利用者‐会話:東 遥/原稿/架空請求詐欺

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架空請求詐欺(かくうせいきゅうさぎ)とは、根拠のない請求を行い金品を騙し取ることをいう。 刑法としては、架空の請求を行った者に対して詐欺あるいは恐喝罪が適用されることがある。

概要[編集]

根拠のない債務を恰も存在するかの様に装い、その弁済を要求する。具体的には利用した事の無い情報サービスについて、業者が一方的に情報サービスの消費があった事を主張し、その利用料を請求するのが典型的な形態である。

相手に請求を行う手法としては、以前にサービスを利用したことのある顧客リストを基に請求を行う、何らかの名簿や個人情報が流出したものを利用して請求を行う、個人情報収集用のWEBページに入力された個人情報を基に請求を行う、名簿業者から何らかの名簿や、メールアドレスのリストを購入して無差別に請求を行う、更には、ショートメッセージサービスや電話番号で順番に請求して廻るものがある。

請求の名目としては、ダイヤルQ2利用料、ツーショットダイヤル利用料、出会い系サイト利用料、携帯の有償サイト利用料、有償ホームページの利用料などを挙げ、これら有料のサービスや情報を利用したと一方的に主張する手法が長く用いられている。近年は、健康保険に関わる手数料や保険料の請求、不正な楽曲ダウンロードによって被った損害の賠償を請求する手口もある。

業者から被害者への連絡方法としては、葉書や封書等の郵送によるもの、電子メールショートメッセージサービスによるもの、架電によるものがある。被害者への請求にあたっては、指定期日迄に業者の提示する金額を指定の銀行口座に振り込むように要求し、さもなければ自宅や職場を訪問して直接利用料金の回収を行う、法的手段に訴えて給与等の差し押さえを行う、信用情報機関に不利な情報を登録すると言明して、被害者に強硬な態度で迫る。

また、郵送や、電子メールによる連絡では、指定金額を指定銀行口座に振り込む様に要求する他に、業者管轄の電話へ架電する様に被害者に要求する事も多い。この場合には、被害者の情報を取得するのと平行して、口頭で恫喝を加えたり、法律用語を弄して被害者の契約の意志はともかく契約は既に成立しており債務が存在すると錯誤させて、被害者に不利な信用情報の登録を示唆して確実に支払いを行わせる。

携帯電話インターネットの普及後は、囮のサイトやWEBページを設置し、無償と偽ってサービスを提供しつつ被害者の個人情報を登録させて、後から料金の発生を主張したり、利用者に認識させた額面以上の請求を行うこともある。これらは、厳密には不正請求に区分される。

所謂ワンクリック詐欺では、それが契約行為であるという事を認識させずに所定のボタンをクリックさせたり、所定のページを閲覧させ、それを以て契約の成立と利用料の発生を主張する。業者の視点では正当な請求であるが、被害者の視点ではもとより契約の意志がなく利用する認識も無いので架空請求と見なせる。この紛争の解決には電子消費者契約法の適用が検討される。詳細はワンクリック詐欺を参照のこと。

この他に、金額に見合わない商品を被害者の注文や同意無く代金引換郵便で送りつけて、家族の誰かが注文した物と錯誤させて、商品を引き取らせて商品代金をせしめる手法も旧くからあり、これも改めて架空請求詐欺の内に含める事もある。

発祥[編集]

個人を相手に根拠がない請求を行う詐欺行為については、規模は小さいながらも古くから存在した。テレクラダイヤルQ2サービスが開始されてから以降、電話を介した有償サービス等の利用料金請求を行う事例が散見された。テレクラの料金が未払いであるとか、所謂アダルト番組を利用したと主張し、数万円程度を請求する事で、被害者が外聞を気にして家族や知人等に相談することを躊躇らわせ、また、多少の金で解決できると期待を抱かせて支払わせる。当初は、テレクラやダイヤルQ2等の顧客名簿を入手して請求して廻り、以前に同様のサービスを使った心当たりのある被害者に、その未払いを請求された等と錯誤させる事が主流であった。尚、ダイヤルQ2の番組の利用料の回収はNTTが行い、業者が直接回収する事は無いが、被害者がその事を承知していないのにつけ込んだり、NTTの回収分以外にも料金が発生していると主張して請求する。

展開[編集]

業者による請求の口上の中に住居や会社に押しかける旨の文言を盛り込むことで、架空の紛争を解決する途上で被害者がアダルト情報業者や、テレクラ・ツーショットダイヤルの業者から請求を受けている事実を家族はもとより会社に知られるリスクを負わせる。これにより、リスク回避の為に支払いに至らしめる。

他人に知られるリスクを負わせて支払いに応じさせる手法は、斯様なサービスを利用したことがない被害者にも適用する事が出来る。被害者にとっては絶対に有り得ない請求であっても、家族や会社に斯様な紛争を知られる架空のリスクを負わせる一方で、多少の金銭で早期に解決できるメリットを暗黙に提示し、被害者に心当たりがない請求であっても筋を通して紛争で拗らせるよりは多少の金銭で穏便且つ早急に解決できると期待させて支払わせる。ここから、請求する対象者がサービスを利用した事の有る無しにかかわらず、広く請求を行う手法が広まった。

平成11年のサービサー法の施行と、インターネットや携帯電話の普及とが相俟って、携帯電話の有償サイトや、パソコンによる有償WEBページの利用を主張し、その利用料債権を譲渡された債権管理回収業を名乗って請求を行う手法が主流となった。適当に入手した個人情報に基づいて葉書を送付し、その中で債権を譲渡されたと主張し、その弁済を求める。法務省認可の債権管理回収業者と名乗る事で、自身の正当性を印象づけ、請求の信憑性を高める。

また、サービスを提供する事業者自体を名乗らず、債権を譲渡された債権管理回収業者を名乗ることで、単に債権を購入したのでその根拠は承知していないと説明して、請求の根拠となるサービス消費の詳細な履歴を開示する義務を回避する一方で、債権の存在と所有を正当化する。

法律上は債権譲渡を行う際には、債務者にその旨を通知する義務があるが、当該詐欺の実行にあたっては、その様な手続きは行われず、被害者から見れば心当たりの無い業者から心当たりのないサービスについて突然に弁済の要求が来る様に見える。

請求の常套句として、再三請求の連絡を行ったものの誠意ある対応が得られず、やむなく最後の連絡をとるに至ったと説明し、数日以内に所定金額を支払わねば自宅や会社に直接回収に赴く、あるいは法的手段に訴え、債権回収のために資産・給与の差し押さえを実行する最後通牒の形式で請求を行う、これにより、重大な結果に至った責任を被害者に負わせ、被害者自身の不明・不誠実で他人に迷惑をかけたと呵責の念を抱かせると共に、返済期限を短く切って慌てさせて、冷静に対処することを妨げる効果を狙う。また、信用調査機関に事故記録が登録され、以後キャッシュカードクレジットカードの使用や住宅ローンに差し障りが生ずると説明し、もう後が無い状況を演出する。

被害者への連絡[編集]

被害者への連絡方法としては、葉書や封書等の郵送によるもの、電子メールショートメッセージサービスによるもの、架電によるものがある。

郵送による架空請求[編集]

葉書で架空の利用料を指定銀行口座に振り込む様に要求する手法に始まり、後に支払い手続きを名目に被害者から業者に電話連絡をするよう要求する手法も用いられる様になった。

当初は、ダイヤルQ2等のサービスを利用した顧客リストを入手して、根拠のない請求を行う葉書を送付する例が報道された。サービスを利用した覚えがあれば、料金の未払いがあったものと錯誤して支払いを受ける可能性を期待できる。1990年代末より、携帯電話の有料サイトの利用料を請求する例が主流となった。携帯電話の広汎な普及を背景に、多くの人が各種の情報サイトを訪れた曖昧な記憶があることを前提とする。その中に有償のサイトがあったと錯誤する事や、未払いがあったと錯誤する事を狙って、適当なリストを用いて、片っ端から送付する。そのため携帯電話を所有していない人に対して携帯向け有料サイトの利用料金の請求が届く滑稽な現象まで起きた。同様に、パソコンインターネットの普及を背景に、有償ページの閲覧、有償情報の利用を主張して、被害者に情報利用料を請求する手法も出てきた。

被害者に対する要求も、当初は、指定金額を指定の銀行口座に直接振り込む様に求めていたが、後には電話で連絡を取るように仕向ける事も行われるようになった。例えば、請求金額の変動や個人情報の保護を理由に敢えて請求金額を表示せず、電話連絡で通知するとして、連絡する様に仕向ける例もあった。一体どんな請求が為されているのか判らず被害者が不安に陥り、確認したくなる心理を利用する。

架空請求の手口が周知されると「本請求は最近問題になっている架空請求ではなく、真に債務が確認された方にのみ送付している」の類の注意書きを添える架空請求も見られた。また「請求に心当たりが無い場合には確認・訂正のために連絡を請う」と言葉巧みに連絡する様に仕向ける例もある。

その他に、各種代金の未納や納税不足等、様々な名目をつけて連絡を要求する手口へと広まり、2006年に入ってからは「国民健康保険庁」を名乗り、恰も健康保険を管轄する組織であると誤認させて、健康保険における被保険者資格の停止・剥奪を示唆して連絡を強いる手口も用いられている。

電子メールによる架空請求[編集]

WEBページの中に掲示されている電子メールアドレスを収集したり、漏洩したメールアドレスのリストや、名簿業者から購入したメールアドレスのリストを用いたり、個人情報収集用のWEBページに入力されたアドレスを元にして、電子メールにて根拠のない請求の通知を行う。メールが使える人の大半はパソコンを所有している事から、有料のWEBページを閲覧した、有償の情報を利用したと主張して、架空の請求を行う。指定金額を指定の銀行口座に直接振り込む様に求める他に、電話で連絡を取るように仕向ける事も行われる。

有効な電子メールアドレスの収集・選別[編集]

入手したリストのメールアドレスに宛て単に請求の通知を行って廻るのみならず、有効なメールアドレスを選別する手法も用いられる。最も簡便な手段の例として、業者が運営する有料ページに被害者が仮登録されていると通知する方法がある。併せて、数日以内に解約をしないと本契約に移行し、利用料が発生すると説明して業者のページにアクセスを求める。ネットサーフィン中に何らかの登録をしたかもしれないという被害者の曖昧な記憶につけいり、且つ、既にメールアドレスを入力して知られているのだから、と油断させて、業者のページへのアクセスする事やメールアドレスを入力する事に対する警戒心を解く。改めて解約を表明する被害者のメールアドレスを入力させたり、メールに仕込んでおいた識別情報から対応するメールアドレスを割り出して、有効で且つ読まれる可能性の高いメールアドレスを取得する。爾後は、そのアドレスを利用して更に架空の請求をふきかけたり、有効なメールアドレスのリストとして転売する。或いは本登録・契約の手続きを、仮登録解除の手続きと誤認させて実行させる事で被害者に正規の利用料を求めることも出来る。この変形として、 「貴方のメールアドレスが悪戯で登録されている可能性がある。御手数だが指定のアドレスをクリックして確認するように」と、 他人の悪戯に見せかけて誘導する例もある。

ショートメッセージサービスによる架空請求[編集]

ショートメッセージサービスを用いて、全ての端末に順次、直接根拠の無い請求を行い支払いを求めるメッセージを送付して回る手法と、業者の紹介する携帯サイトにアクセスする様に勧誘・誘導するメッセージを送り、それを参照してアクセスしてきた履歴を収集して、あらためて情報利用料の名目で請求を行う例がある。前述の電子メールによるのと同様、やはり、仮登録されていると虚偽の説明を行って業者のサイトにアクセスさせて有効なアドレスを収集する手法も使われる。

架電による架空請求[編集]

電話番号の入手の方法としては、ワン切りや、情報収集用のWEBページによるものがある。

ワン切りを用いる手法は、1990年代末より広まり、報道でも「見知らぬ着信履歴に折り返し電話するだけで何万円もの請求が来る」という奇怪な噂としても取り上げられ、後に架空請求の手口の一つとして認識された。パソコン等を利用した自動発呼システムで多数の電話に発呼してまわり、着信履歴を残す。被害者が履歴を基に業者の電話に架電すると、業者はその着信時に被害者の電話番号を記録しつつ、音声によるコンテンツを聞かせる。当該コンテンツが有料であるとの説明がある場合もあれば、単にアダルト向けコンテンツを聞かせるだけの場合もあるが、いずれにせよ、業者は把握した番号へ改めて架電し、被害者に対して情報利用料を請求する。単に電話をかけて何某かのコンテンツを聴取した事を以って、聴取時間の長短や聴取の意思の有無に関わらず自然に料金支払いの義務が発生すると主張する。勿論「聞くつもりはなかった」或いは「ちょっとしか聞いていない」という被害者の言い訳も圧殺して、所定金額を要求する。

或いは、個人情報入力用のWEBページに入力された電話番号を用いて架空の請求を行う。この場合も、個人情報の入力を行うに至る迄が有料情報ページであるとか、入力の行為を契約と見なすなど、手管を弄して契約の成立と債権の存在を主張し、これを認めさせようとする。

電話連絡の要求[編集]

電話連絡を要求する背景には大別して、更なる情報収集の目的と、直接口頭で恫喝を加えたうえで支払いの確約を得る目的がある。

電話による情報収集[編集]

具体的な情報収集の内容としては、有効なリストの作成、と、個人情報の取得があげられる。前者は、請求を通知する葉書や電子メールに管理番号を表示しておき、被害者にこれを申告させることで、請求書送付時の氏名・住所やメールアドレスと対応を取り、何らかの応答をする可能性が高い個人の氏名・住所や、有効で且つ応答を期待出来る個人のメールアドレスのリストを得ることが出来る。

後者は、特に電子メールによる請求に応答してきた場合に用いられる。本人確認法に定められていると説明して、本人確認の手段として氏名や住所等、あらん限りの個人情報の申告を行わせるもので、有効なメールアドレスに加えて、有用な個人情報を取得し、後の恫喝の際の有効な手がかりにできるし、カモリストにまとめて同業者への転売で更に利益を得る事に資する。

電話による重ねての請求[編集]

情報収集と平行して、確実に支払いを行わせるように口頭で虚偽の説明をしたり説得したり恫喝して債務の存在を認めさせ、支払いに同意させる。

被害者が業者に架電するにあたっては、前述のように、請求原因と金額を確認するため、請求に心当たりが無く確認するため、請求にかかる情報利用をしていないので間違いであると伝えるため、架空請求であるから毅然と支払いを断るため、など、各種の理由があるが、業者はこの何れに対しても架空の情報利用履歴や債権の存在を根拠に法律用語を交えて毅然と請求を行う。契約の成立並びに債務の存在については電子消費者契約法や、消費者契約法を挙げて、これらの法律上も契約が成立していると説明し、それ故に自然に利用料金を支払う義務があると主張する。

その一方で、個人情報、殊に勤務先や自宅住所の情報に並べて暗渠を歩行する際に起こりうる傷害・傷害殺人事件、白昼堂々と行われる通り魔事件、交通事故、家族へ誰かから危害が加えられる危険を提示して不安に陥れ、平行して支払いへの同意を求め、人身に危害を被るリスクが支払いによって回避されると錯誤させて、支払いを確約させる。

場合によっては「特別にサービスしてこれだけにまける」「今日中に支払うならこれだけでよい」等と軟化した態度を織り交ぜて支払いに応じさせる。また「幾らなら直ぐ払えるのか」等と交渉に応じる姿勢を示し、目前の心理的圧力から開放される手段を提示して支払いに応じさせる。そして、後から「当座の支払いはそれだけで勘弁するが、残額も必ず支払って貰う」と改めて請求し得るし、請求金額の一部でも支払いを実行させることが出来れば、当該請求を被害者が追認したと主張する根拠に出来る。

また、電話を介した要求で、口頭ででも支払いを確約させ、それを録音出来れば、被害者が契約の成立と債務の存在を追認したと主張するうえで重要な証拠になる。

対応[編集]

業者から架空の請求が行われるのに対して、当初は単に無視する事が薦められた。しかし、実際に法的手段に訴えて正規の債権とする試みや、公的な手段で正規の債権と認められたかのように装う方法などが取られた。また、被害者が請求を無視する根拠として、業者側には追求の手段が無いと見透かされている事に対して、既に個人情報を把握している、或いは容易に入手可能で、手許に確保してある架空の債権の根拠と併せて徹底的に追いつめると言明する。

被害者の当初の対応[編集]

根拠のない請求への対応として、無視をすることが推奨された。郵便、架電、電子メールのいずれでも、業者側から連絡を取る手段は当該手段に限られており、それ以外の情報は実際には知られていないと考えられるので、被害者側から改めて連絡をとったりしない限り、業者側は個人の特定の手段が無い、或いは特定できても効率的な回収の手段がなく、それ以上の追求は困難であると言われる。

郵便による請求では、氏名と住所が知られているが、例えば数万円程度の債権に対して一々取り立てに歩く事は人件費や交通費等の面で割に合わないと言われ、言明されている様に直接回収にくる事はまず無いと言われた。但し、実際に押しかけてきた例が少数ながら報告されているが、この場合でも、恐喝の疑いがあり警察を呼んで対応すればよい、といわれる。

一方で、氏名と住所を手がかりに訴訟を起こすことが可能であるが、多少の債権の回収手段としては費用も時間もかかりすぎる。また、訴訟に際しては業者もその素性を明らかにする必要があり、表だっての活動が憚られることから実際には訴訟にも打って出られないと言われた。これらを考慮すると、業者側は有効な回収の手立てが無く、放置しておいても実際には差し支えないと言われた。

また、架電による請求では、電話番号を手がかりに興信所を使って被害者の氏名・住所を調べ上げて直接回収や訴訟にかかる事も考えられるし、その様に業者が言明して早急な支払いを求める事もあるが、これには調査費用そのものが相当にかかることから、やはり実際的ではないと言われた。電子メールやショートメッセージサービス等による請求も、同様に被害者を特定するのに要する費用がかかり、割に合わないし、原則としてキャリヤやプロバイダ等は電話番号や電子メールアドレス等から個人情報を開示することはないと言われた。

以上の事から、実害は無いと考えられるので、届いた請求書等を証拠として保存して、心当たりのない請求に対しては何も応答せず無視・放置するのが最良と言われた。

業者による法制度の援用[編集]

この対策を逆手に取り、2003年頃から少額訴訟制度支払督促を用いるケースも確認された。少額訴訟制度や支払督促では裁判所からの連絡を無視する事は、債権者の主張を全面的に肯定する事に繋がり、適切な対応を怠ると、根拠のない請求であったものが法律上有効な債権と認められる。これを利用して、被害者が裁判所からの連絡に対しても従前勧められた様に無視を決め込む事を期待し、法に則って最終的に有効な債権にする事を目論む。

殊に、支払督促では、制度上前触れもなく突然裁判所から支払命令が通知される事を利用して被害者を動揺・観念させ、また、裁判所も当該債権が正当な物であると認めている、と錯誤させて支払いに至らしめる。

また、業者による少額訴訟の提訴は、どうせ大したことは出来まいとタカをくくる被害者に対して、精神的な動揺を与えるのに充分な効果を持ち、且つ、費用もそれ程かからずに実行できる。尚、業者がその素性を隠すために、実際の審理に入る前に提訴を取り下げると言われる。

そして、裁判所からの通知を無視すべきではないとの対応が周知されると、今度は裁判所を騙り、偽の支払督促命令や偽の少額訴訟手続きの文書を作成して送付する手法も用いられる。前者には併せて、弁済金を振り込む預金口座を指定する文書が添えられている事もある。

業者による公正証書・内容証明郵便の援用[編集]

契約書等を偽造して公正証書とする手法や、請求書について公証役場公証人から確定日付の付与を受ける方法、請求書を内容証明郵便で送付する方法などを用いて、恰も契約の実体ならびに債務の存在と正当性が公的機関からも認められているかの様に装う。また、公正証書そのものを偽造したり、確定日付の印鑑を偽造して捺す事もある。

いずれも、斯様な文書に馴染みのない被害者が、その真偽の程や、文書の持つ効力を正しく推し量れず、また、確認の手段に思い至らない事を利用し、只恐縮して唯々諾々と支払い要求に応じさせる効果を狙う。

業者による個人情報の取得[編集]

被害者が請求を無視する根拠が、追求の手立てが無いことにあると見透かされた事から、対抗して業者側は個人情報を完全に把握していると装い、追求が可能で請求を踏み倒すことは出来ないと明示したり暗黙に圧力をかける。

被害者の個人情報を取得、或いは入手出来る根拠として、業者はパソコンの情報、次世代コード、個体識別番号等の把握を挙げる。

パソコンの情報[編集]

最も簡単な手法としては、業者のサイトにアクセスが行われた際にプロバイダ、OS、ブラウザ、IPアドレス、等を表示し、当該情報から個人を特定して請求出来るかの様に装う。

また、WEBページに埋め込んだActiveXやJavaScript等を用い、情報自動取得のウィンドウを開いたり、プログレスバーを表示したうえで「情報取得完了」という旨を表示して、パソコンから個人情報を取得したかの様に装う手口もある。本来、情報を盗み取るのは問題だが、これも、正当な契約の上で被害者が情報提供に同意しており、何ら問題がないとする。

個人識別コード・次世代コード[編集]

架空の個人識別コードや次世代コードを提示して、本人確認法消費者契約法等の法律上、これを根拠に商取引が可能であり、支払いの義務があると詐称する事もある。殊に次世代コードについては、「本人確認法に基づいて制定・付与された個人を識別する新しいコード」等の説明が加えられ、電子商取引業者に対しては、これらのコードを手がかりに個人情報が開示されており、これを基に直接回収を行ったり法的手段に訴えるとする。

個体識別番号[編集]

携帯電話には、端末を特定できる個体識別番号が存在する。これは端末の機種名と、個体毎に割り付けられた異なる番号からなる。携帯サイトに特定の命令を埋めておくと、携帯端末が自身の個体識別をサイトに通知する。これを業者側が取得・提示して、契約の証として個体識別番号が通知されたと主張する。また、悪質な顧客については個体識別番号を介してキャリアより個人情報の開示を受ける、或いは既に取得したと主張して、これを基に直接回収や法的手段に訴えるとする。

現状[編集]

前述の様に、当初は、ダイヤルQ2のサービス等、利用実績のある顧客のリストを用いて、以前のサービスに関連・類似する請求を行って、被害者の錯誤で振り込まれるのを待ち受ける手法から始まったが、直接架電する等はたらきかけて、金を詐取する方法へと派生した。

全く架空の請求[編集]

単に葉書やメールを送って振り込みを待つのではなく、架電する様に強いたり、直接架電するなど積極的に働きかける事で強引に振り込みを行わせる様になった。請求の名目も、本来被害者とは何の関係もない事項をでっちあげて債務が存在する状況を演出したり、法的にも債務存在を正当化して支払いに同意させる。また、未払いの税金や保険料があると、虚偽の説明を行って支払いを行わせる。

特定の団体を装った請求[編集]

団体の種類としては、恰も公的制度を担う組織であると錯覚させる名称の架空の団体を名乗る方法と、実在の団体に関連した名称を名乗る方法とが確認されている。前者の例として「国民健康保険庁」を名乗って健康保険に関する手続きを行うように促し、保険料の追加納入や手数料が必要と偽り架空の口座に振り込ませて詐取する。後者の例としてJASRACの関連団体を装い、ネットワーク上を流通する楽曲ファイルを追跡したところ、貴方のパソコンについてファイル共有システムで楽曲の不正使用が確認されたとして著作権侵害を主張し、利用料並びに罰金を請求する。更には被害者のパソコンがファイル共有システムのサーバとなって不正な楽曲を蓄積し、多数の不正ダウンロードに荷担した、悪質な犯罪幇助行為に荷担したとたたみかけて相当高額な損害賠償を要求する。

お金を受け取れると偽る詐取[編集]

税務署署員を名乗り、税金の還付が受けられると称して詐取にかかる例が確認されている。ATM操作で被害者の預金口座に直接還付を受けられると説明し、電話でATMの前へ誘導して複雑な操作をさせて、税務署の口座から所定金額を被害者の口座に振り替える操作だと偽って、実際には被害者の口座から犯人の口座に振り込みをさせる。 <!—これは、振り込め詐欺、乃至はナイジェリア詐欺ともとれるかと存じますが、報道では架空請求に分類しておりましたので、ひとまず此方に書きます。-->


事例[編集]

2000年代初頭より、債権管理回収業者を騙る手口が広まった。後に他の団体・組織を名乗り、何らかの債権や手数料を要求する様になった。昨今は、逆に税金を還付すると説明してATMを操作させて、被害者の口座から業者の口座に振り込みを実行させる例も出ている。

債権管理回収業者をかたる手口[編集]

債権譲渡を受けた債権管理回収業者をかたって、実際には利用していない有料情報サービス(有料アダルト番組、ツーショットダイヤルダイヤルQ2ウェブ上の有料アダルトサイト出会い系サイト等)の利用料や債権などを請求する文書を、電子メール葉書等で送りつけ、送金を要求する行為が多い。電子メールで送られるものは、迷惑メールの典型的な一形態となっている。2005年8月には架空請求詐欺に引っかかった被害者が詐欺者にカモにされたことにより多大な借金を作ることになり、心中事件が発生した例もある。

おおよそ、下記文例のような文面が送付される。振込先口座は、ほとんどが個人名義であること、連絡先が携帯電話であること、会社の住所が記載されていない・記載されていても実在しないデタラメの住所や全く関係無い人の住所を使ったり、私書箱であることなどが特徴である。


最終勧告通知書

弊社は○○債権委託連盟の○○総業です。この度ご通知しますのは過去に貴殿がご利用なさいました有料情報サービスの未納通信料金をコンテンツ営業者様から弊社が債権委譲(民法467条に基づき)を承りましたので大至急弊社の方までご連絡くださいますようお願いいたします。最終期日までにご連絡のないお客様に関しましてはお支払いの意志がないものとみなし、担当員、顧問弁護士がご自宅または勤務先に直接訴訟手続き、回収に伺います。尚、弊社は有料情報サービス利用記録がある方のみにご通知しておりますので必ずご連絡頂けるようお願いいたします。

※お支払いに応じていただけないお客様に関しましては最終的に法に基づいた民事手続きの少額訴訟に移行させていただきますのでご了承ください。

○○総業(株)
  担当直通 080-○○○○-7248
         080-○○○○-7089
         090-○○○○-7819
         080-○○○○-6162

  受付時間 月-金 9:00-16:00
           土 10:00-15:00

  最終受付期日:2月27日 管理番号:○○○○

葉書による架空の訴訟告知[編集]

下記の様な内容の葉書を送って相手を脅し、葉書に書かれた番号へ連絡させるという手口の詐欺が発生している。葉書を送ってくる組織の名前には「財務省指定」などとある場合もあるがすべて架空のものである。また葉書に書かれた連絡先に電話をするとこちらの電話番号などが知られてしまうため、葉書が送られてきても無視するのが最も良い対処法である。

民事訴訟特別告知書

契約会社が契約不履行による民事訴訟として訴状を提出した。訴訟取り下げ申請期日を経て訴訟が開始され、連絡が無ければ原告側の主張が全面的に受理され給料などを強制的に差し押さえるので、裁判所執行官による『執行証書の交付』を承諾してもらいたいと同時に、債権譲渡証明書を一通郵送する

連絡先 090-○○○○-7248


葉書や電子メールによる義援金詐欺[編集]

新潟県中越地震の発生後、日本赤十字社共同募金自治体をかたり、葉書や電子メール、ビラなどで義援金を呼びかけ、全く無関係の口座に振り込ませようとする義援金詐欺が発生している。これらの機関では葉書や電子メール、ビラでの個別の義援金の呼びかけは行っていないため、警察当局では架空請求詐欺の一つの形態としている。 しかしながら、イーバンク銀行では、口座開設者全員に中越地震の義援金に関するメールを配信している事例がある。故に本人がその真偽を判別する能力が問われる問題である。

国民健康保険料詐欺[編集]

実在しない組織「国民健康保険庁」から、郵便で「指定の電話番号に連絡しない場合は、国民健康保険証が無効になる」と電話をかけさせ、国民健康保険料の支払いを要求する詐欺が発生している。

JASRACを騙る利用料請求[編集]

ファイル共有ソフトを介して楽曲を不正に蓄積・使用したことが確認されたとして、著作権法違反による訴追を示唆しつつ利用料を請求する。電話による請求で50万円前後の例が多い。

電子メールによる架空請求詐欺[編集]

電子メールによる架空請求詐欺の手口については、スパム (メール)の項目を参照のこと。


被害の実態[編集]

架空請求に関する相談件数[編集]

内閣府は、2004年12月22日に架空請求に関する調査結果を発表した。

  • 国民生活センターと各地の消費者センターへの相談回数は、36万6221件(2004/4~11)で、前年同期(14万519件)の約2.3倍に達した。

対処法[編集]

実際に架空請求の郵便物や電子メール等が来た場合には、原則として無視するべきだが、裁判所から来た場合には注意を要する。また、電子メール等で、認識番号等を表示して恰も個人情報を知っているかの様に装って追い詰めようとするものもあるが、実際には何も知られていないと考えられる。債権回収業者や弁護士を装う場合には、本当の業者であるかどうかを確認するのも手である。以下は、先ず、注意すべき事項について記述し、次に、原則的対処を記述する

注意すべき事項[編集]

少額訴訟制度支払督促制度を利用した手口もあり、特に発送元が裁判所である書類が届いた場合は放置せず、裁判所に確認するか、弁護士消費者センターなどに相談し、正式な手続きと判明した場合は、適切な対応を取る必要がある。 また、強制執行付公正証書を偽造された場合には、それを以て法律上有効な債権と認められる危険があるので、当該公正証書が偽造である事を主張するべく法的手続きを取る必要がある。

少額訴訟通知[編集]

少額訴訟制度では、適切な応答を行ったうえで、審理当日に出頭して債権が無い事を主張する必要がある。これを怠ると、債権者の主張を全て肯定する事に繋がり、架空の債権が法律上有効な債権と認められる危険がある。

その一方で、業者が簡易裁判所を騙って、少額訴訟の提訴や審理そのものを装った文書を送付して来る事がある。連絡先として簡易裁判所ではなく、業者管轄の電話番号を記しておくことが考えられる。そして被害者がここへ架電してくるのを待ち受け、裁判所になりすまして法律用語を駆使して債権の正当性と支払いの義務を説くと考えられる。それゆえ、送付されてきた文書の連絡先を直ちに用いず、自分で裁判所の住所や電話番号を確認して連絡を取る事が薦められる。連絡の真偽を確認するには裁判所からの連絡の項を参照のこと。

支払督促命令[編集]

支払督促制度では、所定期間内に異議申し立てをしないと、業者側の主張を全て肯定する事に繋がり、架空の請求が法律上有効な債権と認められる危険がある。一方で、受領(送達)してから2週間以内に督促異議の申し立てを行えば、支払督促が失効し、命令そのものが無かった事になる。

また、支払督促制度では、最初は債務者、即ち被害者の言い分を聞かず、申立人、即ち業者の言い分のみを審査して支払督促が出される。事実でなくても請求原因の法律上の書式が揃っていれば督促が出るので、必ずしも、当該請求の基になった情報利用の履歴や請求の根拠が間違いない物であると裁判所が確認したり判断を下している訳ではない。督促を受け取っても慌てる必要はなく、弁護士・司法書士や消費者センターに相談して異議申し立てを行えば充分対処できる。

督促異議の時点では理由を付する必要はないが、通常は次に民事訴訟になる。債務者が答弁書において請求原因を否認すると債権者が根拠を立証する責任を負うことになり、架空請求ではこの対応が理由となる。東京簡易裁判所の場合、督促の書面には異議申し立て書と説明書が末尾に綴じられているので、説明にしたがって督促異議を作成し、簡易裁判所に持参または郵送すればよい。電話やファクシミリやメールによる督促異議は認められず無効である。

その一方で、業者が裁判所を騙って、支払督促命令そのものを装った文書を送付してくることがある。これも、連絡先として裁判所ではなく、業者管轄の電話番号を記していることが考えられるので、自分で裁判所の住所や電話番号を確認して連絡を取る。連絡の真偽を確認するには裁判所からの連絡の項を参照のこと。

殊に、支払督促命令の場合には、支払命令の文書に併せて、弁済金を払い込む預金口座等を指示する文書が同封されている例もあるが、裁判所が弁済先を指示する事は無いので、このような文書がある場合には、業者によって偽造されたものである。

裁判所からの連絡について[編集]

裁判所から小額訴訟や支払督促に関する連絡をする場合は特別送達により、郵便局員が定形郵便(長形3号)より一回り小さい白色書面(送達報告書)の中央に本人の捺印かサインと引き換えに直接手渡するのが原則で、配達する郵便局員に特別送達であることを確認すればよい。 また裁判所公用の封筒が用いられることが多いが、大規模の簡易裁判所では宛名書き事務量軽減のため債権者持込の封筒に裁判所印を捺したものも、正規の特別送達に用いられる場合があるから注意すること。

尚、1回目の特別送達配達時に不在で裁判所に返戻した場合に、再度裁判所から同一の書類を送付するときには書留でなされることがあることに注意(この場合の不服申立て期間は特別送達の受領してから2週間でなく、書留を郵便局から発送してから2週間となり受領しなくとも手続きが進むが、裁判所から別途普通郵便でその旨の通知が同時に発送される)。それ以外の普通郵便や葉書は、正式の裁判所からの連絡である可能性はほとんどない。郵便でない場合は裁判所公用の執行官名義でなければ、茶封筒や葉書を投げ込んでゆくものも、裁判所からの連絡である可能性はまずない。

強制執行認諾文言付公正証書[編集]

業者によって一方的に契約書や債務支払いを旨とする公正証書が作成され、その中に強制執行認諾文言が含まれている場合には注意を要する。これも法律上有効な債権と認められる危険があり。当該文書が偽造された事を主張する対抗処置をとる必要がある。

原則的対処[編集]

上記の様な注意を要する場合を除いて、被害者側から連絡を一切しないで、無視することが勧められてきた。被害者側から業者へ改めて連絡すると、架空請求者に有利な展開となる可能性がある。尚、請求書等に記されている債権管理回収業者名、弁護士名、等を調査する事で、その請求の真贋を明らかにする手がかりが得られることがある。

業者にとっての利益[編集]

被害者が業者に架電した場合には、業者にとって下記の点で有利な展開になる。

  • 電話を受けることで、対象者の実在を確認できる
  • 発信してきたことである程度の心理的傾向をつかむヒントが得られる
    • 几帳面である
    • 心配性である
    • 不安に陥っている可能性大
  • 番号通知で電話番号を把握できる
    • 番号非通知の着信を拒否するように設定しておけばよい
  • 顧客確認と称して請求書記載の管理番号を連絡させることで、氏名と住所や電子メールアドレスを特定できる
  • 本人確認と称して(まだ知らない)氏名・住所・電話番号等を申告させて、改めて把握できる
    • 電子メールで送りつけた請求に対して連絡してきた場合など
  • 根拠となる契約書や利用履歴を請求されたら送付先を確認すると称して住所等を聞き出せる
    • 通常は契約時に住所等を通知してあるはずで真の契約であれば住所を尋ねられる事はない
  • さらに法律用語で煙に巻きつつ脅迫の言葉を畳みかけて支払いを強要できる
  • 口頭でも債務存在確認と支払いの確約を取って録音できれば後の展開に有利
  • 得られた情報をリストにして転売できる

等、更に情報を得られ、連絡した側は不利となる。

絶対に使ったことがないと確信を持っており、間違いであると主張するために業者に連絡を取ることも望ましくない。 同様に、手違いであると教えるために連絡することも望ましくない。 電話連絡をする限りはこじつけてでも債権存在を主張し、これを認めさせようとすると考えられる。 または個人情報の収集が目的で、少なくとも何かの連絡を返してくる個人であるとの情報にまとめられ役立てられると考えられる。

債権管理回収業者名の確認[編集]

債権管理回収業は、かつては弁護士以外の者が業として行ってはならないものであり、平成11年になって厳密な審査を行ったうえで許可された企業も営む様になったものである。法務省より債権回収業を許可された企業名の一覧が公開されているので、まずは、ここに該当するかどうかを確認する。該当しない業者が債権回収を名乗る時点で違法である。

相手が名乗る業者名をWEBの検索ページで探すのも手である。他にも同様の被害があれば多数がヒットする。また、架空請求詐欺の業者名を収集し一覧としているページ(東京都江戸川区消費者センターの例,架空請求である理由と区の対応も示している)もあるので、こちらを参照するのも手である。いずれにせよ、被害にあったのは自分だけではないと判り、落ち着く助けになる。実在の正規に許可された業者と同名の偽者からの場合もその業者から初めての各請求でない限りヒットする。この場合は所在地が異なるのが通例。

尚、企業が債権管理回収業者として許可を受けるには5億円以上の資本金と取締役に弁護士1名以上の所属が必要であるが、簡易裁判所の管轄に属する小額事件は弁護士の関与なく業者従業員担当者が債権回収を実施することができる。許可された債権回収業者は目隠しシールのない葉書での通知はしないようになっている。また連絡先に携帯電話を使えないし、複数の電話番号の羅列も認められていない。

許可された業者の債権回収は、債権回収業務の委託を受けた場合と、債権譲渡を受けた場合の二種類がある。前者の場合は法務大臣の兼業の許可を受けた上で有料情報サービスの回収代行のケースがある。後者の場合は、元の契約に債権譲渡の承諾条項が存在するか、元の契約の債権者名義で債務者である利用者に対して、内容証明および配達証明があって法的に有効な請求である。

弁護士の名称[編集]

請求の書面に弁護士の名前も掲載して法的にも追い詰めると主張しているものもあるが、これも詐称している可能性がある。弁護士名については以下の方法で確認できる

ここで検索の手を尽くしても見つからなければ、弁護士を騙ったものであり、その時点で違法である。

又、仮に該当する弁護士が見つかった場合には、当該する弁護士に直接連絡を取ればよい。但し、郵送してきた業者を通して確認するのではなく、自分で連絡先を調べて直接連絡を取ることが推奨される。業者が実在の弁護士の名前を勝手に請求書に記載している可能性もあるからである。本物の弁護士と確認して被害者が慌てて業者に架電するのを待ち受けていることも考えられる。

公正証書[編集]

強制執行認諾文言付の公正証書を偽造されている場合には前述の様に、法的に適切な対応を取る必要がある。

それ以外に、業者による私製の契約書や請求書に確定日付の付与を受けて、その原本や複写を送付してくる事があるが、これは、その日にその文書が存在したことを証明するものであり、その文書の内容の真贋については何ら効力を及ぼさない。確定日付の付与を受けることを以て、その請求が正当な物であるという根拠にはならない。

内容証明郵便[編集]

請求を内容証明郵便で送りつけてくる例もあるが、これらは何の法的効果も無い。単に、「そういう内容の郵便を送った」と言う記録が郵便局に残っているに過ぎず、内容の真偽には何ら関係が無い。裁判になれば証拠力を持つが、あくまで「郵便物を確かに送った」事に対する証明になるだけである。その請求内容が疑い様の無い本物であると、誰かしらが裏付けたものではない。やはり裁判所以外が発送人であれば無視する。

ただし、架空でない請求が元の債権者が差出人となって、債権管理回収業者に譲渡する旨の通知である場合は、債権譲渡の確定日付ある証拠として法律的に意味ある文書となることはある。

個人情報を手がかりにした請求[編集]

被害者による対応として「無視」が推奨された理由として、業者が個人情報を把握していない・相手を特定できないと見透かされているのに対抗して、業者側は、恰も個人情報を取得しており、その気になれば自宅や職場へ押しかけて迷惑をかける、或いは法的手段に訴えると主張する。個人情報の所有の根拠として、メールアドレス・電話番号、パソコンの情報、個人識別番号、次世代コード、個体識別番号等の把握を主張する。

メールアドレス・携帯電話番号[編集]

メールアドレスや携帯電話番号・ショートメッセージサービスのアドレス等を把握しており、これをもって個人を特定したと主張するものがあるが、単に携帯電話番号から個人を特定するには専門の調査機関等に依頼する必要があると言われ、それなりの費用がかかるので事実上は不可能といわれる。また、メールアドレスから個人を特定するにも、プロバイダ等に情報の開示を受ける必要があるが、これも事実上は不可能といわれる。結局、単携帯電話の番号やメールアドレスを補足されただけなら、他の情報を業者が入手して個人を特定することは事実上ない、それよりは次のカモへ詐欺を仕掛けて回るほうが合理的である、といわれる。

パソコンの情報(IPアドレス、MACアドレス等)を表示した請求[編集]

パソコンからサイトにアクセスしてきた際のIPを記録し、これをもって個人を特定した、プロバイダより個人情報の開示を受けて追求すると主張するものがあるが、IP固定ではないプロバイダを介して個人がアクセスしてきた場合には、業者側がプロバイダに対して接続記録の開示を要求する必要がある。しかし、通常はこの様な開示要求には応じられない。情報の開示は、捜査機関が令状を提示した場合などに限られる。 一方、企業や組織の中からアクセスした場合にはIPから特定の組織までは突き止めることができるが、その中の誰がアクセスしたかまでは判らない事が多い。 とは言え、外部からこの様な請求が来たことから、怪しいサイトに接続していたことが明らかになり、当人は肩身が狭い。

尚、請求の一手法として「貴社の社員が淫らな情報サイトを利用している」という事実の公表をネタに企業に対して脅迫を行うことが考えられる。

最後の手段として、MACアドレス(ネットワークカードに振られている番号)を把握する手段がある。これは世界中でカードごとに固有の番号が振られているので、特定の1枚を識別することが可能である。しかし、携帯電話の個体識別番号と同様、IPアドレスや、個人情報とは何の関係も無いので、尋常な手段では個人を特定する事は出来ないと言われる。

個人識別番号・次世代コードを表示した請求[編集]

また、パソコンについて「新認証システム」「次世代コード」などの名目で英数字の羅列からなる識別コードを示し、これで貴方のパソコンを特定し、WEB閲覧記録や有料コンテンツの利用履歴を把握している、という主張もあるが、電子商取引で一意にパソコンや個人を特定するコードは現時点で存在しない。

  • 本人確認法施行に伴い、ネットを介してパソコンに識別番号を付与した
  • 電子商取引を円滑に行う為に全てのパソコンには利用者特定のための固有の番号がついている
    • その固有番号と個人情報の対応は、電子商取引業者に開示されている

等などは、嘘である(2006年10月現在)。次世代と名乗り、如何にも新しいので御存じないのは当然だが今普及しつつあるものと装う。

これらの当該番号は、実際には業者側でランダムに発生させたものであったり、カウンタの値を用いていたりして、同じパソコンでアクセスする度に値が変わったり、ブラウザを違えると値が変わったり、場合によっては全員に同じコードが示されることもある。パソコンを特定するコードと言うには説明がつかない現象が見られる事も多い。こちらも不安に駆られて連絡をするのは危険である。

個体識別番号等を表示した請求[編集]

携帯の電子メール等で、使用している端末の固体識別番号を表示して、恰も個人情報を把握していると示唆したり、個人情報所有を表明して会社等に押しかけて迷惑をかけるとするものもあるが、多くの場合は実際には何も知られていないと言われる。

  • 端末に個体識別番号は割り振られいるが、製造番号、シリアルナンバの様なものである。
    • 個体識別番号と電話番号の間には関連性は無い
    • 携帯サイト内のページに「個体識別番号を読み取る」と言うコマンドを埋めておくと、サイトにアクセスした時点でその個体識別番号が業者側に通知される。
      • 必ずしも契約操作を行わなくても通知されるので、個体識別番号の把握を以って契約の成立を主張できない。
  • 個体識別番号から個人情報を知る事は出来ない
    • 携帯キャリアは携帯電話の契約から個人情報を把握しているが、それを外部に漏らす事はない、とされる。

不安に駆られて電話等で問い合わせをするのは危険である。「本人確認」と称して逆に個人情報を聞き出されるおそれがある。

関連法律や公的手段等[編集]

架空請求詐欺では、被害者が法律の内容や、公的手段の効力等を正しく把握していないのにつけ込んで、各種の法律名を挙げて「○○法の定めに沿い貴方には支払いの義務がある!」と強弁したり、同法の基で契約の成立と支払いの義務があると虚偽の説明を行ったり、手管を弄して債務の存在を正当化し支払いの義務を説く。甚だしくは、法の本来の意味や趣旨とは異なる説明を加えて自らを正当化する。これらの口上や主張と、実際について以下に対比する。

法律 業者の主張・業者による虚偽の説明 実際
本人確認法 顧客は業者に対して契約者本人であることを証明する為に、本人確認法に沿い、氏名・住所・電話番号、更には勤務先の情報や家族の情報等も申告して認証を行う義務がある。また、申告を拒否して支払いを逃れる間は、相応の延滞料・遅延損害金を追加して支払う義務がある。
この説明の下で申告させて、業者は被害者の個人情報を取得する。
本法は、金融機関に対して、顧客の素性の確認義務を課し、また、本人確認の記録と取引の記録を作成して保存することを命じる。斯様な業者は本法律による義務を負わないし、顧客に義務を負わせる規定もない。延滞金はもとより金銭支払いに関する規定は無い。
更に情報が知られるのを防ぐため、当方からは何も言わないのが望ましいとされる。そもそも電話で連絡をとることも推奨されない。
本人確認法の施行に伴い個人確認手段として、パソコンには商取引の際に個人特定の根拠となる識別情報が付与・内蔵されている。契約行為を以て通知された識別情報・認証コード・次世代コード等を当方は把握しており、これは本契約の成立の何よりの証である。 本法は金融機関に対して本人確認の記録と取引の記録を作成して保存することを命じるもので、公に商取引に供される個人識別情報等の存在を裏付けない。そもそも、公に商取引に用いられる個人識別情報や、個人情報のデータベースは存在しない。尚、公的な個人識別番号として住民票コードが存在するが、これは、利用目的が限定されており、商取引に使用することは出来ない。
また、この情報を基にして電子商取引業者に対しては、個人情報が開示されるので、顧客の氏素性や住所を把握して直接回収や法的手段に訴える事も可能である。
個人情報保護法 サービスの利用記録や請求金額等は個人情報に属するため、個人情報保護法の規定に沿い、この請求通知(葉書等)では通知しない。必ず当方に電話連絡をして金額を確認のうえ、納入の手段を講ずること。
この説明をもって被害者に連絡を強いる
請求に当たっては根拠となるサービスの利用記録や請求金額を明示する必要がある。封書や目隠しシールを用いて通知すれば良い。請求の原因を明示しない請求書の有効性・信憑性は甚だ疑問である。連絡をする必要があるかどうか、大いに疑問である。
民法第95条2項 サイトには『契約』のボタンしか置いておらず、押して契約するか、押さないで契約を拒否するかの二者択一しかない。ここで、間違って押して契約した、という主張は普通一般的な基準から見て妥当とは言えず、民法第95条2項の例外規定により、錯誤を主張する事は出来ない。仮に契約の意志がないのに誤って押したのであるとしても、それは顧客の過失であり、過失で生ずる不利益は顧客が負うと定められている。よって、本契約は真正なものと認められ、有効である。自然、料金の支払い義務が生ずる。 民法弟95条2項の例外規定、即ち、表意者の錯誤の主張が無効になる範囲は、電子商取引において限定される(電子消費者契約法)。下記の様に厳重に契約の意志を確認する手段を講じていなければ、表意者の錯誤の主張が優先される。
電子消費者契約法 電子消費者契約法の定めに従い、貴方がサイトでボタンを押した行為は揺るぎない契約の意志の表れと見なされる。 錯誤の無い正式な契約の意思表示を顧客より受けるに際して
  • それが契約行為であるという事を承知させる
  • 契約の前に利用料金や規約等を明示する
  • 顧客による契約の意思表示の後に、再度意思表示の確認を行うように求める

など、契約の成立を主張する上で必要な事項を定める。これらの要件を満たさなければ被害者の契約錯誤の主張が優先される。

契約に伴い個体識別番号・認証コード・次世代コード等が通知されており、当方はそれを把握している。これが契約の証であると法律で認められている。 本法律は、契約の錯誤を認める条件を規定する。個体識別番号等の把握は契約の根拠になる、という規定は無い。
公的手段 業者が被害者に期待する錯誤 実際
支払督促 裁判所も本請求が正当であると認めたから、支払督促の命令が下されたのである。 請求原因の法律上の書式が揃っていたから裁判所は直ちに督促を出す。その請求原因となった情報利用料の履歴や請求の根拠が間違いないものであると裁判所が確認したり判断を下していない
既に命令は確定しており覆す事は不可能で抗う事は出来ず、ただ唯々諾々と支払うより他はない。 所定期間内に異議申し立てを行えば、直ちに支払督促は失効し、なかった事になる。
内容証明郵便 郵便局も本請求が正当であると証明したから、請求書の内容証明郵便を郵送するのである。郵便局によっても当該請求の正しさが裏付けられている。 当該文書の複写が郵便局に残り、文書の郵送があった事実と、その文面がどうであったかを証明しているが、その請求が正しいと証明していない。請求書の真偽や正当性については誰も裏付けていない。
確定日付の付与 公正役場も本請求が正当であると認めたから、私製請求書に請求確定日付の付与を受けられたのである。公正役場によっても当該請求の正しさが裏付けられている。 当該請求書がその日にあった事を証明しているが、その請求証明が正しいとは証明していない。請求書の真偽や正当性については誰も裏付けていない。

まとめ[編集]

裁判所からの連絡や、強制執行認諾文言付き公正証書の提示などの注意すべきケースを除き、原則として応答をしない事が推奨される。また、不安があれば、地域の警察消費者センター国民生活センターなどの公的な窓口に相談することも必要である。


関連項目[編集]

外部リンク[編集]