ヴァン・オーベルの定理
ヴァン・オーベルの定理(Van Aubel's theorem)とは四角形に関する幾何学の定理である。1878年の、ベルギーの数学者 Henricus Hubertus Van Aubel の発表にちなんで命名された[1]。
オーベルの定理ともいう。
定理
[編集]任意の四角形の各辺に外接する正方形で、対向する正方形の重心を結んだ2線分は、長さが等しく、直交する。
証明
[編集]四角形 ABCD に対して,頂点 A を原点 O とする。ベクトル AB を複素数 2a に、ベクトル BC を複素数 2b に、ベクトル CD を複素数 2c に、ベクトル DA を複素数 2d に対応させる。ここで複素数の係数2は計算上の便宜的なものである。また、正方形の中心については、ベクトル AP を複素数 p に、ベクトル AQ を複素数 q に、ベクトル AR を複素数 r に、ベクトル AS を複素数 s に対応させる。四角形 ABCD は閉じているから、ベクトルを計算すると
つまり、
となる。この条件で証明することになる。 点 P は点 A から点 B に向かって半分進み、90度方向を変えて半分だけ進むから、複素数 p は、
となる。ここに、i は虚数単位で、i² = -1 である。複素数は極形式 (r, θ) でも表現され、
であるから、a に i をかけるということは半径 r = 1、偏角 π/2 の複素数をかけるということであり、拡大縮小をともなわない回転移動ということになる。
同様にして、複素数 q,r,s は次のようになる。
点 Q から点 S に向かうベクトルを A 、点 P から点 R に向かうベクトルを B とすると,A は s - q ,B は r - p であるから、
となる。証明すべきは、線分 QS と線分 PR の長さが等しく、互いに直交していることであるから、複素数 A と B の関係が、
を満たすことである。または、この式の両辺に i をかけて整理すると、
となり、この式で証明してもよい。実際に計算すると、
となる。
なお、フィンスラー・ハドヴィッガーの定理を用いた証明もある。
性質
[編集]一般化
[編集]ダオ・タイン・オアイ(Dao Thanh Oai)は、ヤコビの定理のような形で、直交性を拡張した[3]。
- 任意の四角形ABCDについて、∠A'AB = ∠A'BA, ∠B'BC = ∠B'CB, ∠C'CD = ∠C'DC, ∠D'DA = ∠D'ADとなるように点A', B', C', D'を配置したとき、A'C' ⊥ B'D' が成立する。
Mathematical Gazetteでは、ひし形や平行四辺形への拡張も示されている[4][5]。
出典
[編集]- ^ Van Aubel, H. (1878), “Note concernant les centres de carrés construits sur les côtés d'un polygon quelconque” (French), Nouvelle Correspondance Mathématique 4: 40–44.
- ^ D. Pellegrinetti: "The Six-Point Circle for the Quadrangle". International Journal of Geometry, Vol. 8 (Oct., 2019), No. 2, pp. 5–13.
- ^ Dao Thanh Oai (2016). “Generalizations of some famous classical Euclidean geometry theorems”. IJCDM (3) .
- ^ M. de Villiers: "Dual Generalizations of Van Aubel's theorem" Archived 2021-01-25 at the Wayback Machine.. The Mathematical Gazette, Vol. 82 (Nov., 1998), pp. 405-412.
- ^ J. R. Silvester: "Extensions of a Theorem of Van Aubel". The Mathematical Gazette, Vol. 90 (Mar., 2006), pp. 2-12.
参考文献
[編集]関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Weisstein, Eric W. "van Aubel's Theorem". mathworld.wolfram.com (英語).