リアルタイムキネマティック
リアルタイムキネマティック(英語:Real-time kinematic, RTK)とは、既存の衛星測位システム(GNSS)から得られた位置情報に加え、地上に設けた独自の基準局の補正位置情報を加味し、位置情報の精度を上げる技術[1]。
日本では全国1,300箇所の電子基準点があり、ソフトバンクによる独自基準点も3,300箇所設けられているため[2]、諸外国の様に利用者が独自に基準を設ける必要が無い[1]。位置情報量に加え、信号搬送波の位相積算値データを使用し、リアルタイムで補正することによってセンチメートル単位での位置情報が提供される[3]。また、このシステムは搬送波位相強化(Carrier-phase enhancement)から、CPGPSとも称され[4]、リアルタイムキネマティックGPS、ネットワーク型RTK、RTK-GNSSとも表記される[1]。この測定技術は主に測量で用いられており、測位精度が高いため無人航空機や農業用自動運転車などにも応用が進んでいる[2]。
構成
[編集]実際のRTKシステムでは、1台の固定基地局と複数の移動局が使用される。基地局が観測した搬送波の位相を再送信し、移動局が自身の位相測定値と固定基地局から受信した位相積算値を比較する。固定局から移動局への補正信号の送信方法にはいくつかあり、リアルタイムで低コストな信号伝送を実現する最も一般的な方法としては、UHF帯周波数のモデムを使用する方法である。このことから、大半の国では特定の周波数がRTK用に割り振られている。また、大半の陸上測量機器には、標準オプションとしてUHF帯の無線モデムが内蔵されている。RTKは、基地局から約20kmまでの範囲内で精度を向上させることが可能である[5]。
このため、相対位置はミリメートル単位まで計算できるが、絶対位置の精度は、基地局の計算位置と同じ精度にとどまる。一般的な公称精度は、水平方向に1センチメートル±2ppm、垂直方向に2センチメートル±2ppmである[6]。
その他の計測方法
[編集]連続観測基準点(Continuously Operating Reference Station, CORS)ネットワークは、通常インターネット接続を介し、補正情報を送信する種類のRTK基地局のネットワークとなる。CORSでは、複数の局が正しい位置を示すことで、単一基地局の誤った初期化を防ぐことに繋がるため、CORSネットワークでは精度が向上する[7]。
仮想基準点ネットワーク(Virtual Reference Network, VRN)でも同様に、基地局を使用せず精度を高めることが可能である[8]。
脚注
[編集]- ^ a b c “ネットワーク型RTK測量の仕組み” (PDF). 国土地理院. 2022年8月24日閲覧。
- ^ a b “第964回:RTK-GNSSとは”. インプレス (2020年8月25日). 2022年8月24日閲覧。
- ^ “Introduction to Network RTK” (英語). www.wasoft.de. IAG Working Group 4.5.1. 14 February 2018閲覧。
- ^ Mannings, Robin (2008) (英語). Ubiquitous Positioning. Artech House. p. 102. ISBN 978-1596931046
- ^ RIETDORF, Anette; DAUB, Christopher; LOEF, Peter (2006). “Precise Positioning in Real-Time using Navigation Satellites and Telecommunication” (英語). PROCEEDINGS OF THE 3rd WORKSHOP ON POSITIONING, NAVIGATION AND COMMUNICATION
- ^ “National Geodetic Survey - CORS Homepage” (英語). www.ngs.noaa.gov. 2018年12月11日閲覧。
- ^ “CDOT Survey Manual” (PDF) (英語). Colorado Department of Transportation (2021年). 2022年8月24日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ネットワーク型RTK測量の仕組み(PDF) - 国土地理院
- GNSSを使用した測量のいろいろ - 国土地理院
- ネットワーク型 RTK-GPS 測量の概要(PDF)
- RTK-GPS方式(PDF)- ジェノバ