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アルゴル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ペルセウス座β星[1]
β Persei[1]
アルゴル(ペルセウス座β星)の位置
アルゴル(ペルセウス座β星)の位置
星座 ペルセウス座
見かけの等級 (mv) 2.12[1]
2.12 - 3.39(変光)[2]
変光星型 アルゴル型変光星[1](EA/SD)[2]
分類 3重連星
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  03h 08m 10.13245s[1]
赤緯 (Dec, δ) +40° 57′ 20.3280″[1]
赤方偏移 0.000013[1]
視線速度 (Rv) 4.0km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: 2.99 ミリ秒/年[1]
赤緯: -1.66 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 36.27 ± 1.40ミリ秒[1]
(誤差3.9%)
距離 90 ± 3 光年[注 1]
(28 ± 1 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -0.1[注 2]
β星の位置
物理的性質
スペクトル分類 B8V [1]
色指数 (B-V) -0.05[3]
色指数 (U-B) -0.37[3]
色指数 (R-I) -0.03[3]
他のカタログでの名称
Algol, Gorgona
Gorgonea Prima
Demon Star
El Ghoul
ペルセウス座26番星[1]
BD +40 673[1]
FK5 111[1], HD 19356[1]
HIP 14576[1], HR 936[1]
SAO 38592[1]
Template (ノート 解説) ■Project
アルゴル[4]
Algol[5][6]
仮符号・別名 ペルセウス座β星A[1],
bet Per A[1]
分類 B型主系列星[7][8]
位置
絶対等級 (MV) -0.07[9]
物理的性質
半径 2.73 ± 0.20 R[8]
質量 3.17 ± 0.21 M[8]
表面重力 4.0 (log g)[10]
自転速度 49 km/s[11]
スペクトル分類 B8V[7]
光度 182 L[9]
表面温度 13,000 K[10]
年齢 5.7億年[9]
Template (ノート 解説) ■Project
ペルセウス座β星B[1]
bet Per B [1]
見かけの等級 (mv) 4.60[12]
分類 橙色準巨星[7]
軌道の種類 Aの周回軌道
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 0.00215"[8]
離心率 (e) 0[8]
公転周期 (P) 2.867328 [8]
軌道傾斜角 (i) 98.70°[8]
昇交点黄経 (Ω) 43.43°[8]
位置
絶対等級 (MV) 2.9[9]
物理的性質
半径 3.48 ± 0.28 R[8]
質量 0.70 ± 0.08 M[8]
表面重力 3.5 (log g)[10]
スペクトル分類 K0-3IV[7]
光度 6.92 L[9]
表面温度 4,500 K[10]
Template (ノート 解説) ■Project
ペルセウス座β星C[1]
bet Per C [1]
分類 A型主系列星
軌道の種類 ABの周回軌道
軌道要素と性質
元期:2446927.22[8]
軌道長半径 (a) 0.09343"[8]
離心率 (e) 0.227[8]
公転周期 (P) 680.168 [8]
軌道傾斜角 (i) 83.66°[8]
近点引数 (ω) 310.02°[8]
昇交点黄経 (Ω) 132.66°[8]
位置
絶対等級 (MV) 2.3[9]
物理的性質
半径 1.73 ± 0.33 R[8]
質量 1.76 ± 0.15 M[8]
表面重力 4.5 (log g)[10]
スペクトル分類 A7m[7]
光度 10.0 L[9]
表面温度 7,500 K[10]
Template (ノート 解説) ■Project

アルゴル[13](Algol)は、ペルセウス座β星ペルセウス座恒星2等星

概要

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星座の中ではペルセウスの持つ怪物メドゥーサの首にあたる。

アルゴル型変光星食変光星)のプロトタイプで、2.867日の周期で、2.12 - 3.39等星の範囲を変光する[2]B型主系列星の主星Aの周囲をK型スペクトルの準巨星の伴星Bが2.867日の周期で周っており、このペアの外側約3auの軌道をAm星の伴星Cが1.86年の周期で周る、という階層型の三重連星である[14][10]。近年の研究では、今から約730万年前には太陽から9.8光年の位置にあり、地球からは-3等級以上の明るさで見えたと推測されている。

変光

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B星の軌道平面が地球からの方角と重なっており、B星がA星の前を通過するとA星からの光が遮蔽されることにより、地球から見た連星の合計の光度が一時的に低下し、最も光度の小さい状態になる。逆にA星がB星の前面を通過する時もわずかに減光する[14]

このアルゴルの食変光星のメカニズムは、イギリスのアマチュア天文家ジョン・グッドリックが19歳の時に発見し、王立協会に発表したものである[15]。後にこの発表は正しいと認められ、彼はコプリ・メダルを受賞するに至る[15]

2013年、ヘルシンキ大学物理学科の6名と同大ワールド・カルチャーズ学科の1名の研究者が、古代エジプト人が記録したカイロ暦を分析した結果「三千年前にはアルゴルの周期が2.850日だったことを示唆する証拠である」として、アストロフィジカルジャーナルに論文を発表している[16]

アルゴルABの動き - CHARA interferometerによる画像を合成して作成された動画[8]

名称

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学名はβ Persei(略称はβ Per)。固有名のアルゴル[4] (Algol[5][6]) は、アラビア語で「食屍鬼の頭」を意味する رأس الغول‎ (ra's al-ghūl[注 3]) が転訛したものである[5]。この名前は10世紀の終わり頃には西洋に伝わっており、アラビアから西洋に伝わった星名として最も古いものの一つである[5]。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (WGSN) は、Algol をペルセウス座β星Aの固有名として承認した[6]

脚注

[編集]

注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 読みは「ラスアルグル」[17]「ラァスル・グール」など。アラビア語のカナ表記に関して、母音を伴わない咽頭閉鎖音や前後の子音で音が著しく変化する定冠詞については確立されたルールがない。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Per. 2016年12月18日閲覧。
  2. ^ a b c GCVS”. Results for bet Per. 2015年10月12日閲覧。
  3. ^ a b c 輝星星表第5版
  4. ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、213-214頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  5. ^ a b c d Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Publishing. p. 49. ISBN 978-1-931559-44-7 
  6. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月17日閲覧。
  7. ^ a b c d e Lestrade, Jean-Francois; Phillips, Robert B.; Hodges, Mark W.; Preston, Robert A. (1993). “VLBI astrometric identification of the radio emitting region in Algol and determination of the orientation of the close binary”. The Astrophysical Journal 410: 808. doi:10.1086/172798. ISSN 0004-637X. 
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Baron, F.; Monnier, J. D.; Pedretti, E.; Zhao, M.; Schaefer, G.; Parks, R.; Che, X.; Thureau, N. et al. (2012). “IMAGING THE ALGOL TRIPLE SYSTEM IN THE H BAND WITH THE CHARA INTERFEROMETER”. The Astrophysical Journal 752 (1): 20. arXiv:1205.0754. doi:10.1088/0004-637X/752/1/20. ISSN 0004-637X. 
  9. ^ a b c d e f g Soderhjelm, S. (1980). “Geometry and dynamics of the Algol system”. Astronomy and Astrophysics 89: 100. Bibcode1980A&A....89..100S. 
  10. ^ a b c d e f g Zavala, R. T.; Hummel, C. A.; Boboltz, D. A.; Ojha, R.; Shaffer, D. B.; Tycner, C.; Richards, M. T.; Hutter, D. J. (2010). “THE ALGOL TRIPLE SYSTEM SPATIALLY RESOLVED AT OPTICAL WAVELENGTHS”. The Astrophysical Journal 715 (1): L44-L48. arXiv:1005.0626. doi:10.1088/2041-8205/715/1/L44. ISSN 2041-8205. 
  11. ^ Tomkin, J.; Huisong, T. (1985). “The rotation of the primary of Algol”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 97: 51. Bibcode1985PASP...97...51T. doi:10.1086/131493. 
  12. ^ The Washington Visual Double Star Catalog (Mason+ 2001-2014)”. VizieR. 2016年12月18日閲覧。
  13. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  14. ^ a b Kaler, Jim (2004年11月12日). “Algol”. STARS. 2016年12月17日閲覧。
  15. ^ a b Jens Dengler (2003年8月6日). “John Goodricke, The Discovery of the Occultating Variable Stars”. 2016年12月18日閲覧。
  16. ^ Jetsu, L.; Porceddu, S.; Lyytinen, J.; Kajatkari, P. et al. (2013). “Did the Ancient Egyptians Record the Period of the Eclipsing Binary Algol - The Raging One?”. The Astrophysical Journal 773 (1): A1 (14pp). arXiv:1204.6206. Bibcode2013ApJ...773....1J. doi:10.1088/0004-637X/773/1/1. 
  17. ^ いけだ笑み『ホラリー占星術』Setsuwa-sha Publishing、2009年、156頁。ISBN 9784916217738https://books.google.co.jp/books?id=mmnLUWXivmAC&pg=PAPA156 

関連項目

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外部リンク

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