ボディーチェック
ボディーチェック(Frisking、pat down) とは、人が他人の衣服の上から身体に沿って手を動かし、隠された物を発見するために行われる簡易身体検査のひとつ。
英語で「body check」と称した場合、医療分野における「身体検査」(健康診断)、またはアイスホッケーなどのスポーツにおける体を張った阻止といった意味で用いられ、衣服の上から触れて確認する所持品検査という意味では用いられない。なお、全裸にした状態で行われる検査は「strip-search」と表現される[1]。
英語の「Frisk」には、「跳ね回る、元気よく動かす」の意味がある[2]。一方で、シュガーレス清涼菓子の「FRISK」はノルウェー語を由来とし、「新鮮」という意味である[3]。
米国法
[編集]アメリカ合衆国では、法執行官は、犯罪に関与した合理的な疑いがあるが、逮捕するには十分な理由がない人物を短時間拘束することができる。このような拘束は「テリー・ストップ(Terry stop)」と呼ばれる[4]。
武器の捜索も許可される場合、その手続きは「ストップ&フリスク(stop and frisk)」と呼ばれる。
そのような「ストップ」行為を正当化するために、法執行官は、犯罪が「行われた」、または「行われている」、もしくは「行われようとしている」ことを合理的な人(reasonable person)に示すように「具体的かつ明確な事実」を指摘することができなければならない[5]。
法執行官は、その被疑者が執行官や他の人にとって危険な武器を所持していると合理的に疑われる場合、武器を探すために被疑者のボディーチェックを行うことができる。ただし、その捜索は武器を発見するために必要な程度のものに限定されなければならない[6]。ただし、「プレイン・フィール」法理に従って、警察はボディーチェック(身体検査)の過程で発見した禁制品を押収することはできるが、それは禁制品の正体がすぐにわかる場合に限られる[7]。
ニューヨーク市のプログラム
[編集]ニューヨーク市警察は、「テリー・ストップ」の使用について批判を浴びている。支持者は、それが犯罪を減らすと言うが、市民権擁護者は、それが人種的プロファイリングであると言っている。元市警察のJohn A. Eterno氏は以下のように語っている。「私の考えでは、テリー・ストップのやり方は“広く網を張って、発見したものを見る”ようなものになっている。特に、これから話すような数字を見ると、的を射た取締りとは思えません」と[8]、数字を示しながら「ブルックリン区ブラウンズビルの8つの奇数ブロックを調べたところ、2006年1月から2010年3月の間に、警察が約52,000件の“ストップ”を行ったことがわかりました」と続けた[9]。
ニューヨーク市の「ストップ、クエスチョン、フリスク」プログラムと、市における黒人の歓迎という大きな問題に関するその記事の後の総括では、コラムニストが「2009年に市では58万件の“ストップ&フリスク”が記録されました。ボディーチェックを受けた人の大半(55%)は黒人で(ヒスパニック系も多い)、ほとんどが若者で、ほぼ全員が男性であった。参考までに、国勢調査局によると、同年、同市に住む13歳から34歳までの黒人男性は約30万人しかいません。ボディーチェックを受けた者のうち逮捕に至ったのはわずか6%でした」と指摘している[10]。
脚注
[編集]- ^ 【要注意!英語?表現】「ボディチェック」はうまく伝わらない要注意和製英語?表現 | オンライン英会話
- ^ frisk - コトバンク
- ^ “よくあるご質問 「フリスク」の名前の由来を教えてください。”. Kracie. 2023年1月28日閲覧。
- ^
Writing for the Court in Berkemer v. McCarty, Justice Marshall stated
- the usual traffic stop is more analogous to a so-called "Terry stop," see Terry v. Ohio, 392 U.S. 1 (1968) (468 U.S. at 439)
- ^
In Terry v. Ohio, Chief Justice Warren stated
- And in justifying the particular intrusion the police officer must be able to point to specific and articulable facts which, taken together with rational inferences from those facts, reasonably warrant that intrusion. (392 U.S. at 21)
- ^
In Terry v. Ohio, Chief Justice Warren stated
- Thus it must be limited to that which is necessary for the discovery of weapons which might be used to harm the officer or others nearby, and may realistically be characterized as something less than a "full" search, even though it remains a serious intrusion. (392 U.S. at 26)
- The sole justification of the search in the present situation is the protection of the police officer and others nearby, and it must therefore be confined in scope to an intrusion reasonably designed to discover guns, knives, clubs, or other hidden instruments for the assault of the police officer. (392 U.S. at 29)
- ^
Writing for the Court in Minnesota v. Dickerson, Justice White stated
- If a police officer lawfully pats down a suspect's outer clothing and feels an object whose contour or mass makes its identity immediately apparent, there has been no invasion of the suspect's privacy beyond that already authorized by the officer's search for weapons; if the object is contraband, its warrantless seizure would be justified by the same practical considerations that inhere in the plain-view context. (508 U.S. at 375–376)
- Here, the officer's continued exploration of respondent's pocket after having concluded that it contained no weapon was unrelated to "[t]he sole justification of the search [under Terry:] . . . the protection of the police officer and others nearby." 392 U.S., at 29. It therefore amounted to the sort of evidentiary search that Terry expressly refused to authorize, see id., at 26, and that we have condemned in subsequent cases. (508 U.S. at 378)
- ^ Baker, Al (May 12, 2010). “New York Minorities More Likely to Be Frisked”. New York Times 16 March 2011閲覧。
- ^ Rivera, Ray, Al Baker and Janet Roberts, “A Few Blocks, 4 Years, 52,000 Police Stops”, The New York Times, July 11, 2010. According to an analysis of data provided by the Police Department and two organizations, the Center for Constitutional Rights and the New York Civil Liberties Union. Retrieved 2011-03-19.
- ^ Blow, Charles, M., “Escape From New York”, Op-ed, The New York Times, March 18, 2011 (March 19, 2011 p. A23 NY ed.). Retrieved 2011-03-19.
関連項目
[編集]- Don't touch my junk:2010年に米国で運輸保安局(TSA)の身体検査に対する批判として流行した言葉。
- 全身スキャナー
- プロアクティブ・ポリスティング:警察の存在を示すことで、犯罪行為を抑止すること。
- 捜索&押収
- 人物に対する捜索:財物の捜索と人物に対する捜索を区別した考え方のひとつ (UK)
- Stop and identify statutes:米国内のいくつかの州で制定されている法律で、警察が犯罪の疑いがあると合理的に判断した人に対して、合法的に名前を名乗るよう命令することを許可するもの