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利用者‐会話:Loasa/執筆記録と下書き/下書き用3

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初版投稿者のメモ[編集]

項目名について[編集]

学名そのままのアルファベット表記は一般的には奨励されませんが、日本語表記の準拠にできるような資料が見つけられないので、プロジェクト:生物#項目名にあるように、「ただし和名が存在せず、カタカナで表記した例も見つからない生物では、やむを得ず学名をそのまま項目名としても構いません」を適用し、学名のアルファベット表記としました。この虫の名前が日本語で表記され、かつ日本語表記の準拠として採用できるような信頼性のある文献を御存知の方がおりましたらお知らせください。ネットでは個人ブログ等でこの昆虫を「ベネズエラヤママユガ」なる名前で呼んでいる例をときどき見受けますが、これはもちろん信頼できる出典とはなり得ません。

実は、『邪悪な虫』, p. 64に、"FIRE CATERPILLAR Lonomia obliqua and L. acheloas"の名前として「ベネズエラ・ヤママユガ」という表記があり、解説を読んでも確かにこの蛾および同じような症状を引き起こす近縁種を指しているようです。ネット上の「ベネズエラヤママユガ」もこの本が元かもしれません。しかしこの本は準拠としてはまったく使えません。それは、

  1. 原著者はもちろんのこと翻訳者も監訳者も生物の専門家ではなく、エッセイのような内容の本であり、準拠足り得ないこと、
  2. また同書における「ベネズエラ・ヤママユガ」という名称は、Lonomia obliquaという特定の一種に対する和名というよりも、Lonomia syndromを引き起こす近縁種も含めた呼称と解釈できること。

などが理由です。

さらに、『動物大百科15 昆虫』, p. 114 には、Lonomia achelousが、「ベネズエラヤママユガ」の名前で紹介されています。しかしこちらは明確にL. achelousに対する和名であり、L. obliquaではありません。何にしてもベネズエラなど南米大陸北部に分布するのはL. achelousの方であり、南米大陸南部に分布するL. obliquaに対する和名としては不適切と言わざるをえません。

といって、もしLonomia achelousの記事を立てるならば、この本を準拠として項目名を「ベネズエラヤママユガ」とするのは適切か、と問われればそれもかなり疑問に思います。

死者数について[編集]

アクセスできた出典を参照しつつ、英語版で詳細に出典がついていない部分を細かく見ていくと、おそらく大きな誤りではないであろうと思われるものの、編集者の勝手な推測や主観による、正確とは言い難い表現がかなり見付かります。アクセスできた論文を参照しながらなるべく出典の表現に則して書き直し、細かく出典をつけるようにしていますが、主要ないくつかの論文にアクセスできないため、英語版の出典がついていない怪しげな記載を訳してそのままにしている箇所が残っています。怪しげとは言っても、アクセスできた論文の記述内容から考えるとそう大きな間違いではなさそうだし、残しておいても害はなさそうと判断したので、そのままにしてあります。7〜8行に渡って出典のない複数の文が書かれている箇所はそういう部分だと思ってください。

ただし、英語版のToxicity節にある"This accounts for the minimum of 500 deaths resulting from contact with L. obliqua caterpillars." (これが、L. obliqua の幼虫との接触による少なくとも500人の死者をもたらした。) という文は意図的に外しました。これは後述するように、数字が非常に疑わしい上に、この数字が独り歩きしたら非常に害が大きいと考えられるからです。

現在のところ、L.obliquaの日本での一般的知名度はほとんどありませんが、ただでさえ「殺人ケムシ」としてセンセーショナルな興味を引きやすい項目です。リオデシャネイロオリンピックの年でもあり、どこかのトリビア本やテレビ番組や人気ブログなどが取り上げればあっというまに、それこそセアカゴケグモ並に知名度が広がるであろうことは確実です。「1000件の事故で死者が500人以上!」なんてそういうメディアがまっさきに飛びつく煽り文句でしょう。少なくともWikipediaがそんな無責任な煽りに加担することや、ましてや出典元になるようなことをすべきではありません。

「500人の死者」という数字がとうてい信用できないと考える根拠を以下に書きます。1000件以上の事故例に対して500もの死亡例となれば致死率40-50%を越えることになります。致死率の高いことで知られる自然毒でもこれほど高いものはそれほど多くありません。こんなに致死率が高ければ、どの論文でもabstractかintroductionに必ず「致死率40-50%を越える」と書かれるはずです。しかしそんな文面は見たことがありません。私が思うに、「500人の死者」という記述は、おそらくChudzinski-Tavassi, and Alvarez-Flores (2013), p. 172にある、

From 1997 to 2005, 1009 accidents resulting in seven deaths were registered in the state of Rio Grande do Sul [70], while in the state of Parana, 354 cases were reported between 1989 and 2005 [38, 63]. Between 1998 and 2000, 201 cases were registered in the Emergency Department of the Regional Hospital of Chapeco, State of Santa Catarina [26].


1997年から2005年にかけてリオグランデ・ド・スル州で、7件の死亡例を含む1009件の事故が蓄積された。パラン州では1989年から2005年の間に354件が報告された。1998年から2000の間に、サンタカリーナ州の救急医療病院では201件が記録された。 — Chudzinski-Tavassi, and Alvarez-Flores (2013), p. 172

が原因と思います。パラン州とサンタカリーナ州の例は死亡例ではなく事故数なのですが、これを死者数と読み間違えたのだと思われます。別のレポートによれば、死亡率は2.5%だそうですから、1000件中7件という数字の方が妥当と思われます。近年は有効な血清があるし、医療機関への周知や啓蒙も進んでいるようですから、死亡率はさらに減っていると考えられます。

出典

  • スチュワート,エイミー 著、山形 浩生(監訳)/守岡 桜 訳『邪悪な虫』朝日出版社、2012年。ISBN 4255006628 
  • A.M. Chudzinski-Tavassi, M.P. Alvarez-Flores (2013), “Chapter 6:South American Lonomia obliqua Caterpillars: Morphological Aspects and Venom Biochemistry”, in Elia Guerritore, Johannes DeSare (PDF), Lepidoptera: Classification, Behavior & Ecology, Nova Science Publishers Inc, pp. 169-186, ISBN 978-1624172489, https://www.novapublishers.com/catalog/downloadOA.php?order=1&access=true&osCsid=5e9a553a1b1129fed10cc0ad3598a587 2015年2月4日閲覧。 
  • C.オトゥール 編『動物大百科 15 昆虫』矢島稔(監修)(1991年7月1日初版2刷)、平凡社、1987年。ISBN 4582545157 

--Loasa会話2016年7月12日 (火) 03:44 (UTC)[返信]