マーリン・ルアンダ号へのミサイル攻撃
マーリン・ルアンダ号 | |
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基本情報 | |
船籍 | マーシャル諸島 |
所有者 |
Ocean Yi Shipping (2018–2022) Polar 18 Ltd (2022 -) |
運用者 |
Navig8 Asia (2018–2022) Oceonix、Suntech Maritime (2022 -) |
建造所 | 中国 ニュータイムズ造船所 |
信号符字 | V7KT9 |
IMO番号 | 9829899 |
MMSI番号 | 538007848 |
改名 |
Navig8 Pride LHJ (2018–2022) Marlin Luanda (2022–2024) Boccadasse (2024 -) |
経歴 | |
進水 | 2018 |
要目 | |
総トン数 | 63,338 GT |
載貨重量 | 109,991 DWT |
長さ | 249.9 m (819 ft 11 in) |
幅 | 44 m (144 ft 4 in) |
喫水 | 14.95 m (49 ft 1 in) |
マーリン・ルアンダ号へのミサイル攻撃(マーリン・ルアンダごうへのミサイルこうげき)とは、紅海危機中の2024年1月26日、石油タンカー「マーリン・ルアンダ号」がフーシ派が発射した対艦ミサイルの攻撃に直撃した事件である。
マーリン・ルアンダ号の詳細
[編集]マーリン・ルアンダ号は中華人民共和国台州市のニュータイムズ造船所で起工され、2018年に進水した石油タンカーである。船籍はマーシャル諸島。香港の企業Ocean Yi Shippingが所有し、Navig8 Asiaが運用していた。竣工当時の名称は「Navig8 Pride LHJ」。2022年2月、同船はPolar 18 Ltdに売却され、マーリン・ルアンダ号に改名された。同船は英国を拠点とするOceonix Servicesによって運用され、シンガポールの企業であるSuntech Maritimeが管理を行っていた[1][2][3][4]。
因みに、事故発生後の2024年4月、所有者、管理者、船籍はそのまま、「Boccadasse」に改名されている[1]。
ミサイル攻撃
[編集]2023年11月にフーシ派による商船への攻撃が開始されたにもかかわらず、2024年1月までに、カタール・ペトロリアムを除くほとんどの石油タンカーが紅海を航行していた[5][6]。 エジプトからシンガポールへ向けて航行していたマーリン・ルアンダ号は[7]、紅海危機への対策として、安く購入したロシア産ナフサを積んでいたが[8]、フーシ派反体制派が発射した対艦ミサイルの攻撃を受けた。攻撃直撃時、同船はアデンから南東約110キロメートル(59海里、68マイル)にいた[9]。
攻撃に当たったことで右舷の貨物タンクから火災が発生し、乗組員は消火装置を使い消火にあたった[10][11]。事故発生直後の報道では、乗組員は船から逃げたとされていたが、後にそれは誤りであることが確認された[12]。
その後、USSカーニーはマーリン・ルアンダ号に向かって舵を切った。しかしそれを妨害するようにフーシ派はUSSカーニーに攻撃を行った。米政府関係者(匿名)によれば、紅海危機が始まって以来、フーシ派が米海軍の艦船を直接標的にしたのはこれが初めてだという[13][疑問点 ]。
1月27日、Trafiguraは声明を発表し、乗組員は無傷で、米海軍艦船の助けを借りて消火活動を続けている報告[14]。同日、Trafiguraはインド、アメリカ、フランス船舶の支援で火災は消し止められ、船は安全な港に向かっていると発表した[5][15]。消火活動にはUSSカーニー、フランスのフリゲート艦アルザス、インドの駆逐艦ヴィシャーカパトナムが支援した。インド海軍の水兵10人が消火用の装備を携えて乗船し、22人のインド人と1人のバングラデシュ人から成るマーリン・ルアンダ号の乗組員とともに6時間にわたって消火活動を行った[16]。
フーシ派は、マーリン・ルアンダ号は英国が軍事用に使用している船であると主張し、「米英によるわが国への侵略に対抗するために攻撃を行った」としている[4][15]。
その後
[編集]Trafiguraは、本攻撃後に石油タンカーであるフリー・スピリット号がアデン湾岸を避けるように航海したことを挙げ、紅海を通過することが危険な状態になってしまったとした[5][6]。2024年1月30日には、フーシ派はOceonix Servicesが運用する2隻目の船で、CMA CGMにチャーターされたコンテナ船「Koi」への攻撃を行ったが、失敗に終わった[17]。
2024年7月、国際海事機関(IMO)は、マーリン・ルアンダ号の乗組員と船長アヴィラシュ・ラワットが本事象で行った消火活動を、「火災と闘うために消火活動や、損失を少なくするように考え、発揮された並外れた勇気、決断力、持久力」として、「IMO 2024年の海上における勇気 特別賞」として表彰した[18]。
脚注
[編集]- ^ a b "Boccadasse (9829899)". Equasis. French Ministry for Transport. 2024年5月25日閲覧。
- ^ “Marlin Luanda”. Shipatlas/Maritime Optima. 27 January 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。27 January 2024閲覧。
- ^ “Our fleet”. suntech-maritime.com. 27 January 2024閲覧。
- ^ a b Gregory, James (27 January 2024). “Houthis attack British-linked tanker Marlin Luanda in Gulf of Aden”. BBC News. オリジナルの27 January 2024時点におけるアーカイブ。 27 January 2024閲覧。
- ^ a b c “Trafigura assesses Red Sea risks after tanker attacked by Houthis” 27 January 2024閲覧。
- ^ a b “Yemen's Houthi rebels escalate Red Sea attacks, hit Trafigura fuel tanker” 27 January 2024閲覧。
- ^ Gupta, Gaya (26 January 2024). “Houthi militants claim a hit on an oil tanker off Yemeni coast that set it on fire.”. The New York Times 27 January 2024閲覧。
- ^ “Oil tanker Marlin Luanda catches fire in Red Sea after missile attack by Yemen's Houthi fighters” (英語). Sky News 27 January 2024閲覧。
- ^ “Yemen's Houthi rebels escalate Red Sea attacks, hit Trafigura fuel tanker” (英語). SaltWire 27 January 2024閲覧。
- ^ “Oil tanker on fire after Houthi missile attack, firm says”. (26 January 2024) 27 January 2024閲覧。
- ^ Ambrose, Tom (27 January 2024). “UK 'reserves right to respond' after oil tanker set alight off Yemen”. The Guardian 27 January 2024閲覧。
- ^ “'We Are On Fire': Distress Message of UK Oil Tanker's Captain After Houthi Attack; Indian Navy Is Nearby” (英語). News18. (27 January 2024) 27 January 2024閲覧。
- ^ Gambrell, Jon; Corp, Tara (27 January 2024). “Houthi rebels fire at US warship, set oil tanker alight as Red Sea attacks escalate” (英語). WAtoday 27 January 2024閲覧。
- ^ “Statement re Marlin Luanda”. trafigura.com. Trafigura. 27 January 2024閲覧。
- ^ a b Sigsworth, Tim (27 January 2024). “British-linked tanker on fire after Houthi missile attack”. The Daily Telegraph 28 January 2024閲覧。
- ^ Blenkey, Nick (27 January 2024). “Fire on Marlin Luanda extinguished after 6 hour battle” 28 January 2024閲覧。
- ^ “Houthis fire missiles at another ship managed by Oceonix Services”. Marine Log (New York). (1 February 2024). オリジナルの25 May 2024時点におけるアーカイブ。 25 May 2024閲覧。
- ^ “Bravery Awards for tanker and tugboat crews”. London: International Maritime Organization (10 July 2024). 10 July 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。12 July 2024閲覧。