ポール・ヴェキアリ
ポール・ヴェキアリ Paul Vecchiali | |
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生年月日 | 1930年4月28日 |
没年月日 | 2023年1月18日(92歳没) |
出生地 | フランス・コルス地方公共団体コルス=デュ=シュド県 アジャクシオ |
国籍 | フランス |
ポール・ヴェキアリ(Paul Vecchiali、1930年4月28日 - 2023年1月18日)は、フランスのシネアスト(映画監督、脚本家)である。
来歴
[編集]1930年4月28日、コルス=デュ=シュド県、つまりコルシカ島南部の アジャクシオで生まれ、幼少期をヴァール県トゥーロンで過ごす。家族は、占領下での対ナチ協力(Collaboration)を疑われ、戦後この町を出た[1]。
1953年、パリの理工科学校を卒業し、1950年代は『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』と『カイエ・デュ・シネマ』誌の批評家として過ごした。
1961年、31歳のとき、ドニ・エプスタンと共同で脚本を書き、長編映画『Les Petits Drames』を発表する。無声映画だったが、憧れの女優ダニエル・ダリューを出演させることに成功した。数本の習作短編を経て、1965年、35歳のときに、『Les Ruses du diable(悪魔の詭計)』で商業映画デビューを果たした。
1970年代に「ユニテ・トロワ」社と「ディアゴナール」社の2つの製作会社を設立。とくに後者は、ヴェキアリの作品を安定的に供給することに貢献した。また1970年代後半からは、ジャン=クロード・ビエット、ジャン=クロード・ギゲ、マリー=クロード・トレユ、ノエル・シムソロ、クローディーヌ・ボリといった映画監督をつぎつぎとデビューさせた。彼らはだれもが、ヴェキアリ作品で共同脚本家や、助監督、製作主任などを数本経験し、だれもがかならずヴェキアリの作品に出演した。そして、彼らをも含めた「ヴェキアリ組」と呼ぶべき俳優たちが多数存在し、「ディアゴナール」社はさながらひとつの劇団か学校のようである。
フランスでは揺るがざる地位を築き、いまも果敢に新作に取り組んでいる巨匠ヴェキアリだが、日本では商業公開は現状『薔薇のようなローザ』(1985年)の1作のみ、『どうか温かいお気持ちを』(2004年)はわずかに紹介されたのみ。いまだ知られざる「カイエ派」の作家である。
2023年1月18日、死去[2]。92歳没。
人物
[編集]- ジャン・ユスターシュ監督の初期作品をプロデュースし、ジャック・ドゥミ監督と交友を結び、そのアイドルだったダニエル・ダリューを演出した。
- 女優フランソワーズ・ルブランは、たびたびヴェキアリ作品に出演したが、元恋人のその後についてのディプティク(二部作)『Trous de mémoire(記憶の穴)』(1984年)とその続編『À vot' bon cœur』(2004年)である。
- ヴェキアリ作品は1930年代のフランス映画にインスパイアされており、それは実験映画タッチ(ヴェキアリ自身は「研究 recherche」という表現を好む)と、自伝映画タッチをともなっている。
- ヴェキアリは、諸感情の、空間の、機動性のシネアストである。発明の、サプライズの、矛盾の。彼とともに「弁証法」の語はそのすべての意味をとり、つまりは美学と道徳である。彼はエイズのテーマに接近した。同性愛、バイセクシャル、ノン・セクシャルのテーマ - 死の痛み、宗教、情熱=受難。すべてがポール・ヴェキアリではテーマとなり、この30年間でもっとも発明的なフランスのシネアストのひとりである。同様に、そしてとりわけ、このシネアストの仕事のずばぬけた力に注目すべきであり、同様に、プロデューサーであり、文筆家であり、発見者であり、発明家である[3]。
フィルモグラフィー
[編集]- ※重複は避けた。
監督
[編集]- Les Roses de la vie 短編 1962年 監督・脚本 共同脚本ドニ・エプスタン[4]、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、助監督・出演ジャン・ユスターシュ、出演ジェルメーヌ・ド・フランス、ソニア・サヴィアンジュ 製作レ・フィルム・ロジェ・レーナルト
- Le Récit de Rebecca 短編 1964年 監督・脚本 撮影アンリ・アルカン、出演ジャン=ピエール・ボンフー
- Les Ruses du diable(悪魔の詭計) 1965年 監督・脚本 共同脚本ドニ・エプスタン、製作セシル・クレルヴァル、撮影ジョルジュ・ランディ、出演ジュヌヴィエーヴ・テニエ、ジャン=クロード・ドルオー、ジェルメーヌ・ド・フランス、ソニア・サヴィアンジュ
- Les Premières vacances 短編 1967年 監督・脚本
- L'Étrangleur(絞殺者) 1970年 監督・脚本 製作・主演ジャック・ペラン、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ニコル・クールセル、ソニア・サヴィアンジュ マリアンヌ・プロデュクシオン、レガーヌ・フィルム、ユニテ・トロワの共同製作
- Femmes femmes(女たち、女たち) 1974年 監督・脚本・製作 共同脚本・出演ノエル・シムソロ、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演エレーヌ・シュルジェール、ソニア・サヴィアンジュ、ミシェル・ドライユ、リザ・ブラコニエ、ジャン=クロード・ギゲ 製作ユニテ・トロワ
- Change pas de main (demain) 1975年 監督・脚本 共同脚本・出演ノエル・シムソロ、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演クローディーヌ・ベッカリー、ジャン=クリストフ・ブーヴェ、リザ・ブラコニエ、ミシェル・ドライユ、ハワード・ヴァーノン
- La Machine(機械) 1977年 監督・脚本・製作・出演 共同脚本・主演ジャン=クリストフ・ブーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、助監督ジェラール・フロ=クータス、出演ソニア・サヴィアンジュ、ミシェル・ドライユ、ジェラール・ブラン、ジャン=クロード・ビエット、ジャン=クロード・ギゲ、ノエル・シムソロ、ジャン=フランソワ・ステヴナン、マリー=クロード・トレユ 製作ディアゴナール
- Maladie(病気) 1978年 監督・脚本・編集・主演 撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン 製作ディアゴナール
- Corps à cœur 1978年 監督・脚本・編集 共同脚本マルティーヌ・マクロン 撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、助監督ジェラール・フロ=クータス、助監督・出演マリー=クロード・トレユ、出演エレーヌ・シュルジェール、ニコラ・シルベール、ベアトリス・ブリュノ、リザ・ブラコニエ、ソニア・サヴィアンジュ、ミシェル・ドライユ 製作ディアゴナール
- C'est la vie ! 1980年 監督・脚本 製作セシル・クレヴァル、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、製作主任ドニ・エプスタン、助監督ジェラール・フロ=クータス、マリー=クロード・トレユ、出演シャンタル・デルソー、エレーヌ・シュルジェール、ジャン=クリストフ・ブーヴェ、リザ・ブラコニエ、ミシェル・ドライユ、ベアトリス・ブリュノ、アングリッド・ブルゴワン 製作ディアゴナール
- L'Archipel des amours オムニバス Masculins singuliersの話 1983年 監督・脚本・編集 撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ジャン=クリストフ・ブーヴェ、ジャン=ルイ・ロラン 参加監督ジャン=クロード・ビエット、セシル・クレヴァル、ジャック・ダヴィラ、ミシェル・ドライユ、ジャック・フルネー、ジェラール・フロ=クータス、ジャン=クロード・ギゲ、マリー=クロード・トレユ 製作ディアゴナール
- En haut des marches 1983年 監督・脚本・編集・出演 共同脚本・製作主任セシル・クレヴァル、共同脚本・出演フランソワーズ・ルブラン、ジェラール・フロ=クータス、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ダニエル・ダリュー、エレーヌ・シュルジェール、ニコラ・シルベール、ソニア・サヴィアンジュ、ミシェル・ドライユ、ジャン=クロード・ギゲ、ベアトリス・ブリュノ、ジャン=クロード・ビエット、ジャン=クリストフ・ブーヴェ 製作ディアゴナール
- Coeur de hareng テレビシリーズSérie noire 1984年 監督・脚本 製作ピエール・グランブラ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演エレーヌ・シュルジェール、アヌーク・フェルジャック、ニコラ・シルベール、ミシェル・ドライユ、ヴィクトル・ラヌー アムステル・プロデュクション、RTL、ラジオテレヴィジオーネ・イタリアーナ、TF1、テレヴィジオン・スイス=ロマンド(TSR)
- Trous de mémoire(記憶の穴) 1984年 監督・脚本・出演
- 薔薇のようなローザ Rosa La Rose, fille publique 1985年 監督・脚本・編集 製作ピエール・ブロ、撮影レナート・ベルタ、ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、製作主任クローディーヌ・ボリ、出演マリアンヌ・バスレール、ジャン・ソレル、ピエール・コッソ、ピエール・ウードレイ、ジャン=ルイ・ロラン、ノエル・シムソロ、マリー=クロード・トレユ、レジーヌ・ベネデッティ ディアゴナール、ペリフェリ・プロデュクシオン、ステファン・フィルムの共同製作
- À titre posthume テレビ映画 1986年 監督 脚本クリスチャン・ゼルビブ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演マリアンヌ・バスレール、ミシェル・ドライユ、レジーヌ・ベネデッティ
- Avec sentiment 短編 1987年 監督・脚本 音楽ロラン・ヴァンサン、音楽・主演カトリーヌ・ベッケル、出演パタシュー 製作アルシバルト・フィルム
- Encore / Once more(もう一度) 1987年 監督・脚本・編集 撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ジャン=ルイ・ロラン、フロランス・ジョルジェッティ、パスカル・ロカール、ニコラ・シルベール、カトリーヌ・ベッケル
- Le Café des Jules(ル・カフェ・デ・ジュール) 1988年 監督・製作・編集 脚本・主演ジャック・ノロ、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ブリジット・ロユアン
- Les Jurés de l'ombre テレビシリーズ(7話、52分) 1989年 監督 脚本パトリック・ユタン、出演アドリエンヌ・ボネ、ジャン=クリストフ・ブーヴェ、ミシェル・ドライユ、ニコラ・シルベール
- Le Front dans les nuages テレビ映画 1989年 監督・脚本 原作アンリ・トロワイヤ、共同脚本ピエール・ユイッテルヘーヴェン、出演ダニエル・ダリュー、アニー・ジラルド、ブリュノ・ドヴォルデール、カトリーヌ・ベッケル
- Fugue en sol mineur 1993年 監督・脚本 撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、共同脚本・主演フランソワーズ・ルブラン、出演シャンタル・デルソー、ミシェル・ドライユ
- De sueur et de sang / Wonderboy(汗と血/ワンダーボーイ) 1993年 監督・脚本・編集 製作フィリップ・B・ゴールドファイン、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ファビエンヌ・バーブ、サム・ジョブ、ニコラ・シルベール、ベアトリス・ブリュノ
- Zone franche(免税地域) 1996年
- L'@mour est à réinventer(アイは再発明される)テレビシリーズ Les Larmes du sida(エイズの涙)の話 1996年 撮影フィリップ・ボティリョーヌ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演ソフィ・ベラングイエ、ジャン=ミシェル・モンロック
- どうか温かいお気持ちを À vot' bon cœur 2004年 監督・脚本・編集・出演 製作ジャック・ル・グルー、撮影フィリップ・ボティリョーヌ、音楽ロラン・ヴァンサン、出演カトリーヌ・ラシャン、レジーヌ・ベネデッティ、エレーヌ・シュルジェール、ベアトリス・ブリュノ、フランソワーズ・ルブラン、ニコラ・シルベール、ノエル・シムソロ、ジャン=クリストフ・ブーヴェ、ミシェル・ドライユ、マリー=クロード・トレユ、エリック・ロジエ、ファビエンヌ・バーブ、サム・ジョブ、シャンタル・デルソー、アングリッド・ブルゴワン 製作JLAオーディオヴィジュエル
- Et + si @ff 2004年 監督・脚本 出演アントワーヌ・ミシェル、フレデリック・ノルベール、イヴ・レジャッス
- Dis-moi 2004年 短編 監督・脚本・編集・出演 共同脚本・主演イヴ・レジャッス、撮影フィリップ・ボティリョーヌ、助監督エリック・ロジエ、出演メディ・アシェミ、ベアトリス・ブリュノ、フレデリック・ノルベール
- 儀式 La Ceremonie 2013年 短編 監督・脚本 ※ 広島国際映画祭2016 審査員特別賞受賞 [5]
脚本
[編集]- Nick Carter et le trèfle rouge(ニック・カーターと赤のクローバー) 1965年 監督・脚本ジャン=ポール・サヴィニャック、原作クロード・ランク、撮影クロード・ボーソレイユ、製作主任フィリップ・デュサール、助監督クロード・ミレール、出演エディ・コンスタンティーヌ、ジョー・ダッサン、グラッツィラ・ガルヴァーニ 仏伊合作 製作ショミアーヌ、フィルムステュディオ、パルク・フィルム
プロデューサー
[編集]- Le Théâtre des matières 1977年 製作総指揮 監督・脚本ジャン=クロード・ビエット(長編デビュー作)、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、出演ソニア・サヴィアンジュ、ハワード・ヴァーノン、ジャン=クリストフ・ブーヴェ、リザ・ブラコニエ、ミシェル・ドライユ、ブノワ・ジャコー、ジャン=クロード・ギゲ、ノエル・シムソロ、フレデリック・ノルベール 製作ディアゴナール
- Les Belles manières 1979年 プロデューサー・編集 監督・脚本ジャン=クロード・ギゲ(初監督・長編デビュー作)、共同脚本・助監督ジェラール・フロ=クータス、撮影ジョルジュ・ストゥルーヴェ、スクリプター見習マルティーヌ・マクロン、出演エレーヌ・シュルジェール、エマニュエル・ルモワーヌ、マルティーヌ・シモネ、ニコラ・シルベール、マリー=クロード・トレユ、シャンタル・デルソー、ハワード・ヴァーノン、ソニア・サヴィアンジュ、アングリッド・ブルゴワン 製作ディアゴナール
- Simone Barbès ou la vertu 1980年 プロデューサー・編集 監督・脚本マリー=クロード・トレユ(初監督・長編デビュー作)、共同脚本・出演ミシェル・ドライユ、共同プロデューサー:セシル・クレルヴァル、撮影ジャン=イヴ・エスコフィエ、助監督ジェラール・フロ=クータス、出演アングリッド・ブルゴワン、マルティーヌ・シモネ、ソニア・サヴィアンジュ、ノエル・シムソロ、ピエール・ブロ、パスカル・ボニゼール、レイモン・ルフェーヴル 製作ディアゴナール
- Cauchemar 1980年 プロデューサー 監督・脚本ノエル・シムソロ(長編デビュー作)、撮影ラモン・F・スアレス、音楽・出演リノ・レオナルディ、製作主任セシル・クレルヴァル、出演エレーヌ・シュルジェール、ベアトリス・ブリュノ、ピエール・クレマンティ、シャンタル・デルソー 製作ディアゴナール
- La Fille du magicien(マジシャンの娘) 1990年 プロデューサー・編集 監督・脚本クローディーヌ・ボリ(長編デビュー作)、共同プロデューサージャン=ベルナール・フトゥー、撮影ジャン・モンシニ、音楽ロラン・ヴァンサン、カトリーヌ・ベッケル、出演アヌーク・グランベール、パトリック・レーナル、ジャン=ポール・ルシヨン、エレーヌ・シュルジェール ディアゴナールがほか数社と共同製作
出演
[編集]- Désormais 短編 1965年 監督・脚本ドニ・エプスタン、撮影マルク・ローガ、ジョルジュ・ランディ、出演マルク・ミシェル、マルティーヌ・ルドン
- 幸福 Le Bonheur 1965年 監督・脚本アニエス・ヴァルダ、製作マグ・ボダール、撮影ジャン・ラビエ、クロード・ボーソレイユ、製作主任フィリップ・デュサール、ミシェル・クロケ、撮影助手クロード・ジディ、助監督ジャン=ポール・サヴィニャック 製作パルク・フィルム
備考
[編集]2005年、エマニュエル・ヴェルニエール監督が『対角線(ディアゴナール)のかかったポール・ヴェキアリ Paul Vecchiali en diagonales』と題されたドキュメンタリーを演出した。
脚注
[編集]- ^ 仏語版WikipediaPaul Vecchialiの項の記述より。
- ^ “Morreu o realizador francês Paul Vecchiali aos 92 anos” (ポルトガル語). www.dn.pt. 2023年1月21日閲覧。
- ^ #人物の項は、仏語版WikipediaPaul Vecchialiの項の記述による。
- ^ Internet Movie DatabaseのLes Roses de la vieに「Didier Epstein」とあるのは誤り。
- ^ “「この世界の片隅に」ヒロシマ平和映画賞を受賞、片渕須直が“戦禍なき世界”願う”. 映画ナタリー. (2016年11月14日) 2016年11月14日閲覧。
外部リンク
[編集]- ポール・ヴェキアリ - IMDb
- Paul Vecchiali - BiFi 仏語
- Dossier Paul Vecchiali Cadrage.net, 2005年6月
- Site sur le cinéaste 仏語