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利用者:Cyclops/特別書庫-06

日本の被り笠/これらは全て陣笠。
ランプの笠(ランプシェード)

(かさ)とは、第1義には、帽子あるいはかぶり物(被り物)の一種。第2義には、ランプシェード英語版のことを「ランプの笠」とも言うように、形状が笠に似た物に対して用いられる呼称である。第3義には、笠紋(かさもん)と総称される家紋の名である(後述)。

第1義の場合、日本語ではこの意で用いる「笠」を「」と区別する必要から、にかぶる(被る)ことを強調して被り笠(かぶりがさ)と呼ぶことも多い。また、第1義を日本語限定と定義する狭義の場合は、東アジアおよび東南アジアを中心に世界に広く見られる同様の帽子・被り物のうち、日本のものだけを「笠」と呼ぶ。 第1義および第2義の「笠」に係る助数詞は、蓋(かい)、笠(りゅう)、頭(かしら)、枚(まい)があり、文化財としては「頭」が用いられる。

被り笠[編集]

世界の被り笠[編集]

日本の被り笠[編集]

日本の被り笠の材質は、藺草(いぐさ)が一般的である。塗笠(ぬりがさ、塗り笠)は、檜やの板材を薄く剥いだ「へぎ板 」(cf. 経木)に和紙を貼り、を塗って作成した物で、平安時代末期には主に老女が使用し、江戸時代初期には若い女性が使用した。

一方、陣笠(じんがさ)は、竹で網代を組んで和紙を貼り、で染め、柿渋を塗って作成した物である[1]や飛来するなどから身を守る防具であり、手に持ってとして使用することもあった。

また、それとは別に戦国時代から足軽雑兵などの農民兵に「お貸し(貸与もしくは支給)」というかたちで用立てられた防具・代用がある。初めは煮締めた皮革の裏側に「筋金(すじがね)」(または骨板金:ほねいたがね、骨板:ほねいた、骨金:ほねかね)と呼ばれる鍛鉄製の骨板を渡し漆をかけた陣笠を使っていたが、のちには総鍛鉄製のものに取って代わられた。鍛鉄製板を切り抜き、笠状に整形し、防水用に漆をかけるだけの工程のため、通常のを作るよりもはるかに手間と費用がかからない。それから、「具足剣術」と呼ばれるを着込んで行う剣術の一部には手盾として使われる使用法も残っている。防具のほかは、野営での調理の際はよく洗った鍛鉄製陣笠を大鍋として用い、味噌玉を溶かして芋がら縄など食材をいれ3〜4人分の陣中食(この場合は、味噌汁、または、汁かけ飯、あるいは、味噌汁と一緒に穀類を煮込んだ雑炊)を用意するといった使われ方もした。[2][3][4]

被り笠の種類[編集]

深編笠を被った虚無僧
市女笠を被った助成/平安時代貴族女性の旅姿に扮した女性で、時代祭の一場面。
鳥追笠を被って踊る女性/よさこい祭りの、江戸時代庶民に扮した伝統的装いの踊り子。
網代笠を被る僧侶
日本の被り笠
  • 綾藺笠(あやいがさ)
藺草(いぐさ)を綾織りに編み、裏に布を張った笠。中央に(もとどり)を入れる巾子形(こじがた)という突出部があり、その周囲に藍革(あいかわ)と赤革の帯を垂らして飾りとする。武士狩猟流鏑馬旅行などをい行う際に着用した。綾笠(あやがさ)とも言う。
  • 塗笠(ぬりがさ、塗り笠
  • 陣笠(じんがさ)
  • 編笠(あみがさ、編み笠
  • 深編笠(ふかあみがさ、深編み笠
  • 浪人笠(ろうにんがさ)
  • 菅笠(すげがさ)
富山県高岡市の福岡地区(旧・西礪波郡福岡町近世における越中国礪波郡内)は古くより菅笠の一大生産地で、現在も全国の約90パーセント市場占有率(シェア)を誇り、菅笠の製作技術を綿々と伝承してきた。これによって2009年平成21年)3月11日、越中福岡の菅笠製作技術保存会が「越中福岡の菅笠製作技術」として国の重要無形民俗文化財の指定を受けた。
  • 饅頭笠(まんじゅうがさ) :頂きが丸くて浅い、ちょうど、饅頭を平たくしたような形状の菅笠。俳句では、人事に分類される季語
  • 桔梗笠(ききょうがさ) :桔梗の花を伏せた形の、先の尖った被り笠。青・赤・黄などで彩り、祭り踊りなどで用いる。
  • 市女笠(いちめがさ) :頂部に高い巾子(こじ)を付けた菅笠。平安時代から安土桃山時代にかけて、もっぱら外出時の女性用として普及していた菅笠。江戸時代に入って黒漆を塗った塗笠が登場すると、これに取って代わられ、やがて全く見られなくなった。
  • 三度笠(さんどがさ)
  • 褄折笠(つまおりがさ)
  • 一文字笠(いちもんじがさ、一文字
  • 一文字笠殿中
  • 鳥追笠(とりおいがさ)
  • 網代笠(あじろがさ) :細く削った経木を材として網代編みで作った被り笠。僧侶遍路者などが使用する。俳句では、人事に分類される夏の季語。
  • 托鉢笠(たくはつがさ)
  • 花笠(はながさ)
  • あやめ笠(あやめがさ) :利根川下流域の水郷地帯としても、アヤメ(花菖蒲)の生産地としても知られる潮来地方の菅笠であり、アヤメの花で飾った花笠。橋幸夫演歌『潮来笠』(1960年昭和35年〉発表)で全国に知られるようになった。
  • 唐人笠(とうじんがさ)
第1義には、祭礼で唐人囃子(とうじんばやし)などをする者や唐人飴(とうじんあめ)を売る者などが被った笠。縁があり、中央が高く尖った笠で、頂きに紅い布を付ける。第2義には、近世において第1義の唐人笠を模した作られたを指す(鉢が高く、が広いの特徴)。

なお、柳亭種彦随筆『柳亭筆記』の中に、豊富な引用文献を付して種々の笠を解説した文がある[5]

日本以外の東アジアの被り笠
東南アジアの被り笠

笠を用いた表現[編集]

日本語
  • 笠に着る
第1義には、微力な者が、権勢者の後援等を頼みにする、自分に保障されている地位を利用するなどして、威張ること。用例「親の権威を―」。第2義には、自分の施した恩徳をいいことに勝手な振る舞いをすること。 なお、「嵩に懸かる(かさにかかる。意:優勢に乗じて攻めかかる)」と混同されて用いられる「嵩に着る」は誤りである。
  • 笠の台の生き別れ
「笠の台」は「笠をかぶせる台」であることから「人の頭部(人の首)」を指す暗喩であり、したがって「笠の台の生き別れ」は、首を斬られて頭と胴が別々になること、打ち首になることを意味する。

創作作品[編集]

被り笠が重要な位置を占める創作作品。

  • 笠地蔵 :菅笠を売る貧しい老人を主人公とした、日本の伽話の一つで、笠とその効用が物語上の重要な構成要素となっている。

笠紋[編集]

笠紋/画像は二階笠の代表的一種である柳生笠。

笠紋は、図案としてのバリエーション豊かな家紋の一つである。種類としては、基本形である「笠」を始めとして、素材や種類・描写の違いで「房付き笠」「竹笠」「花笠」「編笠」「深編笠」「足軽笠」「唐人笠」など、笠の数の違いで、横並び図形の「二階笠」「三階笠」など、向かい合わせた図形の「向かい笠」、中央の一点に寄せる形式を採る「頭合せ三つ笠」「三つ寄せ笠」[6]「三つ陣笠」「三つ寄せ参道笠」「五つ市女笠」など、他の図形との組み合わせ図形である「丸に笠」「丸に陣笠」「糸輪に笠」「井桁に笠」などがあるほか、「丸に竹に笠」「丸に切り竹笹に笠」「竹笹の丸に笠」などのように、ここまでに挙げたバリエーションをさらに別の図形と組み合わせたものや、用いた一族やによって呼び分けられる「神宮笠」「柳生笠」「建部笠」など、数多くが知られている。

脚注[編集]

  1. ^ 典拠は、加藤玄悦の随筆『我衣』
  2. ^ 笹間良彦 『図録 日本の甲冑武具事典』 柏書房
  3. ^ 笹間良彦 『図解 日本甲冑事典』 雄山閣出版
  4. ^ 笹間良彦 『図説 日本合戦武具事典』 柏書房
  5. ^ 柳亭種彦 『柳亭筆記』巻2、日本随筆大成編輯部編
  6. ^ 「頭合せ三つ笠」は笠の頂点を中央に寄せる図形。三つ寄せ笠は逆に被る側(下側)を中央に寄せる図形。

参考文献[編集]

  • 柳亭種彦 著、日本随筆大成編輯部編 編『柳亭筆記』 巻2、吉川弘文館〈日本随筆大成〉、2007年10月1日、717-724頁頁。ISBN 978-4-6420-4070-9 
  • 笹間良彦『図録 日本の甲冑武具事典』(新装版)柏書房、1981年1月。ISBN 4-7601-0113-6 ISBN-13 978-4-7601-0113-9{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。 
  • 笹間良彦『図解 日本甲冑事典』(新装版)雄山閣出版、1996年2月。ISBN 4-6390-0779-5 ISBN-13 978-4-6390-0779-1{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。 
  • 笹間良彦『図説 日本合戦武具事典』柏書房、2004年4月。ISBN 4-7601-2533-7 ISBN-13 978-4-7601-2533-3{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。 

関連項目[編集]