マクセル UD
マクセルUD(マクセルユーディー、ULTRA DYNAMIC)はかつて日立マクセル(コンシューマー事業部、現・電響社 マクセル事業本部)が製造・販売したコンパクトカセット(≒カセットテープ)、およびオープンリールテープ、日立製作所がLo-DブランドでそのOEMとして販売していたコンパクトカセットの各種商標である。
本項では主にコンパクトカセットとしてのUDとして記述するが便宜上、以下の製品についても記述する。
- UD-XL(1974年 - 1978年まで発売されたUDの上級版〈SLH〉となる音楽録音専用ノーマルポジション用コンパクトカセットテープ。1976年の商品改良に伴い商品名をUD-XL Iに改称し、更に1978年の商品改良に伴いXL Iとしてシリーズから独立)
- UD-XLⅡ(1976年 - 1978年まで発売された上記のUD-XL Iのハイポジション用版となる音楽録音専用ハイポジション用コンパクトカセットテープ。1978年の商品改良に伴いXLⅡとしてシリーズから独立)
- UDI(1983年 - 2002年まで発売されたUDの後継となる音楽録音専用ノーマルポジション用コンパクトカセットテープ。後に商品名をUD1に改称)
- UDI-S(1985年 - 1988まで発売された初代UDIの高精度カセットハーフ・高音質仕様。後のリニューアルで商品名をUDI-Nに改称)
- UDI-R(1985年 - 1987年まで発売されたオートリバース機(録音機・再生専用機)用に最適とされた音楽録音専用ノーマルポジション用コンパクトカセットテープ)
- UDⅡ(1984年 - 2002年まで発売された音楽録音専用ハイポジション用コンパクトカセットテープ。後に商品名をUD2に改称)
- UDⅡ-U(1985年 - 1988まで発売された初代UDⅡの高精度カセットハーフ・高音質仕様。後のリニューアルで商品名をUDⅡ-Nに改称)
- METAL UD(1990年 - 2000年まで発売された音楽録音専用メタルポジション用コンパクトカセットテープ)
- UD60FM(音楽之友社刊「stereo」2019年11月号の特別付録として添付された音楽録音専用ノーマルポジション用コンパクトカセットテープ)
概要
[編集]1970年(昭和45年)6月にULTRA DYNAMIC(UD)の名で発売され、同社を代表するカセットテープ、およびオープンリールテープの各種シリーズ「UD」における初代の製品である。音楽専用として発売されたこのテープはTDKのSD[1]やソニーのHF(第1期)[2]などとともにオーディオテープの高性能化の幕開けとなった。1972年(昭和47年)と1978年(昭和53年)、1981年(昭和56年)にそれぞれ改良が実施され、その際に磁性体の特性も変化している。1978年9月の全面改良においてはピュア・クリスタル(PX)ガンマ酸化鉄を採用。これにより旧製品と比べ広域の出力が上がった。本製品以降、UDは同社の音楽録音専用コンパクトカセットテープのスタンダード(基準)という位置付けで製品展開されていくことになる。しかし、1990年代後半からオーディオ用記録メディアの主流がMDやDAT、CD-R/RWなどといった各種デジタルオーディオ系記録メディアに移行し、コンパクトカセットテープやオープンリールテープの需要が低迷したことを理由に、同社の音楽録音専用低廉系コンパクトカセットテープ『CD's』シリーズ(CD's 1・CD's 2[3])と共に2002年(平成14年)末まで[4]に同社のUDシリーズは生産・出荷終了、これと同時にUDの商標もシリーズ通算32年の歴史に幕を下ろす事となった。
UDⅠ(UD1)
[編集]1983年(昭和58年)9月に初代が発売された。THE MODSのCMソング「激しい雨が」で知られるこの製品は音楽録音専用ノーマルポジション用カセットテープの最下級グレード(発売当初)であり、先代となる4代目UD(1981年 - 1983年)の後継でもある。ハーフは黒で銀色のメッキ調のハーフラベルが貼られている。1988年(昭和63年)5月にハーフの意匠が大幅に変更され、「オーパルフェイスウインドゥ」と呼ばれるテープ残量確認用の窓がある。その後も改良を続けるが2000年(平成12年)の一部改良を最後に2001年(平成13年)7月に製造・出荷終了。同年8月に発売されたMUSIC GEAR1(MG1)が事実上の代替製品となった。なお、磁気テープ本体については1990年(平成2年)5月以降の製品において、UD1(UD I)用に最適化されたニュー・ノンポア・エピタキシャル磁性体の採用を経て、ブラックマグネタイトI磁性体が採用された。
UD II(UD2)
[編集]1984年(昭和59年)2月に初代が発売された。発売開始当時のCMキャラクターにワム!を起用したことで知られる。この製品はハイポジション(クロムポジション)用カセットテープの最下級グレード(発売当初)であり、ハーフは黒で金色のメッキ調のハーフラベルが貼られている。上記のUD Iと同様に1988年5月にハーフの意匠が大幅に変更され、「オーパルフェイスウインドゥ」と呼ばれるテープ残量確認用の窓がある。その後も改良を続けるがこちらも2000年の一部改良を最後に2001年7月に製造・出荷終了。同年8月に発売されたMUSIC GEAR2(MG2)が事実上の代替製品となった。なお、磁気テープ本体については1990年5月以降の製品において、UD2(UD II)用に最適化されたニュー・クリア・エピタキシャル磁性体の採用を経て、ブラックマグネタイトII磁性体が採用された。
UD I-S/UD I-N
[編集]初代UDⅠの横展開製品であり、1985年(昭和60年)8月に発売された。ハーフは三角の窓のようなものが施されている。1986年(昭和61年)9月にUD I-Nに改称。磁気テープ本体の性能・音質自体は初代UD Iを若干上回っている。
UD I-R
[編集]初代UDⅠの横展開製品であり、1985年(昭和60年)8月に発売された。ハーフはオートリバース機での使用に特化された製品故、A面側とB面側のハーフの意匠が全く異なっていた。磁気テープ本体の性能・音質自体は初代UD Iと全く同じである。
UD II-U/UD II-N
[編集]初代UD IIの横展開製品であり、1985年8月に発売された。ハーフは先述のUD I-S同様、三角の窓のようなものが施されている。1986年9月にUD II-Nに改称。磁気テープ本体の性能・音質自体は初代UD IIを若干上回っている。
METAL UD
[編集]1989年(平成元年)3月から1990年6月まで発売されていた事実上の先代となるMETAL Capsule(メタル・カプセル)の後継として、1990年7月に発売された。磁性体には新開発のスピンテック・メタルアロイ磁性体が採用された。その後も改良を続けるが、1998年(平成10年)8月の一部改良を最後に2000年7月に生産・出荷終了を経て2003年(平成15年)末までに流通在庫が全て完売となった。
脚注
[編集]- ^ その後、1977年(昭和52年)3月の全面改良に伴い、ADに改称した。
- ^ ただし、発売開始当初の製品名(商標)は「HiFi」だった。
- ^ ただし、メタルポジション用のMetal CD'sは1998年7月までに生産・出荷終了となっている。
- ^ オープンリールテープでの場合。ただし、カセットテープは同年8月まで。
参考文献
[編集]- ONTOMO MOOK stereo編 カセットテープ完全アルバム 僕たちの青春を彩ったカセットテープのすべて
- 2023年(令和5年)12月1日発行 (音楽之友社) ISBN 978-4-276-96368-9
- FUTABASHA SUPER MOOK 〜マクセル・カセットテープ・マニアックス〜
関連項目
[編集]- マクセル
- マクセル UR/UL
- マクセル XL - UDの上位製品
- MUSIC GEAR - UD1/UD2の事実上の代替(≒後継)製品。録音用カセットテープのみならず、録音用MDメディアも存在していた
- TDK SD → TDK AD - UDの競合製品