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利用者:Tomos/各種画像の掲載について

本の表紙、屋外に恒常的に設置されている美術作品、スクリーンショット、商標など各種画像をウィキペディア日本語版に掲載することに問題があるか、ということについて、いろいろ考えていたことや調べたことがあるのでまとめてみましたが、あまりに長くなってしまい井戸端に投稿するのははばかられるので、独立のページにしてしました。

本の表紙

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本の表紙については、商慣行としてオンライン書店などで画像が利用されているようですが、著作権が存在しないという前提に立ってその慣行が成り立っているのかというと、そうとも言えないように思います。例えば、こちらの記事では、オークションで商品の写真を掲載することが実際に問題になっている場合があることを紹介しています。また、著作権があるという風に解説している記事もあるようです。(例えばこちら) 

アメリカ法はまだかなり疎いのですがTVガイドの表紙に著作権を認めた上で、その利用をフェアユースとして認めた判例があるそうです。(Triangle Publications v. Knight-Ridder Newspapers) そこで、一律にいえるものなのかどうかはわかりませんが、著作権がある場合もある、という風に考える分には間違いなさそうに思いました。

屋外に恒常的に設置された美術作品など

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次に、屋外に恒常的に設置された美術作品などについて。こうした著作物については、日本の著作権法下ではちょっと特別な扱いがありますが(専らその複製を販売するような利用でなければ利用してもよい、というようなことだったでしょうか)、この写真をウィキペディア日本語版に掲載する、あるいはそのためにウィキメディアコモンズにアップロードする、ということについては、3つの問題があるように思います。

GFDLとの兼ね合い

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ひとつは、このような著作権法の規定は、商業利用を許諾するというGFDLの内容とそぐわないので、恒常的に屋外に設置されている美術作品の写真などであっても、GFDLで掲載することはできないかも知れないという可能性です。個人的には、この問題はクリアできるのではないかと考えるようになりつつあります。その概要を書いてみます。

GFDLは、自分が持っている権利の一部にもとづいてある条件を満たす利用について許諾を与えるものです。許諾を与えることができるのは、自分の持っている権利の分だけのような気がします。これは、屋外に恒常的に設置されている彫刻(作者は彫刻家Aさん)の写真を撮ってウィキペディアに投稿した人(ウィキペディアンBさん)が画像をGFDLによってリリースしている時、そこでどういう許諾が与えられているのか、ということを考えると、ウィキペディアンBさんは、その写真のアングル、露出、使用したフィルター、やレンズ、シャッタースピードなどを通じて実現された写真としての創作性に関わる部分について一定の許諾を与えているだけで、撮影対象となった彫刻の作者Aさんの権利については何かの許諾を与えているわけではないし、許諾があるともないとも述べていませんし、撮影者が彫刻家と同一人物であると主張しているわけでもない、と言えるような気がします。そういう風に考えることができれば、(できるのではないかと僕は考えるようになりつつあるのですが)そのような写真がGFDLでリリースされていることには特に著作権法上の問題はなさそうです。

ただ、そうではなくて、ある写真がGFDLでリリースされるということは、写真に含まれている著作物の著作者も写真の撮影者もともにGFDLによる許諾を与えることなのだ、という風に考えると、彫刻の作者の許可なしに彫刻の写真をGFDLでリリースすることはまずいということになりそうです。

これはGFDLがどういうものなのか、その解釈をめぐる問題だろうと思います。僕が挙げた解釈は、無理がない解釈で法律の専門家もそんな風に考えるかも知れない、あるいは、コミュニティ全体としてそういう解釈を採用することにしてWikipedia:著作権などにそういう風に解釈していますよということを説明すれば、専門家も受け入れるかも知れない、ということを考えています。

編集方針上の問題

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仮にそのような対策が可能だとして、次の問題は、そうした特定の解釈を採用することのもたらす混乱だろうと思います。GFDLで許可されているのだから商業利用も可能なはず、と思って絵葉書を作って販売したら著作権侵害になってしまった、というようなことは上記の解釈を採用すると起こりうると思います。言い換えると、ある画像に「撮影者の著作権」「被写体の著作物の作者の著作権」の2つが含まれていて、一方だけがGFDLで、もう一方は日本法の特定の規定に基づく利用である、というようなことであれば、結局画像自体はGFDLだけを考慮して利用できないものなわけですから、そうしたコンテンツをウィキペディアとして提供するにあたっては、せめて画像の解説ページに解説をつけ、またタグをつけ、個別に画像を利用する人や、大量一括処理をして利用する人などの便宜を図る方が、混乱やトラブルを避ける上では望ましいのではないかと思います。

(そういうややこしい画像はウィキペディアに掲載すべきではない、または、よっぽど情報として価値がある場合で、著作権者などから許諾が得られない場合でなければ必要ない、というような意見もあるかと思いますが。これは、アメリカ法の文脈で、フェアユースによる画像を掲載してもいいかどうかの法律的な議論とは別問題として、それが望ましいかどうかをめぐる編集方針上の意見の対立がありうるのとほぼ同じことだと思います。また、逆に、少しでもウィキペディアの価値を高めるのであれば積極的に採用すべきだという意見や、二次利用者の便宜まで考える必要はない、サイトとして価値あるコンテンツを蓄積することを重視すべき、という意見もあるかと思います。)

個人的には、ウィキペディアは法律に詳しい人だけを二次利用者として想定しているわけではないこと、GFDLは一般にわかりやすいライセンスだと言われていないこと、彫刻家でありかつウィキペディアンである人が自分の作品を写真に撮ってアップロードすることも考えられないわけではないこと、などなどを考えると、解説+タグ付けが望ましいと僕は思いますが、いろいろ議論の余地はありそうです。

コモンズへのアップロードにまつわる問題

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最後に、そのような画像をウィキメディアコモンズにアップロードできるかというと、これはあまり楽観できないように思います。この部分はいろいろややこしいのですが、いくつか主だった点に限って書いてみます。

まず、同じ問題をアメリカ法を基準に考えてみました。(ウィキペディア日本語版では、メインのサーバクラスタがフロリダにあることや、ウィキペディアの公式な運営・所有主体であるウィキメディア財団がフロリダに本拠地をおいていることから、アメリカ法を念頭において考えることは重要だと理解しています。)

アメリカの著作権法には、建築物などを対象にした規定で、日本法とよく似た著作権の制限があります。[1] この条文や、その解説などをざっと読んだ限りでは、建築物の写真を公共の空間から撮影した写真なら、アメリカ法上も、それをウィキペディアに掲載することには問題ないということになりそうです。

ですが、コモンズではアメリカ法だけを考慮すればいいと考えられておらず、フェアユースに基づいている画像の投稿を禁止してもいます。そこで、他の多くの国々の法でもまず問題が生じない、というようなことがいえるような画像でなければだめかも知れません。

また、この規定に関わる判例を探してみると、Leicester v Warner Bros.という2000年の控訴審判決があります。(第9巡回区の裁判所の判決で、財団の本拠地であるフロリダとは異なる巡回区に属しているために必ずしもこの判決がフロリダの法廷で尊重されるとは限らない面もあると思うのですが。)

この件の争点のひとつは、ビルの敷地内にあるタワー状の建造物が、ビルの一部(=建築物)だと言えるのかどうか、建築物でなく独立した彫刻作品などに該当するなら、上述の著作権法の制限規定はあてはまらないのではないか、というものです。もともと訴えを起こしたのはそのタワー上の建造物の作者で、訴えを起こされたのは、映画「バットマン」中でこの建造物を作者の許可なく映しこんでしまっていたワーナーブラザーズです。また、タワーがビルの一部だとしても、タワーのてっぺんについているアートワークは別物で、これは建築物とは扱えないから、その部分だけでもワーナーブラザーズは許諾を得ずに使用して著作権を侵害した、という主張もされました。(公道との関係がよくわからないのですがLeisterさんのサイト内 に作品の写真があります。)

判決文を読んでみると、機能上そのタワー状の建造物が敷地と公道をしきるような機能を果たしていること、デザインや材質上も、タワーはメインのビルと調和していること、てっぺんについているアートワークはタワーに一体化していること、などを理由として挙げ、アーティスト側の主張を退けました。つまり、これは建築物とみなされたわけです。

この判決をひっくり返すと、屋外広告の類は、ビルの機能や材質との一体性に乏しい、必ずしも一体化しているわけではない、という場合がままありますから、建築物とはみなされず、したがって無断で写真を撮ってウィキペディアに掲載するのもまずいのではないか、ということが考えられると思います。

もうひとつ、屋外彫刻作品などは日本の著作権法の制限では明らかにカバーされているわけですが、アメリカ法の同様の事項についてはカバーされていないということもわかります。彫刻作品の著作権について述べているのは著作権法の113条ですが、こちらには建築物にあるような「写真掲載の自由」みたいなことは書いてありません。

なお、こちらの論文を見る限りでは、建築の著作物というのは公共の空間にある建築物一般ではなく、橋やダムなどは除外されているようです。そこでこういうものはそもそも著作物としての保護は受けず(図面としての保護は受けるのだと思いますが)、写真に撮ってウィキペディアに掲載することに問題はないということになるのではないかなと思います。

以上を考え合わせると、屋外に恒常的に設置されている美術作品などについては、GFDLについて特定の解釈を採用できるなら、日本法で考える限り問題はなく、その一部(建築の著作物)はアメリカ法で考えても問題ない、ということになり、コミュニティの合意を得られれば掲載は可能ということになります。

ですが、コモンズへのアップロードということになると、日本法とアメリカ法だけを考えてもこれだけブレがあること、フェアユースではないもののそれに近い理由によって可能になる利用であり、二次利用者が扱いを間違えると著作権侵害になってしまうこと、などを考えると、あまり楽観できないように思いました。

スクリーンショット

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次に、スクリーンショットについてですが、ゲーム関連サイトの管理者が著作権侵害として逮捕された事例があります。(紹介記事) また、類似した画面構成を持つソフトウェアについて著作権侵害にあたるかどうかが争点のひとつになった判例もありますが、そこでも画面のレイアウトなどが著作物たりえると判断されています。判決文

また、ソフトウェアの場合には、本などと違ってライセンスがついていることが多いと言っていいと思うのですが、そのライセンスの内容によっては、スクリーンショットの利用が制限される場合があると思います。例えば、GPLのソフトウェアのスクリーンショットはGPLでリリースできるか、ということを以前考えてみたのですが、よくわかりませんでした。GPLの適用範囲外(なので許諾は一切与えられていない)と考えることもできそうですし、GPLでいうところの改変にあたる(ソースコードなどと一緒にGPLのライセンスに従って配布することについては許諾がある)と考えることもできそうですし。。(以前は改変にあたるように思っていたのですが、最近改めてライセンスを読み返してみて、わからなくなりました。)

関連する削除依頼に、思い出せる限りで以下の2つがあります。 画像‐ノート:Mozilla Thunderbird Win Ja.png画像‐ノート:Firefox-1.0.png/削除

商標画像について

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最後に、商標画像については、正直よくわからないのですが、今のところは次のように考えています。

本や雑誌などで紹介のために掲載する分には、それによって商標権所持者の事業に差し支えるというような影響が出ない場合が多いでしょうからいいと思うのですが、GFDLでリリースしてどうぞ自由に使ってください、商業利用もOKです、としてしまうのが問題がないかどうか、ウィキペディア日本語版では長い間議論があります。僕は以前はこの問題があるからリリースできない、と考えていましたが、最近はよくわからなくなりました。

リリースできる場合もある、とするひとつの考え方は、GFDLは厳密に著作権にまつわるライセンスであって、商標権についての許諾は何も与えていないのだ、という風に解釈することだろうと思います。だとすれば、著作物性を持っていない商標に限っては、GFDLでリリースしても問題がないという立論ができそうに思うので。

このようなGFDLの解釈を考えるひとつの理由は、GFDLはありとあらゆる許諾を与えるものでは明らかにないということです。例えば、自己紹介文を書いてGFDLでリリースしたら、それをGFDLで許諾されている範囲で別の人が改変して、結果としてその自己紹介を書いた人の名誉を毀損するような文章にしてしまったら、それは「GFDLの許諾の範囲内だから問題ない」と言えるでしょうか? 多分言えないのではないかと思います。また、それが自己紹介ではなく、他の人の紹介文であればなおさらです。一般に、GFDLは、ライセンス内で制限されていないいかなる利用をも許諾し、その結果何も問題がおきないことを保証するか、というともちろんそんなことはないと思います。

では、GFDLはどういう許諾を与えているかと考えてみると、それが著作権についての許諾だというところまでは明らかだろうと思います。コピーライト(著作権)に対してコピーレフトのライセンスだと宣言しているところなど、理由はすぐに思い当たります。

ですが、厳密に著作権にのみまつわるライセンスだと言えるのかどうか、と考えると、ちょっと自信のある答えが出ません。GFDLアメリカを本拠地としているFSFによって開発されたライセンスですが、アメリカの著作権法には、著作人格権の規定がほとんどありません。(少量生産型の特定の美術品などについて認められているぐらい[2]。)その代わりに不正競争法や名誉毀損に関わる法律などを通じて氏名表示権や同一性保持権などを保護しているというのがどうやら通説のようです。そこで、GFDLが著作権だけを扱っているライセンスだとしたら、著作者人格権について何も許諾を与えないライセンスであるということになってしまいかねません。そうすると、もしもそういう趣旨のライセンスをそのまま日本法の文脈に持ってくると、同一性保持権にまつわる許諾も与えられていないライセンスだという話になってしまい、ウィキペディアのように改変を重ねることを前提とするプロジェクトで採用することができるものではなくなります。またGFDLに先行する、ソフトウェア用のライセンスであるGPLなど類似のライセンスについて慣行として成立している解釈にも著しく矛盾しているように思います。

準拠法の問題は僕は非常に疎いので、こういう考えの筋道自体がどこかおかしいという可能性はありますが、そういうわけで、僕としては、この辺りを整理すると答えが出るのではないかな、と思いつつその答えを出すにはあまりにも専門知識がなさ過ぎて立ち往生している状態にあります。

それから、映りこみの類ですが、商標として利用しようにも小さすぎる、ぼやけている、一部だけしか写っていないなどの場合には利用できませんから、そうした画像がGFDL下で提供されていることには、おそらく上記いずれの立場をとっても問題はないと言えるのではないかと思います。著作権法上も、そのような利用であれば、原作品の著作物性をとどめていないという風に判断されて問題ないのではないかな、と思います。もちろん、必ずそう断言できるわけではないので、個別の判断が必要になると思いますし、判断が難しく念のために削除しなければならないケースもあると思いますが。

関連する削除依頼で僕が考えたことは、以下のページにあります。(思い出せる分だけ) 画像‐ノート:Genkisushi02.jpg/削除

Tomos 2005年11月29日 (火) 03:14 (UTC)