ワイドスクリーン・バロック
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ワイドスクリーン・バロック(Wide-screen Baroque)はブライアン・オールディスが提唱したサイエンス・フィクションの一部の作品群を表す用語である。
オールディスはチャールズ・L・ハーネスの『パラドックス・メン』を評して、その序文でワイドスクリーン・バロックという言葉を用いた[1]。オールディスによれば、『パラドックス・メン』は
時間と空間を手玉に取り、気の狂ったスズメバチのようにブンブン飛びまわる。機知に富み、深遠であると同時に軽薄 — ブライアン・W・オールディス、『十億年の宴』p.305より 浅倉久志訳
な小説であり、この特徴をワイドスクリーン・バロックとしている。
代表的なワイドスクリーン・バロック作品としてオールディスはE・E・スミス、アルフレッド・ベスターやA・E・ヴァン・ヴォークトの作品を挙げている[1]。日本ではバリントン・J・ベイリーの作品も当てはまるとされている[2][3][4]。
日本ではオールディスのSF史『十億年の宴』が1980年に翻訳された後、上記のカテゴリの作品に対してSFファンの間で使用される言葉になったが、日本以外では一般的ではない[3]。また、1981年に邦訳されたクリス・ボイス『キャッチワールド』の安田均による解説において、ワイドスクリーン・バロックについて論じられている[5]。
SF作家の大原まり子・田中啓文は、自身の作品の一部はワイドスクリーン・バロックであるとしている。また、草野原々は、自身のデビュー作である「最後にして最初のアイドル」を「実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSF」と形容している。
主な作家
[編集]- E・E・スミス
- A・E・ヴァン・ヴォークト
- アルフレッド・ベスター
- チャールズ・L・ハーネス
- バリントン・J・ベイリー
- サミュエル・R・ディレイニー[要出典]
- スタニスワフ・レム[要出典]
- スティーヴン・バクスター[要出典]
- アレステア・レナルズ[要出典]
- 大原まり子
主な作品
[編集]- 武器製造業者 - A・E・ヴァン・ヴォークト作[4][6]。
- 虎よ、虎よ! - アルフレッド・ベスター作[4][6]。
- タイタンの妖女 - カート・ヴォネガット
- キャッチワールド - クリス・ボイス作[4][6]。
- カエアンの聖衣 - バリントン・J・ベイリー
- 果しなき流れの果てに[要出典] - 小松左京
- 天元突破グレンラガン[7][8]
- キルラキル[7][8]
- リック・アンド・モーティ[要出典]
- 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト[注 1]
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 『十億年の宴』p.305
- ^ 『カエアンの聖衣』(ハヤカワ文庫)解説(大野万紀)
- ^ a b 『一兆年の宴』p.328 (山岸真による解説のパート)
- ^ a b c d 山本弘『トンデモ本?違うSFだ!』洋泉社、2004年、p.145
- ^ 『カエアンの聖衣』(ハヤカワ文庫、1983年)解説(大野万紀)
- ^ a b c 大原まり子「ワイドスクリーン・バロック」『SF入門』日本SF作家クラブ編、早川書房、2001年、pp.94-95
- ^ a b 中島かずき [@k_z_ki] (2016年3月15日). "新訳『カエアンの聖衣』 に巻末エッセイを書かせてもらいました。解説というのはおこがましい個人的な思いです。でも、本作は空前絶後の大怪作ですので。『グレンラガン』も『キルラキル』もこの作品に出会っだからこそ着想できたのです。…". X(旧Twitter)より2023年12月15日閲覧。
- ^ a b バリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣〈新約版〉』(中島かずきによるあとがき) - 実はこの作品(グレンラガン)、僕なりのワイドスクリーン・バロックがやりたかったのだ。バリントン・J・ベイリーの『カエアンの聖衣』が、"服"というガジェットであれだけの法螺話がやれたように、今回"ドリル"というキーワードでどこまで大法螺がふけるか挑戦してみたかった。
- ^ “『劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト』で大流行!最近話題の概念「ワイドスクリーンバロック」ってなに!?”. 水槽脳の栓を抜け SF作家 草野原々のブログ (2021年6月23日). 2023年12月15日閲覧。
参考文献
[編集]- ブライアン・W・オールディス『十億年の宴:SF―その起源と発達』浅倉久志 他 共訳、東京創元社、1980年。
- ブライアン・W・オールディス『一兆年の宴』浅倉久志訳、東京創元社、1992年。ISBN 4-488-01512-3。