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ミクリガヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミクリガヤ
ミクリガヤ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: カヤツリグサ科 Cyperaceae
: ミカヅキグサ属 Rhynchospora
: ミクリガヤ R. malasica
学名
Rhynchospora malasica C. B. Clarke, 1893

ミクリガヤ Rhynchospora malasica は、カヤツリグサ科植物の1つ。尖った小穂がくす玉状に集まった穂を花茎に複数並べてつける。熱帯域の植物で、日本では南岸地域にあるがごく珍しい。

特徴

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多年生草本で、根茎から多数の茎を直立させる[1]地下茎は長く横に伸び、地上の茎はそれぞれ単独に生じる[2]は直立し、高さ40-100cmに達する。茎は硬くて滑らかでざらつかず、断面は3稜形となっている。は茎の中程から多数が出ており、広線形で長さ40cm、葉幅は5-10mmで縁はざらつかず滑らか[3]。葉身は長くてその長さは茎を高く越え、また葉の基部は長い鞘となっている[4]

花期は8-10月で、茎の中程から上の葉()の基部に3-5個の分花序をつける。分花序は小穂が多数、頭状に集まったもので、その径は約1.5cm。また分花序には柄がなく[5]、茎に直接についているように見える。小穂は広披針形で長さ7mm、7枚ほどの鱗片が螺旋状に配列したものである。それぞれの鱗片は披針形で先端は尖っている。果実は広倒卵形で断面は凸レンズ状をしており、長さは2~2.5mm、暗褐色で光沢がない。柱頭の基部は扁平な円錐状で長さは約0.3mm。針状になった花被片は6あり、長いものは痩果の長さの2倍を超え、またその表面は滑らかとなっている。柱頭は2つに裂ける。

和名は小穂の集まった様子がガマ科ミクリに似ていることによる[4]

分布と生育環境

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日本での分布は本州静岡県以西、九州南西諸島沖縄島石垣島)で、国外では朝鮮半島台湾マレー半島インドネシアに渡る[5]が、国内においては下記のようにその分布は著しく限定されている。なお、三重県御池沼沢植物群落は昭和27年に国の天然記念物に指定されたが、この時の指定理由の1つに本種の分布北限であることがあげられている[6]

日当たりのよい湿地に生える[7]低地丘陵地の湿地に生えるもので、水苔の生えるような中間湿原であると言い、また背の高い他種の草が生えていない場所でなければ生育できないという[8]

分類、近縁種など

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本種の属するミカヅキグサ属には世界に350種があり、日本には11種が知られる[9]が、多くは小穂が散房状に付き、枝先に集まる場合もせいぜい数個に限られる。本種のように小穂が頭状に集まるものにはイガクサ R. rubra とシマイガクサ R. boninensis があるが、これらでは花序は分枝のない枝先に単独につく。そのような点で本種と紛らわしいものは他にはない。

保護の状況

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環境省レッドデータブックでは絶滅危惧IB類に指定されており、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県山口県佐賀県宮崎県沖縄県で絶滅危惧I類に、鹿児島県で絶滅危惧II類に指定されており[10]、ほぼ分布域全域で絶滅が危惧されている状況にある。大分県では準絶滅危惧、鹿児島県で絶滅危惧II類と、ある程度の生育はあるようであるが、他方で福岡県では絶滅したものと見られている。環境省が公開している絶滅危惧種の公開種メッシュ一覧[11]においても全国で10メッシュしか報告がない。2014年の環境省のレッドデータブックでは2007年の調査で3メッシュで絶滅、4メッシュで合わせて数百個体があるのみとされており、平均減少率約51%、100年後の絶滅確率は約99%とされている[12]

希少植物の撮影をした永田(2003)は本種を撮影するために宮崎県の生育地を訪ねたが人の背丈を超す草が一面に茂っていて本種は発見できなかったといい、また愛知県では撮影できたものの、そこでも少数の株が何とか生き残っている、と言う状況であったと記しており、本種の性質について富栄養化に弱く、丈の高い草が茂ると消滅しやすく、見かけに反して脆弱な植物である、と述べている[8]

出典

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  1. ^ 以下、主として星野他(2011),p.542
  2. ^ 大橋他編(2015)p.353
  3. ^ 大橋他編(2015)p.353-354
  4. ^ a b 牧野原著(2017),p.323
  5. ^ a b 大橋他編(2015)p.354
  6. ^ 羽田(1989),p.20
  7. ^ 星野他(2011)p.542
  8. ^ a b 永田(2003),p.461
  9. ^ 大橋他編(2015)p.353-355
  10. ^ 日本のレッドデータ検索システム[1]2022/04/21閲覧
  11. ^ [2]2022/04/21閲覧
  12. ^ 環境省編(2015)p.339

参考文献

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  • 大橋広好他編、『改定新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』、(2015)、平凡社
  • 牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
  • 星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』、(2011)、平凡社
  • 永田芳男、『ヤマケイ情報箱 レッドデータプランツ』、(2003)、山と渓谷社
  • 羽田光雄、「国指定天然記念物御池沼沢植物群落」:四日市市総務部市史編さん室編、(1989)、『四日市市史研究』、第2号:p.18-32.
  • 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、『レッドデータブック2014 ―日本の絶滅のおそれのある野生生物― 8 植物I』、(2015)、株式会社ぎょうせい