ウェールズ・ラリーGB
ウェールズ・ラリーGB(Wales Rally GB)は世界ラリー選手権 (WRC) の1イベント。ウェールズで開催される、ラリー・モンテカルロに次ぐ歴史を持つ。
歴史
[編集]第1回は王立自動車クラブ(RAC)が主催し、RACラリーとして1932年に開催された。その後戦時の中断などをはさみ、70回近くも開催される伝統のラリーである。やがて1997年からはラリー・オブ・グレートブリテンとなり、2003年からは現行名での開催となる。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止。
例年、シーズン最終戦として行なわれることが多く、過去チャンピオン決定のドラマが演じられてきた。1998年にはトミ・マキネン(三菱)が初日にリタイアし、カルロス・サインツ(トヨタ)が4位以内でゴールすればチャンピオンを獲得できたが、最終日・最終SSのゴール300m手前でサインツがエンジンブローによりリタイアしたため、マキネンの3連覇が決定した[1]。
2017年は地元チームのMスポーツが10年ぶりにマニュファクチャラーズタイトルを制覇。Mスポーツに所属するセバスチャン・オジェとジュリアン・イングラシアがドライバーとコ・ドライバーのタイトルを5連覇。同じくMスポーツに所属するウェールズ出身のエルフィン・エバンスがWRC初優勝[2]、エバンスが使用するDMACKタイヤもWRC初勝利という快挙で盛り上がった[3]。
特徴
[編集]かつてはイングランド、ウェールズ、スコットランドを広範囲に走り回るラリーだったが、WRCイベントのコンパクト化の流れに沿い、現在は大部分がウェールズの森林・広陵地帯で行なわれている[4]。コースは高速のグラベルロードだが、雨や霧が多く路面がぬかるんで滑りやすい[5]。また、秋から初冬にかけて天候が不安定な時期に開催されるため、雪の影響を受けることもある。ここでは地元の英国人ドライバーのほか、北欧系ドライバーも強さを発揮してきた[6]。
歴代優勝者(1973年以降)
[編集]年 | 優勝者 | 車輌 | |
---|---|---|---|
ドライバー | コ・ドライバー | ||
1973年 | ティモ・マキネン | ヘンリー・リドン | フォード・エスコートRS1600 |
1974年 | ティモ・マキネン | ヘンリー・リドン | フォード・エスコートRS1600 |
1975年 | ティモ・マキネン | ヘンリー・リドン | フォード・エスコートRS1800 |
1976年 | ロジャー・クラーク | スチュアート・ペッグ | フォード・エスコートRS1800 |
1977年 | ビョルン・ワルデガルド | ハンス・ソルセリウス | フォード・エスコートRS1800 |
1978年 | ハンヌ・ミッコラ | アーネ・ヘルツ | フォード・エスコートRS1800 |
1979年 | ハンヌ・ミッコラ | アーネ・ヘルツ | フォード・エスコートRS1800 |
1980年 | ヘンリ・トイボネン | ポール・ホワイト | タルボット・サンビームロータス |
1981年 | ハンヌ・ミッコラ | アーネ・ヘルツ | アウディ・クワトロ |
1982年 | ハンヌ・ミッコラ | アーネ・ヘルツ | アウディ・クワトロ |
1983年 | スティグ・ブロンクビスト | ビョルン・セダーベルグ | アウディ・クワトロA2 |
1984年 | アリ・バタネン | テリー・ハリーマン | プジョー・205ターボ16 |
1985年 | ヘンリ・トイボネン | ニール・ウィルソン | ランチア・デルタS4 |
1986年 | ティモ・サロネン | セッポ・ハルヤンヌ | プジョー・205ターボ16E2 |
1987年 | ユハ・カンクネン | ユハ・ピロネン | ランチア・デルタHF 4WD |
1988年 | マルク・アレン | イルッカ・キビマキ | ランチア・デルタHFインテグラーレ |
1989年 | ペンティ・アイリッカラ | Ronan McNamee | 三菱・ギャランVR-4 |
1990年 | カルロス・サインツ | ルイス・モヤ | トヨタ・セリカGT-FOUR |
1991年 | ユハ・カンクネン | ユハ・ピロネン | ランチア・デルタHFインテグラーレ 16V |
1992年 | カルロス・サインツ | ルイス・モヤ | トヨタ・セリカターボ4WD |
1993年 | ユハ・カンクネン | ニッキー・グリスト | トヨタ・セリカターボ4WD |
1994年 | コリン・マクレー | デレック・リンガー | スバル・インプレッサ555 |
1995年 | コリン・マクレー | デレック・リンガー | スバル・インプレッサ555 |
1996年† | アルミン・シュワルツ | デニス・ジロード | トヨタ・セリカ GT-FOUR |
1997年 | コリン・マクレー | デレック・リンガー | スバル・インプレッサWRC |
1998年 | リチャード・バーンズ | ロバート・レイド | 三菱・カリスマGT |
1999年 | リチャード・バーンズ | ロバート・レイド | スバル・インプレッサWRC |
2000年 | リチャード・バーンズ | ロバート・レイド | スバル・インプレッサWRC |
2001年 | マーカス・グロンホルム | ティモ・ラウティアイネン | プジョー206WRC |
2002年 | ペター・ソルベルグ | フィル・ミルズ | スバル・インプレッサWRC |
2003年 | ペター・ソルベルグ | フィル・ミルズ | スバル・インプレッサWRC |
2004年 | ペター・ソルベルグ | フィル・ミルズ | スバル・インプレッサWRC |
2005年 | ペター・ソルベルグ | フィル・ミルズ | スバル・インプレッサWRC |
2006年 | マーカス・グロンホルム | ティモ・ラウティアイネン | フォード・フォーカスWRC |
2007年 | マーカス・グロンホルム | ティモ・ラウティアイネン | フォード・フォーカスWRC |
2008年 | セバスチャン・ローブ | ダニエル・エレナ | シトロエン・C4 WRC |
2009年 | セバスチャン・ローブ | ダニエル・エレナ | シトロエン・C4 WRC |
2010年 | セバスチャン・ローブ | ダニエル・エレナ | シトロエン・C4 WRC |
2011年 | ヤリ=マティ・ラトバラ | ミイカ・アンティラ | フォード・フィエスタWRC |
2012年 | ヤリ=マティ・ラトバラ | ミイカ・アンティラ | フォード・フィエスタWRC |
2013年 | セバスチャン・オジェ | ジュリアン・イングラシア | フォルクスワーゲン・ポロ R WRC |
2014年 | セバスチャン・オジェ | ジュリアン・イングラシア | フォルクスワーゲン・ポロR WRC |
2015年 | セバスチャン・オジェ | ジュリアン・イングラシア | フォルクスワーゲン・ポロR WRC |
2016年 | セバスチャン・オジェ | ジュリアン・イングラシア | フォルクスワーゲン・ポロR WRC |
2017年 | エルフィン・エバンス | ダニエル・バリット | フォード・フィエスタWRC |
2018年 | セバスチャン・オジェ | ジュリアン・イングラシア | フォード・フィエスタWRC |
2019年 | オィット・タナック | マルティン・ヤルヴェオヤ | トヨタ・ヤリスWRC |
2020年 | 中止 |
† 1996年はFIA2リッターワールドカップ (W2L) として開催。
脚注
[編集]- ^ "世界ラリー選手権(WRC)第13戦(最終戦) ネットワークQラリー・オブ・グレートブリテン". 三菱自動車.(1998年)2013年12月1日閲覧。
- ^ イギリス国籍のドライバーがラリーGBで優勝するのは2000年のリチャード・バーンズ(スバル)以来17年ぶり。
- ^ “WRC:エバンス初優勝、オジエWRC5連覇でMスポーツがラリーGB制圧。トヨタは総合5位”. AUTOSPORTweb. (2017年10月30日) 2017年11月7日閲覧。
- ^ “WRCラリーGB:トヨタ、歴史と伝統のグラベルラリーでさらなる性能向上を目指す”. Rally+.net. (2017年10月21日) 2017年10月29日閲覧。
- ^ "スズキ・ワールドラリーチーム 初のWRCグラベルイベントに臨む". スズキWRCチャレンジ.(2007年)2013年12月1日閲覧。
- ^ 福井敏雄 "2011年WRC第13戦ウエールズラリー・GB". J SPORT.(2011年11月7日)2013年12月1日閲覧。