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利用者:Yamanosora/和声学

和声学(わせいがく)は、西洋音楽和声についての学問である。

研究史

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和声についての学問的研究で初期の重要なものは作曲家ラモー1722年に出版した『和声論』である。その後、G. ヴェーバーや M. ハウプトマンなどの研究があった。1893年になってリーマンが『単純化された和声学』を発表した。これは、画期的な業績だったが、煩瑣で教育・学習のためには利用しにくいのものだった。その後1907年トゥイレ、ルイ共著の教科書が出版され広く普及した[1]

和声教育

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和声理論は実際の楽曲を分析し、楽曲演奏・指揮・鑑賞のための手段の一つとして重要であると共に、作曲・編曲の技術として不可欠なものである。機能和声理論を確立した研究書に続いて初学のための和声教本・和声教科書が作曲家や研究者によって出版されるようになった。

和声理論がほぼ確立しているのは機能和声のみであることから、和声教育もおもに機能和声に限定して行われることが多い。

和声教科書

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日本語による和声教科書

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翻訳ではない日本語による最初の和声教科書は、1908年に出版された福井直秋の『和声学初歩』である[2]。その後山田耕筰田中敬一の教科書などが出版された[2]

戦後1950年に出版された長谷川良夫『大和声学教程』(音楽之友社)と1954年の諸井三郎『機能和声法』(音楽之友社)には共にルードルフ・ルイ、 ルートヴィヒ・トゥイレ共著の『和声学』(山根銀二ほか訳)の影響がある[4]。1959年の下総皖一『和声学』(全音楽譜出版社)にはヒンデミットの影響がある[4]。これらはいずれもドイツの和声学をもとにしている[4]。これに対して池内友次郎はフランスの和声法を日本に紹介した[4]。池内の方法はのちに出版された池内友次郎編の『和声課題集』と『和声実施集』上下巻の3冊(1989年、1990年)によって知られる[4]。池内の後継者と目される島岡譲は1958年の外崎幹二との共著『和声の原理と実習』(音楽之友社)でドイツ、フランスいずれの表記法とも異なる和音の転回形を明示する記号を考案した[4]。この和音記号方式は『和声 理論と実習』(通称『芸大和声』)によって継承され、日本語による音楽教育現場で定着した[4]。島岡はさらに1982年から1988年にかけて『音楽の理論と実習』全3巻および『別巻』全3巻を音楽之友社から出版している。これは学問としては価値の高いものであるが難解にすぎる弊がある[4]。島岡の後輩にあたる矢代秋雄野田暉行は日本独特の島岡による転回形の明示を継承していない[4]。それぞれ『矢代秋雄 和声集成』1-3(全音楽譜出版社、1982年)および『和声50課題集』(野田暉行著、音楽之友社、1990年)がある[4]

1998年になって島岡らによって新たに『総合和声 実技・分析・原理』(音楽之友社)が出版された[2]。2006年と2007年には大阪音楽大学教授の植野正敏らによる『明解 和声法』上下巻(音楽之友社)が出版された[11]

脚注

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  1. ^ 「世界的名声をほしいままにした名著」と日本語訳の訳者の一人である山根銀二が評している(「訳者のことば」ルートヴィヒ・トゥイレ、ルードルフ・ルイ『和声学』音楽之友社)。
  2. ^ a b c d e f g h i j 森田信一、松本清「日本における和声理論教育の歴史富山大学学術情報リポジトリ、2008年。
  3. ^ リムスキー・コルサコフ『和声法要義 A』 Webcat Plus. 『和声法要義 A』は本文。『和声法要義 B』は注。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 八杉忠利「和声教育に関する一考察聖徳大学研究紀要 短期大学部 第26号(III)、1993年、11-15頁。
  5. ^ ルイ、トゥイレ『和声学』 Webcat Plus
  6. ^ デュボア『和声学 理論篇』『和声学 実施編』 Webcat Plus
  7. ^ シェーンベルク『和声学 第1巻』 Webcat Plus
  8. ^ Arnold Schönberg "Harmonielehre" American Libraries
  9. ^ ヒンデミット『和声学』 Webcat Plus
  10. ^ モッテ『大作曲家の和声』 Webcat Plus
  11. ^ 『明解 和声法』と『芸大和声』の和音記号の差異の実際については「ロマン派音楽における非機能的和声の役割」(永田孝信、2013年)の注(5), (6)を参照。

参考文献

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