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乳の親

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

乳の親(ちーのうや[1]、ちちのうや[2]、ちちのおや[3])は、沖縄県に伝わる女の妖怪。外見は優しい顔立ちの女性で、洗いざらしのような黒髪を長く垂らしており[3]、乳房が非常に大きい[4]国頭村大宜味村には、小児を葬るための童墓わらべばかというがあるが、ここには乳の親がいて、葬られた子供に乳を飲ませて養うと信じられている。そのために6歳以下の子供が死ぬと、乳の親に頼むために重箱を盛って祀るという[2]

一方で今帰仁村などでは、童墓や水中にいる乳の親が、まだ生きている子供を奪い去るといわれる。幼児に鏡を見せると、水面を鏡と思って水面に行きたがり、その挙句に乳の親に引きずり込まれるので、鏡を見せるべきではないとされている[1]

沖縄には以下のような話もあり、これらは乳の親によるものといわれている。

  • ある子供が病床から回復しかけていた頃、乳の大きな女が現れ「こっちおいで」と招きながら姿を消した。とたんに子供は容態が急変し、やがて命を落とした[5]
  • 素性の知れない洗い髪の女が子供を抱いて、店に菓子を買いに来ていた。その頃、里外れの墓からよく赤ん坊の声が聞こえたが、その女が店を訪れているときのみ声は聞こえなかった。人々が墓を開けてみると、中では生きている赤ん坊が泣いていた[6]

脚注

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出典

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  1. ^ a b 島袋 1974, p. 348.
  2. ^ a b 中山 1933, p. 149.
  3. ^ a b 崎原 1998, p. 8.
  4. ^ 岩瀬博, 福田晃 編『民話の原風景: 南島の伝承世界』世界思想社、1996年、99頁。ISBN 4-7907-0605-2 
  5. ^ 島袋 1929, p. 160.
  6. ^ 島袋 1929, p. 161.

参考文献

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  • 島袋源七 著「山原の土俗」、池田彌三郎et al. 編『日本民俗誌大系』 第1巻、角川書店、1974年、348頁。ISBN 978-4-04-530301-2 
  • 中山太郎 編『日本民俗學辭典』昭和書房、1933年、149頁。 NCID BN05961778 
  • 島袋源七『山原の土俗』鄉土硏究社、1929年、159-161頁。 NCID BN14777805 
  • 崎原恒新「沖縄の妖怪変化」『南島研究』、南島研究会、1998年10月1日、全国書誌番号:00094446