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利用者:Omotecho/sandbox/ハローチョ

ハローチョ西: Jarocho)とはメキシコベラクルス州、通称「ソタベント」(風が舞う場所・風下)として知られる海岸地域の出身者を指す。地理的にベラクルスからアルーバに至る。

語源[編集]

ハローチョの語源には異説がいくつかあり、文化人類学者フェルナンド・ウィンフィールド Fernando Winfield の説では鉱物の砂漠のバラ(ロックローズ)あるいは棒切れで家畜を追うという言葉から遡ると、どちらもスペイン語の「」(西: garrocha)の語源に行き着き、そこからは「矢」「」(Jaras)など道具の呼称が派生するという。このことから海岸沿いの槍が得意な自警団や、のちにカンパニアに統合される黒人民兵を指すことばとしてハローチョを当てたと考えられる。黒人民兵はメキシコ独立革命で植民者側についた。後世には黒人の特徴を持つ人すべてにこの呼び名を経て、最終的にその人たちの大半が暮らしたことから、「風下海岸の住民」(Sotaventina)を示すように発展した。

語源の別の説では、先に返しのついた槍すなわち(もり)を意味する gara(スペイン語発音でガラ)に由来するとしている。語源は強大な川を意味するパパロアパン盆地の言葉で、銛で魚を突くに秀でた先住民、つまり「槍遣い(やりつかい)の人」をハローチョスと呼び、その人たちは主にベラクルス州南部の海岸平原に暮らしていた。やがてその地方の人をまとめて指すようになったのは前述の説と共通するが、いずれにしても詩人のフランシスコ・リヴェラ・アリヴァ[2]がいみじくも言い切ったように、同じ海沿い出身でも生まれ故郷で差別化する呼称が定着し、ベラクルス周辺出身のveracruzano べラクツァーノか、南部人の porteño ポルテーニョかで呼び分けた。

民俗衣裳[編集]

ハローチョスの伝統衣裳。

身に着けるものでハローチョの特徴を示すと、風下海岸の漁師の服装にちなみ、白い上着のグアヤベラ(スペイン語)にズボン姿である。上着は4つボタンで指には黄金のリング、首には赤いバンダナを巻き、通常は「ブーツ」まで白で揃える。男性が首の周りに巻くバンダナは、その起源に汗を取り、グアヤベラの襟を汚さない知恵のなごりという。

女性の衣裳はレースの縁取りのあるたっぷりしたティアードスカートペティコートで膨らませ、ブラウスとスカーフ、靴まで白で全身を揃えるパターンもあるし、スカーフだけ柄物にすることもある。

通説に過ぎないが、白の使用は1940年代1950年代メキシコ映画で人気のあったヨーロッパ風のウェディングドレスと、ハローチャのドレスの典型、さらに著名なバレエダンサーのアメーリア・ヘルナンデスの舞台衣裳がイメージを補強した。実際には現地で日常にグアヤベラを着用する人はごく一部であり、明るい色調が人気でも、全身白というコーディネートは傾向として見られない。同じことは女性のブラウスやスカートにも通じ、髪に「カチルーロ」(cachirulo 飾りの櫛(くし))と花飾りを着けるのは民俗舞踊の発表会ならあり得るものの、パーティーや「ファンダンゴ」でさえ、めったに見かけなくなった。

地域の民俗舞踊[編集]

ハローチョの民俗舞踊は、ベラクルス全域の発表会で通例である「サパテアド」つまりソンハローチョが伴奏になる。バンドはハラナ、レキント、ハープ、タンバリン、キハーダなど楽器を演奏し、踊り手はテーブルの上に上がり天板を踏み鳴らす。

音楽[編集]

ハローチョの音楽は農民(田舎)起源であると一般に思われており、その対極は主に都市、より具体的にはベラクルスである。これを理解するには、男性がベラクルス風に言うなら「帰化の手紙を書く」、つまり戸籍を移そうと考えるタイミングを考慮に入れる必要がある(特に18世紀半ばから19世紀末まで)。州の事実上の中心はすでにベラクルスに移り、芸術的表現(形式および人気のあるテーマ)のすべての実体が揃っていた。メキシコのほとんどの伝統音楽のテーマは間違いなく先住民文化と田舎の起源であると仮定すると(動物、習慣、風景、地域の事件など)、ソンハローチョの音楽形式は異なり、3つの要素が組み合わされている。ルーツは先住民(歌詞)で黒人のリズム、それを奏でる楽器はヨーロッパのものである。

19世紀初頭から中期にかけて、世界中でハローチョの音色が人気を博した。もっとも流行した曲には以下を含む。『ラ・バンバ[3][4][5][6][7][8][9][10]『エル・コラース』『エル・シキシリ』『エル・バラフ』『エル・サパテアド』『Chuchumbé』『ラ・パテネラ』『ラ・グアカマヤ』『ラ・イグアナ』『鳩と鳩』などは、とりわけ再解釈され続けてきた。

近年、若いミュージシャンの流れが現れており、学校で音楽を学んだ経験を取り入れた音楽家が数人いたり、「伝統的でない」楽器やアフロカリブ(アフリカ系カリブ音楽英語版)のリズムなどを組み合わせた複雑な調和から、新しい活力を得ている。一般に、このタイプの音楽は耳になじみやすく、踊らなくても楽しめる(たとえばファンダンゴで)。調性によってマイナーとメジャーの音色に分け「ヒープ」と「カップル」と呼び、踊り手が演出を加える。踊りの曲といえば語源のナワトル語(cuauhpanco =ステージ上)の原義のままのウアパンゴがあり、こちらはベラクルス州北部のワステカ地方で発生した。アフロカリブ起源のトロピカルダンスも人気があり、ダンソン(スペイン語)はすでにすっかり定着した。

雑誌[編集]

メキシコで発行された政治の風刺画入り雑誌は1861年から1877年にかけて18誌あり、その1誌が『エル・ハローチョ』El Jarocho という題名だった(創刊1869年)。当時、魅力のあるカリカチュアを雑誌に載せるには、銅版印刷の技術を誇る工房に頼っており、市場をほぼ寡占した4社は、いずれも定期刊行物のチラシ専業から業態を広げた。前出の『エル・ハローチョ』誌印刷所の Nabor Chávez 社主も銅板刷りで身を立て[11]、チラシ受注を競い合った同業も Manuel Castro が1861年から『Guillermo Tell』を担当したほか、Hesiquio Iriarte 社主は『La Orquesta』(1863年–1870年)を引き受けると後継者のFrancisco Díaz de León に渡している[11]

脚注[編集]

  1. ^ Sobredosis de humor de Paco Píldora. メキシコ、ベラクルス:ベラクルス文献研究所 Instituto Veracruzano de Cultura、1996年。OCLC 948232798
  2. ^ フランシスコ・リヴェラ・アリヴァ Rivera Avila, Francisco、愛称は「パコ・ピルドーラ」Paco Píldora。ベラクルスで最も愛誦された詩人のひとりで、この町の歴史に詳しく、ときには手厳しく批判したことも知られる[1]
  3. ^ 「La Bamba」『El cóndor pasa』Phonogram、1967年。OCLC 695850335、LP。
  4. ^ Romero, Aldemaro; Monna Bell.「La Bamba」『La Onda nueva en México』フロリダ?:Hialeah:Discos Musart. OCLC 14021990、LP。
  5. ^ 佐々木洋一(編曲)『La Bamba』東京 : ミュージックエイト〈Full bandジャズバンド ; AZ-100〉、1988年頃。YM11-M4215、メキシコ民謡。全国書誌番号:23367122ISBN 978-4-8400-1744-2、楽譜 18枚。
  6. ^ 「(2)LA BAMBA」『RAG FAIR/恋のマイレージ』トイズファクトリー、2002年。<YMC-316-19-4>。
  7. ^ Sly & Robbie presents「(12)La Bamba (Ambilique and Chevelle Franklyn)」『レゲエ・カヴァーズ・プラチナム・2007』ポニーキャニオン、2007年。<YMC11-H57297>
  8. ^ Jusqu'a Grand-pere「(10)La Bamba des Grand-peres」『Dansez』ハッツ・アンリミテッド、2008年。
  9. ^ ミッキー吉野(音楽)「(6)La Bamba」『映画『ハッピーウエディング』オリジナル・サウンドトラック』、ディスクユニオン、2015年。YMC11-L33391。全国書誌番号:22842426
  10. ^ エルマノス・エレーラ「(2)La bamba (son jarocho)」『ソン・ハローチョとソン・ウァステコ = Sones jarochos y huastecos y más』サンビーニャ・インポート、2018年。全国書誌番号:23524230
  11. ^ a b Acevedo, Esther. "2. Progress and modernity. § (ii) Consolidation in the 1860s." Mexican caricature, 1808–1876. 12 August 2019.

関連項目[編集]

関連資料[編集]

  • 「民族音楽年表」『「ラ・バンバ」の響き:ベラクルスのソン・ハローチョに関する民族音楽学の歴史 1946年–1959年』Loza, S., & Sheehy, D. (2014). Randall Ch. Kohl S. "Yearbook for Traditional Music." Ecos de "La bamba": Una historia etnomusicológica sobre el son jarocho de Veracruz 1946–1959. メキシコ、ベラクルス:ベラクルス文化研究所 Institute Veracruzano de Cultura、2007年、46, 223-225頁。画像入り。ISBN 970–687–049–0. (スペイン語)doi:10.5921/yeartradmusi.46.2014.0223

外部リンク[編集]

ウィクショナリーには、es:garrochaの項目があります。 ウィキクォートには、Jarochoに関する引用句があります。

音楽

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