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プロジェクト:カテゴリ関連/資料/件名語を用いたカテゴリ構造の事例集

カテゴリの構造

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カテゴリ同士の相互関係

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ここでは、あるカテゴリの名称に採用されたテーマを表す語(以下「件名語」と呼ぶ)に対して、

  • 上位語 (BT: Broader Term)
  • 下位語 (NT: Narrower Term)
  • 関連語 (RT: Related Term)

の3つの型をカテゴリの相互関係を説明する用語として使います。各種の件名標目表を典拠として参照して、上位語、下位語、関連語を的確に把握することにより、カテゴリ構造における中立的な観点の確保、独自研究の排除検証可能性の改善に寄与し、カテゴリ同士の関係性および個々のカテゴリの定義を明確にする狙いがあります。参考として、2021年1月版『国立国会図書館件名作業指針』では、上位語と下位語との階層関係の基準と、関連語との連想関係の基準を掲げています。これらについて、順に引用しながら説明します。

なお、この節でいう「範疇」とは、件名語の示す概念を分析して得られる属性(本質的な性質)を意味する。たとえば、「生物」「行為」「場所」「学問分野」などである。

階層関係の基準

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階層関係の種類について、次の3つを挙げています。

  1. 類種関係
  2. 部分と全体の関係
  3. 複合語件名と個々の概念

原則として、これら3つのいずれかの関係性が成立する場合に、階層関係とすることができる。

類種関係
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クラスメンバーの関係にあるもの。

例:「ゴリラ」と上位語「類人猿」

  • 類人猿 > ゴリラ
    (ゴリラは類人猿の一種である)

例:「ジェット機」と上位語「飛行機」

例:「鉄道政策」と上位語「交通政策」

  • 交通政策 > 鉄道政策
    (鉄道政策は交通政策の一種である)
部分と全体の関係
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全体「X」がほぼ必ず、その一部分として「Y」を含む場合。

生物の組織および器官

例:「末梢神経」と上位語「神経系」

  • 神経系 > 末梢神経
    (末梢神経は神経系の一種とは言いがたいが、神経系を構成する一部分である)
学問分野・研究領域

例:「音韻論」と上位語「言語学」

階層的社会構造・制度

例:「夫婦」と上位語「家族」

  • 家族 > 夫婦
    (夫婦は家族の一部分である)

例:「公的扶助」と上位語「社会保障」

  • 社会保障 > 公的扶助
    (公的扶助は社会保障制度を構成する一部分である)
その他

上記の例以外の部分全体関係についても、類種関係では階層関係が組めない場合のみ、階層関係とすることができる。この場合、後に類種関係での上位語に相当する件名語のカテゴリが新設されたときは、そちらに階層関係を組み替えて部分と全体の関係による階層関係は解除する。

例:「子ども部屋」と上位語「住宅建築」

  • 住宅建築 > 子ども部屋
    (「子ども部屋」の類種関係での上位語に相当するのは「部屋」であるが、「部屋」は未作成のため、部分と全体の関係にある「住宅建築」を上位語としている。後に件名語「部屋」のカテゴリが新設された場合は「部屋」を上位語として、「住宅建築」との階層関係は解除する)

例:「海水浴場」と「海岸」

  • ○関連語「海岸」
  • ×上位語「海岸」
海水浴場」と「海岸」とは部分と全体の関係であるが、類種関係での上位語「保養地」が存在するため、「海岸」を上位語とすることはできない)
複合語件名と個々の概念
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複合語件名(「○○と××」という形の件名語)と個々の概念(要素)

例:「宗教と科学」と上位語「宗教」「科学」

重合階層関係
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一つの件名語が、二つ以上の階層関係に属する場合。

例:「無線LAN」と上位語「無線通信」「LAN」

  • 無線通信 > 無線LAN
    (無線通信における類種関係)
  • LAN > 無線LAN
    (LANにおける類種関係)

例:「視神経」と上位語「脳神経」「眼」

  • 脳神経 > 視神経
    (脳神経における類種関係)
  • 眼 > 視神経
    (眼における部分全体関係)

複合語件名の場合、「○○と××」という複合語件名の形で直近上位の件名語があれば、それも上位語に採用する。

例:「共産主義と宗教」と上位語「共産主義」「宗教」「社会主義と宗教」

  • 共産主義 > 共産主義と宗教
  • 宗教 > 共産主義と宗教
  • 社会主義と宗教 > 共産主義と宗教
    (「共産主義」の上位語「社会主義」)

階層関係における注意事項

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1. 同一範疇であっても、既存の件名語カテゴリの中で直近以外のものは階層関係とはしない。

×:(ゴリラの直近上位は類人猿)

2. 同一範疇に属さない場合は階層関係とはみなさない。

例:「自動車産業」と「自動車」

○関連語「自動車産業」
×上位語「自動車産業」
×:(「自動車」は「輸送機械」の範疇、「自動車産業」は「産業」の範疇に属す)

a. 特に学問と専門用語の関係に注意する。

例:上位語「代数学」と「整数論」「整数」

○:
代数学 > 整数論
×:(「整数論」であれば上位語は「代数学」となるが、「整数」自体は学問そのものではないので、同一範疇ではない)

b. ある件名語に、実際には下位概念となるような複数の要素が含まれていて、その内の一要素とのみ上位語とみなせる件名語が存在する場合でも、それを上位語とはしない。

例:上位語「更生保護」と「恩赦」

×:
更生保護 > 恩赦
(件名語「恩赦」にはその下位概念として、法令恩赦と個別恩赦の二つの要素があるが、ともに個別の件名語は設けずに、「恩赦」を使用している。このうち個別恩赦については件名語「更生保護」の下位語にあたるが、「恩赦」と「更生保護」とを階層関係にはしない)

連想関係の原則

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階層関係には相当しないが、件名語間に強い関係性があるため、その関係性をページ本文中に明示することが適当である場合、同一範疇の件名語であるか異なる範疇の件名語であるかに関わらず、連想関係とすることができる。ただし、下記の基準および注意事項を参考として慎重に検討する。

連想関係の基準
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1. 同一範疇に属するもの

同一範疇に属するが、概念が階層関係にあるのではなく、概念の重複が著しいもの。階層関係に近い関係を持つが、上下関係と断じ切れないものもここに含める。

  • 例:「宣伝」と関連語「広告」(概念が著しく重複している)
  • 例:「祝祭日」と関連語「休日」(祝祭日の多くは休日だが、休日ではない例もあるため、祝祭日の上位語が休日であるとは断定できない)
2. 異なる範疇に属するもの
a. 学問分野とその対象
b. 人とその人の活動領域
c. 特定の対象を持つ行為、事象(制度、道具等)とその対象
d. 産業とその対象
e. 事象とその性質
  • 例:「犯罪」(犯罪の性質に違法性が挙げられる)と関連語「違法性
f. 行為、事象とその結果(強い因果関係を持つものに限る)
  • 例:「地震」と関連語「震災」(地震の結果、震災という災害が発生する)
  • 例:「工業」と×関連語「環境問題」(工業は環境問題の原因となりうるが、工業以外の原因も多数存在するため、関連語として明示はしない)
g. 行為、事象とその対抗概念
h. 階層関係に相当しない部分全体関係(上記「部分と全体の関係」を満たさないもの)

例:「海水浴場」

  • ○関連語「海岸」
  • ×上位語「海岸」
連想関係における注意事項
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連想関係の基準に適合しない例

上に挙げた例以外でも強い連想関係で結ばれる件名語は存在する。その場合、慎重に検討した上で、連想関係とする。ただし、安易な連想関係の構築は、シソーラス構造の統制を妨げるので慎重に検討する。

例:「耐震建築」と上位語「耐震構造」

  • 耐震構造 > 耐震建築

例:「署名」と関連語「立法

連想関係とはしない例

連想語からさらに連想を働かせてはいけない。また、主観的な連想による関連語は採用しないようにする。

  • 例:「議会」と×関連語「法律」(議会→立法→法律と連想を繰り返している)
  • 例:「芸術」と×関連語「爆発」(主観的な連想)

共通の上位語を持つ件名語同士でも、連想関係の基準を満たしていなければ、連想関係とはしない。

  • 例:「過失犯」と×関連語「危険犯」(ともに上位語「犯罪」を持つ)

階層・連想関係の具体的事例

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例:心臓

〇上位語(BT):循環器(臓器という同一範疇の中での直近上位)
×上位語(BT):内臓(臓器という同一範疇ではあるが、直近ではない)
×下位語(NT):心臓病(同一範疇ではない。臓器←心臓/疾病←心臓病)
〇関連語(RT):心臓病(同一範疇ではないが、関連性が強い)
×関連語(RT):医学(同一範疇ではなく、関連性も弱い)

例:動物学

〇上位語(BT):生物学(学問分野という同一範疇での直近上位)
×上位語(BT):動物(学問分野←動物学/生物・学問対象←動物)
〇関連語(RT):動物(動物は動物学の研究対象である)
×関連語(RT):植物学(ともに上位語は生物学だが、関連語の基準は満たしていない)