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リリーのすべて

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リリーのすべて
The Danish Girl
映画で使用された衣装
監督 トム・フーパー
脚本 ルシンダ・コクソン英語版
原作 デヴィッド・エバーショフ
世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語英語版
製作 ゲイル・マトラックス英語版
アン・ハリソン
ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
トム・フーパー
製作総指揮 リンダ・レイズマン
ウルフ・イスラエル
キャシー・モーガン
ライザ・チェイシン
出演者 エディ・レッドメイン
アリシア・ヴィキャンデル
マティアス・スーナールツ
ベン・ウィショー
セバスチャン・コッホ
アンバー・ハード
音楽 アレクサンドル・デスプラ
撮影 ダニー・コーエン
編集 メラニー・アン・オリヴァー英語版
製作会社 ワーキング・タイトル・フィルムズ
プリティー・ピクチャーズ
アルテミス・プロダクションズ
リヴィジョン・ピクチャーズ
セネター・グローバル・プロダクションズ
配給 アメリカ合衆国の旗 フォーカス・フィーチャーズ
世界の旗 ユニバーサル・ピクチャーズ
日本の旗 東宝東和
公開 イタリアの旗 2015年9月5日
ヴェネツィア国際映画祭
アメリカ合衆国の旗 2015年11月27日
イギリスの旗 2016年1月1日
日本の旗 2016年3月18日
上映時間 119分[1]
製作国 イギリスの旗 イギリス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ドイツの旗 ドイツ
言語 英語
製作費 $15,000,000[2]
興行収入 $64,191,523[3]
日本の旗 2億7400万円[4]
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リリーのすべて』(原題: The Danish Girl)は、2015年イギリスアメリカ合衆国ドイツで製作された伝記映画である。監督トム・フーパー主演エディ・レッドメインが務める。

原作は世界初の性別適合手術を受けた人物・リリー・エルベを題材とした、デヴィッド・エバーショフによる小説『The Danish Girl』(2000年刊行、邦題: 『世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語』、本作の公開に合わせて『リリーのすべて』のタイトルで再出版)である。

なお、本作は史実からは脚色されており、エルベが女性として暮らすようになった時期や結末等は実際とは異なる。

あらすじ

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1926年のデンマークの首都コペンハーゲン。肖像画家のゲルダ・ヴェイナーは、風景画家の夫・アイナーと暮らしていた。ゲルダの画家としての名声はアイナーに及ばなかった。ある日、ゲルダが制作中の絵(女性ダンサー)のモデルが来られなくなり、アイナーに脚部のモデルを頼む。それを見たゲルダは、冗談でアイナーを女装させ、「リリー」という名の女性として知人のパーティーに連れて行ったが、リリーが男性と親しげにする姿に当惑する。しかしその後もアイナーはリリーとして男性と密会を続けていた。ゲルダはリリーをモデルとした絵を描き、画商から評価を受ける。アイナーに対して、ゲルダは自分の前では男でいることを望むが、アイナーは「努力してみる」としか答えず、パーティーの出来事が女装のきっかけではないと打ち明ける。やがて、アイナーはリリーとして過ごす時間が増え、絵を描くこともやめてしまう。ゲルダはアイナーを医者に診せるが、そこでは精神疾患という扱いしか受けなかった。

ゲルダの絵に対する引き合いを機に夫妻はパリに移った。パリにはアイナーの幼馴染みの画商・ハンスがおり、ゲルダはアイナーの真実を打ち明ける。話を聞いたハンスはゲルダの力になるべく、アイナーに数人の医師を紹介するが、やはり精神疾患という診断しか下されなかった。しかし、「それは病気ではない。アイナーの言うことは正しい」という医師が現れる。この医師はアイナーに先例のない性別適合手術の存在を告げ、アイナーは手術を受けることを決断する。

キャスト

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※括弧内は日本語吹替

製作

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構想

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公開の約10年前にニコール・キッドマンが、アイナー/リリーを描いた原作に惚れ込み、映画化を希望した。同時に自らプロデューサーとしても名乗りを上げた。当時、配給会社も決まって、脚本も完成していたが、実現には至らなかった[5]

その後2009年9月、トーマス・アルフレッドソンジョン・ル・カレの小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化に取り掛かる前に、デヴィッド・エバーショフの小説『世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語』の映画化に取り組みたいと述べた[6]。同年12月、アルフレッドソンが本作の製作から離れたと報じられた。これに関してアルフレッドソンは「制作費の目途が立つ前に、映画化の計画を公にしてしまったことを後悔している。」「まだ映画化に対する意欲はある」と述べた[7][8]2010年1月12日、アルフレッドソンの後任として、ラッセ・ハルストレムが雇われた[9]

同年6月11日、本作の一部をドイツで撮影するにあたって、ドイツの映画協会が本作に120万ユーロの助成金を出すと報じられたが、結局撮影には至らなかった[10]

やがて2014年、トム・フーパーを監督に据え、再度映画化が決定した。しかしキャストに、ニコール・キッドマンの名はなかった[11]

キャスティング

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ゲルダ・ヴェイナーを演じる女優の選考は難航した。シャーリーズ・セロン[12]グウィネス・パルトロー[12]ユマ・サーマン[13]マリオン・コティヤール[14]に契約を打診したが、確定には至らなかった。

2011年2月、レイチェル・ワイズがゲルダを演じることが決まり、同年7月から撮影が始まるとの報道があった[15]。しかし、5月にはワイズとハルストレム監督の降板が報じられた[16]

2014年4月28日、トム・フーパーエディ・レッドメインを主演に迎えて本作のメガホンをとるとの報道があった[17]。同年6月19日、アリシア・ヴィキャンデルがゲルダ役に決まったと報じられた[18]

撮影

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当初、本作の撮影は2010年春からベルリンで行われる予定だったが、キャスティングが難航したために延期を余儀なくされた[19]。2015年2月にようやく撮影が始まった[20]。撮影はデンマークのニューハウンでも行われた[21]。2015年4月12日、すべての撮影が終了した。

マーケティング

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2015年2月26日、リリー・エルベを演じるレッドメインの画像が公開された[22]。8月にはレッドメインとヴィキャンデルが写った2枚のポスターが公開された[23]。9月1日には、本作の最初の予告編が公開された[24][25]

公開

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2015年3月4日、アメリカでの配給権を持つフォーカス・フィーチャーズは同年11月27日にアメリカでの限定公開を始めると発表した[26]

同年9月5日、本作は第72回ヴェネツィア国際映画祭で初めて上映された[27]。また、同月12日には、第40回トロント国際映画祭英語版のスペシャル・プレゼンテーションでも上映された[28]

この映画の完成は、当初企画に携わっていたニコール・キッドマンにとっても悲願であった。キッドマンが原作に惚れ込んでから、10年以上の時間が経過し、キャストも変わっていたが、映画の完成をとても喜んだといわれている[29]

本作でトランスジェンダー女性の実在した人物リリー・エルベを演じたエディ・レッドメインについて、シスジェンダー男性であるエディ・レッドメインがトランスジェンダー女性を演じたことに一部で批判が集まり、2021年11月に「いまだったら、あの役を引き受けることはしないでしょう。私はあの映画を、誠心誠意を尽くして作りましたが、間違いだったと感じています」とレッドメインもコメントを出したが、本作が製作される前年、レッドメインは『博士と彼女のセオリー』でアカデミー主演男優賞を受賞したことで演技派の俳優として高く評価されていることが本作のオファーの要因の多くを占めている背景もあり、本作はその何年も前から映画化の企画が立ち上がっていたが、レッドメインが主演に起用されるまで具体的な動きがなかったため、レッドメインの貢献は大きいという声もある[30]

受賞

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カテゴリ 対象者 受賞結果
第72回ヴェネツィア国際映画祭[31] 金獅子賞 トム・フーパー ノミネート
クィア獅子賞 トム・フーパー 受賞
グリーン・ドロップ賞 トム・フーパー ノミネート
第19回ハリウッド映画賞[32][33] 監督賞 トム・フーパー 受賞
ブレイクアウト女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
作曲賞 アレクサンドル・デスプラ 受賞[34]
第18回英国インディペンデント映画賞[35] 主演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル ノミネート
第15回ニューヨーク映画批評家オンライン賞[36] ブレイクスルー演技賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞[37]
第19回オンライン映画批評家協会賞 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル ノミネート
第73回ゴールデングローブ賞[38] 主演男優賞(ドラマ部門) エディ・レッドメイン ノミネート
主演女優賞(ドラマ部門) アリシア・ヴィキャンデル ノミネート
作曲賞 アレクサンドル・デスプラット ノミネート
第22回全米映画俳優組合賞[39][40] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
主演男優賞 エディ・レッドメイン ノミネート
第20回サテライト賞[41][42] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
監督賞 トム・フーパー ノミネート
主演男優賞 エディ・レッドメイン ノミネート
脚色賞 ルシンダ・コクソン ノミネート
第88回アカデミー賞[43][44] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
主演男優賞 エディ・レッドメイン ノミネート
衣装デザイン賞 ノミネート
美術賞 ノミネート
エンパイア賞 2016 [45] 女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
第27GLAADメディア賞[46] 長編映画(拡大公開)部門 未決定

脚注

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  1. ^ THE DANISH GIRL (15)”. British Board of Film Classification (2015年12月3日). 2016年9月8日閲覧。
  2. ^ How 'The Danish Girl' Made It to the Screen After a 15-Year Odyssey”. Indiewire (2015年12月7日). 2016年9月8日閲覧。
  3. ^ The Danish Girl (2015)”. Box Office Mojo. 2016年9月8日閲覧。
  4. ^ キネマ旬報 2017年3月下旬号』p.72
  5. ^ ニコール悲願の役が男優のエディに。10年もの迷走で映画は完成し、アカデミー賞、日本公開へ”. 2016年3月8日閲覧。
  6. ^ Alfredson right helmer for ‘Danish’”. 2015年10月6日閲覧。
  7. ^ Tomas Alfredson hoppar av filmen med Nicole Kidman”. 2015年10月9日閲覧。
  8. ^ Alfredson vill ännu göra Kidman-film”. 2015年10月8日閲覧。
  9. ^ Hallström gör film med Kidman – efter Alfredsons avhopp”. 2015年10月5日閲覧。
  10. ^ 'Danish Girl' picks up German cash”. 2015年10月1日閲覧。
  11. ^ ニコール悲願の役が男優のエディに。10年もの迷走で映画は完成し、アカデミー賞、日本公開へ”. 2016年3月8日閲覧。
  12. ^ a b Nicole Kidman and Gwyneth Paltrow to play husband and wife”. 2015年10月10日閲覧。
  13. ^ Casting Call: Nicole Kidman Set For 'Sweet' Return To Broadway”. 2015年10月6日閲覧。
  14. ^ Marion Cotillard reteams with Nicole Kidman in The Danish Girl”. 2015年10月9日閲覧。
  15. ^ Hallstrom set to start The Danish Girl shoot in July”. 2015年10月9日閲覧。
  16. ^ Hallstrom leaves The Danish Girl, casts Persbrandt for The Hypnotist”. 2015年10月9日閲覧。
  17. ^ ‘Les Mis’ Duo Tom Hooper And Eddie Redmayne Re-Team On ‘The Danish Girl’”. 2015年10月2日閲覧。
  18. ^ Alicia Vikander Landing Leads In ‘Light Between Oceans’ And ‘Danish Girl’”. 2015年10月10日閲覧。
  19. ^ How the strain may start to show as career-minded Gwyneth Paltrow and Chris Martin set to spend time apart”. 2015年10月10日閲覧。
  20. ^ PICTURED: Oscar-winner Eddie Redmayne cuts a gaunt figure as he begins work in London on his latest movie The Danish Girl”. 2015年10月10日閲覧。
  21. ^ Filming of The Danish Girl in Copenhagen”. 2015年10月9日閲覧。
  22. ^ Eddie Redmayne Transforms Into Transgender Painter Einar Wegener in First Look at The Danish Girl”. 2015年10月4日閲覧。
  23. ^ Stunning First Posters for The Danish Girl with Eddie Redmayne & Alicia Vikander”. 2015年10月10日閲覧。
  24. ^ ‘The Danish Girl’ Trailer: First Look At Eddie Redmayne & Alicia Vikander Starrer”. 2015年10月10日閲覧。
  25. ^ The Danish Girl Official Trailer #1 (2015) - Eddie Redmayne, Alicia Vikander Drama HD”. 2015年10月10日閲覧。
  26. ^ Eddie Redmayne’s Transgender Drama ‘The Danish Girl’ Gets Awards Season Release Date”. 2015年10月10日閲覧。
  27. ^ 72nd Venice International Film Festival”. 2015年10月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月9日閲覧。
  28. ^ Toronto to open with 'Demolition'; world premieres for 'Trumbo', 'The Program'”. 2015年10月10日閲覧。
  29. ^ ニコール悲願の役が男優のエディに。10年もの迷走で映画は完成し、アカデミー賞、日本公開へ”. 2016年3月8日閲覧。
  30. ^ エディ・レッドメイン、『リリーのすべて』でトランスジェンダー女性を演じたことは「間違いだった」”. cinemacafe.net (2021年11月22日). 2021年12月6日閲覧。
  31. ^ LIVE: The winners of the 72nd Venice Film Festival”. 12 September 2015閲覧。
  32. ^ Amy Schumer Set to Receive "Hollywood Comedy Award" for "Trainwreck" at the "19th Annual Hollywood Film Awards®"”. 2015年10月10日閲覧。
  33. ^ Academy Award Winner Tom Hooper, Academy Award Winner Benicio Del Toro, Academy Award Nominated Actress Saoirse Ronan, Breakout Star Alicia Vikander and the Cast of "Straight Outta Compton" to be Honored at the "19th Annual Hollywood Film Awards®"”. 2015年12月6日閲覧。
  34. ^ 未来を花束にして』での作曲と合わせての受賞
  35. ^ Winners”. 2015年12月6日閲覧。
  36. ^ New York Film Critics Online Name ‘Spotlight’ Best Film of the Year”. 2015年12月6日閲覧。
  37. ^ Ex Machina』での演技にも
  38. ^ ゴールデングローブ賞「キャロル」が最多ノミネート、坂本龍一は作曲賞候補に”. 映画ナタリー (2015年12月11日). 2015年12月11日閲覧。
  39. ^ 米俳優組合賞ノミネート発表 ブライアン・クランストン主演「Trumbo」が最多3部門”. 映画.com (2015年12月11日). 2015年12月11日閲覧。
  40. ^ レオナルド・ディカプリオ 主演男優賞受賞 全米映画俳優組合賞映画部門発表”. シネマトゥデイ (2016年2月1日). 2016年2月2日閲覧。
  41. ^ サテライト賞ノミネート発表”. 映画.com (2015年12月3日). 2015年12月8日閲覧。
  42. ^ 作品賞は『スポットライト 世紀のスクープ』 ディカプリオにまた栄冠! 第20回サテライト・アワード発表”. シネマトゥデイ (2016年2月26日). 2016年2月26日閲覧。
  43. ^ アカデミー賞ノミネーション発表、「レヴェナント」12部門、「マッドマックス」10部門”. 映画ナタリー (2016年1月15日). 2016年1月15日閲覧。
  44. ^ 88th ANNUAL ACADEMY AWARDS 第88回アカデミー賞特集 ノミネート&結果一覧”. シネマトゥデイ. 2016年2月29日閲覧。
  45. ^ “『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が最多受賞!2016年エンパイア賞発表”. シネマトゥデイ. (2016年3月25日). https://www.cinematoday.jp/news/N0081370 2016年3月25日閲覧。 
  46. ^ 同性愛者の擁護団体GLAAD賞ノミネート発表”. 映画.com (2016年2月1日). 2016年2月1日閲覧。

外部リンク

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