利用者:Kuzuha 0124/sandbox2

おやすみラフマニノフ[編集]

あらすじ[編集]

音大生の城戸晶は生活に困窮していた。実家からの仕送りが途絶え、練習時間をアルバイトに充てても学費を払いきれず、学生課からも請求書が届く有り様だった。そんな中、“稀代のラフマニノフ弾き”と呼ばれる学長・柘植彰良と定期演奏会で共演するメンバーをオーディションによって選ぶことが須垣谷教授によって告げられる。この演奏会は国内外の音楽関係者からも注目されているうえ、コンマスはストラディバリウスを使用でき、更には後期の学費も免除されるのだ。これを蜘蛛の糸と捉えた晶は、臨時講師の岬洋介に励まされながらも一心不乱に練習に取り組み、なんとかコンマスの座を射止める。それからの日々は、晶にとってストラディバリウスと共に過ごせる夢のようなものだったが、ある日、彰良の孫娘で晶の恋人でもある初音が使用する時価2億円のチェロ（ストラディバリウス）が保管室から盗み出され、保管室の楽器は事件が解決するまで使用できなくなってしまった。

晶に頼まれて岬が現場を検証した結果、小さな半透明の欠片が見つかった。岬は何かに気付いたようだったが、晶が答えを訊く前に須垣谷教授が岬を連れ去ってしまう。晶がこっそりあとを付けていくと、大学関係者が大麻の密輸に関わっているという話が聞こえてきた。その後も準備室に保管されていたピアノの破壊、大学の公式サイトへの殺人予告など事件は続き、ついに大学の理事会は定期演奏会を中止することを発表した。だが、オケのメンバーにとって、国内外の音楽関係者が集まる定期演奏会は将来の懸かったものであり、理事会と対立することになる。そんな一触即発の状況で岬はある提案をし、その場はなんとか取り持たれた。しかし、その提案とは「学長の代わりとして下諏訪美鈴にピアノを弾いてもらう」というものだった。これには美鈴の性格を知るオケのメンバーからの反発があった。だが、美鈴のピアノは岬の新鮮で具体的な指導によってオケとの親和性を次第に増していくのだった。

そして、演奏会当日。総勢56人のオーケストラが渾身の演奏を終えたあと、岬は一連の事件の真相を語り始める。

曲目[編集]

作品中に登場する曲目

ピアノ協奏曲第5番：ベートーヴェン

冒頭で岬がピアノ演奏。

作家刑事毒島[編集]

共通登場人物[編集]

主要人物

高千穂明日香（たかちほあすか）: 警視庁捜査一課の刑事。半年前に配属されたばかりで、トレーナー役の犬養をいけ好かないと感じている。
毒島真理（ぶすじままさと）: 刑事技能指導員。歳は50を超えているが、40代前半に見えるほどの童顔で温和な笑い方をする。刑事としての能力は優秀で人の機微にも通暁しているが、性格は歪んでいて皮肉を言うことが多い。2年前に刑事を退官したが、上層部の意向で再雇用された。麻生の先輩で、犬養のトレーナー役でもあったが2人からは敬遠されている。現在は週に1回のペースでしか一課に顔を出していない。退官後に「毒島真理（ぶすじま しんり）」というペンネームで推理小説家としてデビューし、神田神保町にある天ぷら屋の2階に事務所を構えている。5月の時点で雑誌に8本、新聞に2本の連載を抱えている。
辛坊誠一（しんぼうせいいち）: 幻冬舎の編集者。毒島とはデビュー当初からの付き合い。現在も毒島の担当で、原稿を催促するために事務所にいることもある。酒を飲むと辛辣な物言いをするようになる。

その他

犬養隼人（いぬかいはやと）: 警視庁捜査一課の刑事。明日香を指導している。男性犯罪者に限れば、検挙率は庁内で1、2位を争う成績。普段は一貫して鉄面皮だが、以前担当した事件をきっかけに出版業界に嫌悪感を露わにするようになった。
麻生（あそう）: 明日香や犬養が所属する班の班長。威圧的な話し方をする。
御厨（みくりや）: 検視官。

各話あらすじ[編集]

ワナビの心理試験[編集]

4月7日午前0時50分、杉並区阿佐ヶ谷南の工事現場脇で、元編集者・百目鬼二郎の刺殺死体が発見された。凶器は、アイスピックのような形状をしたアルミニウム合金製の有尖無刃器で、全長は約20センチメートル。背中から胸までを貫通していることから、検視官の御厨は失血死と判断した。事件発生から2日後、百目鬼が小説の新人賞で下読みの仕事をしていたこと、講評について3人の投稿者から恨まれ、抗議文が届いていたことが判明する。犬養に命じられて早速その3人を取り調べる明日香だったが、作家志望者たちの捻じ曲がった性格に疲労し、心が挫けそうになってしまう。そこで、小説家として活動していて出版業界に詳しい毒島に参考意見を訊いて来るよう、班長の麻生から指示を受け、明日香は神田神保町へと向かった。

百目鬼二郎（どめきじろう）: 元編集者。38歳。勤めていた出版社を辞めてからは、昭英社（しょうえいしゃ）主催の〈小説すめらぎ新人賞〉一次選考の下読みと、小説講座の講師を務めていた。ブログを開設していて、行きつけの店などをアップロードしていた。; 阿佐ヶ谷南で死体で発見される。
只野九州男（ただのくすお）: 投稿者の1人。32歳のニート。自身をハイワナビであるとしている。ペンネームは「天城（あまぎ）まひろ」。『俺がどうしてもこうしてもあの娘を嫁にほしい理由』という作品を投稿していた。
近江英郎（おうみひでお）: 投稿者の1人。66歳。くたびれた外見とは裏腹に威圧的な言葉を使う。『夕陽への熱き猛る咆哮』という作品を投稿していた。ペンネームと作品の主人公の名前は、共に本名と同じ。
牧原汐里（まきはらしおり）: 投稿者の1人。26歳の事務員。百目鬼が講師を務める小説講座の受講生。ペンネームは「藍川（あいかわ）しおり」。『あしたのあたしはきっときょうのあたしではない』という作品を投稿していた。