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亀淵迪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

亀淵 迪(かめふち すすむ、1927年 - 2023年11月19日[1])は、日本物理学者。専門は場の量子論、特に繰り込み理論の研究で知られる。学位は、理学博士筑波大学名誉教授。坂田昌一に師事。石川県出身。

略歴

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旧制小松中学旧制四高を経て、1950年に名古屋大学理学部物理学科を卒業後、名古屋大学大学院理学研究科に進学。1951年 梅澤博臣と協力して、近似によらない荷電繰り込みの一般論を作り、副産物として、電磁場に対する電流(カレント)の応答公式(後に「線形応答理論の久保公式」と呼ばれる式の原型)や、カレントの応答関数の相対論的不変な表示公式(後の「レーマン Lehmann のスペクトル表示」と呼ばれる式と同等)を導入した(梅澤・亀淵、久保、レーマンの研究成果の位置付けについては、高橋康「昔話 名古屋における場の理論」素粒子論研究 2007年 114巻 6号 pp.35-48 の p.47 の記述も参照[2])。1952年 場の量子論の繰り込み可能性の条件を与えた(坂田昌一、梅澤博臣との共同研究)。1954年 理学博士号(旧制)取得。博士論文の題目は「素粒子相互作用の構造に就いて」。その後、コペンハーゲン大学ニールスボーア研究所(1956年~1958年)、ロンドン大学インペリアルカレッジ(1958年~1963年)で研究。その後は、東京教育大学(現筑波大学)の教官(助教授教授)となり、同大の朝永振一郎博士の後継者の一人として研究を進めた。また、大貫義郎と協力して、パラ統計に基づく場の量子論の具体化を行った。2008年素粒子メダル受賞(受賞理由:「くりこみ可能性に基づく相互作用の分類」)。

未完となっていた朝永博士の名著「量子力学」の最終巻(第三巻)を、朝永博士の遺稿を元にまとめ、1989年に出版したことでも知られる(角運動量とスピン―『量子力学』補巻 みすず出版)。

著書(共著含む)

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  • 1951年 “The vacuum in quantum electrodynamics”(H. Umezawaとの共著論文)Progress of Theoretical Physics Vol. 6, pp.543–558[3]. この中の p.548 (13), (14)式が線形応答公式、p.551 (22), (23), (24)がスペクトル表示公式にあたる。
  • 1952年 “On the Structure of the Interaction of the Elementary Particles, I −The Renormalizability of the Interactions−”(共著論文:S. Sakata, H. Umezawa, and S. Kamefuchi)Progress of Theoretical Physics, Vol. 7, pp.377-390[4]
  • 1982年 Quantum Field Theory and Parastatistics(大貫義郎と共著)(東京大学出版会,Springer Verlag)[5]
  • 1989年 角運動量とスピン―『量子力学』補巻(朝永振一郎、亀淵迪、小寺武康、原康夫)(みすず書房[6]
  • 1993年 物理と実在―創り出された自然像(グレゴリー著、亀淵迪 訳)(丸善
  • 1996年 物理法則対話(岩波科学ライブラリー43)(岩波書店[7]
  • 2003年 量子力学特論(朝倉物理学大系13)(表実と共著)(朝倉書店[8]
  • 2016年 くりこみ理論誕生のころ(岩波書店『科学』2016年 3, 4, 5, 7, 8月号に連載)
  • 2018年 素粒子論の始まり(日本評論社[9]
  • 2020年 エッセイ集 物理村の風景(日本評論社[10]

出典

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  1. ^ 朝倉書店 2023年11月24日9:44のポスト - X
  2. ^ 高橋康「昔話 名古屋における場の理論」、2020年3月30日閲覧 
  3. ^ Umezawa, Hiroomi; Kamefuchi, Susumu (1951-08-01). “The Vacuum in Quantum Electrodynamics” (英語). Progress of Theoretical Physics 6 (4): 543–558. doi:10.1143/ptp/6.4.543. ISSN 0033-068X. https://doi.org/10.1143/ptp/6.4.543. 
  4. ^ Sakata, Shoichi; Umezawa, Hiroomi; Kamefuchi, Susumu (1952-04-01). “On the Structure of the Interaction of the Elementary Particles, I: The Renormalizability of the Interactions” (英語). Progress of Theoretical Physics 7 (4): 377–390. doi:10.1143/ptp/7.4.377. ISSN 0033-068X. https://doi.org/10.1143/ptp/7.4.377. 
  5. ^ Ohnuki, Y.; Kamefuchi, S. (1982) (英語). Quantum Field Theory and Parastatistics. Berlin Heidelberg: Springer-Verlag. ISBN 978-3-642-68624-5. https://inis.iaea.org/search/search.aspx?orig_q=RN:14759375 
  6. ^ 角運動量とスピン:みすず書房”. www.msz.co.jp. 2020年3月26日閲覧。
  7. ^ 物理法則対話 - 岩波書店. http://www.iwanami.co.jp/book/b266017.html 
  8. ^ 朝倉書店| 量子力学特論”. www.asakura.co.jp. 2020年3月26日閲覧。
  9. ^ 素粒子論の始まり|日本評論社”. www.nippyo.co.jp. 2020年3月26日閲覧。
  10. ^ 物理村の風景|日本評論社”. www.nippyo.co.jp. 2023年3月1日閲覧。

外部リンク

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