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ノッティングヒル人種暴動 (英: Notting Hill race riots)は、イングランドのノッティングヒルで、1958年8月29日から同年9月5日にかけて起こった、一連の人種暴動。
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背景
[編集]第二次世界大戦終戦後、アフロ・カリビアンのイギリスへの移民が増加した。1950年代までに、白人労働者階級「テディ・ボーイズ」は、地域内の黒人家庭に敵意を示しはじめていた。そうした状況は、オズワルド・モズレーの連合運動や白人防衛同盟といった極右団体がそれを利用し、不満を抱く白人住民に「イギリスを白く保つ」よう呼び掛けたことで、さらに燃え広がった[1]。
黒人に対する暴力は夏を通じて増加の一途を辿っていた。1958年8月24日、10人のイギリス人の若者の集団が、6人の西インド諸島系の住民に対し、4回に渡って深刻な暴行を加えた。午前5時40分、2人の警察官が、若者たちによって乗り捨てられた車をホワイト・シティで発見した。この車を手がかりに、翌日、20時間ぶっ続けで捜査した刑事が若者のうち9人を逮捕した。[2]
ノッティングヒル暴動の直前、ノッティンガムのセント・アン地区近辺では、人種問題に起因する騒動が、8月23日から2週間に渡って断続的に発生していた。[3]
マイブリット・モリソンへの暴行
[編集]多くの場合、ノッティングヒル人種暴動の引き金を引いたと信じられているのは、1958年8月29日に起こった、スウェーデン系の白人女性であるマイブリット・モリソン[4]に対する暴行である[5]。モリソンは、彼女の夫でジャマイカ系のレイモンド・モリソンと、ラティマーロード駅で語らっていた。白人の集団が話に割り込もうとし、レイモンドの友人と白人の間で小競り合いが起きた[6]。翌日、マイブリットは、前の晩に彼女を見たことを思い出した白人青年の集団から、暴言を投げかけられ、暴行を受けた[7]。ある記述によれば、青年たちはマイブリットに牛乳瓶を投げつけ、「黒人のカキタレ(Black man's trollop)」などの人種的中傷を投げかけた[7]。また、鉄の棒で背中を殴られたと記すものもある[8]。
暴動
[編集]その夜遅く、ブラムリー・ロードで、300〜400人の白人暴徒が、西インド諸島系住民の住む家々を襲撃する様子が目撃された。騒乱は、9月5日まで毎晩続いた。
ロンドン警視庁は、騒乱の続いた2週間の間、140人以上を逮捕した。逮捕者の大半は白人青年だったが、武器を持った黒人も多く見られた。警視総監に提出された報告書によれば、重度の傷害、乱闘、暴動、武器所持などで逮捕された108人のうち、72人が白人で、36人が黒人だった[4]。
暴動の余波
[編集]シリル・バーネット・サーモン判事によって9人の白人の若者に対して下された判決は、「模範的判決」("exemplary sentencing"、他の者に対する抑止力として機能することを意図した厳しい処罰)の一例として、法曹界で長く語り継がれることになった。若者たちはそれぞれ、禁固5年と500ポンドの支払いを命じられた[9]。
1959年1月30日、ノッティングヒル・カーニヴァルの前身となる「カリビアン・カーニヴァル」が開催された。アクティヴィストのクラウディア・ジョーンズは、この暴動とイギリスにおける人種関係の現状に応答するべく、このカーニヴァルを企画した。
ノッティングヒル人種暴動は、ロンドン警視庁と、アフロ・カリビアンが人種に基づく攻撃を受けているという報告を警察が真剣に受け止めなかったと主張するアフロ・カリビアンのコミュニティとの間の緊張状態をもたらした。2002年には、文書公開により、当時の警察幹部が、様々な警官からの証言が挙がっていたにもかかわらず、内務大臣のラブ・バトラーに、この騒動の背景には人種的要因はほとんどないと断言していたことが明らかにされた[4]。
後世の作品における描写
[編集]- マイブリット・モリソンは、この暴動について自伝「ジャングル・ウェスト・イレヴン」(1964年)で記している[10]。
- ノッティングヒル人種暴動は、映画「ビギナーズ」(1986年。コリン・マッキネスによる同名の小説が原作)で大きく扱われている。
- 1958年9月28日、戯曲「ホット・サマー・ナイトがイギリスで初演された。この作品は、娘のジャマイカ系黒人青年への愛を受け入れようと苦悶する白人家庭を描いている。のち、1961年に本作がフレーム・イン・ザ・ストリートとして、アール・キャメロンとジョニー・セッカの主演で映画化される。「フレーム・イン・ザ・ストリート」のクライマックスは、明らかにノッティングヒル人種暴動から着想を得た新しい暴動シーンを中心に展開している。
memo
[編集]- explore “Notting Hill Riots 1958”. The Exploring 20th century London Project. 2012年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月20日閲覧。
- fido Fido, Martin; Skinner, Keith (1999). The Official Encyclopedia of Scotland Yard. London: Virgin Books. ISBN 0-7535-0515-0
- forgotten Linda Pressly (2007年5月21日). “The 'forgotten' race riot”. BBC NEWS 2022年1月20日閲覧。
- travis Travis, Alan (2002年8月24日). “After 44 years secret papers reveal truth about five nights of violence in Notting Hill”. The Guardian (London) 10 May 2016閲覧。
- long “Long history of race rioting”. BBC News. (2001年5月28日) 27 April 2013閲覧。
- olden Olden, Mark (2008年8月29日). “White riot: The week Notting Hill exploded”. The Independent (London) 27 April 2013閲覧。
- dawson Dawson, Ashley (2007). Mongrel Nation. University of Michigan Press. pp. 27–29. ISBN 978-0-472-06991-0
- younge Younge, Gary (2002年8月17日). “The politics of partying”. The Guardian (London) 27 April 2013閲覧。
- ashworth Ashworth, Andrew (2000). Sentencing and Criminal Justice. Cambridge University Press. p. 77. ISBN 0-521-67405-0
- newton Newton, Darrell M. (2013). Paving the Empire Road. Manchester: Manchester University Press
脚注
[編集]- ^ “Notting Hill Riots 1958”. The Exploring 20th century London Project. 2012年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月20日閲覧。
- ^ Fido, Martin; Skinner, Keith (1999). The Official Encyclopedia of Scotland Yard. London: Virgin Books. ISBN 0-7535-0515-0
- ^ Linda Pressly (2007年5月21日). “The 'forgotten' race riot”. BBC NEWS 2022年1月20日閲覧。
- ^ a b c Travis, Alan (2002年8月24日). “After 44 years secret papers reveal truth about five nights of violence in Notting Hill”. The Guardian (London) 10 May 2016閲覧。
- ^ “Long history of race rioting”. BBC News. (2001年5月28日) 27 April 2013閲覧。
- ^ Olden, Mark (2008年8月29日). “White riot: The week Notting Hill exploded”. The Independent (London) 27 April 2013閲覧。
- ^ a b Dawson, Ashley (2007). Mongrel Nation. University of Michigan Press. pp. 27–29. ISBN 978-0-472-06991-0
- ^ Younge, Gary (2002年8月17日). “The politics of partying”. The Guardian (London) 27 April 2013閲覧。
- ^ Ashworth, Andrew (2000). Sentencing and Criminal Justice. Cambridge University Press. p. 77. ISBN 0-521-67405-0
- ^ Newton, Darrell M. (2013). Paving the Empire Road. Manchester: Manchester University Press