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アミジグサ
[編集]アミジグサ(網地草、Dictyota dichotoma (Hudoson) Lamouroux)は褐藻綱アミジグサ目アミジグサ科に分類される海藻で、世界中の沿岸部の岩場に広く分布している。アミジグサという和名は、肉層の大きな細胞が作り出す細かな網目模様が体を透かして見た際に、肉眼で確認できることに由来する。[1][2]
アミジグサ | ||||||||||||||||||||||||
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Dictyota dichotoma at Capo Gallo, Palermo, Sicily
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Dictyota dichotoma (Hudoson) J.V.Lamouroux 1809 [3] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
アミジグサ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Dictyota dichotoma |
分布
[編集]世界各地の潮間帯から潮下帯の岩上あるいは他の海藻上に生息している。[4][5]
生息が確認されている地域には以下のような国・地域がある。[6]
- 大西洋諸島:アゾレス諸島、バミューダ諸島、カナリア諸島、ランサローテ島、マディラ島、サルベージ諸島、セントヘレナ島、セントピーター・セントポール諸島
- ヨーロッパ:アドリア海、プーリア、バレアレス諸島、バルト海、黒海、ブルガリア、チャンネル諸島、クリミア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、ヘルゴランド、アイスランド、イタリア、マルタ、オランダ、ノルウェー、ペラジアン諸島、スカンジナビア、スペイン、スウェーデン、ヴェネト
- 北アメリカ:フロリダ、カルフォルニア湾、 レビジャヒヘド諸島 、メキシコ、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニア
- 中央アメリカ:ベリーズ、エルサルバドル
- カリブ諸島:バハマ、バルバドス、カイコス諸島、ケイマン諸島、キューバ、ハイチ、ジャマイカ、小アンティル諸島、オランダ領アンティル諸島、プエルトリコ、トリニダード、トリニダード・トバゴ
- 西部大西洋:西大西洋
- 南アメリカ:アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、温帯南アメリカ、ベネズエラ
- アフリカ:アルジェリア、アンゴラ、コートジボワール、エリトリア、エチオピア、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、ビサウ、ケニア、リベリア、リビア、マダガスカル、モーリタニア、地中海、モロッコ、モザンビーク、サントメ・プリンシペ、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ、スペイン語圏北アフリカ、スーダン、タンザニア、トーゴ、チュニジア
- インド洋諸島:アルダブラ諸島、アミランテ諸島、アンダマン諸島、クリスマス島、ラッカディブ諸島、モルディブ、モーリシャス、ニコバル諸島、レユニオン、ロドリゲス島、セーシェル
- 中東:アラビア湾、キプロス、エジプト、イラン、イスラエル、クウェート、レバノン、レバント盆地、レバント州、オマーン、紅海、シリア、トルコ、イエメン
- 南西アジア:バングラデシュ、ゴア、インド、カルナータカ州、パキスタン、スリランカ
- 東南アジア:インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
- 東アジア:中国、海南島、香港、日本、韓国、ロシア、南シナ海
- オセアニア:コーラル海諸島領土、ハウスマン・アブロホス、ニューサウスウェールズ、ニュージーランド、ノーフォーク島、クイーンズランド州、オーストラリア
- 太平洋諸島:カロリン諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、ガラパゴス諸島、ニューカレドニア、サモア諸島
- 亜南極諸島:マッコーリー島
日本における分布
[編集]日本においても北海道から南西諸島まで広く分布している。しかし、内湾には生息していない。[7]
生態
[編集]アミジグサは世界各地に生息する普遍種で、春から秋にかけて大きな群落を形成する。また、本種は同型世代交代を行う藻類である。同形同大の胞子体と配偶体(雌雄異株)との間で世代交代が規則的に行われる。雌雄の配偶体には造精器と造卵器が形成される。造精器と造卵器は集合するが、四分胞子嚢ははっきりとした集合体を形成しない。そのため、胞子体と配偶体を肉眼で区別することは可能である。造精器と造卵器においてそれぞれ作られた精子(単鞭毛)と卵が接合胞子体となり、胞子体から減数胞子が放出される。放出された胞子は成長して雌雄の配偶体に戻る。[5]
本種は多年生であり、直立藻体が消失した後も、匍匐性の葉状体は越冬する。天然個体群においては胞子体と比べて配偶体が圧倒的に優占することが知られている。また、本種が人間に産業利用されたことはないとされる。[5]
食害の防止
[編集]アミジグサ類はテルペン類という動物の嫌う化学物質(摂食忌避物質)を作り出し、ウニや魚からの食害を避けている。[8]
また、アミジグサ類には、酸を貯めて、ウニやサザエといった植食動物から食べられることを防ぐ性質を持つ種もある。ウルジグサ類と同様に高濃度の硫酸イオンを細胞内に蓄積させ、酸性の強い種類ではpHが1程度になることもある。植食動物の多い場所では他の藻類が生息できず、アミジグサ類だけが繁茂することもみられる。[9][8]
ソコミジンコ類との関わり
[編集]ソコミジンコ類は多くの種のアミジグサ類の中に生息・寄生し、アミジグサ類を宿主としている。餌を巡って他の動物と争うことを避けることができ、強酸性の海藻に守られ、魚などに捕食されにくくなるといった理由によってこのようになっていると考えられる。アミジグサ類の強酸性の獲得と、ソコミジンコ類の強酸性の海藻への適応が起こり、両者の間に進化的な相互作用が生じているとされている。[8]
形態
[編集]大きさは10-35cmほどであり、体は扁平で線状である。規則的に15-45°の角度で数回二又に枝分かれし、[10][11]扇型となり、先端は丸くなっている。[12]枝の幅は2-5mmほどである。色は、黄緑色から褐色である。[10]
近似種
[編集]名称
[編集]学名
[編集]和名
[編集]分類
[編集]上位分類
[編集]上位分類はアミジグサ属であり、アミジグサはアミジグサ属のタイプ種となっている。[10]アミジグサ属以下のような種が分類されている。[13][14]
- オオマタアミジ Dictyota bartayresiana Lamouroux
- オオバアミジグサ Dictyota ciliolata Sonder ex Kützing
- サナダグサ Dictyota coriacea (Holmes) Hwang, Kim et Lee
- アミジグサ Dictyota dichotoma (Hudson) Lamouroux
- サキビロアミジ Dictyota dilatata Yamada nom. illeg
- カヅノアミジ Dictyota divaricata Lamouroux
- ハイアミジグサ Dictyota friabilis Setchell
- イトアミジ Dictyota linearis (C. Agardh) Greville
- トゲアミジ Dictyota mertensii (Martius) Kuetzing
- ヘラアミジグサ Dictyota spathulata Yamada
- ハリアミジグサ Dictyota spinulosa Harvey
- コモンアミジ Dictyota patens J.Agardh
同タイプ異名(homotypic synonym)
[編集]- Ulva dichotoma Hudson 1762
- Zonaria dichotoma (Hudson) C.Agardh 1817
- Fucus dichotomus (Hudson) Bertoloni 1819
- Haliseris dichotoma (Hudson) Sprengel 1827
- Dichophyllium dichotomum (Hudson) Kützing 1843
異タイプ異名(heterotypic synonym)
[編集]- Fucus zosteroides J.V.Lamouroux 1805
- Dictyota rotundata J.V.Lamouroux 1809
- Zonaria rotundata (Lamouroux) C.Agardh 1817
- Dictyota dichotoma var. acuta Chauvin ex Duby 1830
- Dictyota setosa Duby 1830
- Dictyota dichotoma var. volubilis Lenormand 1843
- Dictyota acuta Kützing 1845
- Dictyota volubilis Kützing 1849
- Dictyota acuta var. patens Kützing 1849
- Dictyota dichotoma var. rigida P.Crouan & H.Crouan 1852
- Dictyota aequalis var. minor Kützing 1859
- Dictyota attenuata Kützing 1859
- Dictyota elongata Kützing 1859
- Dictyota latifolia Kützing 1859
- Dictyota dichotoma var. elongata (Kützing) Grunow 1874
- Dictyota dichotoma var. stenoloba Hohenacker 1883
- Dictyota dichotoma f. latifrons Holmes & Batters 1890
- Dictyota areolata Schousboe 1892
- Dictyota complanata Schousboe ex Bornet 1892
- Dictyota dichotoma f. attenuata (Kützing) Vinassa 1892
- Dictyota dichotoma f. latifolia (Kützing) Vinassa 1892
- Neurocarpus annularis Schousboe 1892
- Neurocarpus areolatus Schousboe 1892
- Dictyota apiculata J.Agardh 1894
- Dictyota dichotoma f. elongata (Kützing) Schiffner 1933
- Dictyota dichotoma var. minor Kützing 1981
- Dictyota dichotoma f. spiralis Nizamuddin 1981
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “アミジグサ”. 美ら海生き物図鑑. 沖縄美ら海水族館. 2024年11月29日閲覧。
- ^ “アミジグサ”. 市場魚貝類図鑑 ぼうずコンニャク. 2024年12月1日閲覧。
- ^ “Dictyota dichotoma (Hudson) J.V.Lamouroux, 1809”. World Register of Marine Species. 2024年11月29日閲覧。
- ^ “同形世代交代型褐藻アミジグサの季節的消長と環境要因との関連”. 日本藻類学会. 2024年11月29日閲覧。
- ^ a b c 堀, 輝三 編『藻類の生活史集成』内田老鶴圃、1993年9月20日、96-97頁。
- ^ a b “Dictyota dichotoma (Hudson) J.V.Lamouroux 1809”. Algae Base. 2024年11月29日閲覧。
- ^ 瀬川宗吉『原色日本海藻図鑑』株式会社保育社、1977年7月1日、25,26頁。
- ^ a b c 長澤和也『カイアシ類学入門』東海大学出版会、2005年9月5日、259-271頁。
- ^ “アミジグサ”. 京都府. 京都府. 2024年12月19日閲覧。
- ^ a b c 吉田忠雄『新日本海藻誌 日本産海藻類総覧』(第1版)株式会社内田老鶴圃、1998年5月25日、205-234頁。
- ^ a b “アミジグサ”. 神戸大学. 2024年11月29日閲覧。
- ^ “アミジグサ”. 海藻図鑑. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “アミジグサ目”. 日本の海藻. 筑波実験植物園. 2024年11月29日閲覧。
- ^ 吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 (2015-11-10). “日本産海藻目録(2015年改訂版)”. 藻類 63: 129-189 .
参考文献
[編集]図書
[編集]- 瀬川宗吉『原色日本海藻図鑑』株式会社保育社、1977年7月1日
- 吉田忠雄『新日本海藻誌 日本産海藻類総覧』(第1版)株式会社内田老鶴圃、1998年5月25日
- 堀輝三『藻類の生活史集成 第2巻 褐藻・紅藻類』株式会社内田老鶴圃、1993年9月20日
- 長澤和也『カイアシ類学入門 水中の小さな巨人たちの世界』東海大学出版会、2005年9月5日
論文
[編集]- アミジグサ科植物の生活史について1.アミジグサ,エゾヤハズ,オキナウチワの四分胞子発生
- アミジゲサとコモンゲサの培養と細胞学的研究
- 日本産海藻目録
- 同形世代交代型褐藻アミジグサの季節的消長と環境要因との関連