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利用者:Baybe/鉄道人身障害事故

鉄道人身障害事故(てつどうじんしんしょうがいじこ)とは、鉄道事故等報告規則昭和62年2月20日運輸省令第8号)で定める列車又は鉄道車両の運転により人の死傷を生じた事故のこと。一般的に人身事故(じんしんじこ)と呼ばれる。

概要[編集]

一般に人身事故といわれているものの内、主要因が明らかに自殺飛び込み)である場合は列車・車両の運転を行ったことが原因で起きた事故とは解されないことから鉄道人身障害事故とならず、国土交通省への報告義務はない(この場合は輸送障害となる)。また、踏切を無理に横断したことによって列車と接触したものは踏切障害事故として扱われる。

したがってホームからの転落による怪我及びそれによる列車との接触、に酔った旅客や線路に立ち入った人と列車との接触、また車両のドアに挟まれたり引きずられたり、車両が破損したり事故や急ブレーキなどで車両が揺れるなどして乗客に怪我を負わせたなどのケースがほとんどである。ただし、自殺かどうかは警察の判断に任されるが原因をすぐに断定するのは難しい側面もあり、自殺であっても人身事故に分類されることは珍しくない。

かつては車扱貨物の列車組成に伴う職員の死傷事故がみられたが、日本では操車場の自動化や車扱貨物の衰退もあって貨物列車の組成に伴う事故の発生頻度は激減している。

走行中の列車との接触は衝撃が大きく、全身を強打して即死することがある。また、跳ねられずに列車に轢かれると体が車輪や機器類に巻き込まれたりして至る所が切断されたり、内臓や血管が飛び出したりなどで、原型のとどめない状態になることは珍しくない。

万一生存していても四肢の一部が無くなったり、脳挫傷による運動機能障害・失語・視力障害・知的障害などを残すこともある。

人身事故の発生原因[編集]

  • ホームからの転落
よろめいたり、酔っ払ってホームから線路上に落ちてしまうもの。
  • ホーム上での列車との接触
ホームの端に近づきすぎて走行中の列車に接触するもの。
  • 線路内への立ち入り
何らかの理由で意図的に線路に入るもの。転落した人を助けようと飛び降りたり、線路上に落ちた持ち物を取ろうとする、跨線橋を避けて近道しようとするなど。
無理に列車に乗ろうとして失敗し、また降車後車両に近接していてドアに挟まれ引きずられるなどのもの。
  • 踏切の無理な横断(直前横断など)
遮断機などを強行突破したり、渡りきれなくなって列車と接触してしまうもの。
  • 自殺
飛び込みや列車進入直前の線路への立ち入りなど。
  • 殺人・殺人未遂
列車にひき殺させる目的で他者を線路上へ突き落とすもの。死者が出ると殺人事件にもなる。
  • 保線作業時の見張り不十分
こちらは労働災害になる。
  • 列車組成・増解結時の車両との接触や転落
突放された車両(しばしば、連結掛が乗り込みブレーキを操作する)からの転落や、増解結時に連結部で挟まれたり、車両に接触するなど。
  • 列車からの転落
走行中列車から、無理な飛び降り降車をする、手動扉を誤ってもしくは故意に開ける、車外にぶら下がる・屋根に登る・窓から乗り出すなどの危険行為によるもの。日本では、客用の手動扉をもつ客車は、動態保存車を除いて大半がすでに廃車となっており、乗客の事故例は少ないが、新興国の鉄道では未だみられる場合がある。特に途上国では屋根上に乗るという行為がまま見られ、それにより架線とふれて感電、または走行中に転落し、死傷することがある。

人身事故の防止策[編集]

駅構内での対策[編集]

  • ホーム上には視覚障害者用の誘導ブロックが設置されている。
  • ホームドア設置が有用とされる。
    • ホームドアが設置困難な路線・では対策として警備員の増員や後部確認用のの設置が行われた。
  • 新大久保駅乗客転落事故を契機に転落事故の発生時に速やかに列車を止める目的で、在来線や私鉄各線でもホームに非常停止ボタンが整備された。
  • ロンドン地下鉄の駅構内ではレールを高くかさ上げして、ホームからの転落者が列車に当たらないようにする措置がとられている。

本線上での対策[編集]

  • 路線の高架化や地下化等による連続立体交差化。人身障害事故のほか、踏切障害事故等の予防対策としても施行される。
  • 踏切への踏切障害物検知装置非常ボタンの設置。
  • 事故発生時の列車防護徹底による二次災害の予防対策。
  • 保線作業時の事故を防ぐため、持ち運び型のATS地上子や列車接近警報装置の導入。[1]

宣伝・啓発活動[編集]

  • CM広告で注意を促す。
  • 駅構内でのポスター掲示や啓発活動、チラシ・グッズの配布。

主な事故と対策[編集]

プラットホーム上の事故[編集]

列車非常停止ボタンの設置例(JR東日本)

2001年1月26日に山手線新大久保駅で発生した新大久保駅乗客転落事故では、泥酔した利用客が転落したのを目撃した韓国人留学生と日本人男性が即座に救出作業にあたったが3人とも列車に轢かれて死亡したことが大々的に報道され、その際プラットホームから転落した場合に身を守る逃げ場が無かったり、目撃しても鉄道職員に即座に通報できない仕組みであったことから、プラットホーム上の安全対策の不備が再認識され、安全対策を求める社会的関心を呼んだ。このため、国土交通省や鉄道事業者が協力して、プラットホームを削り退避空間を設けたり、鉄道の運行を止める列車非常停止ボタンが整備された。

国土交通省は、泥酔状態の客の転落などが増えてきているため、2010年~2011年の年末年始に首都圏の鉄道事業者とともに「プラットホームゼロ運動」を実施した。- 首都圏事故対策会議

また、他人に突き落とされ転落する事故も発生している。2005年9月6日には西武新宿線入曽駅で列車を待っていた70代の男性が40代の女に突き落とされ、2008年3月25日にJR西日本岡山駅で同様に列車を待っていた30代男性を19歳少年が線路に突き落として岡山駅突き落とし事件、それぞれ被害者本人は意図しないまま転落させられ死亡している。

2011年1月16日には、ブラインドテニスの考案し普及に貢献した人物が山手線目白駅で転落して死亡した(目白駅#ブラインドテニス考案者の転落死亡事故)。社会に影響を与えた人であったためテレビや新聞などで報道され、視覚障がい者にとってプラットホームは危険であることが大々的に報道され、社会的に認知された。これを受けて、同月24日、視覚障がい者団体関係者がJR東日本の本社を訪れて、全国35の団体の連名で要望書を提出し、電車とホームの間を仕切る「ホームドア」の設置や、駅員をホームに必ず配置して安全確認を徹底するなど、早急な対策を取るよう求めた。この際、「全盲者3人に2人は経験」しているという調査データを示し[2]。、関係者の1人は視覚障がい者にとってプラットホームは欄干の無い橋であると表現している[3]

本線上における事故[編集]

2002年11月6日には、東海道本線塚本駅尼崎駅で別の人身事故を救助していた救急隊員2名が、鉄道会社の杜撰な運行管理体制が原因で後続の列車にはねられ1名が死亡、1名が重傷となった事故が発生している。(東海道線救急隊員死傷事故)なお、この事故を起こしたJR西日本は、、2005年4月25日にJR福知山線脱線事故と、2006年1月24日に日本の鉄道事故_(2000年以降)#伯備線保線作業員死傷事故等を引き起こしている。

2005年3月15日には、東武伊勢崎線竹ノ塚駅南側の手動式踏切(いわゆる「開かずの踏切」のため手動式にしていた)にて、誤って遮断器を上げてしまい女性4名が列車にはねられ2名が死亡し2名が負傷した。踏切の閉鎖が長いため悪質な者は詰め所のドアを蹴ったり、警手に対して罵声を浴びせていた[4]ため、精神的圧迫を感じていた警手らは「一人でも多くの待ち時間を減らしたい」と考え、焦って踏切に駆け込んできた通行人に対して、違法であることを知りつつロックの解除を行っていた。(日本の鉄道事故_(2000年以降)#東武伊勢崎線竹ノ塚駅踏切死傷事故)このため、踏切は自動化に戻され、車両基地の関係で高架化ができなかった竹ノ塚駅付近の連続立体交差化が決まった(東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近連続立体交差事業)。

ホームドアの整備促進等に関する検討会[編集]

目白駅転落事故を発生後、2011年1月25日に国土交通省が鉄道事業者へホームドアの整備計画の提出を求め、その結果が2月8日に公表された([1])。結果としては、205の全鉄道事業者のうち、2011年度以降に整備を予定していたのは、JR各社や大手私鉄など14社の計24路線285駅だけだった。なお、平成2005年12月にハートヒル法交通バリアフリー法が統合されたバリアフリー新法公共交通移動等円滑化基準には、「プラットホームにホームドア、可動式ホームさく、点状ブロックその他視覚障害者の転落を防止するための設 備を設けること。車両の乗降口が一定している等一定の要件に該当するプラットホームでは、ホームドア又は可動式ホーム柵を設置すること。」と努力義務が課されている。一定の要件として、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令には、 当該旅客施設の1日当たりの平均的な利用者の人数が5,000人以上である場合又は5,000人以上であると見込まれる場合とあげられてる。

これを受けて、国土交通省はホームドアの整備促進等に関する検討会を開催することを決めた。2011年2月9日に鉄道事業者15社(北海道旅客鉄道東日本旅客鉄道東海旅客鉄道東武鉄道西武鉄道京成電鉄京王電鉄小田急電鉄東京急行電鉄京浜急行電鉄相模鉄道東京地下鉄仙台市交通局東京都交通局横浜市交通局)を集めて、第1回の検討会を開催することを発表した。この検討会では、整備促進策や設置が困難な場合の代替策について議論を開始、夏ごろまでに中間とりまとめをする方針である。

なお、同日の大臣発言(ホームドアの整備促進について)にて、駅のホームからの転落事故があとを絶たないことから、大畠国土交通大臣は全国の鉄道事業者に対し、ホームドアの設置を促すため、設置基準を決める方針を示した。

人身事故と運転士[編集]

列車との接触で人命が失われた場合でも、列車の運転士には殺人罪や業務上過失致死といった責任は一切問われない。なぜなら線路内は一般道路などと違い、列車が最優先として扱われる為である。また、自動車やバイクといった他の乗り物と違い、列車は軌道変更をする事が極々限られた場所以外では不可能な為、運転士の判断による事故の回避が事実上不可能であり、運転士の不注意などによって引き起こされるものではないからである。

しかし、事故のショックから自主的に運転業務から離れてしまう運転士はいる。

また、人が飛び込んできたのを確認できる状況でありながら全くブレーキをかけなかったり、明らかに線路上に人がいるのを視認できる状態で、止まっている列車を動かして轢いた場合などはこの限りではないが、そういったケースは皆無である。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 「JR西日本:安全への取り組み > 安全第一を積み重ねて」http://www.westjr.co.jp/security/safety/facilities.html
  2. ^ 「全盲者3人に2人は経験」ホーム転落対策要望 2011年1月24日 読売新聞
  3. ^ 全日本視覚障害者協議会駅ホームが欄干のない橋であり、そこでの全盲者の歩行は綱渡りであること、落ちない駅ホームの実現が待ったなしの課題であることを訴えているのではないでしょうか~
  4. ^ 竹ノ塚事故、元保安員に実刑 ライブドアニュース 2006年2月3日より

外部リンク[編集]