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利用者:Omotecho/sandbox/クレードルボード

ナバホ式のクレードルボード
スコルト・サーミの母とǩiõtkâm (クレードルボード)におさめた子ども

クレードルボード ({{Cheyenne語: pâhoešestôtse、Northern Sami語: gietkka、Skolt Sami語: ǩiõtkâm)は北アメリカおよびスカンジナビア北部のサーミ地方先住民族文化で使われる伝統的な赤ん坊を保護し運ぶ道具のこと。先住民族の文化の手仕事の多様さを反映し、さまざまな形式がある。北アメリカ先住民の一部には、現在もこの揺りかごを使うコミュニティが現存する。

構造[編集]

Atikamekw族のクレードルボード

クレードルボードは生後数か月までの乳児をおさめ、幼い子どもを安全に連れ歩くために欠かせない。クレードルボードの中には、たとえばアパッチ族の使うものは籠である。ヤナギやハナミズキ、チュールまたはガマの繊維を編み上げて作る。これに対し、木の板を組み立てるのはイロコイ族とペノブスコット族、またナバホ族はポンデローサパインを使った木製の枠に、バックスキンの細紐を通して編み上げる形式である[1]

どんな素材を使うにしても、構造は共有しており、乳児を保護し、その脊椎を支える幅の広いしっかりした枠を作る。それをゆりかごの底板に見立て、足元に板を取り付ける。頭部には天蓋あるいは現代のベビーカーのフードのように、子どもの頭上に張り出す丸いヘッドピースも組み付け、日よけにしたり、冬には寒い気候から守るため、動物のなめし革または毛布で覆うこともできる。ヘッドピースがあると、クレードルボードが何かにぶつかったとしても、頭を守ることができる。またヘッドピースにはさまざまな装飾品やお守りを取り付けることも多い。「ビーズ織りのへその緒入れ、ドリームキャッチャーやメディシンホイール」など、乳児のおもちゃにもなり、目がしっかり見えるように視力のトレーニングに役立つ[2]

内側は緩衝材としてつんだばかりの植物の繊維として、ミズゴケやガマの穂、あるいは木の皮を薄く細く削った木毛(材料は

ジュニパーやクリフロー)を詰め、い地は使い捨ておむつ使った。が、ナ族だけバれたジュニたはクリフロー木毛を綺麗に洗う方法を知っていて、再使用できた。繊維には天然の殺菌作用があり、乳児の肌を健にに保った[2]チペワ族の伝統では、クレードルボードの内張りはクランベリーが実る低湿でコケを集め、焚き火でいぶし除虫したあと、よく揉んで柔らかくして厚みを整えた。あるいは底板の上にシラカバの樹皮を丸めた浅い椀を置き、敷いた苔が汚れるたびに取り替える工夫をした例もある[3]。寒い季節は毛の生えた面を上に毛皮を敷き詰め、乳児の足先をウサギのなめし革で包んでやることもある。

使用法と地域差[編集]

イロコイ連邦のクレードルボード
ジェームズ・ケザス夫妻とその子ども。カナダのマニトバ州北西部(1886年)
カイオワ族のクレードルボード(インディアナポリス子供博物館所蔵)

歴史的にクレードルボードを使ってきた地域は、現在のカナダの亜北極圏からメキシコや中央アメリカに至るまでのいくつもの文化圏である。極寒の北極圏では、クレードルボードは乳児の命を保証できず、乳児を連れて歩く母親は紐で子どもをおぶってから、防寒着のパーカーを着て保護する[4]

現在の北アメリカの先住民は広くクレードルボードを使用しており、メキシコのキカプー[5]の人々に加え、遠く南のベリーズに至るまで、アステカ[6]セリ族[7]マヤのさまざまなコミュニティにいたる[8]。南米大陸では南端のパタゴニア地域にのみ使用例が見られる。

長距離移動に限らず、日々の仕事で母親が乳児連れで出かけるとき、安全に運べるように子どもをクレードルボードにおさめて背負う。ストラップ(タンプライン tumplines)または背負い紐は額に当てたり、胸にわたしたり肩にかける。荷物とクレードルボードの両方を持つには、パックパックのストラップは胸にわたし、クレードルボードの紐は額に当てる[3][9]。子どもの背が低いうちは木の幹や岩に立てかけてることもでき、室内で柱から(イロコイの長屋)、または頑丈な木の枝から吊るすこともできる。また長距離の移動中は馬具に取り付けて運ぶこともできる。

アメリカ南西部からメキシコ北部にわたる地域に暮らすホピ族やアパッチ族などの文化圏では幼児はほぼ1日じゅうクレードルボードに入って過ごし、日に5回を上限に屋外で過ごす時間を延ばしていく。自力で座れるようになると、乳児をクレードルボードに入れる時間をだんだん減らし、このときも大きめのクレードルボードに代えて、引き続き移動などで使用することもある。通常、1歳もしくは歩き始めるころにはクレードルボードを卒業する[10]

ナバホ族のコミュニティでクレードルボードの使用と母子関係への影響を調べたところ、使っても親子のきずなは大きな悪影響をうけないまま発達することが示された。生後数ヵ月まで幼児をクレードルボードに入れると落ち着かせる効果が認められる。生後半年以降は身体能力が発達した子どもが嫌がることから、多くの場合は腕と手を出したままクレードルボードにおさめて、吊り下げたおもちゃで遊ばせる[11]

股関節の形成不全[編集]

クレードルボードの使用により股関節形成不全の発生が増える原因となる[12][13][14]。脚をまっすぐに固定するため大腿骨の脱臼と寛骨臼の奇形を助長する。予防策には、脚の間にパッドを挟んで膝を浅く曲げさせ、腰を外側に反らせる。現代のクレードルボード利用者の中には、ナバホ族の乳児を対象にした1968年の小規模調査を指して、伝統文化の慣習を否定する意図があり恣意的だったと主張する人もいる[15]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

出典[編集]

  1. ^ Kavasch, E. Barrie and Karen Baar (1999). American Indian Healing Arts. Bantam Books. p. 14. ISBN 0-553-37881-3 
  2. ^ a b Kavasch, E. Barrie and Karen Baar (1999). American Indian Healing Arts. Bantam Books. p. 15. ISBN 0-553-37881-3 
  3. ^ a b Densmore, Frances (1929). Chippewa Customs. Minnesota Historical Society Press. p. 49. ISBN 978-0-87351-142-1. https://archive.org/details/chippewacustoms0000dens 
  4. ^ Whiting, John Wesley Mayhew; Hollenberg Chasdi, Eleanor (1994). Culture and human development: the selected papers of John Whiting. Publications of the Society for Psychological Anthropology. 6. Cambridge University Press. p. 114. ISBN 978-0-521-43515-4 
  5. ^ Latorre, Felipe A. and Dolores L. Latorre Contributor Dolores L. Latorre (1991). The Mexican Kickapoo Indians. Dover Books. p. 166. ISBN 978-0-486-26742-5 
  6. ^ Aztec Cradleboard Figurine and Drawing (Object), in Children and Youth in History, Item #432”. George Mason University. 2011年11月21日閲覧。
  7. ^ Ed. Davis(写真). “Our City, Our Story | 2010.50.1.132-t Seri Woman”. San Diego History Center - San Diego, CA. 2020年9月25日閲覧。
  8. ^ Hammond, Norman (2009). Cuello: An Early Maya Community in Belize. Cambridge University Press. p. 156. ISBN 978-0-521-11767-8 
  9. ^ Kavasch, E. Barrie and Karen Baar (1999). American Indian Healing Arts. Bantom Books. pp. 14–5. ISBN 0-553-37881-3 
  10. ^ Hrdlicka, Ales (2005). Physiological and Medical Observations Among the Indians of Southwestern United States and Northern Mexico. Kessinger Publishing. p. 81. ISBN 978-1-4179-3837-7 
  11. ^ Chisholm, James S. and Cary Michael Carney (2009). Navajo Infancy: An Ethological Study of Child Development. Transaction Publishers. p. 187. ISBN 978-0-202-36251-9 
  12. ^ Coleman, S. S. (1968). “Congenital dysplasia of the hip in the Navajo infant”. Clinical Orthopaedics and Related Research 56: 179–93. doi:10.1097/00003086-196801000-00020. PMID 5652776. 
  13. ^ Mahan, S. T.; Kasser, J. R. (2008). “Does Swaddling Influence Developmental Dysplasia of the Hip?”. Pediatrics 121 (1): 177–8. doi:10.1542/peds.2007-1618. PMID 18166571. 
  14. ^ Wang, Enbo; Liu, Tianjing; Li, Jianjun; Edmonds, Eric W.; Zhao, Qun; Zhang, Lijun; Zhao, Xiaoming; Wang, Kang (2012). “Does Swaddling Influence Developmental Dysplasia of the Hip?”. The Journal of Bone and Joint Surgery 94 (12): 1071–7. doi:10.2106/JBJS.K.00720. PMID 22573131. 
  15. ^ Reviving Tradition: One Cradleboard at a Time” (英語). www.culturalsurvival.org. 2019年9月28日閲覧。

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