レインボーコード
レインボーコード(Rainbow Codes)はイギリスの兵器開発プロジェクトに割り当てられたコードネーム。主として第二次大戦終了後から1958年まで使用され、その後は英数字コードが使われるようになった。
概要
[編集]第二次世界大戦中、ドイツ軍の秘密プロジェクトのコードネームは、しばしばそれが何であるかを意味するヒントを含んでいた。例えば、ヴォタン(Wotan)として知られる電波航法システムは、同じ名前を持つ神が一つ目であることから、単一ビームであることが推定できた。この経験から、イギリス軍需省は、新たなプロジェクトのコードネームを、意味をなさないものとすることとし、レインボーコードが採用された。
各プロジェクトのコードネームは、色とリストから選ばれた名詞の組み合わせとなる、例えば以下のような具合である。
- "ブルー" + "スチール" = ブルースチール:空対地巡航ミサイル
- "グリーン" + "メイス" = グリーンメイス:対空砲
実戦配備された場合には、上記のブルースチールのように、コードネームがそのまま使われる場合もあり、また別の名称が使われる場合もあった。例えば、ブルージェイ空対空ミサイルは、実用化後にはファイアストリークと呼称された。
殆どの場合、色と名詞の組み合わせは意味を持たなかったが、ときには意味ある組み合わせとなることもあった。しかし、その場合でも、元々の意味とプロジェクト自体に何の関連性もなかった。例えば、ブラックマリアは戦闘機用の敵味方識別装置のコードネームであるが、囚人護送車を意味した。
1959年に、組織改編により軍需省が廃止され、国防省へ吸収されると、ほとんどのレインボーコードが使われなくなった。その後は、英文字2つと数字3つの組み合わせからなるコードネームが使用されるようになった。例えば、BL755(クラスター爆弾)、 WE.177(戦術核爆弾)などである。しかし、その後もレインボーコードが使用された場合もあり、現在でもブルーヴィクセン・レーダーや[1] 、 オレンジ・リーパー電子戦支援システムがレインボーコードに基づいている。
主なコードネーム
[編集]- ブラック
- ブルー
- ブルーダニューブ:イギリス最初の核爆弾。
- ブルードルフィン:ブルージェイ Mk.5 の別名で、デ・ハビランド シービクセン用のレッドトップ空対空ミサイルの派生型。
- ブルージェイ:赤外線追尾空対空ミサイル。正式採用後の名称は“ファイアストリーク”。
- ブルーピーコック:核地雷。
- ブルースカイ:イギリス最初の空対空ミサイル。レーダービームライディング方式。正式採用後の名称は“ファイアフラッシュ”。当初のコードネームは“ピンクホーク”。
- ブルースチール:空対地巡航ミサイル。
- ブルーストリーク:中距離弾道ミサイル。
- ブルーヴェスタ:ブルージェイ Mk.4 の別名。
- ブルーダック:対潜水艦ミサイル。正式採用後の名称は“Ikara(アイカラ)”
- ブルージャケット:ブラックバーン バッカニア用のドップラー航法装置。
- ブルーフォックス:シーハリアーFRS.1用のレーダー。
- ブルーファルコン:パルスドップラー・レーダーの試作機。
- ブルーヴィクセン:シーハリアーFA.2用のレーダー。
- ブルーホーク:軽攻撃機用のレーダー。
- ブラウン
- ブラウンバニー:ブルーピーコックの初期の非公式名称。
- グリーン
- グリーンガーランド:レッドトップミサイル用の赤外線近接信管。
- オレンジ
- レッド
- レッドベアード:イギリス最初の戦術核兵器。
- レッドディーン:対爆撃機用の大型レーダー誘導ミサイル。
- レッドヒーブ:レッドディーンの縮小版。運用要求F.155で指示された超音速要撃機用ミサイル。
- レッドスノー:核弾頭。
- レッドトップ:空対空ミサイル。
- バイオレット
- バイオレット・バナー:レッドトップミサイル用の赤外線シーカー。
関連項目
[編集]参考資料
[編集]- 脚注
- ^ “Blue Vixen radar (United Kingdom), AIRBORNE RADAR SYSTEMS”. Jane's Avionics. 2009年8月8日閲覧。
- 出版物
- United Kingdom Aerospace and Weapons Projects
- Public Record Office, London. TNA AIR 2/17322 E51B (a)
- Vulcan's Hammer: V-Force Aircraft and Weapons Projects Since 1945 - Chris Gibson - 2011 - ISBN 978-1902109176