ペトル=ダグラス=ノイマンの定理
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幾何学において, ペトル–ダグラス–ノイマンの定理(ペトル–ダグラス–ノイマンのていり、英語: Petr–Douglas–Neumann theorem,PDN-theorem)は、平面上の任意の多角形と正多角形に関する定理である[1]。1905年と1908年、プラハとドイツにおけるカール・ペトルの出版による発表が初出であり[2][3][4]、その後、それぞれ1940年と1941年にジェス・ダグラスとベルンハルト・ノイマンによって、独自に再発見された[4][5][6]。命名はStephen B Grayによる[4]。ペトル=ダグラス=ノイマンの定理は、ダグラスの定理(Douglas's theorem)、ダグラス–ノイマンの定理(Douglas–Neumann theorem)、ナポレオン–ダグラス–ノイマンの定理(Napoleon–Douglas–Neumann theorem)、ペトルの定理(Petr's theorem)、PDN定理(PDN-theorem)などとも呼ばれる[4][7]。
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理はナポレオンの定理、ヴァン・オーベルの定理の一般化となっている。
内容
[編集]ペトル=ダグラス=ノイマンの定理の主張は以下のとおりである[5][8][9]。
三角形の場合
[編集]n = 3とすることで、1 ≤ k ≤ n - 2を満たす整数は1のみである。つまり任意の三角形のそれぞれの辺上に頂角120°の二等辺三角形を作ったとき、それら頂点からなる三角形であるナポレオンの三角形と呼ばれる正三角形の中心が、元の三角形の重心と一致する。これはナポレオンの定理である。
四角形の場合
[編集]四角形の場合、n = 4なのでkは1,2である。したがって二等辺三角形の頂角は以下のようになる。
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理によれば四角形A2は正方形である。k = 1, 2の順序によって、二つの方法でA2を作成できる。ただし頂角πの二等辺三角形の頂点は底辺の中点とする。
A1をπ/2、A2をπとした場合の作図
[編集]A1を、頂角π /2かつ、四角形A0の辺を底辺とする二等辺三角形の頂点が成す四角形とする。A2はA1の辺の中点が成す四角形で、正方形となる。
A1の頂点はA0のそれぞれ辺を一辺とする正方形の中心である。また、A2はA1のヴァリニョンの平行四辺形であり、その同値条件からA1は対角線の長さが等しい且つ直交する四角形であることが分かる。すなわちこれは、ヴァン・オーベルの定理である。
A1をπ、A2をπ/2とした場合の作図
[編集]A1は四角形A0のヴァリニョンの平行四辺形である。ペトル=ダグラス=ノイマンの定理よりA2をA1のそれぞれの辺を底辺とする、頂角π /2の三角形の頂点が成す四角形は正方形である。すなわちこれは、テボーの問題Iである。
四角形におけるペトル=ダグラス=ノイマンの定理の画像
[編集]A0=ABCD,A1=EFGH,A2=PQRS。
A1, A2の頂角はそれぞれπ /2, π。 |
A0=ABCD,A1=EFGH,A2=PQRS。
A1, A2の頂角はそれぞれπ, π /2。 |
A0が自己交叉し、
A1, A2の頂角がそれぞれπ /2, πである場合。 |
A0が自己交叉し、
A1, A2の頂角がそれぞれπ, π /2である場合。 |
ヴァン・オーベルの定理とペトル=ダグラス=ノイマンの定理の図解 |
五角形の場合
[編集]五角形においては、n = 5よりk = 1, 2, 3で二等辺三角形の頂角は以下のようになる。
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理によれば、 A3は正五角形である。3つの角の順序によって下の表の様に6つの正五角形ができる。
数 | A1の頂角 | A2の頂角 | A3の頂角 |
---|---|---|---|
1 | 72° | 144° | 216° |
2 | 72° | 216° | 144° |
3 | 144° | 72° | 216° |
4 | 144° | 216° | 72° |
5 | 216° | 72° | 144° |
6 | 216° | 144° | 72° |
定理の証明
[編集]この定理の証明はn角形の頂点を複素数で表すことから始まる[4][7][10]。 複素n次元空間の列ベクトルでn角形Aを以下の様に表す。
多角形BをAのそれぞれの辺を底辺とする頂角θの二等辺三角形の頂点の成すn角形として、以下の様に置く。
ここでiを虚数単位、eをネイピア数として、α=eiθとおくと
が成り立つので
を得る。arをar+1に変換する行列、線型作用素をS :Cn → Cnとする(an+1=a1とする)。またIをn×nの単位行列としてBを以下のように表せる。
つまりj番目の過程で得られる多角形Aj+1がAjと以下の関係にあることを意味する。
ここでω=exp(2iπ/n)は1の原始n乗根で、σjは整数列(1,2,...,n-2)の j番目の項である。
下記のように、A0からすべての作用素を掛け合わせたものは、行列S- ωj I が巡回行列であるため、積は順列σの順序に依らない。
多角形P=(p1 ,p2 , ..., pn)が正多角形であることを示すには、Pの辺が隣の辺をπ(n - 2)/nで回転したものであること、つまり
を示さなければならない。
この条件は以下の様にまとめられる。
または、
An-2が正多角形であることは、次のような計算を施すことで示すことができる。
幾何中心cAが一致する事を示すには、すべての頂点の相加平均を求めればよい。Aをn個の成分をもつベクトルとして、幾何中心を複素内積によって表すことを考えると、E:=(1/n) (1, 1, ..., 1)として
である。式(1)の両辺にEをかけると、
を得る。したがってすべての幾何中心は一致する。
出典
[編集]- ^ Pavel Pech (2001). “The Harmonic Analysis of Polygons and Napoleon’s Theorem”. Journal for Geometry and Graphics Volume 5: 1,13–22 .
- ^ Petr, Karel (1905). “O jedné větě pro mnohoúhelníky rovinné” (チェコ語). Časopis pro pěstování matematiky a fysiky 034 (2): 166–172. doi:10.21136/CPMF.1905.120936. ISSN 1802-114X.
- ^ K. Petr (1908). “Ein Satz über Vielecke”. Arch. Math. Phys. 13: 29–31.
- ^ a b c d e Stephen B. Gray (2003). “Generalizing the Petr–Douglas–Neumann Theorem on n-gons”. American Mathematical Monthly 110 (3): 210–227. doi:10.2307/3647935. JSTOR 3647935 8 May 2012閲覧。.
- ^ a b Douglas, Jesse (1940). “On linear polygon transformations”. Bulletin of the American Mathematical Society 46 (6): 551–561. doi:10.1090/s0002-9904-1940-07259-3 7 May 2012閲覧。.
- ^ B H Neumann (1941). “Some remarks on polygons”. Journal of the London Mathematical Society s1-16 (4): 230–245. doi:10.1112/jlms/s1-16.4.230.
- ^ a b Chang, Geng-zhe; Davis, Philip J. (1983-10-01). “A circulant formulation of the Napoleon-Douglas-Neumann theorem”. Linear Algebra and its Applications 54: 87–95. doi:10.1016/0024-3795(83)90207-0. ISSN 0024-3795 .
- ^ van Lamoen, Floor. “Petr–Neumann–Douglas Theorem.”. From MathWorld—A Wolfram Web Resource. 8 May 2012閲覧。
- ^ Wong, Yung-Chow (1968). “Some Extensions of the Douglas-Neumann Theorem for Concentric Polygons”. The American Mathematical Monthly 75 (5): 470–482. doi:10.2307/2314700. ISSN 0002-9890 .
- ^ “The Petr–Neumann–Douglas theorem through linear algebra”. Omar Antolín Camarena. 2024年6月12日閲覧。
外部リンク
[編集]- Harnad (2024年5月27日). “The Petr-Douglas-Neumann theorem (PDN Theorem)”. YouTube. 2024年6月12日閲覧。
- Polster (2024年6月9日). “Petr's miracle: Why was it lost for 100 years? (Mathologer Masterclass)”. YouTube. 2024年6月9日閲覧。