プイジラ
プイジラ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
プイジラ・ダーウィニの骨格標本
| |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Puijila darwini Rybczynski et al., 2009 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
プイジラ[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Puijila |
プイジラ (Puijila darwini)[1]は、 2400万-2000万年前の中新世に生息していた半水棲の化石食肉目である。
分類
[編集]模式種(en)であるプイジラ・ダーウィニ (Puijila darwini) 1種が知られており、プイジーラとも表記される[2]。
学名はイヌイット語とラテン語から生み出された造語であり、「チャールズ・ダーウィン[注 1]の若い海獣」を意味している[3]。
2009年に本種を発表したナタリア・リプチンスキー(en)は、発表当時はプイジラがカワウソとの形態的・生態的な特徴の近似性が強い一方で、頭骨や歯の構造などの判断材料からも鰭脚類の化石種であり[4]、本種を鰭脚類のステムグループとして認識しながらも鰭脚類に含めて考慮し、陸棲だった鰭脚類の祖先が水中に適応していく段階に位置する存在(ミッシングリンク)や鰭脚類の歴史と北極圏の関連性などを示唆する存在として発表した[3][5]。
一方で、近年にもプイジラやポタモテリウムが鰭脚類の祖先に該当する可能性に触れる事例もあるが[6]、プイジラやポタモテリウムなどは初期の鰭脚類の特徴を残していたものの[7]、「Pan-Pinnipedia」や広義の「Pinnipeds」には属する[8]が狭義の「鰭脚類」ではなく、あくまでも鰭脚類のステムグループであり、現生種の直接の祖先とは見なさない場合が多い[9][10][11]。
特徴
[編集]プイジラは体型や大きさだけでなく水かきと鰭の有無も含めて概して現生のカワウソを思わせる外見的および生態的な特徴を持っていたと推測されている[3][5]。 推定体長は約110センチメートル[3]と現生のコツメカワウソなどに近い。
生態も現生の鰭脚類よりもカワウソとの類似性が指摘されており、アザラシやアシカなどと異なり、逞しい四肢によって陸上での活動も行っていたと思われる[3]。
ホロタイプ(en)が発見されたのもデヴォン島の内陸部であり、鰭脚類の進化史において初期の水中への適応種が現生種とは異なり主に淡水に分布していたことや、かつては現在よりも温暖であった北極圏の気候条件の変動が鰭脚類の進化に大きな役割を果たしたり、鰭脚類自体が北極圏に発祥する可能性がある[3][5][4]。
発見
[編集]プイジラは2009年にカナダ自然博物館の古生物学者のナタリア・リプチンスキー(en)が率いるチームによって発見された。カナダ・ヌナブト準州のデヴォン島から保存状態が良好で骨格の6割強が揃った化石が発見され[12]、この出土記録がプイジラのホロタイプおよび現在に至るまでに発見されている唯一の標本である。この発見は当地の隕石のクレーターを調べている最中の出来事であり[3]、プイジラはこの堆積物層から発見された最初の肉食性哺乳類だった[5][13]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 磯貝泰弘、今村比呂志、中江摂、墨智成、高橋健一、白井剛 (2021-08-23). アザラシの海洋適応に伴うタンパク質進化のしくみを解明. 富山県立大学、立命館大学、岡山大学、長浜バイオ大学 2024年11月25日閲覧。.
- ^ マーティン・ウォルターズ 著、日暮雅通・中川泉 訳「アザラシ、アシカ、セイウチ」スティーヴ・パーカー編『生物の進化大事典』養老孟司 総監修・犬塚則久 4-7章監修、三省堂、2020年、518-519頁。
- ^ a b c d e f g Handwerk, Brian (2009年4月22日). ““腕”を持つアザラシの祖先を発見”. ナショナル・ジオグラフィック. 2024年11月25日閲覧。
- ^ a b エド・ヨン (2009年4月22日). “Puijila, the walking seal – a beautiful transitional fossil”. Not Exactly Rocket Science. ディスカバー. 2012年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月25日閲覧。
- ^ a b c d “Fossil Evidence Of Missing Link In The Origin Of Seals, Sea Lions, Walruses Found In Canadian Arctic”. ScienceDaily(en) (2009年4月23日). 2024年11月25日閲覧。
- ^ Josh Davis (2024年5月24日). “Most comprehensive seal family tree reveals the hidden history of walruses”. ロンドン自然史博物館. 2024年12月2日閲覧。
- ^ Riley Black (2024年3月20日). “Why Did Seals and Sea Lions Never Commit to a Life Fully at Sea?”. スミソニアン. 2024年12月2日閲覧。
- ^ Travis Park、Gustavo Burin、Daniela Lazo-Cancino、Joseph P G Rees、James P Rule、Graham J Slater、Natalie Cooper (2024-07-01). “Charting the course of pinniped evolution: insights from molecular phylogeny and fossil record integration”. Evolution(en) (Oxford Academic(オックスフォード大学出版局)) 78: 1212–1226 2024年12月2日閲覧。.
- ^ Annalisa Berta、Morgan Churchill、Robert W. Boessenecker (2018-05). “The Origin and Evolutionary Biology of Pinnipeds: Seals, Sea Lions, and Walruses”. Annual Review of Earth and Planetary Sciences(en) (Annual Reviews(en)) 46: 203-228 2024年12月2日閲覧。.
- ^ Juan Miguel Esteban、Alberto Martín-Serra、Alejandro Pérez-Ramos、Natalia Rybczynski、Katrina Jones and Borja Figueirido (2024-04-10). “The influence of the land-to-sea macroevolutionary transition on vertebral column disparification in Pinnipedia”. Proceedings of the Royal Society B(en) (Royal Society Open Science(en)、王立協会) 291 2024年12月2日閲覧。.
- ^ Ryan S. Paterson、Natalia Rybczynski、Naoki Kohno、Hillary C. Maddin (2020-01-17). “A Total Evidence Phylogenetic Analysis of Pinniped Phylogeny and the Possibility of Parallel Evolution Within a Monophyletic Framework”. Frontiers in Ecology and Evolution (Frontiers Media) 7 2024年12月2日閲覧。.
- ^ “古代生物想像図鑑 写真特集”. 時事通信社 2024年11月25日閲覧。
- ^ Rybczynski, Natalia; Dawson, Mary R.; Tedford, Richard H. (2009). “A semi-aquatic Arctic mammalian carnivore from the Miocene epoch and origin of Pinnipedia” (英語). Nature 458 (7241): 1021–1024. Bibcode: 2009Natur.458.1021R. doi:10.1038/nature07985. ISSN 0028-0836. PMID 19396145.