マリアーナ・エンリケス
マリアーナ・エンリケス | |
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マリアーナ・エンリケス(2022年) | |
生誕 |
Mariana Enríquez 1973年12月8日(50歳) アルゼンチンブエノスアイレス |
国籍 | アルゼンチン |
出身校 | ラ・プラタ国立大学 |
職業 | アルゼンチンのジャーナリスト、小説家、教師 |
活動期間 | 1995年以降 |
雇用者 | アルゼンチン国立芸術基金(2020年-2022年) |
代表作 | 『わたしたちが火の中で失くしたもの』、Nuestra parte de noche |
配偶者 | Paul Harper[1] |
受賞 |
バルセロナ市賞(2017年) ヘラルデ賞(2019年) |
補足 | |
マリアーナ・エンリケス(Mariana Enríquez、1973年12月8日、ブエノスアイレス生まれ)は、 アルゼンチンの小説家、ジャーナリスト、教師であり、ヌエバ・ナラティーバ・アルヘンティーナ(新しいアルゼンチンの物語と呼ばれる作家グループの一人[2]。
作品はホラー小説に分類され[3]、Granta[4]、Electric Literature[5]、Asymptote、McSweeney's[6]、Virginia Quarterly Review および 「ザ・ニューヨーカー」などの国際的な雑誌に掲載された[7][8][9]。もっともよく知られた作品は『わたしたちが火の中で失くしたもの』(2016年)であり、本作で最もコンテンポラリーなアルゼンチンのホラー作家としての地位を確固たるものにし[10][11]、小説 Nuestra parte de noche(2019年)でヘラルデ小説賞を受賞した[12]。
略歴
[編集]生い立ち
[編集]マリアーナ・エンリケスは1973年にブエノスアイレスで生まれたが、育ったのは大ブエノスアイレス都市圏南部のパルティード・デ・ラヌースに属する町バレンティン・アルシナだった[13][14]。コリエンテス州出身の祖母の物語や迷信に囲まれて成長した[15]。15年後、家族とともにラ・プラタに移り、文学とパンク・ロックに出会い、ジャーナリズムを学び、ロック (音楽)を専門にすることを決意した[16]。ジャーナリズムと社会コミュニケーションを学んでラ・プラタ国立大学を卒業した[17][18]。
文学的な足取り
[編集]エンリケスはスティーヴン・キングやH.P.ラヴクラフトと言った作家によるアメリカのホラーの古典を読んで著作を始めた[19]。19歳の時に思春期の不安、アルコール、ドラッグ、ロックなど、当時の若者を悩ませていたさまざまな問題を描いた初めての長編小説、Bajar es lo peor(下りるのは最悪)を著した。姉妹や友人の手助けで、手書き原稿はエディトリアル・プラネタの編集者フアン・フォルンの手に渡り、フォルンはこの小説の出版を決断した[20]。好意的な書評は得られなかったにも拘わらず、同書はベストセラーとなり、時とともにカルト的な人気を誇り、若くキャリアも無いにないにもかかわらず、エンリケスにアルゼンチン文学界での地位を与えた[16]。2002年にレイラ・グリュンベルクが監督した小説をもとにした同名の映画が公開された[21]。
第1作の成功のあと、エンリケスはジャーナリストとしての仕事を始め、はじめはフリーランスで、その後、アルゼンチンの新聞「パヒナ/12」で働き、最終的に文化系付録 Radar の副編集長となった[16]。2004年にブエノスアイレスの下層階級地域に住み、父親から受けた性的虐待の記憶と、90年代の経済危機による社会崩壊の産物と向き合わざるを得ない少年マティアスを描いた第2長編小説 Cómo desaparecer completamente(完全に消える方法)を出版した[22][23]。
2005年、アンソロジー La Joven guardia(若い警備員)にエンリケスの、儀式を行う民間療法士少女と家族を描いた «El aljibe»(水槽)が収録された[16]。翌年、エンリケスの作品 «Ni cumpleaños ni bautismos»(誕生日も洗礼もない)がアンソロジー Una terraza propia: Nuevas narradoras argentinas(自分だけのテラス: 新しいアルゼンチン人の語り部)に収録された[24]。両方の短篇は、ホラージャンルを探求するほかの何作かとともに、2009年に出版されたエンリケスの最初の短編集『寝煙草の危険』に収録された[16]。この短編集には «El desentierro de la angelita»(小さな天使の発掘)や «Chicos que vuelven»(帰ってきた少年たち)などの、生者の世界における死の持続や、未解決のトラウマが交差する物語が書かれている[25]。2016年に第2短編集『わたしたちが火の中で失くしたもの』が出版されてベストセラーとなり、12か国語以上に翻訳された[16]。本書は2018年のバルセロナ市賞をスペイン語部門で受賞した[26][27][28]。
エンリケスは2019年に、同年に出版した Nuestra parte de noche(私たちの夜の部分)でエディトリアル・アナグラマによるエラルド小説賞を受賞した[12][29]。本作のタイトルは詩人エミリー・ディキンソンのいくつかの詩から取られており[19]、永遠の命を求める秘密結社に霊媒師として招聘された父と息子の物語であるが、これはアルゼンチン最後の裁政権の時代を文脈として説明している[30]。この小説の中で、エンリケスは異教の聖人、H.P.ラヴクラフトの世界への言及、エミリー・ブロンテおよびエルネスト・サバト、吸血鬼、男性同士のセックス、ボードレールの暗い美しさ、ランボーの傷ついた美しさ、幻想文学とホラー文学、アンダーグラウンド、悪魔人間その他の文学的テーマなどの、これまでの作品全体を通して追求してきたすべての関心事を取り入れている[19]。さらに、エンリケス自身も自分がアルゼンチンの散文作家ロベルト・アルルト、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、シルビナ・オカンポおよびマヌエル・プイグ (エンリケスはそのゲイの美学を強調している)、アメリカのスティーヴン・キング、ウィリアム・フォークナーおよびトニ・モリソン、イギリスのT・S・エリオット、M・ジョン・ハリスン、ブルース・チャトウィン、アラン・ムーアおよびニール・ゲイマン(最後の二人はコミックジャンルで豊富な経験を持つ)、ウルグアイのフアン・カルロス・オネッティ、アイルランドのジェイムズ・ジョイスおよびチリのロベルト・ボラーニョからの文学的影響を認めている[31]。
2020年に、2019年コロナウイルス感染症流行による外出制限・封鎖の最中に、エンリケスはキルヒナー文化センターの公式ウェブサイトに Diarios de la cuarentena(隔離日記)形式で一連のエントリーを書いた[32][33]。同年から2022年8月までの1年間、エンリケスは全アルゼンチン芸術基金のレター部長を務めた[34]。
ビブリオグラフィー
[編集]長編小説
[編集]- 1995年:Bajar es lo peor(下りるのは最悪)
- 2004年:Cómo desaparecer completamente(完全に消える方法)
- 2017年:Este es el mar(ここは海)
- 2019年:Nuestra parte de noche(私たちの夜の部分)
短編集
[編集]- 2009年:Los peligros de fumar en la cama
- 2010年:Chicos que vuelven(帰ってきた少年たち)
- 2013年:Cuando hablábamos con los muertos(死者と話したとき)
- 2016年:Las cosas que perdimos en el fuego
- 『わたしたちが火の中で失くしたもの』 安藤哲行訳、河出書房新社、2018年
- 2019年:Ese verano a oscuras(あの夏、闇の中)
その他
[編集]- 2003年:Mitología celta(ケルト神話)
- 2007年:Mitología egipcia(エジプト神話)
- 2013年:Alguien camina sobre tu tumba. Mis viajes a cementerios(誰かがあなたの墓の上を歩きます、私の墓への旅行)
- 2014年:La hermana menor. Un retrato de Silvina Ocampo(妹。シルビナ・オカンポの肖像)
- 2020年:El otro lado. Retratos, fetichismos, confesiones(向こう側、ポートレート、フェティシズム、告白)[35]
- 2021年:El año de la rata(鼠の年)[36]
受賞
[編集]- 2017年:バルセロナ市賞スペイン語部門、『わたしたちが火の中で失くしたもの』に対して
- 2019年:ヘラルデ小説賞、Nuestra parte de la noche に対して[37]
- 2019年:ケルビン505賞スペイン語オリジナル長編小説部門[38]
- 2019年:セルシウス賞スペイン語によるサイエンス・フィクション、ホラー、ファンタジー長編部門、Nuestra parte de la noche に対して[39]
- 2019年:Premio de la Crítica en Narrativa、Nuestra parte de nocheに対して[40]
2022年:Grand Prix de l'Imaginarie for "Best Foreign Novel" for Our Night Part. 42
- 2022年:Grand Prix de l'Imaginarie海外長編小説部門、Nuestra parte de nocheに対して[41]
脚注
[編集]- ^ “"La experiencia de la literatura es necesariamente solitaria"”. 2022年3月2日閲覧。
- ^ “Algunos nuevos escritores argentinos que usted no conoce (y debería conocer)”. 2022年8月8日閲覧。
- ^ “Fragmento de "Los años intoxicados", de Mariana Enríquez”. 1 de noviembre de 2019閲覧。
- ^ Mariana Enríquez 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ The Dark Themes of Mariana Enriquez – Electric Literature 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ Interviews with the Authors of McSweeney’s 46: The Latin American Crime Issue: Mariana Enríquez 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ Mariana Enríquez on the Fascination of Ghost Stories 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ “Spiderweb” 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ Mariana Enrïquez llegó también al New Yorker 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ “Mariana Enríquez no disfruta su nominación al Premio Booker Internacional”. 2021年4月21日閲覧。
- ^ “Princesa del terror: Mariana Enríquez milita en un género para nada menor - LA NACION”. 2021年1月24日閲覧。
- ^ a b “Mariana Enríquez gana el Herralde con una novela “monstruo””. 4 de noviembre de 2019閲覧。
- ^ “Mariana Enríquez. Biografía”. 30 de abril de 2021閲覧。
- ^ “Mariana Enriquez, orgullo de Valentín Alsina, ganó el premio Herralde: el mundo privado de una enorme escritora”. 30 de abril de 2021閲覧。
- ^ “Mariana Enríquez visita Galicia: «La realidad se parece al terror»”. 2022年8月8日閲覧。
- ^ a b c d e f ““No quiero que me saquen las pesadillas””. 1 de noviembre de 2019閲覧。
- ^ “Una charla con Mariana Enríquez - Columna de Andrea Lárraga”. 1 de noviembre de 2019閲覧。
- ^ “Enriquez, Mariana”. 2023年6月21日閲覧。
- ^ a b c Mariana Enriquez, la reina del realismo gótico 22 de abril de 2020閲覧。.
- ^ “"Muchacha Punk, por Juan Forn”. 2023年6月21日閲覧。
- ^ “Bajar es lo peor – cinenacional.com”. 2022年8月8日閲覧。
- ^ ““En ese momento no tenía ganas de escribir nada delicado””. 2020年12月4日閲覧。
- ^ Emecé. Cómo desaparecer completamente 30 de septiembre de 2020閲覧。.
- ^ “The Exorcisms of Mariana Enriquez”. 2020年12月5日閲覧。
- ^ Drucaroff, Elsa (2011). Los prisioneros de la torre. Política, relatos y jóvenes en la postdictadura. Buenos Aires: Emecé.
- ^ Mariana Enríquez gana el premio Ciutat de Barcelona con su último libro de cuentos 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ “La escritora argentina Mariana Enríquez ganó el premio Ciutat de Barcelona con su último libro de cuentos”. 10 de agosto de 2018閲覧。
- ^ Premio para Mariana Enríquez 10 de agosto de 2018閲覧。.
- ^ “Mariana Enríquez, primera mujer argentina en ganar el Premio Herralde: "Es mi novela más personal y eso involucra lo político"”. 16 de abril de 2020閲覧。
- ^ “Quién es Mariana Enriquez, la mayor exponente de la literatura de terror en la Argentina”. 2023年6月21日閲覧。
- ^ “El Método Rebord #43 - Mariana Enríquez”. 19 de octubre de 2022閲覧。
- ^ El diario de Mariana: la princesa del terror reflexiona sobre la pandemia 25 de julio de 2020閲覧。.
- ^ “Mariana Enriquez: El miedo en todas partes”. 25 de julio de 2020閲覧。
- ^ “Cambios en el Fondo Nacional de las Artes: Mariana Enriquez deja la dirección del área de Letras y la reemplaza Florencia Abbate”. 2022年8月8日閲覧。
- ^ “EL OTRO LADO”. 2020年11月8日閲覧。
- ^ “El año de la rata: una reflexión cruda sobre la realidad”. 2023年6月21日閲覧。
- ^ Mariana Enríquez, primera mujer argentina en ganar el Premio Herralde年:“Es mi novela más personal y eso involucra lo político” 25 de julio de 2020閲覧。.
- ^ “Kelvin 505 2020年:Ganadores de los premios”. 2021年1月15日閲覧。
- ^ Mariana Enriquez ganó el Premio Celsius 25 de julio de 2020閲覧。.
- ^ “Mariana Enríquez y González Iglesias, Premios de la Crítica”. 2020年9月28日閲覧。
- ^ “"Nuestra parte de noche", de Mariana Enriquez, ganó otro premio: el Grand Prix de l'Imaginaire”. 2023年6月21日閲覧。
外部リンク
[編集]- Entrevista a Mariana Enríquez 雑誌「バルセロナレビュー」の記事
- Entrevista a Mariana Enríquez 付録「Radar Libros」(新聞「Página/12」の文化付録)で、Bajar es lo peor の再発行と Alguien camina sobre tu tumba の出版について