ロンゴミニアド
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ロンゴミニアド | |
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アーサー王伝説のプロット要素 | |
初登場 | ウェールズのトライアド |
ジャンル | ファンタジー |
物語内情報 | |
種類 | 架空の槍 |
物語要素 | アーサー王 |
ロンゴミニアド[1] (Rhongomyniad[1]) またはロンゴミアント (Rhongomiant[2]) [注釈 1]は、ウェールズのアーサー王伝説におけるアーサー王の槍である。その名は「槍 (rhon)」と「なぎ倒す (gomyniad)」の複合語に由来する[3][注釈 2]。
『キルッフとオルウェン』では、アーサーがキルッフに「望みの物を与えよう」と告げた場面で、例外的に与えることができないものの一つとしてロンゴミニアドの名を挙げている[6]。
Then said Arthur, "Since thou wilt not remain here, chieftain, thou shalt receive the boon whatsoever thy tongue may name, as far as the wind dries, and the rain moistens, and the sun revolves, and the sea encircles, and the earth extends; save only my ship; and my mantle; and Caledvwlch, my sword; and Rhongomyant, my lance; and Wynebgwrthucher, my shield; and Carnwenhau, my dagger; and Gwenhwyvar, my wife. By the truth of Heaven, thou shalt have it cheerfully, name what thou wilt.—en:s:The Mabinogion/Kilhwch and Olwen、強調は引用者による。
『ウェールズのトライアド』では、ロンゴミニアド(ロンゴミアント)は、アーサーの剣カラドヴルフ(カレドヴルフ)[7]およびアーサー王の短剣カルンウェナン[8]と並び、神から彼に与えられた神聖な武器の一つに数えられている。
神が彼に与えし神聖なる武器:彼の槍ロンゴミアント、剣カレドヴルフ、彼の短剣カルンウェナン—[9]
ジェフリー・オブ・モンマスによるラテン語の著作『ブリタニア列王史』では、アーサーの馬上槍がロン[10] (Ron[10]) という名で言及されている[11][12]。これはおそらく元のウェールズ語の名称の省略形である[13]。ジェフリーは、バドン山の戦い[14]でアーサーがこの馬上槍を携えていたと述べている。
ヴァースの著作『ブリュ物語』ではロワという名で言及されている[15]。これは「頑丈」を意味する[15]。
ラハモン[16]も著作『ブルート[16]』の中でモンマスと同様に呼んでいる。ラハモンは一節で(その武器の名は挙げていないが)、アーサーの槍はカーマーゼンでグリフィン (Griffin) という名の鍛冶師によって鍛えられたと述べている。ラハモンはまた、ロンがかつてはユーサー・ペンドラゴンのものであったと付け加えている。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 他のカナ表記として、森野 2019, pp. 21, xiiiでは「フロンゴマニアド」。
- ^ Padel (2013), p. 19 では「槍を打つ者 (Spear-striker)」[4]、Bruce (1998), p. 421 では「切断する槍 (Cutting Spear)」[5]、などとなっている。
出典
[編集]- ^ a b 「ロンゴミニアド」「Rhongomyniad」の表記はコグラン (1996), p. 302 にみられる。
- ^ Bruce 1998, p. 421.
- ^ 森野 2019, p. xiii.
- ^ Padel 2013, p. 19 "Rhongomyniad ('Spear-striker')"
- ^ Bruce 1998, p. 421 "RHONGOMYNYAD ("Cutting Spear") [Rhongomiant, Rhongomyniad]"
- ^ 森野 2019, pp. 21.
- ^ 「カラドヴルフ」(Caladvwlch) の表記はコグラン (1996), pp. 84, 114 にみられる。
- ^ 「カルンウェナン」(Carnwennan) の表記はコグラン (1996), p. 120 にみられる。
- ^ The Twenty-Four Knights of King Arthur's Court, cited by Celtic Literature Collective from Bromwich, Rachel (2014). Trioedd ynys Prydein: the triads of the island of Britain. Cardiff: University of Wales Press. ISBN 978-1-78316-305-2. OCLC 897028290
- ^ a b 「ロン」「Ron」の表記はコグラン (1996), p. 301 にみられる。
- ^ Geoffrey of Monmouth (1848), Giles, J.A., ed. (英語), Six Old English Chronicles/Geoffrey's British History/Book 9, ウィキソースより閲覧。 Chap. IV
- ^ コグラン 1996, p. 301.
- ^ Bruce 1999, p. 421.
- ^ 「バドン」の表記はコグラン (1996), p. 205 にみられる。
- ^ a b 原田 2013, p. 112.
- ^ a b 「ラハモン」「ブルート」の表記は以下の出典にみられる:ヴァルテール, フィリップ『アーサー王神話大事典』渡邉浩司(訳)、渡邉裕美子(訳)、原書房、2018年2月10日、p.427, 459頁。ISBN 978-4-562-05446-6。
参考文献
[編集]- コグラン, ローナン『図説アーサー王伝説事典』山本史郎(訳)、原書房、1996年8月18日。ISBN 978-4-562-04244-9。
- 『ウェールズ原典語訳 マビノギオン』森野聡子(編訳)、原書房、2019年11月16日。ISBN 978-4-562-05690-3。
- Padel, O J (2013). Arthur in Medieval Welsh Literature. University of Wales Press. ISBN 9780708326589
- Bruce, Christopher W., ed (1998). The Arthurian Name Dictionary. Taylor & Francis. ISBN 9781136755385
- Bruce, Christopher W., ed (1999). The Arthurian Name Dictionary. Taylor & Francis. ISBN 9780815328650
- 原野, 昇「アーサー王の生涯」『フランス中世文学名作選』白水社、2013年9月15日、99-172頁。ISBN 978-4-560-08320-8。 - ヴァース『ブリュ物語』のうちアーサー王に関する部分の翻訳。底本は Arnold, I. D. O.; Pelan, M. M. (1962). La partie arthurienne du Roman de Brut. Klincksieck