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ミヤマミミナグサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミヤマミミナグサ
長野県八ヶ岳 2022年7月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ナデシコ科 Caryophyllaceae
: ミミナグサ属 Cerastium
: ミヤマミミナグサ C. schizopetalum
学名
Cerastium schizopetalum Maxim. (1888) var. schizopetalumSilene[1]
和名
ミヤマミミナグサ(深山耳菜草)[2][3]

ミヤマミミナグサ(深山耳菜草、学名:Cerastium schizopetalum)は、ナデシコ科ミミナグサ属多年草[2][3][4][5]高山植物[2]

特徴

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は株状になり直立して、高さ10-20cmになる。茎は繊細で、節間に2列の長毛と腺毛が生える。は4-6対が対生し、葉身は広線形から線状披針形で、長さ8-20mm、幅1.5-3mmになり、先端は鋭頭、基部に葉柄は無い。葉はやや硬質で、表面の中脈がへこみ、葉に多少毛が生えざらつき、葉縁の基部に長毛が生える[2][3][4][5]

花期は7-8月。は白色で径2cm近くになり、まばらな集散花序となり、花数は少ない。花柄は長さ7-20mmになり、腺毛が密生する。片は5個で長楕円形になり、長さは3-5mm、先端が鈍形になり草質で外面に腺毛が生える。花弁は5個、倒卵形になり長さ9-12mmで、先端は中2裂し裂片はさらに2-3浅裂する。雄蕊は10個あり、無毛。子房は楕円体で、上部に花柱が5個ある。果実蒴果で、長さ7-11mmになる。種子は長さ約0.6mmの広卵形で、楕円体状の低い突起がある。染色体数は未算定[2][3][4][5]

分布と生育環境

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日本固有種[6]。本州の日光浅間山北アルプス八ヶ岳南アルプスに分布し、亜高山帯から高山帯の岩礫地、砂礫地などに生育する[2][4]

名前の由来

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和名ミヤマミミナグサは、「深山耳菜草」の意[2][3]で、矢田部良吉 (1892) が、Miyama-miminagusa,「みやまみゝなぐさ」とした[7]

種小名(種形容語)schizopetalum は、「分裂した花弁の」の意味[8]。学名:Cerastium schizopetalum は、ロシアの植物学者カール・ヨハン・マキシモヴィッチ (1888) による命名で、タイプ標本甲斐駒ヶ岳で採集されたものである[1][2]

種の保全状況評価

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国(環境省)、都道府県のレッドデータブック、レッドリストの選定はない。

分類

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日本に分布するミミナグサ属 Cerastium L. のうち、高山に生育するものに、本種のほか、ホソバミミナグサ(細葉耳菜草、Cerastium rubescens Mattf. var. koreanum (Nakai) E.Miki (1980)[9]、別名、タカネミミナグサ(高嶺耳菜草))がある[2][4]。本種は、茎に2列の長毛と腺毛が生え、葉はやや硬質で、葉縁の基部に長毛が生え、花弁が多裂するのに対し、ホソバミミナグサは、茎に1列の短毛が生え、葉は軟質で、葉縁に毛が多く、花弁が2裂する[2][4]

ギャラリー

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クモマミミナグサ

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下位分類にクモマミミナグサ(雲間耳菜草、学名:Cerastium schizopetalum Maxim. var. bifidum Takeda ex M.Mizush. (1965)[10]シノニムCerastium schizopetalum Maxim. var. rupicola (Ohwi) S.Akiyama (2006)[11]、別名、クモイミミナグサ)がある。本変種は、ミヤマミミナグサ C. schizopetalum を基本種とする変種である。花期は7-8月。基本種と異なり、花弁が全長の3分の1くらいまで単純に2裂する[2][3][4][10]

本州の北アルプスの北部の白馬岳から槍ヶ岳穂高岳に分布する[4]。国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストでの選定はなく、都道府県のレッドデータブック、レッドリストの選定は、長野県が絶滅危惧IB類(EN)となっている[12]

出典

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  1. ^ a b ミヤマミミナグサ「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f g h i j k 『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』pp.142-143
  3. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.870
  4. ^ a b c d e f g h 門田裕一 (2017)「ナデシコ科」『改訂新版 日本の野生植物4』pp.110-111
  5. ^ a b c 『原色日本植物図鑑 草本編II(改訂版)』pp.269-270
  6. ^ 岩科司 (2011)「ナデシコ科」『日本の固有植物』p.48
  7. ^ 矢田部良吉「日本植物新名」『植物学雑誌』第6巻第61号、日本植物学会、1892年、129-135 (p.132)、doi:10.15281/jplantres1887.6.129 
  8. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1507, 1512
  9. ^ ホソバミミナグサ「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  10. ^ a b [1]「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  11. ^ クモマミミナグサ(シノニム)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  12. ^ クモマミミナグサ、日本のレッドデータ検索システム、2023年9月9日閲覧

参考文献

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  • 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑 草本編II(改訂版)』、1984年、保育社
  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 清水建美編・解説、門田裕一改訂版監修、木原浩写真『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』、2014年、山と溪谷社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • 矢田部良吉「日本植物新名」『植物学雑誌』第6巻第61号、日本植物学会、1892年、129-135 (p.132)、doi:10.15281/jplantres1887.6.129