利用者:LT sfm/無性愛

en:Asexuality(07:21, 12 March 2018 UTC) を翻訳

無性愛(asexuality; アセクシャルまたはAセクシャルとも)とは、他人に対する性的な魅かれ(sex attraction; 性的な魅力を感じること)の少ないこと(lack)、または性的な行為(sexual activity; sexual behavior)への関心や欲求が少ないか、あるいは存在しないことである[1][2][3]性的指向の欠如、または異性愛同性愛両性愛と並ぶ性的指向の類型の1つと捉えうる[4][5][6]。また、より幅広い領域にわたる、様々な無性愛的なサブアイデンティティ(グレーアセクシャル)を分類するための包括的用語としても用いうる[7]

純潔運動不淫(禁欲)は、意図的な行動であり、また一般に個人の信条や宗教的信念などの要因に動機づけられる点において、無性愛とは異なる[8][9][10]。性的指向は、性的な行為とは異なり「永続的[11]」であると考えられている。無性愛の人々の中には、性的な魅かれやセックスへの欲求を欠いていながらも、性的な行為を行う者もいる。理由は様々であり、自分自身や恋愛上のパートナーを喜ばせたいという希望や、子供を持つことへの欲求などがある[8][12]

性的指向や科学的研究の分野としての無性愛の受容はまだ比較的新しく[2][12][5]、社会学的・心理学的知見からの研究の蓄積は進展しはじめたばかりである[12]。無性愛は性的指向であると主張する研究者もいれば、これに同意しない研究者もいる[5][6]

ワールド・ワイド・ウェブソーシャルメディアの出現以来、様々な無性愛のコミュニティが形成され始めている。 これらのコミュニティの中で最も充実し、かつよく知られているのは、2001年デヴィッド・ジェイによって設立されたAsexual Visibility and Education Network(AVEN; 無性愛認知教育ネットワーク)である[6][13]

定義、アイデンティティと対人関係[編集]

研究者及び当事者の間では、無性愛者は「エース(ace)」、そのコミュニティは「エースコミュニティ」と呼ばれることもある[14][15]。無性愛であると自認する人々にはたくさんの種類がいるため、無性愛は幅広い定義を包摂しうる[16]。 研究者は、一般的に無性愛を「性的な魅かれや性的関心の少なさ」と定義するが[6][12][17]、無性愛者らの定義は様々である。「性的な欲求が少ないか、もしくはない人」、「性的な行為が少ないか、もしくはしない人」、「恋愛的な関係・性愛的でない関係のみを持つ人」、または「性的な欲求および行為の両方がない人」を示す用語として無性愛は用いられることがある[12][18]。また、無性愛であるという自認も定義上の要素となりうる[18]

AVENでは無性愛者を「性的な魅かれを経験しない人」として定義し、また次のように述べる。

他の少数の性的マイノリティの人々でも、自らのセクシャリティを模索したり疑問を抱く中で、自らを無性愛であると考えるかもしれない。その人が無性愛であるかどうかを定義するためのリトマス試験紙は存在しない。無性愛は、他のあらゆる性自認と同じように、本質的には、人々が自分自身を理解する上での一助として用いる言葉にすぎない。いかなる理由にせよ、その人が自己表現のうえで無性愛という言葉を有用とみなすならば、そうすることが理にかなう限り、それを使用することを勧める。[19]

無性愛の人々は、いかなるジェンダーの人々に対する性的な魅かれも欠いているが、純粋な恋愛関係になる場合もあるし、そうでないこともある[6][20]。 無性愛を自認する人で、性的な魅力は感じるが、性的あるいは非性愛的な行為(抱きしめる、手を握るなど)を心からは望んでいない、または必要とはしていないために、それを行動に移す気がないと述べる人もいる。一方では抱きしめたり、他の非性愛的な身体的行動を行う無性愛者もいるし[8][9][12][16]、好奇心から性的な行為を試みる者もいる[12]。 一人での処理の形として自慰行為をする者もあれば、そうする必要がないと感じる者もいる[16][21][22]

特に性的な行為に関しては、自慰行為の必要性または欲求は、無性愛者からは一般に性衝動(sex drive)と呼ばれ、性的な魅かれや性的なものとは切り離して考えられる。自慰行為をしている無性愛者は一般的に、それが人体の正常な営みであり、潜在的なセクシャリティを持つしるしではないと考え、それに快感を覚えないこともある[12][23]。無性愛者の男性には、勃起を経験しない人もおり、そうした人にとっては試しに挿入するといった性的な行為は不可能である[24]。無性愛者は、性行為を行うことに対する感情に関しても様々である。無関心で、恋愛パートナーのためにセックスをする人もいれば、一般に人がセックスをすることを嫌うわけではないが、性行為をすることには強い嫌悪感を抱く人もいる[12][16][22]

無性愛者と自認する多くの人は、自らを他の性的アイデンティティにも属していると考える。 これら他のアイデンティティには、自分の性別や恋愛的志向に対する定義の仕方も含まれる(ただしそれだけで決まるものではない)[25]。彼らは多くの場合、こうした特徴を彼らが帰属するよりも広い分類に統合することになる。 例えば、性的指向や性的アイデンティティの恋愛的・感情的側面に関しては、無性愛者は異性愛レズビアンゲイバイセクシャルクィアと自認することがある[19][20]。あるいは性的指向の性的でない、恋愛的な側面と関係があることを示すために、以下のような用語で自らを定義することもある[16][20]

  • アロマンティック(aromantic) - 誰に対しても恋愛的魅力を感じない
  • バイロマンティック(biromantic) - 恋愛的に両性に魅かれる(が、性的な魅力を感じない)
  • ヘテロロマンティック(heteroromantic) - 恋愛的に異性に魅かれる
  • ホモロマンティック(homoromantic) - 恋愛的に同性に魅かれる
  • パンロマンティック(panromantic) - 恋愛的にあらゆる性に魅かれる

アロマンティックと非アロマンティックの間、または無性愛と性的な魅かれの間にいると感じるため、グレーA(グレーロマンティック、デミロマンス、デミセクシュアルまたはセミセクシュアルなど)を自認することもありうる。グレーAという用語が、「場合によって恋愛的な魅力や性的な魅力を感じる人」全てを指すのに対して、デミセクシャルやセミセクシャルは、性的な魅かれを2次的な要素として経験する、すなわち、「ある程度安定的な、あるいは強い感情的なつながりを生じて初めて性的な魅かれを感じる人」のことを言う。[16][26]

アイデンティティや人間関係をより詳しく説明するために使用される無性愛者のコミュニティ独自の単語や語句は他にもある。1つは、無性愛者のコミュニティの人々が造語した「意中の友人(friend-focused)」で、これは価値の高い非恋愛的な関係を指す。 他には、スクイッシュ(squish)とズッキーニ(zucchini)という言葉もあり、それぞれ「非恋愛的なべたぼれ」と「クィア的なプラトニックな関係」を指す。ノンアセクシャル(non-asexual)やアロセクシャル(allosexual)などの用語は、セクシャリティの領域において対置する人々(無性愛者以外の人々)を指すのに使う[27]

研究の蓄積[編集]

性的指向の程度を示すキンゼイ指標。元のスケールでは性的な行為の少なさを示す「X」が含まれている[28]

無性愛者の人口[編集]

無性愛は人間のセクシャリティの新しい形態ではないが、公の議論に表れたのは比較的最近のことである[29]ガーディアン紙の S.E.スミスは、無性愛が実際に増加したという意見には疑問があり、単に認知されるようになっただけであるという考えに傾いている[29]アルフレッド・キンゼイは、異性愛者から同性愛者への性的指向について、0から6の段階で評価した(キンゼイ指標)が、彼はまた、「社会的な性的接触や反応がない」個人について「X」という分類も設けた[30][31]。現代では、これは無性愛を表すものと分類されているが[32]、学者のジャスティン・J・レーミラーは、「キンゼイのXの分類は性的な行為の少なさを強調していたが、現代の無性愛の定義は性的な魅かれの少なさに重きを置いている。とすれば、キンゼイ指標は無性愛の正確な分類には不十分であるかもしれない」[28]と述べている。キンゼイは成人男性の1.5%をXと分類した[30][31]。また彼の2冊目の著書『人間の女性の性的な行為』では、Xに分類される人の内訳について、未婚女性の14~19%、既婚女性の1~3%、結婚経験のある女性の5~8%、未婚男性の3~4%、既婚男性の0%、結婚経験のある男性の1~2%と報告している[31]

無性愛者の人口統計に関するより経験的なデータが1994年に発表されている。これは英国の研究チームが英国人18,876人を対象に行った包括的な調査で、エイズ流行に伴って性に関する情報収集の必要に駆られたものであった。この調査には性的な魅かれに関する質問が含まれており、1.05%の回答者が「誰に対しても性的に魅かれたことはない」[33]と回答した。この現象についての研究は、カナダのセクシャリティ研究者アンソニー・ボガートによって引き継がれ、彼は2004年に一連の研究で無性愛者の統計的人口を調査した。 ボガートの研究では、英国の人口の1%が性的な魅かれを経験していないことが示唆されたが、先の調査のために接触した人々の30%が調査に参加しない選択をしたことを指摘した上で、この1%という数字は、無性愛者と自認する可能性のある人口を正確に反映したものではなく、その割合はおそらくずっと大きいという確信を述べた。性的経験が少ない人はセクシャリティに関する研究への参加を拒否する可能性が高く、無性愛者は性愛者よりも性的な経験が少ない傾向にあるため、回答した参加者には反映されていない可能性が高いからである。 同じ調査によると、同性愛者とバイセクシャルの人数の合計は、人口の約1.1%であり、他の調査よりもはるかに小さいことが分かった[4][17]

ボガートの1%という数字とは対照的に、2013年に出版されたアイケンらの調査によれば、2000〜2001年のNatsal-2のデータに基づくと、英国における無性愛者の割合は16〜44歳の年齢層でわずか0.4%である[18][34]。この割合は、10年前の同じ年齢層で収集されたNatsal-1のデータから決定された0.9%という数字からの減少を示す[34]。ボガートによる2015年の分析でも、Natsal-1とNatsal-2のデータの間に同様の低下が見られた[35]。アイケン・マーサー・キャッセルは、いくつかの証拠から、性的な魅かれを経験していない回答者に民族的差異があることを見出だした。 インドパキスタンに出自がある男性と女性の両方が、性的な魅かれが少ないと報告する傾向が強かった[34]

性的指向、精神衛生と発生要因[編集]

無性愛が性的指向であるかどうかについてはかなりの議論がある[5][6]。どちらも性的欲求の全般的な少なさを意味するという点において、無性愛は性的欲求低下障害(HSDD)と比較され、同一であると考えられている。HSDDは無性愛を医療化するために使用されてきたが、無性愛はその人が医療上の問題や他者に社会的に結びつく問題を抱えていると定義するものでは必ずしもないため、障害または性機能不全(無オルガスム症冷感症など)とは一般的にみなされていない[9][20][36]。HSDDの人々とは違って、無性愛者は通常、彼らの性的感情、あるいは一般的には性的興奮の欠如に関して、「感情的苦痛」や「対人的な困難」を経験していない。無性愛は、永続的特性としての性的な魅かれの少なさまたは欠如とみなされる[17][20]。ある研究では、HSDD被験者と比較して、無性愛者は性的欲求、性的経験、性に関連する苦痛および抑鬱症状が低レベルだったことが明らかになった[37]。研究者リチャーズとバーカーは、無性愛者はアレルギー鬱病、または人格障害の割合が不相応であると報告している[20]。しかし、無性欲的状態が前述の障害のいずれかによって説明できる場合でも、無性愛であると自認している人もいる[38]

無性愛に関する経験的データを提供した最初の研究は、1983年にポーラ・ヌリウスによって発表された、性的指向と精神衛生の関係についてのものである[39]。米国のさまざまな大学の心理学または社会学の授業を受講している学生を主とする689人の被験者に、4つの臨床的幸福尺度を含むいくつかの調査がなされた。結果は、無性愛者が他の性的指向のメンバーよりも自己評価が低く抑鬱の可能性が高いことを示した。ここでは異性愛者の25.88%、両性愛者(ambisexual)の26.54%、同性愛者の29.88%、および無性愛者の33.57%が自己評価に問題があると報告されている。鬱病についても同様の傾向がみられた。 ただしヌリウスは、様々な理由から、この結果からは確固たる結論は導けないと考えた[39][40]

2013年の研究では、ユールらが白人の異性愛者、同性愛者、両性愛者、無性愛者の精神衛生上の違いを調査した。男性203人と女性603人の結果が所見に含まれていた。ユールらの研究では、無性愛の男性被験者は、特に異性愛の被験者と比較して、他の男性よりも気分障害を有すると報告する傾向が強いことが分かった。女性の無性愛の被験者にも、異性愛者との比較で同じ結果が得られた。しかし、無性愛および異性愛でない女性が最も高い割合を示した。無性愛の男女ともに、異性愛者および非異性愛の被験者よりも不安障害を有することが多く、異性愛者の参加者よりも最近自殺したい気持ちが芽生えたことを報告する傾向があった。ユールらは、こうした差の一部は差別やその他の社会的要因によるものかもしれないとの仮説を立てている[41]

性的指向のカテゴリーに関しては、無性愛は、一連のカテゴリーに追加する意義のあるものではなく、むしろ性的指向やセクシャリティの欠如であると主張されることもある。別の議論では、無性愛者が自慰したり単に恋愛パートナーを喜ばせるために性的な行為を行うことを時折踏まえたうえで、無性愛は自然なセクシャリティの否定であり、セクシャリティへの羞恥心や不安、性的虐待によって引き起こされる障害であると指摘されている。性的指向をめぐるアイデンティティ・ポリティクスの文脈の中で、無性愛は性的指向のアイデンティティーに関する1つのカテゴリーとして実践的な政治的機能を果たしうる[27]

無性愛がHSDDであるという見解については、無性愛者のコミュニティ内で議論を呼んでいる。無性愛を自認する人はふつう、それが性的指向として認識されることを好む[6]。通常の性衝動があると報告しながらも自慰行為のできない無性愛者もいることから、無性愛は性的指向であると様々な学者が述べており、また多様な性的嗜好がある中に無性愛も含めるべきだと主張している[5][8][24]。彼ら研究者や多くの無性愛者は、性的な魅かれの少ないことは性的指向に分類するには十分妥当であると考えている[42]。これらの研究者は、無性愛者は自ら選んで性的欲求を持たないのではなく​​、一般に思春期ごろ性的な行為の違いに気付き始めるのだと主張する。こうした事実が明るみに出たことで、無性愛は選択的行動などではなく、また障害のように治癒できるものでもないと論断されている[24][43]。無性愛が一般的になりつつあるか否かの分析もなされており、実際により多くの人々が無性愛を自認するようになっている[44]

性的指向の成因に関する研究を無性愛に適用することは、性的指向に無性愛を含めるか研究者によって一貫した定義がないという問題を孕んでいる[45]。性的指向は「永続的」で変化しないものと定義され、一般にそれを変更しようとする介入は通用しないことが証明されている[11]が、無性愛は永続的で持続するから、性的指向と定義できるかもしれない[2]。しかし異性愛、同性愛および両性愛は、必ずではないが通常、前思春期の早い段階で決定されるのに対し、いつ無性愛であると決定するかは分からない。「性的関心あるいは性的欲求を持たないという特性が、生涯にわたり続くものである、あるいはまた後天的であると考えうるかは判然としない。」[12]

性的活動とセクシャリティ[編集]

処理のために一人で自慰を行ったり、恋愛のパートナーを喜ばせるためにセックスを行う無性愛者がいる一方で、それを行わない人もいる[12][16][21]。フィッシャーらは、「無性愛に関する心理学を研究する学者は、無性愛者たちは生殖器の興奮が可能であるが、いわゆる主観的興奮ではこれに困難を覚えることもある」と報告する。これは、「身体が興奮しても、主観的、つまり精神や情緒のレベルにおいては興奮を経験しない」[18]ということを意味する。

キンゼイ研究所は、2007年にこの話題に関する小規模な調査を後援し、自認のある無性愛者が「パートナーとのセックスに対する欲求が低く、性的興奮しにくく、性的興奮の程度は低いと報告したが、性的抑制の程度や自慰行為の欲求については無性愛者でない人々と総じて変わらなかった」ことを明らかにした[12]

ミラ・T・ジョンソンによる1977年の論文、「女性の無性愛と自己性愛:隠れた2集団」は 、はっきりと人間の無性愛について注目している[46]。ジョンソンは、「身体的または情緒的状態、実際の性的な経験、婚姻状態、または思想的方向性に関わらず、性的活動を行うことを望んでいないとみられる」男性および女性を無性愛者と定義している。 彼女は、自己性愛の女性と無性愛の女性を対比し、「無性愛の女性は性的欲求を全く有していないが、自己性愛の女性はそのような欲求を認識しながらも、一人で満足するのを好む」と述べる。ジョンソンの証拠は主に、無性愛/自己性愛の女性が書いた女性雑誌の編集者との手紙である。彼女はこうした女性たちを不可視の存在、「存在しないという合意によって抑圧され」、性の革命フェミニズム運動双方から取り残された人々として描写する。社会は彼らの存在を無視または否定するか、あるいは政治的・宗教的理由、神経症的要因から禁欲しているに違いないと決めてかかるのだ、とジョンソンは述べる[46][47]

1979年に『情動研究の進展』の第5巻で発表された研究と、1980年に『パーソナリティ・社会心理学ジャーナル』に掲載された同じデータを使用した別の論文では、カンザス大学のミシェル・D・ストームズがキンゼイ指標のリモデル化について概説している。 キンゼイは実際の性的な行為と性的妄想や性欲(ertoicism)に基づいて性的指向を測定したが、ストームズは、妄想や性欲のみを使用した。しかしストームズは、単一スケールの2つの端ではなく2軸上に異性愛と同性愛を置いた。これは、両性愛(異性・同性両方への性欲を異性愛者・同性愛者と同程度に示す)と無性愛(異性への性欲を同性愛者程度に、同性に対する性欲を異性愛者程度に示す、つまり性欲がほとんどない人)の区別を可能にする。 このタイプのスケールは初めて無性愛を説明したものであった[48]。 ストームズは、キンゼイのモデルでは無性愛と両性愛両方が性的パートナーについてのジェンダー嗜好の少なさによって定義されていたので、このモデルに従う多くの研究者が、無性愛の被験者を誤って両性愛者に分類する可能性があると懸念した[49][50]

689人の被験者(ほとんどが心理学・社会学の授業を受講する米国の大学生)へのポーラ・ヌリウスによる1983年の調査では、妄想と性欲の2次元スケールを用いて性的指向を測定した。 回答者には結果に基づいて、異性愛・同性愛について0〜100のスコアが与えられ、両者とも10点未満の得点を挙げた者は「無性愛」と分類された。 この群には男性の5%と女性の10%が該当した。調査では無性愛者が、複数のパートナーとの交際、肛門性交、様々な場所での性的接触、自己性愛的活動などの様々な性的活動の頻度がはるかに低く、その欲求が起こる頻度も低いという結果を示した[39][40]

フェミニズム研究[編集]

カーリ・ジューン・セレンコフスキとミーガン・ミルクスによる、「新たな性的指向:無性愛およびその理論と実践への示唆」と題した2010年の論文は、無性愛そのものがジェンダーやセクシャリティ研究の上で多少問題になるかもしれないことを示唆している[51]。セレンコフスキとミルクスは、社会では基礎的な本能として受け入れられているセックスを回避する方法など、無性愛は既存の問題の解決よりもむしろ多くの問題を提起する可能性を指摘した[52]。この論文では次のようにも述べる。「社会は(LGBTや)女性のセクシャリティがいかに権力を有する、または抑圧されているかについて考えてきた。無性愛の運動は、既存の説に逆らって、すでに無性愛を抑圧的・反セックスのセクシャリティとして定義してきたプロ・セックス・フェミニズム英語版の基本理念の多くに抵抗することとなる。無性愛者としての自認を受け入れることに加えて、AVENは生物学的に決定された志向として無性愛を定式化している。この公式が科学的に分析・証明されれば、ゲイの男性、女性、およびストレートの男性の視床下部を研究するサイモン・リヴェイの盲目的な研究を支持することになる。すなわち、ストレート男性とゲイ男性の間に生物学的相違があることを示すものである[53]

セレンコフスキーとミルクスは、2014年に『無性愛:フェミニストとクィアの視点から』を出版した。これは、フェミニストとクィアの視点から無性愛のポリティクスを探究することを目的とした論文集である[52]。この本は導入と次の6つの章に分かれている。「無性愛の理論化:新たな性的指向」「無性愛のポリティクス」「メディア文化における無性愛の可視化」「無性愛と男性性」「健康、障害および医療」「無性愛的読解:無性愛の文学理論」。 各章は、無性愛研究の所与の問題に関する2〜3本の論文を取り上げている。その1つを書いたエラ・プシビロは、無性愛の学術文献で膾炙しつつある名前である。セレンコフスキーとミルクスの著作に寄せた彼女の論文は、無性愛を自認する男性の話に注目し、とりわけ男性が欧米で支配的な議論やメディアの中で経験するセックスへの圧力に焦点を当てている。2011年にカナダオンタリオ州南部に住む3人の男性がインタビューを受けたが、プシビロは、わずかな例では彼女の知見をより多くの人々に代表・一般化することはできず、探索的・暫定的な、理論化にまだ至らない分野であることを認めた[54]上で、3人のインタビュー対象者全員が、「本物の男」となるためにセックスを楽しみ、求めねばならないという固定観念の影響を受けていたことを指摘した[54]

2011年に出版された他のプシビロの著作、『無性愛とフェミニズムのポリティクス:「しないこと」について』は、フェミニストの視座を無性愛者についての学術的著作に応用している。プシビロは、無性愛は「性的、生殖的かつ異性愛的な要請」という西洋の文脈を通してのみ作られると主張する[55]。彼女はダナ・デンスモア、ヴァレリー・ソラナス、ブリアンヌ・ファースなど、「無性愛や不淫」を主張した研究者たちの既往研究を、「家父長制に対抗する急進的フェミニストの政治的戦略」として取り上げた[55]。プシビロは無性愛と不淫との間にいくらか区別をしているが、彼女はフェミニストがこの話題を理解するにあたり、二者の線引きをぼかすことは生産的であると考えている[55]。2013年の論文「生産ということ:経験的無性愛と性の科学的研究」において、プシビロは、無性愛研究における2つの段階を区別している。まず無性愛に対する理解が非常に限られていた1970年代後半から1990年代初頭までの時期、もう一方は、より最近の無性愛に関する議論が再興した時期で、彼女は2004年のボガートの研究(上述)に始まり、これが無性愛の議論を普及させ、より「文化的に目に見える形に」させてきたと述べている。この記事で、プシビロは無性愛への理解を文化現象として再度主張し、科学的研究への批判を続けている[56]

CJ・デルジオ・チャシンは「無性愛とその根本的な可能性の再考」において、無性愛に関する学術研究が「無性愛を性的指向に関する本質主義的議論の延長線上に位置づけてきた」と述べ、このことは無性愛者とHSDDなどの障害として精神的介入を受けた者との間に二元論を生んでしまう点で厄介だとする[36]。この二元論は、すべての無性愛者が生涯にわたり(したがって、永続的な)性的な魅かれの少なさを経験し、性的欲求の少なさを経験するすべての無性愛でない人々がそれに苦しみ、かかる苦しみを経験した無性愛者は病理化されてしまうことを意味している、とチャシンは言う[36]。 HSDDのような診断が女性のセクシャリティを医療化し支配しようとする、と彼が言うように、この記事は、無性愛者と女性双方に有害であるような問題ある無性愛の定義を「解体」することを目指している。チャシンは、無性愛にはセクシャリティの自然性をめぐる普遍的な議論に抵抗する力があるが、今の定義を疑いもなく受け入れているうちには、こうした抵抗は不可能であると主張する。チャシンはまた、この論文および「無性愛コミュニティの同意と理解:抵抗の文脈における関係性とアイデンティティへの案内」において、人がなぜ性的欲求が少ないことで苦しむのかについて問いを発することが重要だ、とも論じている。 彼はさらに、臨床医が、性的欲求が少ないことそれ自体を病理学的なものとして扱うことを避け、臨床的に性的欲求の少ない相手に対して、無性愛をありうべき可能性として(適切な場で)検討する倫理的義務を負っていると主張する[27]

ボガードの心理学的研究及び理論[編集]

ボガートは、無性愛を理解することは、セクシャリティ一般を理解する上でも重要であると主張している[35]。彼の研究に即して、ボガートは無性愛を「他人に対するみだらな性向/感情の少なさ」と定義している。この定義は、昨今の理論と性的指向に関する経験的研究に照らしても比較的新しい。無性愛に関するこの定義はまた、無性愛と不淫の双方についても行為と欲求の区別を明確にできる。ただしボガートは、この定義に合致する人々の性的な活動の少なさを示す証拠があるとも指摘している。彼はさらに、他の理論家が無性愛に異なる定義をしており、また「魅かれることと欲求の間の複雑な関係」に関してさらなる研究が必要であることを認めつつも、「他者に対する欲求」と「性的刺激の欲求」を区別する(後者に関しては、無性愛を自認する人でも必ずしも欠けているわけではない)[35]。線引きは「恋愛的魅かれ」と「性的な魅かれ」の間にも行われる。ボガートは発達心理学の成果を引き合いに出し、性的メカニズムが主に脳の構造によって決まるのに対し、恋愛メカニズムは愛着理論から導かれることを示唆している[35]

無性愛を理解することがセクシャリティの全体像のより深い理解につながるとする提案と並行して、ボガートは無性愛者の自慰の話題を論じながら、無性愛と「目標志向型の性倒錯(target-oriented paraphillia)」を理論化しようと試みる。「目標志向型の性倒錯」とは、自己と性的関心/魅かれの典型的な目標/対象との間の倒錯や逆転、断絶があることを示す(例えば、自分自身への誘惑、「自己性愛主義」と命名されるような自分自身に対する魅かれなど)[35]

2006年初めの論文では、ボガートは、近年の性的指向の概念化において行為と魅かれの区別が受容されつつあることを認めており、このことは無性愛の位置づけにも役立っている[57]。彼は、この枠組みによれば「(主観的な)性的な魅かれが性的指向の心理的核心をなす」と付け加えるとともに、無性愛を性的指向に含めることに対して「学術的・臨床的コミュニティの双方からの懐疑論」があり、懐疑論からは、このような分類に対する2つの異論が提起されると述べる。まず、自己報告にまつわる問題があると指摘している(すなわち、魅かれることが少ないという「知覚」または「報告」であるという点。特に主観的な魅かれに対する身体的な興奮を性的指向と定義する場合)。第2に、非常に性的欲求が少ない者は、無性愛者と自認する可能性があるにもかかわらず、「根本的な性的指向」を有する可能性があるため、性的欲求の「欠如」と「非常に少ない」が重複することへの問題提起である[57]

コミュニティ[編集]

無性愛コミュニティのメンバーは、帰属を表すために右手中指に黒い指輪をつけることもある[58]

概説[編集]

無性愛者のコミュニティに関する学術研究は今のところ不足している[59]。 1990年代にはインターネット上に性的欲求がほとんどまたは全くない人々のための私的なサイトがいくつか存在していた[60]が、学者の述べるところでは、 オンラインコミュニティの普及を追い風に、21世紀初頭に無性愛を自認する人々のコミュニティが合体したという [61][62]。 フォルクマー・シグッシュは、「Leather Spinstersのなどのグループは、文化の圧力に対して無性愛的な生き方を擁護し、ジェラディン・ヴァン・ヴィルステレンはオランダでNonlibidoism Societyを創設し、 Yahooは無性愛者にHaven for the Human Amoebaというコミュニティを提供した[60]。AVENは、2001年にアメリカの無性愛活動家デビッド・ジェイによって設立された組織で、無性愛者の問題に焦点を当てている[6]。その目標は、「無性愛の周知と議論の創出、および無性愛コミュニティの形成の促進」である[6][13]

のけ者にされていると感じるという無性愛者が多い中で、人によっては、コミュニティの一員であることは重要な気晴らしの手段である[25]。オンラインコミュニティは存在するが、それらとのかかわり方は様々である。オンラインコミュニティという概念に疑問を抱く人もいれば、無性愛者コミュニティを支えとして重度に依存する人もいる。エリザベス・アボットは、無性愛の人々は常に集団の中に存在してきたが、そうした人々が目だ立つことはなかっただろうと仮説を述べる。中世ヨーロッパにおいて、子作りができないことは婚姻の儀式への侮辱と見られ、時には離婚または婚約破棄の裁定の根拠として用いられてきたが、同性愛とは違って無性愛は決して違法ではなく、たいてい気づかれることはなかった。しかし21世紀になって、オンラインコミュニケーションの匿名性とオンラインソーシャルネットワークの全般的普及が、共通の無性愛アイデンティティを中心としたコミュニティの形成を促した[63]

AVENのようなコミュニティは、無性愛の可能性に関して、アイデンティティの危機を打破するための答えを求める人にとって有効たりうる。人々は、一連の感情的プロセスを経て、やがて無性愛コミュニティに共鳴する。彼らは最初に、自分の性的魅かれが社会の大半のそれと異なることを認識する。この違いによって、自分の感性が受け入れられるのか、そしてなぜこのように感じるのかの疑問が生じる。その後往々にして病理的な信念が起こり、病気があると感じて医者の助けを求めることもある。自己理解は、通常、自分の感情に合う定義が見つかると達成される。 無性愛コミュニティは、新たに自認を得た無性愛者が、自分自身の解明からコミュニティレベルでの帰属意識に至るまでの援助と情報の提供源となる。この帰属意識は、彼らが関わりを持つ先を見つけることによってさらに強められる。完全に社会的に孤立した状況に対して、普通であるという実感を与えるからである[64]

無性愛者の団体やその他のインターネットリソースは、人々に無性愛についての情報を提供する上で重要な役割を果たしている。研究の不足は、医師が原因を理解することを困難にする。他の多くの性的指向と同様に、無性愛者の人々のほとんどは自認を持っている。このことは、無性愛が対人関係上の問題、あるいは無性愛と定義されない他の症状と間違えられる時には問題となる。また、無性愛を理解しておらずその存在を信じない人々もかなりの程度存在しており、こうした団体が一般大衆に知らしめることの重要性をいや増している。しかし、無性愛という話題に関する科学的事実が不足しているために、これらの団体が提供する情報にもしばしば疑いの余地が残る。

2014年の6月29日、AVENはワールドプライド英語版との提携の下、トロントで2度目となる無性愛者の国際会議を主宰した。1度目は、2012年ロンドンにおけるワールドプライドで開催されている[65]。2回目のこのイベントには約250人が参加したが、これは今日に至るまで最大の無性愛者の集いである[66]。会議では、無性愛に関する研究や無性愛者の人間関係、様々なアイデンティティとの交わりなどの話題に関するプレゼンテーションやディスカッション、ワークショップなどが行われた。

シンボル[編集]

よく用いられる無性愛者のプライド・フラッグ

2009年、AVENのメンバーらが初めてアメリカでのプライド・パレードに参加し、サンフランシスコでのプライド・パレードで行進した[67]。2010年8月、無性愛者の旗を作ること、およびそのためのシステムの立ち上げ方についての議論が交わされたのち、できる限りの無性愛者コミュニティと連絡を取りあった末に、参加団体から1本の旗を無性愛者のプライド・フラッグとする旨が宣言された。最終的に決まった旗は有力な候補の1つで、元々はAVEN以外のオンライン掲示板で使われていたものであった。最終投票は、旗を作る運動の本丸であったAVENの外部調査システムの下で行われた。旗の色は工芸品に用いられ、セクシャリティに関する記事の中でも取り上げられた[68]

宗教[編集]

研究では宗教と無性愛との間には何らはっきりとした統計的相関は見つかっておらず[69]、無性愛は信仰を持つ人・持たない人のいずれにも同じように見られる[69]。にもかかわらず、無性愛は禁欲を誓う聖職者の間にはよく見られる。これは、無性愛でない人々のほうが禁欲の誓いを守れない可能性が高いからである[70]。アイケン、マーサー、カッセルらの研究では、ムスリムの被験者のほうがキリスト教徒よりも高い割合で、いかなる形でも性的に魅かれを経験したことがないと答えている[69]

無性愛という用語が使われ始めたのが比較的最近であることから、ほとんどの宗教は無性愛に対して明確な立場を取っていない[71]マタイの福音書19章11-12節において、キリストは次のように言う。

というのは、母の胎内から独身者に生れついているものがあり、また他から独身者にされたものもあり、また天国のために、みずから進んで独身者となったものもある。この言葉を受けられる者は、受けいれるがよい。――マタイによる福音書(口語訳)#19:12

この「母の胎内から独身者に生れついているもの」に、無性愛者も含まれると解釈する聖書学者もいる[72][73]。 キリスト教は伝統的に禁欲(これは無性愛と同義ではない)[71]を尊んできた。生涯にわたり未婚の独身者であった使徒パウロを、無性愛者として描く著述家もある[71][74]。彼はコリント人への第一の手紙においてこう記す。

わたしとしては、みんなの者がわたし自身のようになってほしい。しかし、ひとりびとり神からそれぞれの賜物をいただいていて、ある人はこうしており、他の人はそうしている。次に、未婚者たちとやもめたちとに言うが、わたしのように、ひとりでおれば、それがいちばんよい。しかし、もし自制することができないなら、結婚するがよい。情の燃えるよりは、結婚する方が、よいからである。――コリント人への第一の手紙 (口語訳)#7:9

にもかかわらず、キリスト教徒にも無性愛を想像の産物や、時として不道徳なものとさえ見なす人もいる[71]イエズス会の僧侶デヴィッド・ナンテスとスコット・オッパーマンは次のように書いている。

無性愛なる人々は存在しない。セクシャリティは神からの賜物であり、したがって人間のアイデンティティの基本をなす部分である。自分のセクシャリティを抑圧する人々は、神が彼らにそうあるようにと――すなわち生を全うし、善く生きるようにと――創った通りの生を生きていない。そういうわけで、彼らは最も不幸である可能性が高い。[71][75]

差別と法的保護[編集]

プライド・パレードにおける無性愛者の行進

『集団のプロセスと集団間関係』に掲載された2012年の研究によれば、無性愛者はゲイやレズビアン、バイセクシャルなどの他の性的マイノリティに比べて、より不当な偏見人間性の抹殺英語版差別にさらされているという。同性愛と異性愛の人々の両方が、無性愛者のことを冷血で動物的な、抑制されていない人々と考えている[76]。しかし別の研究では、彼らが無性愛であるがゆえの深刻な差別を受けているとする証拠はほとんど見出せなかった[77]。無性愛の活動家であり著述家・ブロガーであるジュリー・デッカーは、もっぱら無性愛者のコミュニティを標的にするセクシャル・ハラスメント暴力矯正レイプ英語版を目にしてきた[78]。社会学者のマーク・カーリガンは中立的地点から、無性愛者はしばしば差別を経験しているが、それは嫌われるような類のものというよりはむしろ「人々が本当の意味で無性愛を理解しないことによる周縁化」の問題であると論じている[79]

無性愛はまた、LGBTコミュニティからも偏見にさらされている[78][80]。多くのLGBTの人々は、同性愛者でも両性愛者でもない人々はストレートに違いないと主張し、しばしば無性愛者をクィアの定義から排除しようとする。LGBTQのコミュニティを支援する名の知れた組織は数多く存在するが、これらの組織は一般に無性愛者には手を差し伸べず、無性愛に関する文献資料も提供していない[80]。活動家のサラ・ベス・ブルックスは、無性愛者であることをカミングアウトするにあたって、「無性愛者は性自認をはき違え、社会正義の運動の中で不相応な注目を浴びている」と多くのLGBTの人々から言われている[78]

いくつかの司法制度の下では、無性愛は法的保護を受けている。ブラジル1999年から、国の倫理規定に基づいて、精神科医によるあらゆる性的指向の病理化や治療の試みを禁じており[81][82]、またアメリカのニューヨーク州では無性愛者を保護すべき人々として扱っている[83]。しかし、無性愛は大衆や研究者の目をさほど引き付けていないため、他の性的指向ほどには法制化の対象にはなっていない[4]

メディアでの扱い[編集]

シャーロック・ホームズ

メディアにおける無性愛的な表現は限られており、作品の中で公に知らされたり、確たることが述べられることはほとんどない[84]。21世紀初頭以前の作品の中では、登場人物はたいていおのずから性的であることが前提とされており、セクシャリティの有無に関してはふつう疑問を挟まれない[85]コナン・ドイルの作品に登場するシャーロック・ホームズは、知性にのみ駆り立てられる肉体の欲望とは無縁の人物として意図的にキャラクター化されており[70]、今日であれば無性愛に分類されるであろう人物として描かれている[70]アーチー・コミックのキャラクター、ジェグヘッド・ジョーンズは、アーチーの過度な異性愛の引き立て役としてわざと無性愛的に描かれている可能性が高いが、何年間もシリーズを繰り返すうちに、彼がゲイか異性愛者であるとほのめかす方向に描写を変えつつある[70][86]

1960年代のテレビシリーズギリガン君SOSに登場する同名のキャラクター、ギリガンも、今日では無性愛と位置付けられる[70]。ドラマの製作者はおそらくそうすることで、性徴を迎えておらず性的欲求を経験したことのない少年層の視聴者により親しみやすくしようとしたのだと考えられる[70]。ギリガンが無性愛的であることで同時に、製作者としては、歩み寄ってくる魅力的な異性をギリガンがはねつけるというコメディ的な展開をわざと描くことができる[70]。映画やテレビではよく、魅力的だが無性愛的な女性のキャラクターが、物語終盤で男の主人公に異性愛に「変えられる」さまを描く[70]。こうした非現実的な描写は、どんな無性愛的な女性もひそかに男性のことを欲しているものだという異性愛の男性の妄信を反映したものである[70]

21世紀初頭から無性愛は、生物学的な存在というよりも一種の性的アイデンティティとして、メディアで徐々に論じられるようになってきた[84]フォックス放送Dr.HOUSEシリーズの1エピソード「良き伴侶」では無性愛のカップルが描かれているが、この描写にはAVENの創設者デヴィッド・ジェイを含め無性愛者のコミュニティからは疑問の声が上がった。というのも最終的に、男が単純に性衝動が減退する脳腫瘍に冒かされており、女は男を喜ばせるために無性愛のふりをしていただけだったことが分かって幕が引かれるのである[87]。このことが表現をめぐる議論を呼び、フォックス放送に今後の無性愛的キャラクターの表現の仕方に対する反省を求める署名がchange.orgで申請されるに至った。署名では「無性愛を病気や欺瞞とみなしている最低な表現だ」と述べられた[87]Netflixのアニメ、ボージャック・ホースマンは第3シーズンの終盤に、主要人物の1人であるトッド・チャベスが無性愛者であることを明らかにした。第4シーズンではそれがさらに緻密に描かれており、この表現に関しては無性愛者コミュニティからも概ね好意的な反応を受けている。イギリスのソープオペラエメデールでは、15歳のキャラクターのリヴ・ファラーティが、男の子にも女の子にも靡かないことを打ち明け、無性愛者ではないかという憶測を呼んでいる[88]。ベストセラー小説シャドウハンターシリーズのドラマドラマでは、登場人物の1人であるラファエル・サンティアゴが無性愛者であることが確定している[89]

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