コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ベル多項式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

組合せ数学におけるベル多項式(ベルたこうしき、: Bell polynomials)とは、エリック・テンプル・ベルの名に因む、次の多項式で与えられる三角形配列のことである。

ただしこの和は、

を満たすすべての非負整数の列 j1, j2, j3, …, jnk+1 について取られている。

完全ベル多項式

[編集]

次の和

はしばしば n完全ベル多項式と呼ばれる。それらと比較するために、上で定義された多項式 Bn,k はしばしば「部分」ベル多項式と呼ばれる。

完全ベル多項式は次の等式を満たす。

組合せ論的な意味

[編集]

[編集]

例えば、次が得られる。

なぜならば

6 の集合を 5 + 1 に分割する方法は 6 通り
6 の集合を 4 + 2 に分割する方法は 15 通り
6 の集合を 3 + 3 に分割する方法は 10 通り

だからである。同様に

が得られる。なぜならば

6 の集合を 4 + 1 + 1 に分割する方法は 15 通り
6 の集合を 3 + 2 + 1 に分割する方法は 60 通り
6 の集合を 2 + 2 + 2 に分割する方法は 15 通り

だからである。

性質

[編集]

スターリング数

[編集]

ベル多項式 Bn,k(x1,x2, …) のすべての x が 1 に等しいときの値は、第二種スターリング数である。すなわち

である。

畳み込みの等式

[編集]

数列 xn, yn, n = 1, 2, …, に対し、ある種の畳み込みを次のように定める。

.

ここで直和の上下限は 0 と n ではなく、1 と n− 1 であることに注意されたい。

を次の列の第 n 番目の項とする。

このとき、次が成り立つ。

例えば、 を計算する。このとき

であるため、

となる。

ベル多項式の応用

[編集]

ファー・ディ・ブルーノの公式

[編集]

ベル多項式を用いることで、ファー・ディ・ブルーノの公式英語版は次のように書き表すことができる。

同様に、冪級数版のファー・ディ・ブルーノの公式も、ベル多項式を用いて次のように表すことができる。今

とすれば、

となる。特に、完全ベル多項式は、形式的冪級数の指数関数の中に、次のように現れる。

モーメントとキュムラント

[編集]

次の和

は、初めの n 個のキュムラントが κ1, …, κn であるような確率分布nモーメントである。言い換えると、n 次モーメントとは初めの n 個のキュムラントによって評価される n 次完全ベル多項式である。

二項型の多項式列による表現

[編集]

任意のスカラー列 a1, a2, a3, … に対し、次を定める。

このとき、この多項式列は二項型多項式列である。すなわち、二項等式

n ≥ 0 に対して成立する。実際、次の結果が得られる。

定理 すべての二項型の多項式列はこの形式で表現できる。

とすれば、冪級数を純粋に形式的に取ることで、すべての n に対し

が成り立つ。

ソフトウェア

[編集]
  • ベル多項式、完全ベル多項式および一般化ベル多項式は、Mathematicaにおいては BellY[1] で、Maple においては BellB[2] で、Sage においては bell_polynomial[3] で計算することができる。

脚注

[編集]

関連項目

[編集]

参考文献

[編集]
  • Eric Temple Bell (1927–1928). “Partition Polynomials”. Annals of Mathematics 29 (1/4): 38-46. doi:10.2307/1967979. JSTOR 1967979. MR1502817. 
  • Louis Comtet (1974). Advanced Combinatorics: The Art of Finite and Infinite Expansions. Dordrecht, Holland / Boston, U.S.: Reidel Publishing Company 
  • Steven Roman. The Umbral Calculus. Dover Publications 
  • Vassily G. Voinov, Mikhail S. Nikulin (1994). “On power series, Bell polynomials, Hardy-Ramanujan-Rademacher problem and its statistical applications”. Kybernetika 30 (3): 343-358. ISSN 00235954. 
  • en:George Andrews (mathematician) (1998). The Theory of Partitions. Cambridge Mathematical Library (1st pbk ed.). Cambridge University Press. pp. 204-211. ISBN 0-521-63766-X 
  • Silvia Noschese, Paolo E. Ricci (2003). “Differentiation of Multivariable Composite Functions and Bell Polynomials”. Journal of Computational Analysis and Applications 5 (3): 333-340. doi:10.1023/A:1023227705558. 
  • Abbas, Moncef; Bouroubi, Sadek (2005). “On new identities for Bell's polynomial”. Disc. Math (293): 5-10. doi:10.1016/j.disc.2004.08.023. MR2136048. 
  • Khristo N. Boyadzhiev (2009). “Exponential Polynomials, Stirling Numbers, and Evaluation of Some Gamma Integrals”. Abstract and Applied Analysis 2009: Article ID 168672. doi:10.1155/2009/168672.  (contains also elementary review of the concept Bell-polynomials)
  • V. V. Kruchinin (2011). "Derivation of Bell Polynomials of the Second Kind". arXiv:1104.5065
  • Griffiths, Martin (2012). “Families of sequences from a class of multinomial sums”. Journal of Integer Sequences 15. MR2872465. http://www.cs.uwaterloo.ca/journals/JIS/VOL15/Griffiths/griffiths20.html. 

Faà di Bruno の公式(ファー・ディ・ブルーノの公式)については、たとえば