児童ポルノ単純所持規制条例
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児童ポルノ単純所持規制条例(じどうポルノたんじゅんしょじきせいじょうれい)は、児童ポルノの単純所持を規制する条例である[1]。
概要
[編集]1999年に児童ポルノ禁止法が制定・施行された際に、児童ポルノについて頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列することについて刑事罰が規定され、前述の目的で所持することについても刑事罰が規定された。しかし、前述の目的に該当しない児童ポルノの所持(単純所持)は刑事罰の対象外であった。
そこで2005年から2013年にかけて、児童ポルノの単純所持に関して刑事罰を規定する条例が制定された。
2014年6月に児童ポルノの単純所持に刑事罰を規定する児童ポルノ禁止法改正案は成立し、2015年7月に刑事罰規定が施行された。それを受け、各地方自治体は児童ポルノ単純所持規制条例を廃止した。
各地方自治体の条例
[編集]- 奈良県条例
- 奈良県では2004年に発生した奈良小1女児殺害事件の犯人が小児性愛者であったことをきっかけに、13歳に満たない「子どもポルノ」の単純所持を禁止し、違反者には30万円以下の罰金または拘留、科料に処すると規定する「子どもを犯罪の被害から守る条例」が2005年7月に制定され、同年10月に刑事罰規定が施行された[2]。「子どもポルノ」については年齢が13歳未満である他は児童ポルノ禁止法(2014年改正前のもの)による「児童ポルノ」の定義と同一である[3]。
- 2005年11月1日に奈良県生駒市在住の男が11歳女児の出演したポルノDVDを自宅に所持していたとして、同条例が初めて適用されて同年12月19日に略式起訴され罰金5万円が言い渡された[2][4]。
- 京都府条例
- 京都府では2010年に知事選挙で三選した山田啓二が選挙公約で「日本で一番厳しい児童ポルノ規制条例」の制定を掲げていたことがきっかけで、「児童ポルノ」の単純所持に刑事罰を規定した「京都府児童ポルノの規制等に関する条例」が2011年10月に制定され、2012年1月に刑事罰規定が施行された[3]。なお破棄命令の対象となる「児童ポルノ」については「1号ポルノ[注 1]」「2号ポルノ[注 2]」はそのまま対象であるが、「3号ポルノ[注 3]」は条件付きで対象となっている。また13歳未満のわいせつ画像や動画の購入、および有償でインターネットからダウンロードして保存する行為について、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定された[5]。
- 2012年8月10日に京都府在住の3人について、13歳未満の女児が映るDVD計25枚(3万5100円)を千葉県松戸市の販売業者のサイトを通じて同年2月から5月にかけて購入した容疑で書類送検され、同条例の初適用と報道された[6]。
- 栃木県条例
- 栃木県では13歳に満たない「子どもポルノ」の単純所持を禁止し、栃木県公安委員会違反者に破棄命令等を出すことができ、破棄命令等に従わない者については30万円以下の罰金に処すると規定する「栃木県子どもを犯罪の被害から守る条例」が2013年3月に制定され、同年7月に刑事罰規定が施行された。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 児童ポルノ禁止法第2条第3項第1号に規定された「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」。
- ^ 児童ポルノ禁止法第2条第3項第2号に規定された「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」。
- ^ 児童ポルノ禁止法第2条第3項第3号に規定された「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」であり、さらに「衣服を全部を付けない姿態を描写したもの又は性器若しくは肛門を描写したものに限る」との条件が付加されている。
出典
[編集]- ^ 西垣真知子「子どもの性的保護と刑事規制―児童ポルノ単純所持規制条例の意義と課題」『龍谷大学大学院法学研究』第15号、龍谷大学大学院法学研究編集委員会、2013年7月30日、69頁、hdl:10519/5091、ISSN 1345-4544、NAID 110009605591、OCLC 5528659654、国立国会図書館書誌ID:024848513。
- ^ a b 「「子ども条例」初適用 児童ポルノ「所持」容疑 奈良県警 【大阪】」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年11月10日。
- ^ a b 園田寿 (2014), p. 94.
- ^ 「児童ポルノ所持、罰金5万円命令 簡裁、23歳の男に /奈良県」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年12月20日。
- ^ 「京都府 児童ポルノ規制条例案可決 知事が破棄命令、罰金も」『読売新聞』読売新聞社、2011年10月8日。
- ^ 「児童ポルノ購入者に条例初適用 京都府警【大阪】」『朝日新聞』朝日新聞社、2012年8月11日。
参考文献
[編集]- 園田寿『改正児童ポルノ禁止法を考える』日本評論社、2014年10月17日。ASIN 4535520577。ISBN 978-4-535-52057-8。 NCID BB16984023。OCLC 893835805。全国書誌番号:22488337。