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ブロントルニス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブロントルニス
生息年代: 新第三紀中新世前期 - 中期
17.5–11.6 Ma
復元図
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ノガンモドキ目 Gruiformes
: フォルスラコス科 Phorusrhacidae
亜科 : ブロントルニス亜科 Brontornithinae
: ブロントルニス属 Brontornis
学名
Brontornis
Moreno & Mercerat 1891
シノニム
  • Rostrornis Moreno & Mercerat 1891
  • B. burmeisteri

ブロントルニス学名:Brontornis)は、アルゼンチンパタゴニアに生息していた絶滅した巨大な肉食性の飛べない鳥の属[1][2][3][4][5][6]。現在有効とされている種はブロントルニス・ブルメイステリのみである。巨大な体躯と捕食動物としての生態から恐鳥類とも呼ばれるフォルスラコス科に分類され、その中でも巨大かつ重厚なものが含まれるブロントルニス亜科に属する。ブロントルニスの化石はアルゼンチンのサンタクルス層とモンテレオン層から発見されている[7]

生態

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足根中足骨

アルゼンチンサンタクルス州の複数の場所から化石が発見されており、多くは脚部の骨だが頭骨や背骨の一部も発見されている。

ブロントルニス・ブルメイステリはフォルスラコス科ではケレンケンに次いで2番目に背が高い種であり、背丈は2.8メートルに達する。また、フォルスラコス科の中で最も体重が重い種でもあり、体重は350 - 400キログラムと推定され、エピオルニス・マキシマスドロモルニス・スティルトニに次いで3番目に重い鳥類になる。当時においては最も巨大な捕食動物であった。この巨体ゆえ、待ち伏せ型の捕食者と積極的に獲物を追う捕食者の中間の生態であり、潜伏場所から獲物に襲い掛かって短時間追走し、純粋な力で攻撃して仕留めていたとされている。中新世のパタゴニアにおいて肉食性有袋類ティラコスミルスと同様の支配的な捕食者であったとされ、ゾウに似たアストラポテリウムといった大型動物をも攻撃して殺害できたとされている。フォルスラコスといったわずかに小型でより活発なフォルスラコス科鳥類と共存していたが、飛翔能力を持つ中では史上2番目に巨大な鳥類であるアルゲンタヴィスが出現する以前には絶滅していたとみられている。

分類

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本属および本種には複数のシノニムがいる。

  • Rostrornis floweri Moreno & Mercerat, 1891
  • Brontornis platyonyx Ameghino, 1895

ブロントルニス・プラティオニクスとして記載された化石は最大のブロントルニスの骨よりも三分の一ほど小さく、別種である可能性もあるが、それよりも性的二型を示している可能性が高い。現在のタカ目フクロウ目において雌は多くの場合雄よりも遥かに大型であり、これにより特定の大きさの獲物だけが過剰に狩られることを防いでいる。フォルスラコス科の雌雄のどちらが大型だったかは不明だが、北アメリカ大陸に生息していたフォルスラコス科のティタニスにも体格の大きな差異が確認されており、少なくとも体格の異なる性があったことが示唆されている[8]

ハドロサウルス類にブロントルニスが襲われている、大きく時代錯誤の復元図

ブロントルニスがフォルスラコス科に属することを疑う研究もある[9][10][11]。ブロントルニスはカモ目に属する可能性がある一方、慣例上ブロントルニス亜科(フィソルニスおよびパラフィソルニス)はフォルスラコス科に分類されるとみなされている。フィソルニス・フォルティスを模式属として後者2属を含む亜科をフィソルニス亜科に改名するという提案が出されており、この結論が有効と判断された場合、分岐の時代順にガストルニス科とブロントルニスおよびドロモルニス科という3つの巨大な基盤的カモ目のグループが存在したことになる。しかしながら、ブロントルニスの胸椎はフォルスラコス科の特徴を示しており、ブロントルニスはフォルスラコス科に属するという主張が、他の分析からなされている[12]

ブロントルニスをカモ目に配置する場合のクラドグラム[11]

 ノガンモドキ目 (ノガンモドキ科, フォルスラコス科)

 キジカモ類 

 キジ目 

 ガストルニス科

 カモ目 

 ブロントルニス科

 ドロモルニス科

 カササギガン科

 サケビドリ科

ブロントルニスをフォルスラコス科に置く場合のクラドグラム[13]

フォルスラコス科 
メセンブリオルニス亜科

Mesembriornis milneedwardsi

Mesembriornis incertus

プシロプテルス亜科

パタゴルニス・マルシ

フォルスラコス・ロンギシムス

ブロントルニス・ブルメイステリ

出典

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  1. ^ Alvarenga, Herculano M. F. & Höfling, Elizabeth (2003): Systematic revision of the Phorusrhacidae (Aves: Ralliformes). Papéis Avulsos de Zoologia 43(4): 55-91 PDF fulltext
  2. ^ Moreno, Francisco P. & Mercerat, A. (1891): Catálogo de los pájaros fósiles de la República Argentina conservados en el Museo de La Plata. Anales del Museo de La Plata 1: 7-71.
  3. ^ Darren Naish: Tetrapod Zoology: Terror birds”. 2019年2月9日閲覧。
  4. ^ Darren Naish: Tetrapod Zoology: More on phorusrhacids: the biggest, the fastest, the mostest out-of-placest”. 2019年2月9日閲覧。
  5. ^ Brontornis again”. dml.cmnh.org. 2019年2月9日閲覧。
  6. ^ Re: Brontornis”. dml.cmnh.org. 2019年2月9日閲覧。
  7. ^ Brontornis at Fossilworks.org
  8. ^ Alvarenga, H. M. F.; Höfling, E. (2003). “Systematic revision of the Phorusrhacidae (Aves: Ralliformes)”. Papéis Avulsos de Zoologia 43 (4): 55–91. doi:10.1590/S0031-10492003000400001. 
  9. ^ 2007: a good year for terror birds and mega-ducks”. 2019年2月9日閲覧。
  10. ^ Agnolin, F. 2007. Brontornis burmeisteri Moreno & Mercerat, un Anseriformes (Aves) gigante del Mioceno Medio de Patagonia, Argentina. Revista del Museo Argentino de Ciencias Naturales, n.s. 9, 15-25
  11. ^ a b Buffetaut, E. (2014). “Tertiary ground birds from Patagonia (Argentina) in the Tournouër collection of the Muséum National d’Histoire Naturelle, Paris”. Bulletin de la Société Géologique de France 185 (3). doi:10.2113/gssgfbull.185.3.207. http://bsgf.geoscienceworld.org/content/185/3/207. 
  12. ^ Alvarenga, H.; Chiappe, L.; Bertelle, S. (2011-05-03). “Phorusrhacids: the Terror Birds”. In Dyke, G.; Kaiser, G.. Living Dinosaurs: The Evolutionary History of Modern Birds. Wiley. pp. 187–208. ISBN 978-0-470-65666-2. OCLC 664324132. https://www.google.com/books?id=GdRnFn7I38kC&pg=PA187 
  13. ^ http://www.slideshare.net/herculanoalvarenga/phorusrhacids-the-terror-birds