コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ユーアー・リビング・オール・オーバー・ミー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『ユーアー・リビング・オール・オーバー・ミー』
ダイナソーJr.スタジオ・アルバム
リリース
録音 Pine Tracks, Fun City[1]
ジャンル オルタナティヴ・ロック
インディー・ロック
ノイズロック
グランジ
時間
レーベル SST (103)
プロデュース ウォートン・ティアーズ英語版
専門評論家によるレビュー
ダイナソーJr. アルバム 年表
ダイナソー
(1985年)
ユーアー・リビング・オール・オーバー・ミー
(1987年)
バグ
(1988年)
テンプレートを表示

ユーアー・リビング・オール・オーバー・ミー』(You're Living All Over Me)は、アメリカのオルタナティヴ・ロックバンド、ダイナソーJr.1987年12月14日SSTレコードからリリースした通算2枚目のアルバムである。

概要

[編集]

本作では、デビュー作である前作『ダイナソー』の様式をさらに洗練させており、引き込まれるようなボーカルに加え、グランジを先取りしたようなラウドなギターとドライブ感のあるリズムを特徴としている。本作はリリースと同時に高く評価され、現在ではオルタナティヴ・ロックで最も偉大で影響力のあるアルバムとされている。

背景

[編集]

ダイナソーJr. は彼らの最初のアルバム『ダイナソー』を1985年にリリースしたが、評論家達にはほとんど注目されず、初年度はわずか1500枚ほどの売り上げにとどまっていた[2]

1stアルバムの発売後、バンドは何度かニューヨークでライブを行った。ニューヨークのオルタナティヴ・ロックバンド、ソニック・ユースのメンバーがダイナソーJr.の演奏を初めて見た時には、特に感銘を受けることはなかった。しかし、その数ヶ月後に再び彼らの演奏を見ると、ダイナソーJr.のファンであると公言してバンドに接触し[3]、1986年9月にアメリカ北東部と北中西部でのツアーにバンドを招待した。

本作のタイトルは、ギター/ボーカルのJ・マスシスが長期のツアーによる窮屈な状態に苛立って発した言葉である、と長い間噂されていた。しかし、マスシスはこの噂を否定し、「俺は妹のように思ってたんだ...ああ、つまり、当時俺を悩ませてた人のことさ。」とインタビューに答えた[4]

音楽スタイル

[編集]

『ユーアー・リビング・オール・オーバー・ミー』は、主に インディーロックオルタナティヴ・ロックノイズロック、またはグランジ のアルバムと表現され、これらのジャンルへの影響をよく指摘されている[5]。本作は、最初のアルバム『ダイナソー』から2年の時を経て、サウンドが洗練された一方で、とりわけローファイであることには変わりは無い。

再びマスシスが主要なソングライターとなった一方で、ルー・バーロウもアルバムの最後の2曲として、パンクに影響を受けた「ルーズ」と実験的な「ポレド」を作曲した。「ポレド」はアルバムのその他の曲とは異なり、前半部はバーロウが自身のバンド、セバドーでやっているような、ローファイなウクレレの弾き語りで、後半部はサウンド・コラージュと抽象的なノイズの集合体である[6]

リリースと反響

[編集]

本作は、まだバンドがダイナソーの名前だった頃に発売された(その後、訴訟によりダイナソーJr.に改名)。アルバムは発売の数ヶ月後にSSTによって回収され、バンド名を新たにダイナソーJr.と印刷されたものを発行した。バンドは「リトル・フューリー・シングス」のミュージックビデオを、ジム・スプリングとイェンス・ヤーゲンセンの監督のもと制作した[7]

NME誌は、1987年のアルバムリリースと同時に、「今年アメリカから生まれた最も衝撃的なロック音楽」であり、バンドを「ハスカー・ドゥR.E.M.とをつなぐミッシングリンク」と評したジャック・バロン氏の絶賛レビューを掲載した[8]。批評家のロバート・クリストガウ氏は、ヴィレッジ・ヴォイス誌にて「B+」の評価をつけ、「不満を募らせる連中が望むのは、人生にちょっとした構造と意味を持たせることだ。それがそんなに難しいことなのか?」と記した[9]

評価と影響

[編集]

本作はインディーオルタナティヴ・ロックの古典とされている。1995年には、オルタナティヴ・プレス誌の「'85年から'95年のトップ99アルバム」では5位にランクインした[10]。2005年には、スピン誌の「1985年から2005年のグレイテスト・アルバム100」において31位にランクインした[11]ピッチフォークが2002年に発表した「1980年代のベストアルバム100」リストでは40位につき[12]、2018年に発表された新版リストでは200枚中46位にランクインした[13]。本作は音楽批評書死ぬ前に聴くべき1001枚のアルバムにも収録されている[14]。加えて、本作はJ・マスシスダイナソーJr.で最も好きなアルバムでもある[15]

『ユーアー・リビング・オール・オーバー・ミー』は、特にシューゲイザーに多大な影響を与えたことにも定評がある。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズは、彼らの代表作の一つ『ユー・メイド・ミー・リアライズ』EPの数ある影響元の中で本作を挙げている[16][17]。この2バンドはやがて一緒にツアーを回ることになる。ニルヴァーナに影響を与えたとも言われている[18]デス・キャブ・フォー・キューティーの2000年のアルバム『ウィ・ハヴ・ザ・ファクツ・アンド・ウィーア・ヴォーティング・イエス』に収録されている楽曲「Little Fury Bugs」の曲名は「Little Fury Things」に由来する[19]

2005年には、オール・トゥモローズ・パーティーズ主催の「ドント・ルック・バック英語版」コンサートシリーズの一環として、本作が全曲ライブで披露された[20]

2011年、ニック・アットフィールド氏はコンティニウム英語版社の33⅓英語版シリーズの一環として、本作について本を執筆した[21]

収録曲

[編集]

特記の無い限り作詞作曲はJ・マスシス

オリジナルリリース時収録曲

  1. リトル・フューリー・シングス "Little Fury Things" - 3:06
  2. クラックド "Kracked" - 2:50
  3. スラッジ・フィースト "SludgeFeast" - 5:17
  4. ザ・ラング "The Lung" - 3:51
  5. ライサンズ "Raisans" - 3:50
  6. タールピット "Tarpit" - 4:36
  7. イン・ア・ジャー "In a Jar" - 3:28
  8. ルーズ "Lose" - 3:11
  9. ポレド "Poledo" - 5:43
    • 作詞・作曲:ルー・バーロウ
    SST盤CDボーナストラック
  10. ショウ・ミー・ザ・ウェイ "Show Me the Way" - 3:45

2005年以降のリイシュー盤収録曲

  1. リトル・フューリー・シングス "Little Fury Things"
  2. クラックド "Kracked"
  3. スラッジ・フィースト "SludgeFeast"
  4. ザ・ラング "The Lung"
  5. ライサンズ "Raisans"
  6. タールピット "Tarpit"
  7. イン・ア・ジャー "In a Jar"
  8. ルーズ "Lose"
  9. ポレド "Poledo"
  10. ジャスト・ライク・ヘブン "Just Like Heaven" - 2:53
    ザ・キュアーのカバー。
    インペリアル・レコード盤のみのボーナストラック
  11. スロウ・ダウン "Slow Down" - 0:49
  12. イン・ア・ジャー (Live) "In a Jar" - 3:24

クレジット

[編集]
ダイナソー Jr.
参加ミュージシャン
プロダクション

参考文献

[編集]
  1. ^ You're Living All Over Me: Dinosaur Jr.”. Clash (2 February 2014). 2024年11月26日閲覧。
  2. ^ Azerrad (2001), p. 354.
  3. ^ Azerrad (2001), pp. 354–355.
  4. ^ Rank Your Records: J Mascis Rates Dinosaur Jr. Albums from Bummer to Classic | NOISEY” (18 August 2016). 2024年11月26日閲覧。
  5. ^ Dinosaur, You're Living All Over Me, Bug Review: Floppy fringes, form an orderly queue...”. bbc.co.uk (2005年). 2024年11月26日閲覧。[リンク切れ]
  6. ^ We Talked to Lou Barlow About Anxiety, Ukulele, and His New Solo Album 'Brace the Wave'”. sfweekly.com (2015年9月21日). 2016年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月26日閲覧。
  7. ^ Dinosaur Jr - Little Fury Things”. YouTube.com (2013年2月6日). 2021年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年11月26日閲覧。
  8. ^ Barron, Jack (September 19, 1987). “Dinosaur: You're Living All Over Me”. NME: 31. 
  9. ^ Christgau, Robert (April 12, 1988). “Christgau's Consumer Guide”. The Village Voice. https://robertchristgau.com/xg/cg/cgv4-88.php 2024年11月26日閲覧。 
  10. ^ Alternative Press Top 99 of '85-'95”. 2024年11月26日閲覧。
  11. ^ A.B. (July 2005). “SPIN 100 Greatest Albums 1985-2005”. SPIN: 80. https://books.google.com/books?id=p6-UYTO7l1MC&pg=PA80 2024年11月26日閲覧。. 
  12. ^ The Top 100 Albums of the 1980s”. Pitchfork. p. 7 (November 21, 2002). 2024年11月26日閲覧。
  13. ^ The 200 Best Albums of the 1980s”. Pitchfork. p. 8 (September 10, 2018). 2024年11月26日閲覧。
  14. ^ Robert Dimery; Michael Lydon (23 March 2010). 1001 Albums You Must Hear Before You Die: Revised and Updated Edition. Universe. ISBN 978-0-7893-2074-2 
  15. ^ Rank Your Records: J Mascis Rates Dinosaur Jr. Albums from Bummer to Classic | NOISEY” (18 August 2016). 2024年11月26日閲覧。
  16. ^ The Quietus | Features | A Quietus Interview |”. The Quietus. 2024年11月26日閲覧。
  17. ^ Murphy, Tom (April 23, 2009). “My Bloody Valentine's Kevin Shields talks Loveless and the influence of bands like Sonic Youth and Dinosaur Jr.”. Westword. 2024年11月26日閲覧。
  18. ^ 50 Artists Who Inspired Kurt Cobain”. NPR.org. 2024年11月26日閲覧。
  19. ^ Death Cab For Cutie: "Indie Rock Is Dead"” (英語). Rock and Roll Globe (2020年3月27日). 2020年6月23日閲覧。
  20. ^ Dinosaur Jr. Setlist at KOKO, London”. setlist.fm. 2024年11月26日閲覧。
  21. ^ Attfield, Nick (2011), You're Living All Over Me, Continuum Books, ISBN 978-1-4411-8778-9