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ペトル=ダグラス=ノイマンの定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

幾何学において, ペトル–ダグラス–ノイマンの定理(ペトル–ダグラス–ノイマンのていり、英語: Petr–Douglas–Neumann theorem,PDN-theorem)は、平面上の任意の多角形正多角形に関する定理である[1]。1905年と1908年、プラハドイツにおけるカール・ペトル英語版の出版による発表が初出であり[2][3][4]、その後、それぞれ1940年と1941年にジェス・ダグラスベルンハルト・ノイマンによって、独自に再発見された[4][5][6]。命名はStephen B Grayによる[4]。ペトル=ダグラス=ノイマンの定理は、ダグラスの定理(Douglas's theorem)、ダグラス–ノイマンの定理(Douglas–Neumann theorem)、ナポレオン–ダグラス–ノイマンの定理(Napoleon–Douglas–Neumann theorem)、ペトルの定理(Petr's theorem)、PDN定理(PDN-theorem)などとも呼ばれる[4][7]

ペトル=ダグラス=ノイマンの定理はナポレオンの定理ヴァン・オーベルの定理の一般化となっている。

内容

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ペトル=ダグラス=ノイマンの定理の主張は以下のとおりである[5][8][9]

頂角が2kπ/nで(k1 ≤ kn - 2を満たす整数)底辺をn角形A0のそれぞれの辺とする二等辺三角形を作る。これら二等辺三角形の頂点から成るn角形A1に対しても同様に頂角が2mπ/nである(m1 ≤ mn - 2,mkを満たす整数)二等辺三角形を作る。このような過程をn−2回くり返してn角形A0, A1, A2 ,..., An-2を作成する。 ただし、n−2回の間に、1 ≤ kn - 2を満たす、すべての整数kが(順序は無関係に)用いられるとする。このときA0, A1, A2 ,..., An-2幾何中心はすべて一致し、さらにAn-2正n角形となる。

三角形の場合

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ペトル=ダグラス=ノイマンの定理の、ナポレオンの定理の図解

n = 3とすることで、1 ≤ kn - 2を満たす整数は1のみである。つまり任意の三角形のそれぞれの辺上に頂角120°の二等辺三角形を作ったとき、それら頂点からなる三角形であるナポレオンの三角形と呼ばれる正三角形の中心が、元の三角形の重心と一致する。これはナポレオンの定理である。

四角形の場合

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四角形の場合、n = 4なのでkは1,2である。したがって二等辺三角形の頂角は以下のようになる。

ペトル=ダグラス=ノイマンの定理によれば四角形A2正方形である。k = 1, 2の順序によって、二つの方法でA2を作成できる。ただし頂角πの二等辺三角形の頂点は底辺の中点とする。

A1をπ/2、A2をπとした場合の作図

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A1を、頂角π /2かつ、四角形A0の辺を底辺とする二等辺三角形の頂点が成す四角形とする。A2A1の辺の中点が成す四角形で、正方形となる。

A1の頂点はA0のそれぞれ辺を一辺とする正方形の中心である。また、A2A1ヴァリニョンの平行四辺形であり、その同値条件からA1対角線の長さが等しい且つ直交する四角形であることが分かる。すなわちこれは、ヴァン・オーベルの定理である。

A1をπ、A2をπ/2とした場合の作図

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A1は四角形A0のヴァリニョンの平行四辺形である。ペトル=ダグラス=ノイマンの定理よりA2A1のそれぞれの辺を底辺とする、頂角π /2の三角形の頂点が成す四角形は正方形である。すなわちこれは、テボーの問題Iである。

四角形におけるペトル=ダグラス=ノイマンの定理の画像

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A0=ABCD,A1=EFGH,A2=PQRS

A1, A2の頂角はそれぞれπ /2, π

A0=ABCD,A1=EFGH,A2=PQRS

A1, A2の頂角はそれぞれπ, π /2

A0が自己交叉し、

A1, A2の頂角がそれぞれπ /2, πである場合。

A0が自己交叉し、

A1, A2の頂角がそれぞれπ, π /2である場合。

ヴァン・オーベルの定理とペトル=ダグラス=ノイマンの定理の図解

五角形の場合

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A0ABCDEとする。A1 (=FGHIJ)が72°、 A2 (= KLMNO)が144°、A3 (=PQRST)が216°の頂角から成る場合のペトル=ダグラス=ノイマンの定理

五角形においては、n = 5よりk = 1, 2, 3で二等辺三角形の頂角は以下のようになる。

ペトル=ダグラス=ノイマンの定理によれば、 A3正五角形である。3つの角の順序によって下の表の様に6つの正五角形ができる。

A1の頂角 A2の頂角 A3の頂角
1 72° 144° 216°
2 72° 216° 144°
3 144° 72° 216°
4 144° 216° 72°
5 216° 72° 144°
6 216° 144° 72°

定理の証明

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この定理の証明はn角形の頂点を複素数で表すことから始まる[4][7][10]複素n次元空間列ベクトルでn角形Aを以下の様に表す。

多角形BをAのそれぞれの辺を底辺とする頂角θの二等辺三角形の頂点の成すn角形として、以下の様に置く。

ここでi虚数単位、eをネイピア数として、α=eとおくと

が成り立つので

を得る。arar+1に変換する行列、線型作用素S :CnCnとする(an+1=a1とする)。またIn×n単位行列としてBを以下のように表せる。

つまりj番目の過程で得られる多角形Aj+1Ajと以下の関係にあることを意味する。

ここでω=exp(2iπ/n)1の原始n乗根で、σjは整数列(1,2,...,n-2)j番目の項である。

下記のように、A0からすべての作用素を掛け合わせたものは、行列S- ωj I巡回行列であるため、は順列σの順序に依らない。


多角形P=(p1 ,p2 , ..., pn)正多角形であることを示すには、Pの辺が隣の辺をπ(n - 2)/nで回転したものであること、つまり

を示さなければならない。

この条件は以下の様にまとめられる。

または、

An-2が正多角形であることは、次のような計算を施すことで示すことができる。

幾何中心cAが一致する事を示すには、すべての頂点の相加平均を求めればよい。Aをn個の成分をもつベクトルとして、幾何中心を複素内積によって表すことを考えると、E:=(1/n) (1, 1, ..., 1)として

である。式(1)の両辺にEをかけると、

を得る。したがってすべての幾何中心は一致する。

出典

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  1. ^ Pavel Pech (2001). “The Harmonic Analysis of Polygons and Napoleon’s Theorem”. Journal for Geometry and Graphics Volume 5: 1,13–22. https://www.heldermann-verlag.de/jgg/jgg01_05/jgg0502.pdf. 
  2. ^ Petr, Karel (1905). “O jedné větě pro mnohoúhelníky rovinné” (チェコ語). Časopis pro pěstování matematiky a fysiky 034 (2): 166–172. doi:10.21136/CPMF.1905.120936. ISSN 1802-114X. 
  3. ^ K. Petr (1908). “Ein Satz über Vielecke”. Arch. Math. Phys. 13: 29–31. 
  4. ^ a b c d e Stephen B. Gray (2003). “Generalizing the Petr–Douglas–Neumann Theorem on n-gons”. American Mathematical Monthly 110 (3): 210–227. doi:10.2307/3647935. JSTOR 3647935. http://www.experimentalmath.info/workshop2004/gray-article.pdf 8 May 2012閲覧。. 
  5. ^ a b Douglas, Jesse (1940). “On linear polygon transformations”. Bulletin of the American Mathematical Society 46 (6): 551–561. doi:10.1090/s0002-9904-1940-07259-3. https://www.ams.org/journals/bull/1940-46-06/S0002-9904-1940-07259-3/S0002-9904-1940-07259-3.pdf 7 May 2012閲覧。. 
  6. ^ B H Neumann (1941). “Some remarks on polygons”. Journal of the London Mathematical Society s1-16 (4): 230–245. doi:10.1112/jlms/s1-16.4.230. 
  7. ^ a b Chang, Geng-zhe; Davis, Philip J. (1983-10-01). “A circulant formulation of the Napoleon-Douglas-Neumann theorem”. Linear Algebra and its Applications 54: 87–95. doi:10.1016/0024-3795(83)90207-0. ISSN 0024-3795. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0024379583902070. 
  8. ^ van Lamoen, Floor. “Petr–Neumann–Douglas Theorem.”. From MathWorld—A Wolfram Web Resource. 8 May 2012閲覧。
  9. ^ Wong, Yung-Chow (1968). “Some Extensions of the Douglas-Neumann Theorem for Concentric Polygons”. The American Mathematical Monthly 75 (5): 470–482. doi:10.2307/2314700. ISSN 0002-9890. https://www.jstor.org/stable/2314700. 
  10. ^ The Petr–Neumann–Douglas theorem through linear algebra”. Omar Antolín Camarena. 2024年6月12日閲覧。

外部リンク

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