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凝縮熱伝達

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

凝縮熱伝達(ぎょうしゅくねつでんたつ)とは、伝熱現象のうち、低温の固体表面で蒸気凝縮を伴うものである。自然対流や強制対流による伝熱よりも熱伝達率が高くなるため、熱交換器など工業的に広く利用されている。

分類

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膜状凝縮
凝縮液が固体面上に薄膜状に広がり、重力によって連続的に流れるもの。液膜の厚さなどの状態が熱抵抗の大きさを支配し、鉛直面に水の膜ができる場合熱伝達率は3×104 W/(m2 K)程度かそれ以下となる[1]
滴状凝縮
固体面上に液滴の形で付着し、合体を伴いながら滴の形のまま流れるもの。熱伝達率は高く、鉛直面に水の滴ができる場合、熱伝達率は3×105 W/(m2 K)程度かそれ以下となる[1]。そのため伝熱促進の点から望ましい形態であるが、滴状凝縮を長時間持続させることは一般に困難で、時間が経つと膜状凝縮に移行してしまうことが多い[2]

ヌセルトの水膜理論

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膜状凝縮の理論的解析には、ヌセルトの水膜理論(1916)が知られている。実際の熱伝達率は理論値より高くなることが多いが、この理論は良い近似を与える。

この理論では以下の仮定を置くことで現象をモデル化している[2]

  • 冷却面温度TW は一定
  • 気液界面の液温は飽和蒸気温度TS で一定
  • 冷却面は平滑、気液界面も滑らか(波立ったりしない)
  • 液膜は通常薄いことから、凝縮液膜内の流れは層流
  • 液膜内の対流熱伝達は無視し、熱は熱伝導のみで伝わる
  • 蒸気流速は小さく、気液界面にせん断力は作用しない
  • 蒸気は純粋の乾き飽和蒸気
  • 物性値は一定

鉛直な冷却面状で蒸気が凝縮し、液膜ができる状況を考える。液膜発生点を起点に、冷却面に平行下向きにx軸を、それに垂直にy軸を取る。位置x における液膜厚さδ は次で表される。

ただし、右辺の各無次元数

  • :顕潜熱比
  • グラスホフ数
  • プラントル数

であり、

である。

位置x における局所熱伝達率と、液膜上端からx までの平均熱伝達率はヌセルト数の形で次のように表される。

また、水力直径4δ と平均流速umean で定義される膜レイノルズ数

を用いると、平均熱伝達率hmean は次式で表される[1][3]

ここで左辺は凝縮数と呼ばれる無次元数である。

冷却面が鉛直から角度θ だけ傾いている場合は、以上の議論のうち重力加速度gg cosθ に置き換えればよい。

凝縮液密度ρl が蒸気密度ρv より十分大きい場合、グラスホフ数は次のガリレイ数に置き換えることができる。

乱流膜状凝縮

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膜レイノルズ数が50程度以上になると、膜の表面にさざ波が生じ、熱伝達率は高くなる[1]

ただし

は長さの次元をもつパラメータで、σ表面張力である。

膜レイノルズ数が1800以上[2]、またはReδ ~ 5200/Prl1.04 [1]に達すると乱流に遷移すると言われている。乱流液膜の場合、層流とは逆に膜厚の増加に伴い平均熱伝達率は上昇する。実験式として以下がある。

  • [2]
  • 一様熱流束冷却面上の、一部に乱流液膜を含む膜状凝縮において [1][3]

滴状凝縮

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滴状凝縮は膜状凝縮より高い伝熱性能が得られるが、現象が複雑であるため研究は発展途上であり、熱伝達率の整理式もまだ得られていない。

脚注

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  1. ^ a b c d e f 相原利雄『エスプレッソ伝熱工学』裳華房、2009年、148-159頁。ISBN 978-4-7853-6023-8 
  2. ^ a b c d 望月貞成; 村田章『伝熱工学の基礎』日新出版、2000年、161-172頁。ISBN 4-8173-0166-X 
  3. ^ a b 菊池義弘; 松村幸彦『伝熱学』共立出版、2006年、130-145頁。ISBN 4-320-08156-0