2012年ロンドンオリンピックのボクシング競技
2012年ロンドンオリンピックのボクシング競技(2012ねんロンドンオリンピックのボクシングきょうぎ)は7月28日から8月12日までエクセル展覧会センターで開催された[1]。国際ボクシング協会 (AIBA) 管轄。ロンドンオリンピックで初めてオリンピック種目に女子ボクシングが加わった。女子の開催が決まったことにより、オリンピックの26競技が男女開催となった[2]。
男子はフェザー級が廃止され10階級に再編され、女子はフライ級(48 - 51キロ)、ライト級(56 - 60キロ)、ミドル級(69 - 70キロ)の3階級で行われた[3]。
予選
[編集]各国代表は各種目1選手の出場が認められており、下記の大会の対象者が五輪の出場資格を得た。
- 2011年世界ボクシング選手権大会( アゼルバイジャン・バクー)各種目の優勝者[4]
- ワールド・シリーズ・オブ・ボクシング個人優勝者
- 各大陸予選
- 2012年世界女子ボクシング選手権大会( 中国・秦皇島市)の上位
競技日程
[編集]時間はイギリス夏時間(UTC+1)Aはアフタヌーンセッションで午後1時半から(8月9日のみ午後4時半から)Eはイブニングセッションで午後8時半開始となっている[5]。
P | 予選 | R | ラウンド16 | ¼ | 準々決勝 | ½ | 準決勝 | F | 決勝 |
日時 → | 28 | 29 | 30 | 31 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||||||||||
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種目 ↓ | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | A | E | E | A |
男子ライトフライ級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子フライ級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子バンタム級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子ライト級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子ライトウェルター級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子ウェルター級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子ミドル級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子ライトヘビー級 | P | R | ¼ | ½ | F | |||||||||||||||||||||||||
男子ヘビー級 | R | ¼ | ½ | F | ||||||||||||||||||||||||||
男子スーパーヘビー級 | R | ¼ | ½ | F | ||||||||||||||||||||||||||
女子フライ級 | R | ¼ | ½ | F | ||||||||||||||||||||||||||
女子ライト級 | R | ¼ | ½ | F | ||||||||||||||||||||||||||
女子ミドル級 | R | ¼ | ½ | F |
競技結果
[編集]男子
[編集]階級 | 金 | 銀 | 銅 |
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ライトフライ級 | 鄒市明 中国 (CHN) |
ケーウ・ポンプラユーン タイ (THA) |
パディー・バーンズ アイルランド (IRL) |
ダビド・アイラペチャン ロシア (RUS) | |||
フライ級 | ロベイシ・ラミレス キューバ (CUB) |
ツグスソグ・ニヤンバヤル モンゴル (MGL) |
マイケル・コンラン アイルランド (IRL) |
ミーシャ・アロイアン ロシア (RUS) | |||
バンタム級 | ルーク・キャンベル イギリス (GBR) |
ジョン・ジョー・ネビン アイルランド (IRL) |
清水聡 日本 (JPN) |
ラザロ・アルバレス・エストラーダ キューバ (CUB) | |||
ライト級 | ワシル・ロマチェンコ ウクライナ (UKR) |
韓淳喆 韓国 (KOR) |
ヤスニエル・トレド・ロペス キューバ (CUB) |
エブルダス・ペトラウスカス リトアニア (LTU) | |||
ライトウェルター級 | ロニエル・イグレシアス・ソトロンゴ キューバ (CUB) |
デニス・ベリンチク ウクライナ (UKR) |
ビンチェンツォ・マンギアカプレ イタリア (ITA) |
ウランチメグ・ムンフ・エルデネ モンゴル (MGL) | |||
ウェルター級 | セリク・サピエフ カザフスタン (KAZ) |
フレディ・エバンス イギリス (GBR) |
アンドレイ・ザンコボイ ロシア (RUS) |
タラス・シェレステュク ウクライナ (UKR) | |||
ミドル級 | 村田諒太 日本 (JPN) |
エスキバ・ファルカン ブラジル (BRA) |
アッボス・アトエフ ウズベキスタン (UZB) |
アンソニー・オゴゴ イギリス (GBR) | |||
ライトヘビー級 | エゴー・メコンチェフ ロシア (RUS) |
アディリベク・ニヤジムベトフ カザフスタン (KAZ) |
ヤマグチ・ファルカン ブラジル (BRA) |
オレクサンドル・グウォジク ウクライナ (UKR) | |||
ヘビー級 | オレクサンドル・ウシク ウクライナ (UKR) |
クレメンテ・ルッソ イタリア (ITA) |
テルベル・プレフ ブルガリア (BUL) |
ティムール・マンマドフ アゼルバイジャン (AZE) | |||
スーパーヘビー級 | アンソニー・ジョシュア イギリス (GBR) |
ロベルト・カマレレ イタリア (ITA) |
イヴァン・ディッコ カザフスタン (KAZ) |
マゴメドラサル・マジドフ アゼルバイジャン (AZE) |
女子
[編集]階級 | 金 | 銀 | 銅 |
---|---|---|---|
フライ級 | ニコラ・アダムズ イギリス (GBR) |
任燦燦 中国 (CHN) |
マーレン・エスパーザ アメリカ合衆国 (USA) |
メアリー・コム インド (IND) | |||
ライト級 | ケイティー・テイラー アイルランド (IRL) |
ソフィア・オチガワ ロシア (RUS) |
マブズナ・コリエバ タジキスタン (TJK) |
アドリアーナ・アラウージョ ブラジル (BRA) | |||
ミドル級 | クラレッサ・シールズ アメリカ合衆国 (USA) |
ナデザ・トロポワ ロシア (RUS) |
マリーナ・ヴォルノヴァ カザフスタン (KAZ) |
李金子 中国 (CHN) |
国・地域別のメダル獲得数
[編集]順 | 国・地域 | 金 | 銀 | 銅 | 計 |
---|---|---|---|---|---|
1 | イギリス (GBR) | 3 | 1 | 1 | 5 |
2 | ウクライナ (UKR) | 2 | 1 | 2 | 5 |
3 | キューバ (CUB) | 2 | 0 | 2 | 4 |
4 | ロシア (RUS) | 1 | 2 | 3 | 6 |
5 | アイルランド (IRL) | 1 | 1 | 2 | 4 |
カザフスタン (KAZ) | 1 | 1 | 2 | 4 | |
6 | 中国 (CHN) | 1 | 1 | 1 | 3 |
8 | 日本 (JPN) | 1 | 0 | 1 | 2 |
9 | アメリカ合衆国 (USA) | 1 | 0 | 1 | 2 |
10 | イタリア (ITA) | 0 | 2 | 1 | 3 |
11 | ブラジル (BRA) | 0 | 1 | 2 | 3 |
12 | モンゴル (MGL) | 0 | 1 | 1 | 2 |
13 | 韓国 (KOR) | 0 | 1 | 0 | 1 |
タイ (THA) | 0 | 1 | 0 | 1 | |
15 | アゼルバイジャン (AZE) | 0 | 0 | 2 | 2 |
16 | ブルガリア (BUL) | 0 | 0 | 1 | 1 |
インド (IND) | 0 | 0 | 1 | 1 | |
リトアニア (LTU) | 0 | 0 | 1 | 1 | |
タジキスタン (TJK) | 0 | 0 | 1 | 1 | |
ウズベキスタン (UZB) | 0 | 0 | 1 | 1 | |
合計 | 13 | 13 | 26 | 52 |
結果概要
[編集]この大会では事前に、キューバのそれまでの圧倒的な勢いが衰え、米国の選手層も薄くなっていたことから、ロシア、ウクライナ、英国が勢力の中心となることが予想されていた[6]。キューバ失速の背景には、トルコ系ドイツ人がキューバのアマチュアエリートたちをプロに引き抜いてきた事実がある[7]。
米国男子は前回の北京大会での銅メダル1つからさらに後退し、9階級に出場しながらも準々決勝に進出したのはウェルター級のみで、1904年のセントルイス大会以来初めてメダルをひとつも獲得できずに終わった[8]。
その一方で1968年のメキシコシティ大会以来メダルを獲得していなかったブラジル[9]と日本が[8]、男子競技でそれぞれ2つのメダルを獲得した。
開催国となった英国は3つの金メダルを含む計5つのメダルを獲得し、同国のボクシング競技には次大会へ向けて1,380万ポンド(約18億6,300万円)の強化費が配分されることになったが、これはそれまでの4年間と比べて44%増加し、他競技と比べて最大の伸び率であった[10]。
大会閉幕後まもなく5名の米国代表選手(スーパー・ヘビー級のドミニク・ブレーザーレ、ライト・ヘビー級のマーカス・ブラウン、ミドル級のテレル・ガウシャ、ウェルター級のエロール・スペンス、フライ級のルーシー・ウォーレン)のプロデビューが発表された[11]
買収疑惑の再燃
[編集]2012年8月1日に行われた男子バンタム級の2回戦では、清水聡と対戦したマゴメド・アブドゥルハミドフが3回に6度倒れたもののポイント勝ちを宣言され[12]、会場はこの結果に大ブーイングで応えた[13][映像 1]。
清水陣営は規定の500米ドルを払って抗議し[13]、AIBAは少なくとも3度はダウンと裁定されて3回の途中で試合は終わっていなければならなかったと判断して清水のRSC勝ちと結果を修正し、この試合で主審を務めたトルクメニスタン人はオリンピックの審判メンバーから追放された[12]。
オリンピック開催に先立って英国放送協会 (BBC) は、AIBAが実質的な母体となっているワールド・シリーズ・オブ・ボクシング (WSB) の幹部がアゼルバイジャンの人間から投資を受け、オリンピックのボクシング競技において同国の金メダルを2つ保証したという買収疑惑を報道していたが、アブドゥルハミドフがアゼルバイジャンの選手であったことから、この不正疑惑が再燃し、多くのメディアがこの試合の経緯と買収疑惑を関連付けて報道した[14][15][16][17]。
脚注
[編集]- ^ “Boxing” (2009年). 2008年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月14日閲覧。
- ^ 新体操とアーティスティックスイミングは女子のみ採用だが、それぞれ体操競技、水泳という枠の中に数えられているので、男子の不採用はメディアなどで問題視されていない。男子新体操界は五輪正式採用を訴えている。
- ^ “IOC approves new events for 2012 London Olympic Games” (2009年). 2009年8月14日閲覧。
- ^ “Qualification system” (PDF). 2011年10月25日閲覧。
- ^ “Olympic sport competition schedule”. ロンドンオリンピック・パラリンピック組織委員会. 12 Mar 2012閲覧。
- ^ 原功 (2012年7月24日). “【ボクシング】注目はミドル級・村田諒太。 44年ぶりの五輪メダルなるか?”. web Sportiva. p. 2. 2012年8月15日閲覧。
- ^ 善理俊哉 (2012年8月17日). “村田株、1億円超えのバブル期へ”. せりしゅんや的アマボク通信 2012年8月18日閲覧。
- ^ a b 草野克己 (2012年8月14日). “初めてのメダルゼロ 米国、五輪ボクシング”. 福井新聞. 2012年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月15日閲覧。
- ^ Patrick Johnston (2012年8月6日). “Brazil wait 42 years for a medal then two arrive” (英語). ロイター. 2012年8月16日閲覧。
- ^ “英、リオ五輪に向け強化費…ボクシング44%増”. 読売新聞 (2012年12月19日). 2012年12月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 米国五輪代表5人が一挙にプロデビュー Boxing News(ボクシングニュース)
- ^ a b Elchin Suleymanov (2012年8月5日). “Oympics boxing: Azeri official rejects cheating claims” (英語). 英国放送協会. 2012年8月5日閲覧。
- ^ a b “Olympics boxing: Japan win appeal after controversial loss” (英語). 英国放送協会 (2012年8月5日). 2012年8月5日閲覧。
- ^ 時事通信社 (2012年8月5日). “五輪ボクシングのレフェリー追放 清水戦の裁き問題視”. 朝日新聞. 2012年8月5日閲覧。
- ^ “五輪ボクシング:審判トラブルの清水聡 恩師らが声援”. 毎日新聞 (2012年8月4日). 2012年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月5日閲覧。
- ^ “Olympic boxing ref expelled as bribe allegations emerge” (英語). NYPost.com (2012年8月2日). 2012年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月5日閲覧。
- ^ Padraic Halpin (2012年8月1日). “UPDATE 1-Olympics-Boxing-Judges under fire amid fix claims” (英語). ロイター. 2012年8月5日閲覧。
映像資料
[編集]- ^ Satoshi Shimizu vs Magomed Abdulhamidov - Bantamweight Olympic Boxing 2012 (試合直後の会場の様子). 会場観戦者によるYouTube動画. 2 August 2012. 2012年8月5日閲覧。
外部リンク
[編集]- 国際オリンピック委員会 - 2012 ボクシング公式結果
- ロンドンオリンピック2012 ボクシング 日本オリンピック委員会公式ウェブサイト
- 2012年ロンドンオリンピックのボクシング競技 - Sports-Reference.com (Olympics) のアーカイブ (英語)
- 2012年ロンドンオリンピックのボクシング競技 - Olympedia(英語)