利用者:青子守歌/情報つむぎ
この文書は私論です。一部のウィキペディアンが助言や意見を記したものです。広く共有されている考え方もあれば、少数意見の見解もあります。内容の是非については慎重に検討してください。 |
この文書の要旨: ウィキペディアンに求められることは情報を探し出し、それをまとめることです。 |
情報つむぎ(Spining Information)とは、ウィキペディアの編集方針を表す言葉です。ウィキペディアにおける編集の様が、糸をつむいで立派な布にすることに似ていることからこの言葉は生まれました。
ウィキペディアは百科事典です。これはつまり、一次資料(データ)や二次資料(データに対する解釈)を作ることではなく、三次資料(データやデータに対する解釈の要約)を作る事を目的としています。そのために利用者(あるいは執筆者、編集者、以降はウィキペディアンと呼びます)のすべきことは、ある事柄について信頼できる情報源を探し出し、出典を明記することで検証可能性を満たし、独自の解釈をつけることなく、その事実を分かりやすい形で閲覧者に提供することです。
ウィキペディアでは、調査をしたりその調査結果に対して考察すべきではありません。そのようなことはウィキペディアンではなく学者のすることです。我々ウィキペディアンは、ただただ学者のまとめた資料をまとめることだけをすべきなのです。
ウィキペディア日本語版における情報つむぎ
[編集]ウィキペディア日本語版では具体的にどのように情報つむぎをすべきなのか、その方法を順に追っていきましょう。
糸を探す
[編集]ウィキペディア日本語版における糸に相当するものは「様々な情報源にちりばめられた情報」です。まずは、この糸を探し出さなければなりません。
糸としてふさわしいもの
[編集]世界にはたくさんの情報があり、それらは「情報源」という形でさまざまな形態で紹介されています。それらの情報源のうち信頼できる情報源から情報を探しだすことが、記事を編集する上での第一歩となります。信頼できる情報源とは次のようなものです。
- 誰にでも入手可能なもの。つまり、特定の人物にしか入手できないようなもの(社内報・学内論文など)はいけません。
- 自主公表されていないもの。つまり、執筆者と出版者が別に存在するものです。
- 公表されている情報に対して利害関係のないもの。つまり、その情報に対して客観的な評価のされているものです。
- 公表に十分な推考がされたもの。つまり、ゴシップ誌のように「その時の情報」を急いで公表することを目的としていないものです。
- 偏った表現でないもの。つまり、事実だけを述べ、それに対する論理的な解釈のみがされているもののことです。
ただし、これらを全て満たしている必要はありません。例えば、偏った表現であっても、正式な形で公表され評価されている情報源はたくさんあります。これらの要件は、重要度順に並んでおり、一番大切なのは「誰にでも入手可能な、自主公表されていない情報源」であることです。
糸を探す具体的な方法
[編集]このような「糸」を探し出す方法はたくさんあります。
一番簡単なのはインターネット上で検索することです。インターネット上の情報はそのほとんどが自主公表されたものなので上の要件を満たしているものを見つけるのは困難ですが、もし見つかれば「誰にでもすぐに確認できる」という点において優れています。
もっとも確かな方法は「書籍を見つける」ことです。書籍は基本的には誰でも入手可能で自主公表されています。例えば、自分の手元にある書籍から情報を見つけることができるなら、それが一番よい方法でしょう。もし手元になければその書籍を入手することです。例えばインターネットショッピングで手に入れたり本屋に行って探して見るのもいいでしょう。あるいは、日本には幸せなことに各自治体や学校に図書館あるいは図書室といった施設があります。それらが利用できるならばお金を使うことなく、書籍を入手できるでしょう。
また、もしあなたが何らかの専門家であり、どこかの学会に属している場合は論文を使うこともいいでしょう。論文は一般の人には入手したがいですが、一般に情報の信憑性が高く信頼できる情報源として歓迎されます。
糸をつむぐ
[編集]ウィキペディア日本語版における糸のつむぎに相当するものは「情報に出典をつけてまとめること」です。どれだけ高品質ないい糸であっても、糸のつむぎ方次第では最低なものになってしまいます。それと同様に、どれだけよい情報であっても、それらはきちんと出典をつけて適切に示さないと、その情報は意味のないものとなってしまいます。
この糸をつむぐ事こそ、ウィキペディアンとしての腕がもっとも試されるところです。
情報を分かりやすくまとめる
[編集]手に入れた情報は、バラバラで分かりにくいものかもしれません。そのような情報は、ひとつに集め筋道を立てて整理してまとめましょう。
また、ウィキペディアでは、手に入れた情報をそのまま使うことは原則として許されません。情報をそのまま載せる事は転載になるからです。
もちろん、ウィキペディアでも引用することは可能です。ですが、どうしても引用しなければならないような場合はまず少ないでしょう。引用は著作権の問題上色々と複雑ですから、大抵は情報を分かりやすく自分なりの言葉にまとめることが推奨されます。
ここで注意すべきことは、「得た情報に自分なりの解釈をつける事は禁止されている」ということです。詳しくは後述の情報つむぎでない行為をご覧下さい。ウィキペディアではこのような行為は独自研究と呼ばれ、非常に最低な行為とされています。例えあなたがその情報に詳しく、その分野での権威であっても自分の解釈をつけてはいけません。ウィキペディアは研究発表の場ではなく、情報をまとめる場所だからです。
入手した「糸」は、情報の中身を変えることなく分かりやすくまとめましょう。
出典を示す
[編集]手に入れた情報には、必ず出典を明記することが必要です。何故ならば、ウィキペディアでは、その情報が事実であるかどうかより検証可能かどうかがもっとも重要なことだとされているからです。これは検証可能性と言われています。
これはウィキペディアでは独自研究はしないと同様に三大方針の1つであり、このルールを守らない記述はどのような記述であっても削除されるでしょう。
出典は最低限「他の人が情報源を探し出せる」ような形でなければいけません。このための全世界的に統一された規格はありませんが、ウィキペディア日本語版では以下の情報は必ず必要になるでしょう。
- 情報源の名前は何か
- 誰がその情報源を書いたのか
- 誰がその情報源を発行したのか
- その情報源をいつ参照したのか
- その情報源のどこに、参照したい情報が書かれているのか
1 - 4の情報は、その情報源の特定に必要です。1 - 3の情報は言うまでもないですが、4つ目の情報も、内容が改訂されたり変わったりすることあると情報が探せなくなる恐れがあるので必ず載せましょう。また、5つ目の情報は、出典を示す際には「これに書いてあるから読め!」というのではなく「これの、この部分に書いてあります」と示すことになり、出典を示す側のマナーとなっています。
これらは、書籍であれば、「書籍のタイトル・巻」「著者」「出版社」「出版年・版」「節・ページ番号」にあたります。 また、インターネット上の資料では5つ目の情報を載せるのが難しいかもしれませんが、そのURLを示すことで十分であると考えられています。
ただ、最低限の情報だけでは、その出典を探し出すのに苦労したり、場合によっては探し出せないかもしれません。そのため、以下にあげる情報を併記しておくといいでしょう。
- その情報源の入手方法
- その情報源の形態
- その情報源の書かれた言語
特に、入手方法を示すことは強く推奨されます。これは例えば書籍であればISBNであったりします。また、形態も同時に示せるといいでしょう。例えば紙で書かれたものなのか、音声なのか、映像なのかといったようなことです。
これらの書かれた出典は、必要最低限しか書かれていない出典より「優れた出典」であるとされます。もしあなたにその能力があり、時間もあるのであれば可能な限り示してください。
出典テンプレート活用のススメ
[編集]出典情報も、糸自体と同じく正確であっても、それらの示し方が変であれば意味のないものになります。
ウィキペディア日本語版には、出典のスタイルマニュアルとしてWikipedia:出典を明記するがあります。ここでは、出典情報の示す順番や括弧の使い方などが規定されていて、特別な事情がない限りこのスタイルに合わせなければなりません。しかし、これらのスタイルをいちいち気にしながら書くのは非常に面倒です。また、将来スタイルが変更された時にいちいち変更しなければなりません(括弧が「」から『』変わるだけでも非常な労力を必要とします!)。
そこで、ウィキペディアには出典を示すためのテンプレートがいくつか用意されています。スタイルを統一するためは元より、必要な情報を示すためにもこれらのテンプレートを使うことが推奨されます。以下にいくつかのテンプレートを紹介しておくので、出典を示す際にはなるべくこれらのテンプレートを使って出典を示すとよいでしょう。
また、これらのテンプレートに不満があったり適切なテンプレートがない場合は自分で作ることも可能です。詳しくはHelp:テンプレートを見てください。
布にする
[編集]ウィキペディア日本語版において布にすることに相当するものは「実際に情報を記事に載せること」です。糸をつむいで作った情報も、載せ方を間違えればダメなものになっています。適切な場所に適切な形で情報を載せる事で、記事はよりよいものになっていくのです。
記述スタイルを合わせる
[編集]当たり前の事ですが、ウィキペディア日本語版に載せる情報は、ウィキペディア日本語版のスタイルに合わせる必要があります。
ウィキペディア日本語版にはたくさんのスタイルに関するルールがありますが、全てを覚える必要はありません。もちろん、記述はこれらスタイルに合ったものにするべきですが、情報を載せる際にはそれはそれほど重要なことではありません。ほとんどの場合、日常的に文書として書いているスタイルと大きな差はないからです。また、もし間違ってしまったとしてもウィキペディアにはWikipedia:雑草取りと呼ばれる活動があり、そのような活動で適宜修正されていきます。
ですが、最低限、以下の点には気をつけておきましょう。
- 句点には「。」、句読点には「、」を使う
- 現代仮名遣いを使い、漢字もなるべく可能であれば常用漢字を使う。
- 正式な名前を使い、略語や俗語は使わない。
- 「ですます調」(敬体)ではなく「である調」(常体)を使う。
また、以下によく使う方針を挙げておきます。もし迷った場合はこれらを参考にしてください。
- Wikipedia:表記ガイド - 一般的な文字や記号の表記法について
- Wikipedia:スタイルマニュアル - 記事としてのスタイルについて
- Wikipedia:外来語表記法 - カタカナ語などの外来語の書き方について
- Wikipedia:専門用語には解説を - 専門的な単語について
適切な場所に適切な表現で
[編集]情報を書く際には、記事中の適切な場所に書いてください。特に新しい情報を付け加える場合には、前後の文章の流れをよく理解し、読む人が混乱しないような場所・形にしましょう。
また、時として、手に入れた情報は非常に強い言葉で書かれたものかもしれません。そのようなものはウィキペディアにはふさわしくないので、もう少しトーンを落とした表現にすることも検討したほうがいいでしょう。特に、下記のような点に注意してください。
ただしこの時も、情報をまとめる時と同様に、情報の内容はそのままで、自分の解釈などが付かないように注意してください。
情報つむぎでない行為
[編集]ウィキペディアで編集するということは、情報つむぎをするということです。しかしながら、一部の心無い人たちは情報つむぎ以外の行為を行なってしまっています。
その理由は様々ですが、大きくは荒らし目的とルールに対する無知(誤解)によるものに分けられます。荒らし行為はしようと思わなければすることはないでしょうが、誤解はその誤解を解かないと止められません。
このような誤解をしないためにも、以下に挙げる行為をしないよう気をつけてください。
知っている情報を書き込む
[編集]ウィキペディアによくある誤解として「知っていることを書き込めばいい」といことがあります。
が、これは完全に誤りです。何故ならば「知っていること」は「検証可能性」を満たしていないからです。情報は必ず出典を伴わなければならないがウィキペディアにおける重要なルールです。単純に「正しいと知ってるから」という情報は、ウィキペディアにはふさわしくないのです。
もし自分の知っている情報を載せる場合であっても、その情報の出典を探し出し、その出典と一緒に書きこみましょう。
入手できた情報を全てならべる
[編集]「情報が多いほうがいいから載せる」という事も、ウィキペディアによくある誤解となっています。
情報つむぎは、単純に情報を載せることではありません。情報を「まとめる」ことが必要です。細かいデータや、無駄なトリビアは不要です。また、同じ内容を2度書くことも必要ありません。何故ならば、ウィキペディアはナレッジベースではないからです。
情報は、なるべく簡潔に、読んでいる人にとって分かりやすくしましょう。
情報から考察を得る
[編集]ある情報に対して、自分の解釈や考察を加える事は、独自研究とされており、ウィキペディアから排除されます。もちろん、このような行為は情報つむぎではありません。情報つむぎはあくまで「情報を入手し、まとめ、出典とともに提出する」だけです。
詳しくはWikipedia:独自研究は載せないに載っていますが、おおむね以下のような行為が「考察を加える」ことになります。
- Aという情報に対して、意見・感想・評価を付け加える
- Aという情報に関するBという情報を新しく定義し付け加える
- Aという仮定とBという仮定から、Cという結論を得る(情報を合成する)
特に一番最後の「情報の合成をしない」ということは非常に重要です。これは、Cという新しい結論を示す出典がないのであれば、記述するべきではありません。
ただし一方で、単純な計算や推論は許容されることがあります。例えば「A市には人口が50万人いる」という情報と「A市の高齢者人口は25万人である」という情報から、「A市の人口の2人に1人は高齢者である」といった計算は可能です。あるいは「B市では3人に1人が高齢者である」という情報から「A市のほうがB市より高齢化が進んでいる(高齢者が多い)」という推論は可能です。
独自研究として排除されるのは、単純な計算や推論を除く情報の合成です。例えば先の例を使えば「A市はB市に比べて高齢化に歯止めがかけられていないので、A市よりB市の行政の方が優秀だ」という情報の合成は独自研究にあたります。このような記述に関しては、このような記述そのものか、あるいは「高齢化していない市の行政のほうが優秀」という情報の出典を示す必要があります。
また、別の例を挙げれば「Aという店が5月にオープンした」「Aの近所にあったBという店の売り上げが5月以降に落ちた」という情報から「5月にAが開店したので、Bの売り上げはそれ以降落ちた」という情報の合成も、やはり独自研究にあたります。AのオープンとBの売り上げが落ちたことに関する因果関係が示されていないからです。この2つの情報をつむいで言える事は「5月にはAという店がオープンした。また、同じ時期、Bという店の売り上げが落ちた」と言う事実だけです。
ある情報に対しては、出典に書かれている事実だけを述べ、それらの情報に自分なりの解釈や見解を付け加えないようにしましょう。