(平成12年)に東京都杉並区(11月)と北海道恵庭市(12月)が「パイロットスタディ」と称して先行開始、2001年(平成13年)より12地域で本格的に実施した[1]。
市区町村自治体の公共事業として行われており、以下の5つのポイントを活動の特徴としている[9]。
実施機会や対象月齢などは各自治体によって異なり、乳幼児健診のほか、乳児全戸訪問、育児教室、図書館を会場とする場合もある[9]。地域に生まれた赤ちゃんが集まる0歳児健診を主な会場に、図書館員、保健師、行政職員、住民ボランティアなどが活動に携わりブックスタート・パックを手渡している。
脚注
[編集]- ^ a b c 三輪 2006, p. 191.
- ^ NPOブックスタート 2022, p. 13.
- ^ “全国の実施状況”. NPOブックスタート. 2022年4月25日閲覧。
- ^ “ブックスタート20周年 親子に絵本を届け続けて ~赤ちゃんの育ち 地域ぐるみで支えたい~”. 全国町村会ウェブサイト (2020年8月13日). 2023年12月16日閲覧。 “イギリス生まれのブックスタートは、2000年の「子ども読書年」を機に日本に紹介され、2001年から自治体の事業として本格導入されました。現在では全国の1059自治体(普及率61%)※1に広がり、対象となった赤ちゃんは、2001年からの累計で730万人を超えています。※2”
- ^ “ウェンディ・クーリングさん逝去”. 教文館ナルニア国. 教文館 (2020年8月13日). 2023年12月16日閲覧。 “イギリスで1992年に始まったブックスタートの発案者であるウェンディ・クーリングさんが〔2020年〕6月21日に亡くなられました。日本には2016年に来日され、その時のご講演はNPOブックスタートが『すべての赤ちゃんに絵本を』という冊子にまとめています”
- ^ NPOブックスタート 2022, p. 12-13.
- ^ 堀川照代 (2003年6月20日). “CA1498 – 動向レビュー:英国の読書促進活動”. カレントアウェアネス・ポータル. 国立国会図書館. 2023年12月15日閲覧。 “わが国でもよく知られている「ブックスタート(Bookstart)」はブックトラストによって1992年に始められたもので,世界で初めての赤ちゃんのための本を扱った全国的プログラムである。英国のすべての赤ちゃんに本や資料の入ったブックスタートパックが渡される。”
- ^ NPOブックスタート 2022, p. 13-15.
- ^ a b NPOブックスタート 2022, p. 14.
- ^ NPOブックスタート 2022, p. 220.
- ^ “ブックスタートとは”. NPOブックスタート. 2022年4月25日閲覧。
参考文献
[編集]- 三輪巴『館長室から : 町立図書館長の日々』日本古書通信社、2006年11月、314頁。ISBN 4-88914-025-5。
- NPOブックスタート編『ブックスタートの20年 : 自治体と市民が赤ちゃんの幸せのためにつながり実現してきたこと』NPOブックスタート、2022年1月。ISBN 978-4-902077-13-1。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- NPOブックスタート
- 妊娠・子育て用語辞典『ブックスタート』 - コトバンク