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ロシアかぜ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロシアかぜ[訳語疑問点]
フランスの雑誌『Le Grelot』(1890年1月12日)に載ったロシア風邪の風刺画。右上に「INFLUENZA」(インフルエンザ)の語が見える[1]
疾病 インフルエンザまたはコロナウイルス感染症[1]
ウイルス株 H3N8またはHCoV-OC43[1]
最初の発生 ブハラ(現:ウズベキスタン
最初の報告 ロシア帝国
場所 世界の旗 全世界
日付 1889年 - 1890年[1]
死者数
100万人(推計)[2][1]

ロシアかぜ(ロシア風邪[1]、Russian flu)あるいはアジアかぜ(アジア風邪、Asiatic flu)[訳語疑問点]は、1889年から1890年にかけ世界的な大流行(パンデミック)を引き起こした呼吸器感染症[1]ロシア帝国領だった中央アジアで感染が最初に確認され、その後1895年にかけ何度も再流行を繰り返した。19世紀の最後の大流行であり[3]、当時の世界人口15億人のうち、約100万人が犠牲となったと考えられている[2]

概要

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1889年の5月にロシア帝国支配下だったブハラで最初に発生を確認。同月にはカナダのアサバスカやグリーンランドでも発生している。10月に入りロシアの帝都サンクトペテルブルクで患者が発生すると、その後ヨーロッパ全域、アメリカ合衆国へと僅か4ヶ月で地球を一周した[3]。拡大は非常に速く、航空機の発達した、のちのパンデミックに匹敵するものだった[3]

日本では1890年に流行し、お染かぜ(お染風)の俗称で呼ばれた[4][5]江戸(東京)の人気芝居『お染久松』のお染から取られたもので、お染の侵入を防ぐといって「久松留守」や「お染後免」と書いた紙札が流行した[5]

高齢者の致死率が異様に高い、神経症状が顕著に見られるなど、通常のインフルエンザパンデミックとは異なる点も見られた[6][7]。致死率は0.1-0.28%[3]、あるいは1%[2]ともされる。

ウイルス学が未発達であったため、原因となったウイルスは特定されていない。当時、病原菌としてインフルエンザ菌が分離されたが、後にこの菌が直接インフルエンザを起こすわけでは無いと分かり否定された。その後は、H2N2亜型[8]あるいはH3N8亜型[3]といったA型インフルエンザウイルスのほか、2005年にヒトコロナウイルスOC43の可能性があると発表されている[9][10]。またこれに関連して、2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と症状が似ていると主張する研究者も存在する[11]イギリスドイツ帝国の診療記録に残る、味覚嗅覚の消失といった症状、倦怠感や集中力の低下といった後遺症が、新型コロナ感染症及びその後遺症(Long COVID)と共通している[1]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c d e f g h 新型コロナの行く先(下)普通の風邪になる日は来るのか/130年前にも流行?2年で沈静■「まだ3~5合目」続く闘い朝日新聞』朝刊2022年5月8日(教育・科学面)2022年5月21日閲覧
  2. ^ a b c Burke A. Cunha, MD: Influenza: historical aspects of epidemics and pandemics アーカイブ 2013年12月3日 - ウェイバックマシン. Infect Dis Clin N Am 18 (2004) 141–155, consultado el 17 de enero de 2014
  3. ^ a b c d e “Transmissibility and geographic spread of the 1889 influenza pandemic”. PNAS 107 (19): 8778–8781. (11 May 2010). Bibcode2010PNAS..107.8778V. doi:10.1073/pnas.1000886107. PMC 2889325. PMID 20421481. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2889325/. 
  4. ^ 横田万之助, 岩崎謙二, 加地正郎, 園口忠男「インフルエンザ」『感染症学雑誌』第47巻第5号、日本感染症学会、1973年、147-155頁、doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.47.147ISSN 0387-5911NAID 130004328354 
  5. ^ a b 逢見憲一「公衆衛生からみたインフルエンザ対策と社会防衛--19世紀末から21世紀初頭にかけてのわが国の経験より (新型インフルエンザ流行対策--国立保健医療科学院の取り組みと今後の活動に向けて)」『保健医療科学』第58巻第3号、国立保健医療科学院、2009年9月、236-247頁、ISSN 13476459NAID 110009848604 
  6. ^ The Pandemic’s Future — and Ours
  7. ^ "Pandémie de grippe russe : une COVID du XIXe siècle ?". VIDAL (フランス語). 2020年11月30日閲覧
  8. ^ “Realities and enigmas of human viral influenza: pathogenesis, epidemiology and control.”. Vaccine (Elsevier) 20 (25–26): 3068–3087. (19 August 2002). doi:10.1016/S0264-410X(02)00254-2. PMID 12163258. 
  9. ^ Our Coronavirus Predicament Isn’t All That New(The Russian flu pandemic of 1889 might have actually been caused by a foe that has become all too familiar.) - Bloomberg Opinion(2020年5月16日)
  10. ^ Vijgen, Leen; Keyaerts, Els; Moës, Elien; Thoelen, Inge; Wollants, Elke; Lemey, Philippe; Vandamme, Anne-Mieke; Van Ranst, Marc (2005). “Complete Genomic Sequence of Human Coronavirus OC43: Molecular Clock Analysis Suggests a Relatively Recent Zoonotic Coronavirus Transmission Event”. Journal of Virology 79 (3): 1595–1604. doi:10.1128/JVI.79.3.1595-1604.2005. PMC 544107. PMID 15650185. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC544107/. 
  11. ^ Knudsen, Jeppe Kyhne (13 August 2020). “Overraskende opdagelse: Coronavirus har tidligere lagt verden ned” (デンマーク語). DR. https://www.dr.dk/nyheder/viden/kroppen/overraskende-opdagelse-coronavirus-har-tidligere-lagt-verden-ned 13 August 2020閲覧. "A presumed influenza pandemic in 1889 was actually caused by coronavirus, Danish research shows." 

関連項目

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