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ヨタカ目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヨタカ目
アメリカヨタカ
アメリカヨタカ Chordeiles minor
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
上目 : 新顎上目 Neognathae
階級なし : Neoaves
階級なし : Strisores
: ヨタカ目 Caprimulgiformes *
学名
Caprimulgiformes Ridgway1881
シノニム

Caprimulgi sensu Sibley et al. 1990

ヨタカ目(ヨタカもく、学名 Caprimulgiformes)は鳥類の1目である。

特徴

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分布

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世界中に広く生息し、(南極を除く)全ての大陸に分布する。

形態

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全身が枯葉に似た模様であり、昼間は外敵に見つからないような隠蔽色になっている。

クチバシは小さいが、大きな口をもつ。

フクロウ目の鳥のように柔らかい羽毛をもち、羽音を立てずに飛行する。

初列風切は10枚[1]

脚は短く、3前趾足(アブラヨタカは皆前趾足)[1]

雛は就巣性(アブラヨタカは晩巣性)で、綿毛に覆われている[1]

生態

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夜行性。昼間は地上や樹上などで休むが、夕方から夜にかけて活動する。

昆虫などを捕食する。飛びながら食物をとることを得意とする。アブラヨタカは例外で、ヤシの実を食す。

系統と分類

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ヨタカ目はアマツバメ目と近縁であり、合わせて単系統 Strisores[2][3]または Incessores[4](または Cypselomorphae[4]、ただしこの名は別の系統を意味することが多い)を形成する。この系統は貧弱な足などの共有派生形質を有している。

かつてはヨタカ目とアマツバメ目は姉妹群ともされたが[5]、実際はヨタカ目は単系統ではなく、アマツバメヨタカ類の基底的な側系統である。伝統的にヨタカ目に含められてきたズクヨタカ科はアマツバメ目と姉妹群なので、現在はアマツバメ目に移される[6][7]。ただし、アマツバメ目を伝統的な範囲に限定したまま、ズクヨタカを単型のズクヨタカ目 Aegotheliformes とし[8][9]、かつ/または、アマツバメ目+ズクヨタカ科に Daedalornithes[10]Apodimorphae[9]の分類群名を与えることもある。

残りのヨタカ目は4科に分類され、それぞれは(またズクヨタカ科も)単系統である[11]。かつてはヨタカ科 Caprimulgidae からヒゲナシヨタカ科 Eurostopodidae を分離したり、ガマグチヨタカ科 Podargidae をガマグチヨタカ科 Batrachostomidaeオーストラリアガマグチヨタカ科 Podargidae に分離する説もあったが、否定される[11]

ヨタカ目の4科にアマツバメ目(ズクヨタカ科を含む)を加えた5系統間の系統関係はあまりわかっていない。系統が確定しない現状ではこれ以上の分類の修正は難しく[7]、鳥類の目の中でヨタカ目は唯一、単系統でないと判明したまま残されている。

現時点で最も包括的な分子系統は下図のようになっているが[12]BS値は非常に弱く、不確実である。

Strisores

アブラヨタカ科 Steatornithidae

タチヨタカ科 Nyctibiidae

ガマグチヨタカ科 Podargidae

ヨタカ科 Caprimulgidae

アマツバメ目 Apodiiformesズクヨタカ科を含む)

一方、形態やmtDNAからの異論があり[9][11]、Mayr (2009; 2011) は次のような系統樹を求めている[9][3]

Strisores
アブラヨタカ目

アブラヨタカ科 Steatornithidae

Podargocypseli
ガマグチヨタカ目

ガマグチヨタカ科 Podargidae

Cypselomorphae
Caprimulgi

タチヨタカ科 Nyctibiidae

ヨタカ科 Caprimulgidae

アマツバメ目 Apodiiformesズクヨタカ科を含む)

Mayrは単型のアブラヨタカ目 Steatornithiformes(新設)とガマグチヨタカ目 Podargiformes(Mathews 1918 の復活)を置き、他にもいくつかの分類群を置いた(ただし、Cypselomorphae の名はStrisores の系統に当てる説もある[4])。ただし、彼らはズクヨタカ科についてはズクヨタカ目に分離する説を採ったが、ここでは広義のアマツバメ目で記した。

分類史

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伝統的には、ヨタカ目はヨタカ亜目 Caprimulgi とアブラヨタカ亜目 Steatornithes(アブラヨタカ科のみ)に分けられていた[13]。ヨタカ亜目は昆虫食・3前足・雛は就巣性、アブラヨタカ亜目は椰子の実を食べ皆前趾足・雛は晩生性という違いがある。

夜行性という共通点、およびそれによる収斂進化に由来すると考えられる共通点がフクロウ目との関係において指摘されてきた。分子生物学的にも、Sibley分類では広義のフクロウ目にヨタカ亜目 Caprimulgi として、フクロウ亜目 Strigi(通常のフクロウ目)・ズクヨタカ亜目 Aegotheli(ズクヨタカ科のみ)と共に属していた。

Livezey & Zusi (2007)[4]は、大枠で伝統分類を踏襲したが、ヨタカ目とアマツバメ目を姉妹群とし Incessores 亜節(単型亜節)Cypselomorphae 上目にまとめた(Cypselomorphae の定義は通常と異なる)。ヨタカ目は Sibley et al. 同様、ズクヨタカ亜目とヨタカ亜目に分けた。

分類対照表

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新分類 Sibley分類 伝統分類
和名 学名 IOC, AOU Mayr
アブラヨタカ科 Steatornithidae ヨタカ目 Stris‐
ores
アブラヨタカ目



ヨタカ亜目


アブラヨタカ亜目
ガマグチヨタカ科 Podargidae Podarg‐
ocypseli
ガマグチヨタカ目 ヨタカ亜目
タチヨタカ科 Nyctibiidae Cypsel‐
omorphae
Caprimulgi
ヨタカ科 Caprimulgidae
ズクヨタカ科 Aegothelidae アマツバメ目 Apodi‐
imorphae
ズクヨタカ目 ズクヨタカ亜目
アマツバメ目の3科 アマツバメ目 アマツバメ上目 アマツバメ目

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ガマグチヨタカ科 Podargidae
インドからオーストラリアに分布。地上の昆虫、トカゲカエルなどを捕食する。
アブラヨタカ科 Steatornithidae
アブラヨタカ Steatornis caripensis の1属1種のみ。洞窟に群れを作り生活する。果実などを空中でホバリングしながら食べる。
タチヨタカ科 Nyctibiidae
中央アメリカ南アメリカに分布。
ヨタカ科 Caprimulgidae
全世界に分布する。大きな口とクチバシ周囲の特徴的なヒゲを用いて、など飛行中の昆虫を捕らえる。
フルヴィオヴィリダヴィス科 Fluvioviridavidae
始新世に生息した絶滅科。フルヴィオヴィリダヴィス Fluvioviridavisユーフルヴィオヴィリダヴィス Eurofluvioviridavis。ガマグチヨタカ科に近縁で、ガマグチヨタカ目を置く場合はガマグチヨタカ目に属す[14]
ズクヨタカ科 Aegothelidae
現在はヨタカ目には含まれない。インドネシアモルッカ諸島からオーストラリアに分布。主に地上の虫などを食べる。

出典

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  1. ^ a b c 森岡弘之 (2006), “ヨタカ目”, in 松井正文, 脊椎動物の多様性と系統, バイオディバーシティ・シリーズ 7, 裳華房, p. 296–197, ISBN 4-7853-5830-0 
  2. ^ Mayr, Gerald (2005), “A new Cypselomorph bird from the middle eocene of Germany and the early diversification of Avian aerial insectivores”, Condor 107 (2): 342–352, doi:10.1650/7596, http://www.bioone.org/perlserv/?request=get-abstract&doi=10.1650%2F7596 
  3. ^ a b Mayr, Gerald (2011), “Metaves, Mirandornithes, Strisores and other novelties – a critical review of the higher-level phylogeny of neornithine birds”, J. Zool. Syst. Evol. Res. 49 (1): 58–76, doi:10.1111/j.1439-0469.2010.00586.x 
  4. ^ a b c d Livezey, Bradley C.; Zusi, Richard (2007), “Higher-order phylogeny of modern birds (Theropoda, Aves: Neornithes) based on comparative anatomy. II. Analysis and discussion”, Zoological Journal of the Linnean Society 149: 1–95, オリジナルの2013年4月6日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20130406083649/http://biology-web.nmsu.edu/houde/Livezey%26Zusi_2007.pdf 
  5. ^ Cracraft, J. (1981), “Toward a phylogenetic classification of the recent birds of the world (class Aves)”, Auk 98 (4): 681–714 
  6. ^ Gill, Frank; Donsker, David, eds. (2012), IOC World Bird Names, version 3.1, http://www.worldbirdnames.org/ 
  7. ^ a b Billerman, Shawn; Lovette, Irby; et al. (2009), “Alter the traditional orders Apodiformes and Caprimulgiformes to reflect new data on their relationships”, in AOU N&MA Check-list Committee, Proposals 2009-C, p. 267–314, http://www.aou.org/committees/nacc/proposals/2009-C.pdf 
  8. ^ Worthy, T.H.; Tennyson, A.J.D.; Jones, C; McNamara, J.A.,; Douglas, B.J. (2007), “Miocene waterfowl and other birds from central Otago, New Zealand”, J. Syst. Palaeontol. 5: 1–39 
  9. ^ a b c d Mayr, Gerald (2010). “Phylogenetic relationships of the paraphyletic caprimulgiform' birds (nightjars and allies)”. J. Zool. Syst. Evol. Res. 48 (2): 126–137. doi:10.1111/j.1439-0469.2009.00552.x. https://doi.org/10.1111/j.1439-0469.2009.00552.x. 
  10. ^ Sangster, G. (2005), “A name for the clade formed by owlet-nightjars, swifts and hummingbirds (Aves)”, Zootaxa 799: 1–6 
  11. ^ a b c Braun, Michael J.; Huddleston, Christopher J. (2009), “A molecular phylogenetic survey of caprimulgiform nightbirds illustrates the utility of non-coding sequences”, Mol. Phylogenet. Evol. 53 (3): 948–960, doi:10.1016/j.ympev.2009.08.025 
  12. ^ Hackett, S. J.; Kimball, Rebecca T.; et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History”, Science 320: 1763–1768 
  13. ^ 松井正文, ed. (2006), “鳥綱分類表”, 脊椎動物の多様性と系統, バイオディバーシティ・シリーズ 7, 裳華房, ISBN 4-7853-5830-0 
  14. ^ Nesbitt, Sterling J.; Ksepka, Daniel T.; Clarke, Julia A., “Podargiform Affinities of the Enigmatic Fluvioviridavis platyrhamphus and the Early Diversification of Strisores (“Caprimulgiformes” + Apodiformes)”, PLoS ONE 6 (11): e26350, doi:10.1371/journal.pone.0026350