利用者:PatentAttorneyJp

自己紹介

職業

本業は弁理士であり、著作権法などの知的財産法は専門になります。利用者名は、PatentAttorneyJpとなっていますが、日本の弁理士という意味になります。即ち、Patent Attorneyは弁理士の英訳であり、JPは、日本の国コードになります。

著作権法

ウィキペディアでは出典を明記することが求められることから、著作権法が専門という主張の根拠を記載いたします。

文献

著作権法について執筆した文献を下記に列記いたします。

  • 小池誠、オープン・グラフ・プロトコルに関する著作物利用許諾契約、電子情報通信学会技術報告, vol. 122, no. 61, SITE2022-2, pp. 6-14, 2022年6月.
  • 小池誠,複製権及びその制限について-令和2年著作権法改正を中心に-,電子情報通信学会技術報告,vol. 120, no. 52, SITE2020-1, pp. 1-6, 2020年6月.
  • 小池誠,著作権法第30条の4に関する一考察-特許法及び商標法の法理論が著作権法に与えた影響-,電子情報通信学会技術報告,vol. 118, no. 345, SITE2018-59, pp. 1-6, 2018 年 12 月
  • 小池誠,ディジタルデータ取引と知的財産~著作権によるディジタルデータ保護およびその限界~,電子情報通信学会技術報告, vol. 117, no. 440, AI2017-28, pp. 61-65, 2018年2月

会誌編集部

日本弁理士会が発行する月刊パテントは広報センター会誌編集部が担当しているのですが、2017年度以降、会誌編集部に所属しています。最近では月刊パテント2021年11月号、月刊パテント2022年12月号は著作権を特集しています。私がこれらの特集を担当したというわけではないのですが、会誌編集部の一員としてこれらの特集原稿に目は通しています。

ウィキペディアの沿革

永年、ウィキペディアに登録することなく、ウィキペディアを閲覧していました。最初の利用者登録では、Makoto Koike Ph.D.という利用者名でした。その後、PatentAttorneyJpという利用者名に変わり、2023年8月にこの利用者名でウィキペディアの編集回数が500回を超えました。

編集

月刊パテント

日本弁理士会は月刊パテントを発行しているのですが、2017年度以降、日本弁理士会広報センター会誌編集部で月刊パテントの編集を担当しています。編集者として原稿の誤字、脱字などを指摘したり、事実の確認を著者に求めたりしています。

編集者の経験として、著者は原稿が掲載されることを希望していることを実感しており、場合によっては、掲載を心より熱望していることがあります。月刊パテントの編集では、なるべく著者の要望に沿う方向で考えており、原稿を修正することにより掲載することができるときには、原稿の修正を依頼しています。

ウィキペディア

このような編集者の経験を踏まえて、ウィキペディアの管理を眺めているのですが、いわゆる削除主義の下、既存の項目を削除する傾向に違和感を覚えています。どなたかがウィキペディアで立項なさった以上、その方針を尊重してもよいのではないか、というようなことです。新しい項目に多少の不備があっても、加筆修正などをして、インターネット百科事典に相応しい内容に変更すれば十分ではないかということになります。

このような思想、哲学となると、いわゆる包摂主義ということになります。ウィキペディアというインターネット百科事典は、ブリタニカ国際大百科事典が掲載していない項目であっても掲載してもよいでしょうし、項目の数でブリタニカ国際大百科事典を凌駕する方向であってもよいと考えます。

ところで、ウィキペディアの全ての指針の基礎となる五本の柱というウェブページがあるのですが、その冒頭で『ウィキペディアは百科事典です。ウィキペディアは、総合百科・専門百科・年鑑の要素を取り入れた百科事典です』と明記されています。そうすると、ウィキペディアの基本方針は包摂主義になります。

とはいっても、ウィキペディアからウェブページなどを一切、削除できないという趣旨ではなく、包摂主義の例外として削除主義があります。例えば、公の秩序又は善良の風俗に反する項目、他人の権利を侵害する項目などを削除するのは容認いたします。このように削除主義は例外ですので、ウィキペディアからウェブページそのもの又はその一部を削除するときには厳格、かつ、限定的に解釈されるべきと考えます。

著作権

他人

ウィキペディアに他人の著作権を侵害する事項が掲載されているときに、そのような事項を削除するのは良いのですが、他人の著作権を侵害するか否かは簡単に判断できないことがあります。ウィキペディアにコピペがされていても、著作権者本人がウィキペディアに寄稿したこともあれば、著作権者が同意していることもありますし、著作権者の同意が推認できる場合があります。

著作権者とウィキペディアに投稿した利用者との関係、即ち、同一人か他人かというような事項になりますと、ウィキペディアの管理人などは分からないので、著作権者から削除依頼があってからウィキペディア上のコンテンツが著作権を侵害するか否かを判断すべきであり、ウィキペディアの管理人などがサイバー空間をパトロールして、著作権侵害を指摘するのは行き過ぎかと存じます。

侵害するおそれ

著作権法の枠組みであっても、現在、著作権を侵害する行為がされていなくても、将来、著作権を侵害する行為がされることが確実に予測できる特別な事情があるときには、例外的に侵害予防を請求することができますが[1]、将来の予測が確実というような事情があるときはそれほど多いものではありません。著作権法112条1項に「侵害するおそれがある」という用語が用いられているのですが、この用語は、将来、確実に発生すると予測される著作権の侵害を予防するために、差止請求権が容認されるという趣旨になります。

著作権法の枠組みで、「著作権を侵害するおそれがある」という用語が使われているときには、現在、著作権を侵害する行為がされているか否かが問われているのでありません。現在、著作権を侵害しているか否かはよく分からないが、著作権を侵害しているかもしれないという場合、「著作権を侵害するおそれがある」という法律用語の意味と全く異なるので、「著作権を侵害するおそれがある」という法律用語は使うべきではありません。

専門家

著作権法などの法律というのは複雑、難解であって良く分からないものなので、弁護士、弁理士などの専門家がいるのですが、著作権法について詳しいとは限らないウィキペディアンが、著作権の侵害と断定してよいのか疑問に感じることがあります。著作権の侵害が成立していない場合であっても、著作権の侵害が成立すると断定し、ウィキペディアのコンテンツを削除するのは、どうなのでしょうかね。事案によりけりではありますが、法律秩序を害する事態が生じることも十分に想定されるかと存じます。

法律事件

ウィキペディアでは、一方が著作権の侵害を主張するのに対して、他方が著作権を侵害していないと主張することがあるのですが、このような議論は、法律上の権利義務に争いがあるということになります。法律上の権利義務の争いは、法律事件ということがあります。

鑑定

法律上の専門知識に基づき法律事件について法的見解を述べることは鑑定といいますが、著作権を侵害するという法的見解、又は、著作権を侵害しないという法的見解を表明するのは、鑑定に該当することがあるでしょうね。

ウィキペディア利用者によっては、長期間に渡って何度もウィキペディアに著作権の侵害に関する書き込みをしているのですが、反復して継続的に行う意思は明らかです。

特筆性

ウィキペディアにおける特筆性については、新たに立項するときの基準と、ウィキペディアから削除するときの基準は、若干、異なってもよいと考えます。即ち、ウィキペディアに立項するような利用者が一人いるときには、その項目に関心を示す別個の利用者が世界のどこかにいるかもしれないでしょうし、将来、世界のどこかに現れるかもしれません。このような観点から、ウィキペディアから項目を削除するときのハードルは、ウィキペディアに立項するときの基準より、若干、上げてもよいかと存じます。

念のために付言いたしますが、ウィキペディアに新たに立項するときの基準は従来通りでよいかと存じます。

個人用

権利不継承

問題の所在

外国語版ウィキペディアのある項目にテキスト、画像などのコンテンツが掲載されている場合において、日本語版ウィキペディアに新たに項目を作成するとともに、日本語の翻訳文、及び、画像を掲載することがあります。このときに、外国語版ウィキペディアについて、適切な帰属の表示を懈怠することがあります。

ライセンス違反?

2023年8月の時点における日本語版ウィキペディアの慣行では、履歴の不継承はライセンス違反であり、著作権の侵害なので、日本語版ウィキペディアの項目又は特定の版を削除しているようです。

しかしながら、ライセンス違反といっても、新たに履歴を継承する旨を補足することにより、ライセンス違反は解消されるので、削除は行き過ぎかと存じます。また、著作権の侵害という主張は下記の理由により疑問です。

著作権法とCC-BY-SA

このあたりについて、著作権法という観点から説明いたします。

外国語版のウィキペディア作成者は、CC-BY-SAという条件でライセンスを許諾しています。CCという条項により、画像の複製は容認されますし、SAという条項により外国語から日本語に翻訳することは容認されます。

また、BYという条項に違反しているといっても、この違反があるからといって、CC-BY-SAという契約全体が無効になるというものではなく、CCという条項もSAという条項も有効です。

著作権法の枠組みとしては、著作権者(ライセンサー)が、利用者(ライセンシー)に対して、著作物に利用許諾したときには、利用者はその著作物を利用することができます。利用許諾契約の法的性格としては、著作権者が利用者に対して、差止請求権などの権利行使をしないという不作為請求権になります。

外国語版ウィキペディアで著作権者がCC-BY-SAという条件で著作物の利用を容認している以上、画像を日本語版ウィキペディアに掲載しても、外国語を日本語に翻訳して、日本語版ウィキペディアに掲載しても著作権の侵害は成り立たちません。

そもそもウィキペディアはクリエィティブコモンズを基調とし、著作物の理由な流通を認めるのが基本です。したがって、このような事案であっても、クリエィティブコモンズの原則を考慮しつつ、解釈することになります。

文献

  1. ^ 中山信弘『著作権法』(3版)有斐閣、2020年、726頁。